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■タグ「オルタナティブロック」

■SUNDAY BLOODY SUNDAY/SUNDAY BLOODY SUNDAY

Sunday Bloody Sunday
Sunday Bloody Sunday
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Sunday Bloody Sunday
Fixing A Hole 販売:密林社 (2016-11-30)
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10年以上に渡り活動を続ける埼玉の3ピース・オルタナティブ・ロックバンドSUNDAY BLOODY SUNDAY(以下SBS)の2016年リリースの1stアルバム。
リリースから既に一年近く経過しているが、数多くの人が2016年のベストリリースに挙げる名盤となっており、SBSの名前を一気に世に広めた作品である。



バンド名から僕は真っ先にU2が思い浮かんだが、彼らが鳴らすのは90年代グランジ/エモを軸に、ストーナー・ロックなどのヘヴィ・ロックのテイストを加えた物となっている。
確かにサウンドスタイルとしては00年代以降のテイストは薄く、人によっては懐かしさを感じさせるものではあるが、単なる懐古主義なバンドでSBSは終わらない。

今作を代表するキラーチューンである第2曲『Still Spins』を聴けば、SBSはスタンダードなオルタナティブ・ロックを鳴らしながら、未来へと向けてその音を放つバンドだと分かる。
ヘヴィな煙たさを放つリフ、ミドルテンポで重心が効いたリズム隊のグルーヴ、そこに乗るギター・ボーカル冨永氏の歌は透明で情念あふれる伸びやかな物だ。
リフから想起させられる郷愁のグッドメロディ、歌とギターリフがシンクロし、確かな泣きとして聴き手の感情を揺さぶる。

個人的にNIRVANAやALICE IN CHAINSといったグランジバンドが大好きなので、SBSのサウンドスタイルはドンピシャに刺さるが、それらのバンドが持つ湿り気やダークさだけがSBSの持ち味ではない。
SUNNY DAY REAL ESTATEといったバンドの持つきらめきのエモーション、さらに初期BLACK SABBATH的なヘヴィ・ロックの源流をくみ取り、メインストリームからサブジャンルまで飲み込みながら、ポップネスとエクストリームの隙間を突き刺すSBS節を完成させている。

歌詞こそ全曲英詞であるが、彼らのライヴでサビを一発聴いただけで、観る人をシンガロングさせてしまう様な歌心こそSBSの一番の武器だろう。
第8曲『Don't Know Who I Am』は個人的に今作のベストトラック。流れゆくギターフレーズと歌が心の奥底まで染み渡り、力強く羽ばたく名曲となっている。


ヘヴィネスを保ちながら黒さだけではなく、多彩な色彩を描き歌うSBSは、時流や流行り廃りを越えたスタンダードミュージックである。
マニアックな音楽愛があるからこそ、それらを不変のオルタナティブ・ロックに帰結させたSBSの手腕に軍配だ。

力強いグルーヴとギターリフ、そして泣きのメロディと一発で耳に残る歌。それらのシンプルな要素だけで高らかに青空へと駆け上がる音楽を作り上げている。
今作は現在だけでなく、未来へと語り継がれる一枚となるだろう。3ピースの一つの理想形として、全音楽好きへ突き刺さる名盤だ。



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■The Sense Of Wonder/Detrytus

The Sense of Wonder



 Detrytusとは正に未知な衝動を鳴らすロックバンドである。Dischordサウンドという言葉じゃ元々片付かないバンドではあったけど、2015年にリリースされた2ndアルバムはよりバンドが他と比較する事が不可能な「孤高の存在」になった事をアピールする作品であると同時に、紛れもなく最高のロックアルバムとなった。アルバムタイトルは「一定の対象、SF作品や自然に触れることで受ける、ある種の不思議な感動」って意味らしいけど、正にそんなタイトル通りの作品だと言えるだろう。またパッケージはCD/LP共に箱型特殊パッケージで箱にはナンバリングも記載されている。そんなDIYなパッケージも滅茶苦茶熱い。また録音はex-CRYPTCITYのセブロバーツの手による物。



 しかし今作は何度も繰り返し聴いてもその全容が掴めない作品だ。決してアバンギャルドな事もしていないし、難解な事をしている訳でも無い。寧ろ3ピースという編成の無駄の全く無いサウンドフォルムと緊張感を最大限に生かしたヒリヒリしまくったオルタナティブロックアルバムだと言えるだろう。3人の音の化学反応がセブのオルタナティブを熟知したレコーディングによってより尖ったサウンドへと変貌している。でも何だこの既存の音と全然感触も違う異質さは?DischordだとかHooverだとかも影響は確実にあるとも思うけど、その形容だけじゃ彼等の音を上手く形容出来ない。しかし生々しい程にドキドキしてしまうこの音は何なんだろうか?
 ハナの第1曲「Essence Of Life」から異様なオルタナティブが炸裂しまくる。ベースラインが一々極太で揺らぎを生み出し、ドラムのビートも実際結構シンプルであったりするし、グルーブだけ取ればある意味では凄くノレるし、踊れる音になっているだろう。でもそこに乗るギターは極端に歪んでいる訳でも無いし、空間系エフェクターの音が強く、ある意味無機質な程に鉄の感覚が溢れている。分かりやすくバーストしないのに、背筋が凍りつく冷たさの奥の熱が確かに存在し、ディスコダンスでありながら、越えちゃいけないギリギリの綱渡りの感覚を聴いていて覚える。第2曲「State Of The Masses」はもっと分かりやすいディストーションサウンドが前面に出ているし、ドライブ感もある、でも鋼鉄のビートを繰り出し、終盤ではベースラインが完全に楽曲を支配し、ギターのエフェクトがより不気味に噴出するパートは何度聴いてもハッとさせられるけど、でも分かりやすい高揚とはまた違うカタルシスも確実に存在しているのだ。
 第4曲「Policy」なんて疾走感に溢れたロックナンバーであり、そのサウンドは紛れもなくロックでありながら、ギターのコーラスエフェクトなんかはSSE辺りのロックバンドが持つ妖しさに満ちているし、ロックの初期衝動と共に、ロックが持つ得体の知れない妖しさをシンプルな曲だからこそ出せるのは本当に強い。第5曲「Sand Dune」の極端に音数を削りまくったからこそのミドルテンポのうねりの螺旋階段はポストロックの領域にまで達しているけど、その反復するサウンドの行き先はやっぱり不明。第7曲「Heavier Things」や第8曲「Make Void Or Empty Of Contents」に至ってはdip辺りがやっていても全然不思議じゃないサウンドだし、そのクールネスに痺れてしまうだろう。そして最終曲「Shine」で10分近くにも及ぶ不気味な静寂のサウンドから底なし沼に落とされるだろうエンディング。最初から最後まで未知に触れた瞬間の衝動と感触を完全に音で表現している。



 本当に沢山の音が出尽くしている2015年にここまでドキドキする音を鳴らす作品が出てくると思っていなかったし、斬新な事やアバンギャルドな事をするのでは無くて、自らのルーツを完全に消化し、バンドのアンサンブルを細胞レベルまで極める事によってヒリヒリしていて全容が掴めない、でもロックのカタルシスに溢れた作品を生み出したDetrytusには本当に拍手喝采だ。何処にも属さないからこそ自らをより未知のモンスターへと変貌させていくDetrytusは2015年の正しいオルタナティブロックを鳴らしているし、誰にも媚びず、誰にも迎合しないからこそ、ロックバンドのまま完全なるオリジナリティを獲得している。



■Rhapsody in beauty/THE NOVEMBERS


Rhapsody in beautyRhapsody in beauty
(2014/10/15)
THE NOVEMBERS

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 今年、これまでを総括するシングルをリリースしたノベンバだが、その先のアクションは想像以上に早かった。前作リリースから約1年のスパンで届けられた2014年リリースの5thである今作は、前作で見せた多様性と陰鬱さと残酷さとは全く違う作品である。今作は「美しさ」をテーマにした作品となっており、同時にノベンバのこれまでの作品で最もロックのロマンを感じる作品になっていると思っている。前作での多様性とは全然違うし、しかしこれまでのノベンバとも違う、歪みも美しさも耽美さもノイジーさも手にした残酷過ぎるロマンの結晶だ。



 非常に個人的な感想ではあるし、雑な言い方にはなってしまうかもしれないけど、今作は80年代や90年代初頭のロックや、もっと言えばSSE周辺のバンドの持っていたロマンと耽美さと共通する空気感を持っていると思っていたりする。全体的に録音は少し粗さを残した歪みを感じさせる音になっているし、単に美しさを追求した作品ではなくて、歪みと美しさのっ調和であり、同時に現行のロックとは全然違う方向性の音になっているのに、懐古主義的な音にはなっていない。様々な先人へのリスペクトや影響を感じさせながら、それを取り込んで消化するのは進化の定石であるし、ノベンバは真っ当なまでにそれをやってのけている。シロップやアートのフォロワーとして登場した頃とは全然違うバンドになったし、こうしてロックサウンドを再び鳴らす事によって、図らずしもノベンバは完全に化けてしまった事を証明した。
 第1曲「救世なき巣」は浮遊感と轟音が渦巻き、輪郭が崩壊したアンビエントさを感じさせる一曲であり、今作はそこから始まる。荒々しいノイジーな音と、エフェクトをかけまくっている小林氏の歌による残酷な美しさの幕開け。単なるノイズでは無く、荒涼とした物悲しさに溢れている。しかし今作は堂々とロック作品だと前述した通り、第2曲「Sturm und Drang」からはノベンバの新境地とも言えるロックの始まりだ。エフェクターを多数使っており、かなり音を弄りまくっている筈なのに、プリミティブなリフの応酬とビートの応酬がスリリングに繰り広げられ、歌はやっぱりエフェクトをかけまくっているし、叫びを駆使しまくっていて歪んでいる。ヘビィさを感じさせるリフは前作でもかなり出てきたけど、ここまで疾走感溢れる音では無かったし、しかし突き抜ける様でありながら、落ちていく様でもある音が生み出すカタルシスな何なんだ。第3曲「Xeno」からようやくもっとロックらしいフォーマットの曲になり、小林氏の歌の輪郭も明確になる。フィードバックするギターとシンプルなビートが生み出す音塊、第4曲「Blood Music. 1985」も音の粒の粗さを感じるのに、楽曲そのもののキャッチーさを活かし、メロディも掴みとりやすく、でも轟音系ロックのフォーマットとはまた違うズレを感じるし、数多くのバンドの影響を感じながら、その何処にも行かない感じで、ノベンバという磁場を生み出している。dipだったりとか、ブランキーだったりとか、Borisだったりとか、そういった孤高のロックバンドが持つ空気感であり、小林氏は間違いなくそれらのバンドの影響は受けていると思う。でもそれを模倣する事はせずに、ノベンバという核の中にしっかりと取り込んだ事によって、新たな音として消化しているのだ。
 そんな流れから自然な形で過去の楽曲の再アレンジである第5曲「tu m' (Parallel Ver,)」へと流れるのは流石だけど、「Misstopia」に収録されているVerとは明らかに印象は違う。「Misstopia」のVerはアコギ基調の枯れ木の様な物悲しさに溢れていたけど、今作のVerはオルゴールとクリーントーンのエレキギターを基調にしたアレンジになっているし、少しずつ豊かな色彩が花開いていく印象なのだ。そしてタイトル曲である第6曲「Rhapsody in beauty」のSonic Youthばりのホワイトノイズと、80年代ロックからラルクまでを感じる高揚感と耽美さと優しさの極彩色のサウンドは脱帽だ。荒々しさと美しさが見事に共存し、爆音で聴けば聴く程に、意識が高揚するのを感じるし、覚醒する。そんな高揚感を受け継いでの第7曲「236745981」、耽美なダークネスと前作で見せたヘビィなグルーブとリフによるドロドロと渦巻く情念の一曲である第8曲「dumb」も今作の確かなキモになっている。
 そしてノイジーでロックな曲が続いてからの第9曲「Romancé」は間違いなく今作のハイライトであり、ノベンバの新たな到達点である。高松氏の動くまくるベースラインが楽曲を引率し、シンセとシンプルなギターの音色と小林氏の歌が織り成す今作屈指の歌物でるが、まるで中谷美紀が歌っていても違和感が無いであろう、美しく耽美なメロディと、甘い残酷なロマン、揺らめく音の波と、シンプルな楽曲構成によって生まれるのは、まるでThe Cureの如し甘きロマンスだ。そして最終曲「僕らはなんだったんだろう」はアンプラグドな歌物となっており、終盤までのノイジーさと美しさの同居から、終盤の2曲の「今日も生きたね」を生み出したからこそ到達できた、シンプル極まりない普遍性は今のノベンバの一番の武器なのかもしれない。



 最早ノベンバは俗に言う「ロキノン系」だとか「ギターロック」の広い様でいて狭い範疇で語ってはいけないバンドだと思う。ここ最近の作品や、まさかのBorisとの対バンだったりで、これまでのイメージを変化させ、これまでノベンバとは無縁だった層にも着実にアピールしている。今作は非常に多数の色彩によって描かれたロマンと美しさの作品であるが、それこそがロックが持つ魅力であると思うし、ノベンバは紛れも無く「本物のロックバンド」になった。ロックの持つ妖しさやドキドキが今作には間違いなくあるし、流行や、既存の音には決して歩み寄らないで、ノベンバはノベンバにしか歩けない覇道を間違いなく歩いている。その道の先はまだ誰も分からないけど、ノベンバは、どこまでも純粋にロックバンドであり続ける。



■Guitar/LOSTAGE

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 奈良から世界にその爆音を放つLOSTAGEの2014年リリースの6枚目のフルアルバム。タイトルはまさかの「Guitar」だ。ジャケットもギターだし、ここまで真直ぐなアルバムタイトルとジャケットに驚いた人は多いかもしれない。今作も前作同様にレコーディングは地元奈良のNEVERLANDでレコーディングされ、レコーディングアシスタントとギターサポートにex-Crypt CityのSeb Roberts、そしてここ最近の彼らの作品では御馴染みのRopesのアチコ嬢がコーラスで参加。エンジニアは岩谷啓士郎を迎えている。



 さて3人編成になって3枚目のフルアルバムだけど、今作は見事なまでに歌物の作品となっており、LOSTAGE特有のエッジの効いたサウンドで切り裂くポストハードコア全開な曲は収録されていない、どの楽曲も非常に普遍性の高い曲ばかり並ぶし、言ってしまえばLOSTAGEというバンドはソリッドな攻撃性だけじゃなくて、普遍性と叙情的なメロディも大きな武器である事は過去の作品を聴けば分かると思う。今作は攻撃的で直接的に刺す音こそ前面には出ていないけど、紛れも泣くバンドとして深化と円熟を感じさせる音が溢れているし、本当に普遍的な良さに満ちている。
 実質的な今作のオープニングである第2曲「コンクリート / 記憶」を聴けば分かるけど、決してバンドとしての音は全然日和ってなんかいない、五味兄のズ太く歪んだベースラインはより深淵まで抉る音になっているし、五味弟のギターも泣きのメロディを奏でながら突き刺していく、岩城氏のドラムも持ち前のビートの強さを相変わらず見せ付けているし、あくまで硬質なバンドサウンドは変わっていないし、寧ろより研ぎ澄まされている。バンドとしてのアンサンブルがより強固になりながらも、ざらつきを残しながらも、五味兄はとにかく切なく感情豊かに荒涼感を露にしながら歌い、メロディはどこか優しくありながらとにかく切ない。元々LOSTAGEというバンドは普遍性もグッドメロディもあったバンドだし、それを研ぎ澄ましたからこそ今作は生まれたんだと思う。かといって器用に歌物の作品に仕上げましたかと言えば大違いだし、このバンドの歌はとにかく不器用な歪さばかりだ。第3曲「Nowhere / どこでもない」ではここぞという所では轟音ギターが渦巻き、感情を揺さぶりまくるけど、その音にカラフルさやポップさは勿論無い。なんというかどの楽曲もそうなんだけど、剥き出しで余計な装飾を拒んだ音になっているのだ。だからこそメロディが素朴かつ素直に伝わるし、歌もじんわりと心に来る。
 第4曲「いいこと / 離別」は前作に収録されている「BLUE」の様な青き疾走感をより明確にした楽曲だし、第5曲「Guitar / アンテナ」は今作で唯一LOSTAGEの持ち味の一つである吐き捨てる言葉とソリッドな音で突き刺す攻撃性が際立つ楽曲だけど、そんな楽曲でもバンドとしての大きな円熟を感じるし、特にアルバムの後半の楽曲は本当に剥き出しの音しかない。第6曲「深夜放送 / Unknown」は余計な音を本当に削ぎ落とし、シンプル極まりない音のみで構成され、アチコ嬢のコーラスが確かな風通しの良さを生み出し、心がキュンとする。第7曲「Flowers / 路傍の花」は彼らの普遍性の一つの集大成であった「NEVERLAND」の深化形であり、素朴なサウンドと、柔らかな音と歌によって傷だらけでもポジティブに前を向くエネルギーを感じる名曲であるし、今作を象徴する一曲になっていると思う。郷愁の音色が涙腺を刺激しまくる第8曲「Boy / 交差点」、そして決定打は今は亡きbloodthirsty butchersのフロントマンであり、俺たちのジャイアンである吉村秀樹に捧げたレクイエムである最終曲「Good Luck / 美しき敗北者達」だ。今作のテーマに喪失や死や別れといった物を五味兄の書く歌詞から感じたりするんだけど、そんな今作を締めくくる8分近くにも及ぶ普遍性とエモーションが緩やかでありながらも確かに渦巻く名曲だし、レクイエムでありながら確かな生をこの曲から感じるし、そうかLOSTAGEはとうとうそうした感情まで見事に表現するバンドになったんだな。最高のエンドロールの先にあるのは確かな明日への渇望と希望だ。



 LOSTAGEはポストハードコア的なアプローチも勿論最高なんだけど、同時に普遍性とグッドメロディも素晴らしいバンドだし、ここまで素直な作品を作り上げたのは間違いなくバンドの覚悟の表れだろう。今作に存在する音と言葉は安易な希望ではないし、確かな絶望や悲しみが直ぐ横に存在している。だからこそ彼等のバンドとしての前向きさや傷だらけの格好良さがより説得力を増して伝わってくるし、本当の意味での生命賛歌なんだと思う。本当に素晴らしいアルバムだ。LOSTAGEというバンドの底の知れなさを感じると同時に、本当にバンドとしての強さを感じる傑作。



■Informed Consent/Panicsmile


INFORMED CONSENTINFORMED CONSENT
(2014/07/01)
PANICSMILE

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 実に20年以上に渡って活動し、オルタナティブである事を追及し提示し続けたパニスマの実に5年振りとなる2014年リリースの8th。2010年に一度活動を休止したが、ベースだった保田氏がギターに転向し、新メンバーにDJミステイクと松石ゲルを迎えて2011年に新編成で再始動したが、今作は新編成による初の音源であり、プロデュースはもう御馴染みのAxSxE氏の手による物。そして5年の歳月を経て生み出された新作は、これ以上無い位にパニスマらしく、パニスマにしか生み出せないオルタナティブロックだった。



 吉田・ジェイソン・保田・石橋時代のラストアルバムである「A Girl Supernova」ではアバンギャルドなままに歌物に接近した意欲作だったけど、今作はもっとざっくりとしたロック的な部分に回帰していると言える。パンク・オルタナティブロックの影響を独自に捻じ曲げて消化したサウンドはもう相変わらずなんだけど、前作の歌物方面へのアプローチとまた違って、もっとグルーブ感覚を強化し、もっとポップになり、もっとシンプルになった印象を受ける。でもそれぞれのフレーズは非常にキャッチーなのに相変わらずの変拍子だらけで、転調だらけの楽曲達は最早安心感すら覚えるレベルだし、本当にパニスマらしい作品なのだ。第1曲「Western Development2」では2本のギターが非常にキャッチーで更に絶妙なファンキーさも手に入れ、パーカッシブな松石氏のドラムと、DJミステイクの絶妙にゴリゴリのベースラインは新生パニスマがもっとプリミティブなロックバンドになった事の証明だし、転調により曲変化のキメの美味しさ、ファジーなギターソロの格好良さと、凄くひねくれまくっているのに、これは何処を切ってもロックバンドの音としか言えないサウンドだし、反復フレーズによる快楽、ダイナミックに進化したアンサンブル、踊れなさそうなのに、最高に踊れる。パニスマ印の痙攣サウンドは健在どころか、それを更に分かりやすく突き詰めた進化は今作の大きな肝だと言えるだろう。第2曲「Out Of Focus,Everybody Else」なんて各楽器の音がズレまくっているのに、そのズレが無きゃいかんでしょ?と言わんばかりの説得力や必然性は流石だ。
 タイトルトラックである第3曲「Informed Consent」は転調だらけなのに、それぞれのフレーズのポップさとファンキーさが難解さを調和しているし、でも中盤では不穏に歪みまくったサウンドに変貌して、おぞましさに背筋が凍るのに、最終的にまたポップになったりする掴み所の無さがまた堪らない。吐き捨て捲くし立てる吉田氏のボーカルとはまた違う、歌心とさりげないサイケデリック成分がパニスマ流の歌物ロックとなっている第4曲「Antenna Team」は前作の流れも確かに感じさせてくれるし、第5曲「The Song About Black Towers」は2分未満の楽曲なのに、変態性しかないアンサンブルと痙攣サウンドを前面に出していて、やっぱり一筋縄ではいかないし、第6曲「Double Future」は個人的にファンキーになった新生パニスマの真骨頂せあり、終盤のファズギターの洪水は震えすら感じる。そしてキャッチーさからドープさへと変貌する終盤の楽曲から、最終曲「Cider Girl」のズタズタのオルタナティブサウンドから一つの開放へと向かうエンディング。やっぱり何もかもが一筋縄ではいかない。



 新編成になってもパニスマは相変わらずパニスマだし、よりポップかつファンキーになっても、捻じ曲がりまくった音しかないし、ポップさと不穏さの同居によって、聴き手の心をざわつかせるオルタナティブロック。パニスマはパニスマでしかないし、進化を続けながらも不変のサウンドはやはり凄く信頼出来る。5年の歳月を経て生み出された見事過ぎる改心の一撃那一枚だ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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