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■SPLIT BIRD/BROILER × TRIKORONA





それぞれ東京と言う地で異形の存在感を放つBROILERとTRIKORONA。グラインドコアとエモヴァイオレンスとサウンドスタイルこそ違うが、シーンの流行などとは全く無縁の場所に立ち、自らの異質さだけを追求する両者が惹かれ合った。
四国のIMPULSE RECORDSよりドロップされた今作は異端児二匹がぶつかり合う危険極まりないスプリットだ。



BROILERはSE含め全6曲を収録。ヴァイオレンスでありながら、誰も傷つけずハッピーな空間を常に作り続けるプロレスの美学にも通じるライヴアクトで多くの祝祭空間を作り出し続けている事がBROILERはよく話題になるが、音源でライヴパフォーマンス抜きに音だけに触れてみると懐が非常にデカイバンドである事を痛感する。

ひたすらRAWに荒れ狂うグラインドコアのピュアさと、そこに留まらない引き出しの多さがフックを生み出す。
EVILなリフとビートで攻め立てながら、ブラックメタルやメタルパンクなどの要素も容赦無くブチ込み、終いには正統派HEAVY METALなハイトーンシャウトまで飛び出す。

それこそSODOMの様なバンドのテイストも感じさせ、グラインドコアでありながらHEAVY METALを貫く。この手の音楽が大好きな人たちのツボをしっかりと突いてくる辺りが本当にニクい。



対するTRIKORONAはSTUBBORN FATHERとのスプリットで展開したTRIKORONAにしか生み出せない混沌と困惑の暴力を更に進化させた。
パワーヴァイオレンスやエモヴァイオレンスといった括りで語る事は不可能な領域へと突っ込んでいる。

今作に収録されている楽曲ではテルミンも取り入れ、ノイズ・ジャンクロックといった要素に留まらず、ニュースクールハードコアなテイストも人によっては感じさせたりもする。聴く人によってその音の感触は変わり、カメレオンの様にその姿を変えていく。
強烈な音圧で不条理で不条理を塗りつぶすかの様なサウンドスケープを展開するが、混沌の中で絶妙なリフのフックを活かし、不思議とキャッチーで耳に残る楽曲が並ぶ。

KOYAMAの散文的かつ化け物そのものなボーカルもより聴き手を混乱へと貶める。構成する全てがイカれている。それこそがTRIKORONAだ。
特に「蝿心中」の異様なフックと妙にドラマティックに展開しながら殺伐と突き抜ける様は一番の聴きどころ。



今作はボーナストラックとしてBROILERとTRIKORONAがそれぞれ国内の某バンドのカヴァーを収録しているが、そちらもそれぞれの個性を出しまくった魔改造カヴァーになっており、だけどカヴァー元のバンドの楽曲の完成度の高さも活きている。そちらも要チェック。

BROILERとTRIKORONAそれぞれか異常なまでの文脈と情報量を持つバンドだが、それを整理せずより混迷の奥底へと突き進んでいく。
エクストリームミュージックの異端の二匹が生み出す世界は予測不可能だ。
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■Draw Morbid Brutality/ELMO





ELMOはこれまでの作品でも常にハードコアを更新し、世界中のハードコアとリンクしながらも、自らのオリジナリティだけを提示し続けて来た。
今作は2017年末にドロップされた実に4年振りとなる新作7インチEP。リリースはTOO SMELL RECORDSから。



ELMOのサウンドスタイルは一貫しており、スラッジ・パワーヴァイオレンス・グラインドコア・ノイズとあらゆるエクストリームミュージックを咀嚼し、それを極限まで振り切る事によりオリジナリティを獲得した。
先鋭的な視線を常に持ち、余計なギミックを排除し、実直過ぎる程にブルータルである事と向き合い続けている事実が今作にもアウトプットされている。

盤を再生した瞬間に耳を殺しにかかるハウリングノイズ、荒々しくも研ぎ澄まされたノイズまみれのギターと凶暴なビート、パラノイヤそのものであるハイトーンボーカル。悪意と狂気を音にしたらELMOになると言っても過言でもない。
加えてELMOはピットミュージックとしても強靭だ。アーティスティックな一面を持ちながらも、軸足はピットミュージックから全くブレず、自然と腕をブン回したくなるリフとビートによる楽曲構造は恐怖と同時に聴き手に野蛮な感情を与える。

sideAはファストな2曲、sideBはスラッジな1曲の計3曲が収録されているが、どの方面に振り切ってもノイジーかつブルータルなELMO印のグルーヴが充満し、危険極まりないが不思議とそこに触れたくなる人間の好奇心を刺激する。



サウンドスタイルこそ前作から大きな変化を遂げた訳ではないが、より強烈なフックと冷徹な残虐さを追求し、自らを更新した一枚。
ただ凶悪さを極めるだけでなく、ピットミュージックとして聴き手と共犯関係を築く事が出来るのはELMOの一番の強みなのかもしれない。
ハードコアは何なのか?ブルータルとは何なのか?それを直向きに追求し続けているからこそELMOは常に最先端のハードコアを産み出し続けている。

この悪意の暴力を早くフルアルバムのサイズでリリースして欲しい。それは間違いなく新たなる時代を切り開く一枚になる筈だ。

■In My Book/ANYO

In My Book
In My Book
posted with amazlet at 18.02.26
ANYO (2018-01-01)
売り上げランキング: 48,511




激音フリークスの間では2016年にリリースされた大阪の激重神ことSecond To Noneの1stアルバムにボーカル4hoがゲストボーカルで参加した事で話題を呼んだANYOであるが、2018年元旦に突如として新作EPである今作を配信リリースした。
ハードコアからギターロックまでと本当に幅広いバンドと共演し、多方面から絶賛の声を惜しみなく浴びる大阪が誇る正しき突然変異ことANYO。今作はANYOがネクストフェーズへと突入した事を告げる快作に仕上がった。



ボーカル・ギター・ベース・ドラムというスタンダードなバンド編成からPortisheadからfra-foaとREDЯUMまで行き来し、独特の妖しい空気を纏い続けて来たANYO。今作ではよりトリップホップな方面へと舵をとっている。
ドラムとベースは淡々と冷酷なビートを作り上げ、多数のエフェクターで幻想的な音色を積み重ねるオーロラの様な感触のギター。至って最小限の音でアンサンブルを構築し、ミニマルから最大の効果を生み出していくANYO節は今作でも健在。

サウンド面だけでも非現実的な耽美な空気を見事に作り上げているが、それを決定的な物にしているのは4hoのボーカルだ。
これまでの作品はバンドサウンドの肉感的な感触もあったが、それを排除し人間味を無くした音に人の体温を与え続ける4hoのボーカルはANYOを語る上で絶対に外せない。
決してポップス側の歌物では無く、一聴するとアバンギャルドで実験的でもあるANYOの音を歌物として成立させるだけのボーカリストとしての力量は素晴らしく、儚く美しく神々しい声が音とシンクロし、よりドープなダークサイドへと聴き手を連れ去っていく。

緊張感を保ちながら酩酊を繰り返し、重苦しい空気のまま沈んでいく事が心地よく感じさせる。分かりやすい鋭さでは無いのかもしれないが、聴き手にアメーバの様に浸透し、犯し、病巣の様に巣食うANYOは非常に危険な音だけを奏でている。特に第5曲「I」は今作でも屈指の名曲だ。


美しさと暗さと深さ、その三点を徹底的に追求し、エクストリームミュージック以上の危険さ、ポップス以上の歌物、ポストロックやシューゲイザー以上の美しい構造美、非現実の世界へと誘う片道切符だ。
Portishead辺りのトリップホップは勿論、fra-foaやREDЯUM辺りの00年代初頭の女性ボーカルオルタナティブ、現在のTHE CREATOR OF辺りが好きな人には是非とも聴いてほしい。
今作にあるのは音楽の無限の可能性と危険さだ。一度飲み込まれたら二度と戻れない。



■syrup16g COPY発売16周年記念ツアー「十六夜 <IZAYOI>」【十二夜】(2018年2月23日)@HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3

2014年の再結成以降コンスタントな音源リリースとツアーで精力的に活動を続けるsyrup16g 。
昨年秋から彼らの1stアルバム「COPY」のリリース16周年を記念した計16本のツアーを行なっているが、そのツアーの12本目はフロントマン五十嵐隆の故郷である埼玉県北与野でのライヴ。いわば凱旋ライヴだ。

会場となったHEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3のキャパは350人とシロップの人気を考えたら明らかに小箱。そんな特別なライヴに奇跡的にチケットを取る事が出来、今回埼玉県北与野まで足を運ばせて頂いた。
さいたま新都心駅から徒歩6分ほどで会場に到着。初めて訪れたハコだが、本当に小箱で真後ろでも余裕でステージが見える。こうした環境で大好きなシロップのライヴを体感出来た事が未だに実感が湧かない。
フロアの人々からも期待が空気となって異様に伝わってくる。その時点でこの夜が特別な夜になる事を確信した。



開演の19時から約5分ほど押して客電が落ち、五十嵐隆凱旋ライヴはスタート。キックオフは「クロール」から。
冷徹なギターフレーズとビートのグルーヴが序盤からかなり好調で、フロアの熱をいきなり高める。個人的にシロップ屈指の名曲だと思う「star slave」でメランコリックな空気を生み出しながら、「冴えないコード」のざらつきと「upside down」の切れ味鋭くファンキーなアンサンブルと不穏さでシロップだけの空気を既に形成。
この日は各楽器隊のアンサンブルのキレがかなり好調で、3ピースの美学を凝縮したかの様なアンサンブル、五十嵐自身の気合と気迫が見事に組み合わさり、バンドとしての状態はかなり好調に見えた。
ドラム中畑のMCで「今日はがっちゃんがどうしてもやりたい曲をやる。」との言葉に一気に湧くフロア、五十嵐が何故かスギちゃん風に「やっちゃうよー!」なんて言ってたのも妙に印象深い。
埼玉が生んだバンドでありながら埼玉でのライヴは実は2回目だなんてMCもあったが、五十嵐本人からかなりハッスルしたテンションが伝わってきたのは嬉しかった。

「これで終わり」と「赤いカラス」でセンチメンタリズム全開な空気を生み出しながら、五十嵐の「頭使って行きましょう。」の言葉からの「前頭葉」で加速するギア、印象的な倍音の効いたベースのイントロから雪崩れ込むアンセム「Sonic Disorder」と中盤に差し掛かり、場の熱量が一気に高まる。
「前頭葉」から「Sonic Disorder」の流れはロックバンドとしてのsyrup16gの実力が遺憾無く発揮されてた瞬間でもあった。
五十嵐自身が「今日はライヴハウスのオーデション受けてた頃の気持ちです。皆さんが審査員というかライヴハウスの人って感じで…」といった旨のMCをしていたが、バンド側と客側双方の熱がぶつかり合い確かな化学反応を起こしていた。
厳格な緊張感もあったが、その中にある不思議と暖かい空気、本編後半は特にそうした空気が充満し、そんな中で鳴らされた「翌日」は特別な意味を持っていた。
本編終盤の「落堕」では五十嵐ハンドマイクも飛び出し盛り上がりも最高潮を迎え、「変拍子」、「光なき窓」で本編は終了。

アンコールは再び厳格な緊張感の中で「無効の日」から。まさかやると思わなかった「君のかほり」、「もういいって」と厳格系ファンなら大歓喜なまさかの選曲。
「Drawn the light」「真空」とアンコールラストは必殺のキラーチューンで締めくくり。
「Drawn the light」の時は五十嵐のボーカルも叫ぶ様な切迫感溢れる物になっており、異常なまでのエモーションのままアンコールは突き抜けた。

アンコールを終え客電が点きBGMが流れても全く鳴り止まない二度目のアンコールを求める拍手。それに応え恐らく予定されてなかった二度目のアンコールはこの日の一番のハイライトだった。
まさかまさかの「エビセン」という二度とライヴでやるなんて思ってなかったsyrup16g の裏の大名曲をプレイ。
セミアコの寂しい空気感を纏ったギターの音色と最小限まで絞り込んだシンプルなビート、水色と青紫の照明もあって幻想的な空気感が尋常じゃなかった。
この日全体に言えることでもあるけど、ヘヴンズロック側の照明もこの日は良い空気を生み出しており、小箱のライヴだからこそのリアルな温もり、それに反する時は幻想的な空気感、視覚面もシロップの楽曲と見事にシンクロしていた。
最後の最後はアンセム「生活」で締めくくり。この日一番の盛り上がりで約2時間のライヴは終了。開放感とポジティブなエネルギーに満ちて締めくくられるシロップのライヴはこれまで体感したシロップのライヴの中でも初めてで、それが本当に嬉しかった。



セットリスト

1.クロール
2.star slave
3.冴えないコード
4.upside down
5.これで終わり
6.赤いカラス
7.前頭葉
8.Sonic Disorder
9.夢みたい
10.センチメンタル
11.開けられずじまいの心の窓から
12.翌日
13.落堕
14.変拍子
15.光なき窓

en1.無効の日
en2.君のかほり
en3.もういいって
en4.Drawn the light
en5.真空

en6.エビセン
en7.生活



二度目のアンコールの時の五十嵐のMCで「少しでも良い顔でそこの門をくぐって表に出てもらえたら嬉しいです。」とあったが、これまでになくシロップ自身が聴き手と向き合い、ポジティブなエネルギーを発してた事を象徴する言葉だったと個人的に思う。
五十嵐の故郷でのライヴという特別な事実もあるのかもしれないが、そうした事実を抜きに、シロップとフロアの客が確かにコミュニケーションを取り、双方の熱量が特別な空気を確かに生み出していた。
普段は大してMCをしないバンドなのに、五十嵐がいつになく饒舌にMCをしていた事や曲間に「北与野ー!!」なんて煽りをしていて、これまでライヴと映像で触れ続けたシロップのイメージが大きく変わったりもしたが、それはsyrup16gが今こそバンドとして最高の状態である事の表れなのだろう。

シロップが終わった2008年3月1日の武道館からもうすぐ10年が経つ。
あの日墜落したsyrup16gが奇跡の生還を果たし、過去も今も未来も全てやけっぱちだけど前向きな空気で新たなる足跡を刻み続けている事実。僕はそれが本当に嬉しい。そんな十二夜でした。

■孤高の存在/ANODE

孤高の存在
孤高の存在
posted with amazlet at 18.02.23
ANODE
インディーズ レーベル (2007-10-01)
売り上げランキング: 886,236




多くの人は日本国内の激情ハードコアと言うとenvy、killie、heaven in her armsといったバンドを思い浮かべると思う。
それらのバンドは素晴らしいバンドであり、シーンを作り上げた立役者であるが、それらのバンドと全く違う位置にあるバンドもシーンを作り上げたのも事実であり、メインストリームの文脈から外れた位置にあるバンドもまた確かな文脈を作り出している。

かつてANODEという本当に素晴らしい激情ハードコアバンドが存在した。今作はそんなANODEの07年リリースの1stフルアルバム。COSMIC NOTEとKAFSの共同リリースの全7曲入り。
アルバムタイトルは「孤高の存在」。とんでもないタイトルを自らの作品に冠しているが、ANODEは本物の孤高の存在であると今作を聴けば分かる。



僕自身はANODEが墜落してから彼らの存在を知り、リアルタイムで追えなかった身だが、何度今作を聴いてもANODEの中に存在する文脈や影響が本当に分からない。
決して奇をてらったサウンドスタイルではなく、むしろストレートな激情ハードコアを鳴らしているが、「◯◯っぽい。」とか「◯◯の影響を受けている。」といった要素がANODEには全く無い。
ただ一つだけ確かなのはANODEは紛れもなくハードコアパンクの真髄を鳴らしている事だけだ。

ツインギターの悲哀に満ちた独自のメロディ、苦悩や葛藤を曝け出し、世界と対峙する言葉の数々、異常なまでに緊張感に満ちた空気。
厳格極まりない音と言葉は快楽的な退廃感とは全く無縁であり、研ぎ澄ませた精神を真っ直ぐに解放するのみである。
激情と美しさの狭間にありながら、洗練とは無縁で泥水の中をひたすら泳ぎもがく様な激昂のノンフィクションをANODEは描いている。



ANODEは09年にこちらも大名盤である2ndアルバム「負の新種」をリリースし、その直後に墜落してしまった。
しかしANODEは文字通り孤高の存在として今なおフリークスの心の中で生き続けている。
他所からサウンドスタイルを借りパクなんかせず、自らのハードコアパンクを突き詰めた結果、似ているバンドが全く存在しないANODEだけの表現が今作には存在している。

ANODEが鳴らすハードコアパンクは魂で触れなくてはいけない切迫感と厳格さがある。
00年代日本という時代を駆け抜けたANODEは、決して忘れ去られてはいけない存在だ。その存在が消滅した現在だが、多くの人々に語り継がれるべきバンドだ。




プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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