■タグ「ギターロック」

■delaidback/syrup16g

delaidback
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posted with amazlet at 18.01.29
syrup16g
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT (2017-11-08)
売り上げランキング: 635




syrup16gはこれまで「delayed」、「delaydead」と未音源化楽曲の編集盤をオリジナルアルバムとしてリリースしているが、今作は実に13年振りの遅刻シリーズとなる記念すべき10枚目のオリジナルアルバムだ。

収録されている楽曲は「delaydead」リリースから解散までにライブで披露されていた大量の未発表曲の一部、シロップ解散後に五十嵐隆の新バンドとしてスタートしたが作品をリリースする事なく超短期間で解散した犬が吠えるの楽曲、2013年の実施シロップ再結成ライブとなった生還ライブの時に披露された新曲、そしてシロップ結成当初の20年前の未発表曲まで網羅した全13曲。
言うなれば音源化していない楽曲を寄せ集めただけの作品ではあるが、そこはシロップ。スピッツのB面集の様に名曲を寄せ集めただけで名盤が成立してしまうマジックがあるのだ。



収録されている楽曲の生まれた時代には実に20年近い振れ幅があるが、それでも不思議と統一感がある様に聞こえるのは五十嵐隆という男のソングライティングのセンスがシロップ結成当初から現在に至るまで全くブレていないからだろう。

本来、犬が吠えるの代表曲になる予定であった第1曲「光のような」、第7曲「赤いカラス」のシンプルなアレンジだからこそ輝く楽曲の純粋なメロディの良さ。派手な事をしていないが力強いアンサンブル。過去を現在へと変え、色褪せない輝きを放つ。
生還ライブの楽曲も2017年のシロップの楽曲として卸され、第2曲「透明な日」の染み渡るメロと歌、第5曲「ヒーローショー」の軽快さ。どの楽曲も3ピースの美学が生み出した美メロとポップネスにあふれている。
20年近く前の楽曲である第6曲「夢みたい」の歌謡曲的なメロの中に潜む粘り、第10曲「開けられずじまいの心の窓から」も生還ライブで披露された楽曲とも見事にリンクし時を超える名曲である事を証明。

特に当時からファンの間では名曲と呼ばれ解散時に音源化されなかった事を悔やむ声が多かった第3曲「star slave」は今作の中でも一番の名曲。少ないコード進行によって淡々と刻まれる吐きそうな程に美しいメロディと悲壮感はシロップの一番の持ち味であり、煌めきすら悲しく感じさせる情景を描く歌詞とメロディは必聴。
第8曲「upside down」も軽快なカッティングギターから滲み出る80年代UKロックへのセンチメンタリズムも注目すべきだろう。
そんな名曲巡りの今作のラストを飾る「光なき窓」の儚い余韻も含めシロップが持つ魅力を存分に楽しめる全13曲だ。



シロップは他のバンドに比べて未発表の楽曲が非常に多く、今回こうして一度時系列の彼方に消えてしまった楽曲を2017年に蘇らせてくれた事はファンとしても非常に嬉しい。
同時にシロップ入門編としても最適な一枚となっており、五十嵐隆という男の天才的ソングライティングセンスとシロップの3人が織りなす熟練のアンサンブルも堪能出来る。特に今作はキタダマキのベースが今まで以上に変態的かつメロディアスなベースを弾き倒しているのも忘れてはいけない。

僕個人としてはsyrup16gというバンドに関しては過去以上に今後世に生まれるであろう今の音源を楽しみにしている側ではあるが、今作を聴いて、そう遠くない内にまたリリースされるであろう新作への期待が高まったのも事実だ。
00年代以降の日本国内のギターロックに於いてsyrup16gというバンドがここまで多くの支持を今尚集め続けるのか。それは今作を聴けばわかるはずだ。



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■darc/syrup16g

darc
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posted with amazlet at 18.01.29
syrup16g
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT (2016-11-16)
売り上げランキング: 12,274




2016年秋の「HAIKAI」ツアーに合わせて突如としてリリースされたsyrup16gの9thアルバム。
全8曲36分とアルバムとミニアルバムの中間の何とも言えないサイズのアルバムで、ジャケもFOO FIGHTERSへのオマージュであるがそこら辺で売ってそうな水鉄砲と本気なのかふざけてるのかよくわからない感じではあるが、それとは裏腹に再結成後のシロップの新たな音を提示した名作に仕上がった。



公式でのインフォメーションでは1stアルバムである「COPY」制作当時と同じ気持ちで作られた作品とアナウンスされていたが、結論から言えば過去のシロップへの懐古的な作品ではなく、自らの原点を見つめ直した上で現在進行形のシロップへとアップロードした長年追いかけて来たファンならずとも必聴の名盤となった。
リードトラックとしてMVが公開されている「Deathparade」こそロック色の強いアプローチをしているが、残りの楽曲では派手なアプローチは全くしておらず、その点はシロップが新たなファンを獲得する気があるのかと言う批判も生んでいるが、そもそもシロップというバンド自体が外へのアプローチに必要以上に固執せず、自らの愛した音楽へのセンチメンタルな感情と五十嵐隆という男の個人的感情の吐露であるのだから、自らに素直になった結果生まれたアプローチだと僕は思う。

再結成後の「Hurt」、「Kranke」という2作品では様々なアプローチを試み、再結成後のシロップを構築している作品だと僕は感じたが、今作が持つ不穏さはシロップが持つ糖度の粘りを新しい感触で蘇らせた物だろう。
少しロウでくぐもったサウンドプロダクトもあるが、第1曲「Cassis soda&Honeymoon」の最低限の展開の中で不協和音の中の甘さで陶酔させ沈んでいく音にいきなり飲み込まれていく。
第4曲「Father's Day」の繰り返されるフレーズが徐々に轟音へと変貌しながら、決して高揚感へと導かないドープなサウンドも不思議と胸に突き刺さる。

その一方で五十嵐隆の十八番である最低限のシンプルなコード進行で吐きそうな程に甘いメロディを携えたシロップのアプローチも磨きがかかっている。第3曲「I'll be there」と第7曲「Murder you know」の2曲が今作の肝となる2曲であり、これまでのキャリアの中で築き上げたシロップ名曲殿堂の中でもトップレベルの普遍的名曲だ。
そしてラストを飾る「Rookie Yankee」のアコギと共に振り絞るように歌い上げるやけっぱちながらも前向きな言葉と音の生々しさは胸に突き刺さる物だ。




syrup16gという多くの熱狂的ファンを抱えるだけでなく、奇跡的な生還劇を果たしたバンドは他の再結成バンド以上に過去は美化され、再結成後も活動させしてくれたら嬉しいみたいな感情が生まれやすいのかもしれない。
だけど僕はシロップが再結成のアナウンスと同時に新作アルバムを引っさげてくれた事を含めて、シロップの今を支持したい。
それは過去への懐古でも焼き直しでもなく、もがきながらも自らの武器を磨き上げ、解散前という過去を焼きはらおうとしてくれているからなのかもしれない。
決して派手なアルバムではないが、シロップが持つ屈指のメロディセンスと五十嵐隆の言葉のセンスが鈍く光る今作を僕は支持したい。

80年代UKロックや日本のオルタナティブロックという自らのルーツを見つめ直したアプローチが並ぶという点は確かに「COPY」と同じ気持ちで作られた作品なのかもしれないが、15年という時を経てsyrup16gというバンドが新たな進化を遂げた事を証明している。
時流に流されず、どっしりと力強く構えた全8曲。五十嵐隆が歌うリアルは未来へと確かに向けられている。



■最低の昨日はきっと死なない/それでも世界が続くなら





 2011年にex.ドイツオレンジ篠塚氏を中心に結成された通称:それせかの2015年リリースの6thアルバム。2013年にメジャーデビューを果たしたが、2015年5月にリリースした5thアルバム「僕は透明になりたかった」を最後にメジャーからのリタイアを宣言。それから半年程でのリリースとなる。
 レーベル無所属という完全自主制作作品となっており、まるで生き急ぐ様に作品リリースを重ねているから色々心配になってしまったけど、今作は紛れもなくバンドにとっての最高傑作であり、国産ギターロックの金字塔的作品だと僕は勝手に思っている。



 今作の大きな特徴は二つある。一つは多重録音やクリック等を一切使わず、廃カラオケボックスの一室で一発録音された作品である事。「僕は透明になりたかった」もメジャーとは思えない音の荒さや生々しさが強かったが、それの比じゃない切迫感が作品には充満している。そしてほぼスタジオライブと同じ環境で録音されたにも関わらず音源としての完成度が素晴らしい。ライブバンド:それせかの実力を真空パックした作品だ。
 もう一つは「希死念慮」が今作のテーマになっている事。これまでもいじめ、虐待、家庭環境、病気、レイプ等の重いテーマを曲にして来たけど、それすら超えてただひたすら死について歌った作品となっている。
 今作にはアッパーな曲や分かりやすいディストーションサウンドの楽曲はほぼ皆無だ。空間系エフェクターによるポストロックな音色こそ多いけど、静謐さで引っ張る曲ばかりであり、内側へ内側へ沈み込む音ばかりが続く。なのに血流する絶望と渇望の感情。そしてただひたすらに暗く悲しく美しい。
 スロウテンポで削りに削った音数で歌われる第1曲「昨日が終わるまで」から死の匂いしかしないトレモロフレーズに心が引き込まれていくが、第2曲「浴槽」はバンド史上最も痛々しく終わりを願う名曲。トレモロリフのみで進行する楽曲、何度も悲痛に歌われる「返して」という言葉。この2曲だけで、目の前にぶら下がった死へと否応なしに向き合うしか無くなる。
 ビートこそやたらダンサブルさもあるのに、ドープに沈むビートと自傷的ディストーションのラストにハッとさせられる第3曲「冷凍保存」、篠塚氏の弾き語りによる分かり合えない事に対する諦めを歌った第4曲「ひとりぼっち」、透明になりたいのになれない淀みの中を彷徨うシューゲイジングギターが消え入りそうな儚さを描く第5曲「傾斜」、重低音の効いたビートが小宇宙の中でただ笑う事すら忘れて取り残される第6曲「落下」、メランコリックなメロディであるのに、聴いていると叫びそうな気持ちになってしまう第7曲「少女と放火」まで本気で絶望的な曲しかない。
 篠塚氏の歌の力は歌詞と共に嫌でも聴手に突き刺さってくる。決して誰かに押し付けるトーンで歌っていないのに、だけど歌と言葉が音と共に共存し合っているからこそ、聴いてて涙が止まらなくなる。僕が個人的にこの感覚を覚えたのはisolate苔口氏のバンドであるRegret Griefを聴いた時以来だ。
 そんな曲ばかり並ぶ中で唯一アッパーな第8曲「最後の日」は行き着く先はそこにあったのかと気付かされる。bloodthirsty butchersの吉村氏のギターの音を個人的に思い出した優しいファズギター、「俺はもう長生きでいいよ」という歌詞のフレーズはどんなに死を望んでいても結局は「死なない」という悟りの境地にまで達している。
 そして再び自問自答の世界で「死なない」日々へと消えていく最終曲「失踪未遂」で取り残された気持ちで終わる。



 まるで「生活」の頃のエレカシとSyrup16gと「深海」の頃のミスチルとブッチャーズが全く薄くならずに共存してしまった世界。安易な絶望や慰めすら尻尾を巻いて逃げ出すリアル。完全に悟りの境地であり、アンビエント色の強い音色が余計に悲しく響く。底の底に沈んだ先に何を見るかは聴き手それぞれだ
 だけどカテゴライズされた絶望や死にたさでは無く、本気で足掻く人を優しく包み込む作品だ。こんなリアルで生々しくて残酷で優しくて透明な音は他に無い。
 それせかがずっと描き続けたポピュラーミュージックの到達点であり、そこにあるのは目を背けたくなる日々の絶望と現実。だけど何があってもこの歌は死なない。打算も理想も無いからこそ、この歌が届いた人にとっては掛け替えのない物として残り続ける。だからこそこのバンドは本物だ。



■Kranke/Syrup16g

Kranke



 奇跡の生還ライブから再結成、そして昨年のアルバムリリースとシロップは完全に表舞台に帰ってきたけど、意外と間を空けないであっさりとリリースされた5曲入EPである今作。昨年リリースされた「Hurt」では荒さが結構出ていたし、一先ずはシロップ復活記念作品でありながらも、新たなシロップの始まりを告げる作品となったが、今作は非常に優しい歌物の楽曲が並び、五十嵐がソングライターとしてまだまだ枯れてなんかいないって強く確信させてくれる傑作になっている。



 と書いてはみたけど、今作を先ず一周聴いてみて抱いた感想は言い方が悪いけど「地味」の一言だった。いやシロップ自体が元々優れたメロディセンスを持つバンドでありながら、アレンジ等が非常に地味だったりするバンドだし、それは今作もそうなんだけど、一言で言えば解散前の作品達にあった毒素だったり切迫感だったり絶望感がほぼ無くなっている。今作で歌われている事は言ってしまえば諦めの悪さと、思春期的な拗らせた感情とこれ以上に無い位にシロップではあるけど、本当に優しいのだ。シロップはその完膚無きまでの虚無感と絶望感を甘いコードに乗せて突き刺すバンドではあったけど、今作は言ってしまえば救いの作品であり、シロップの奥底にあった諦めの悪さという感情を曲にした物ばかり。そして個人的な空想の域を脱してはいないけど、今作を聴いて思ったのは五十嵐はバンド名の意味の一つであった「ぬるいままで好きな音楽を好きなだけやろう」というスタンスになっているんだと思う。楽曲はここ最近の流行りの音の要素なんて勿論無いし、五十嵐のルーツである80年代UKロックだったりとかの影響がやっぱり強い。でもそれで良いんだと思う。今のシロップのモードは完全に気ままに好きな音だけ奏でたいってモードであるがこそ、今作は純粋な作品であり、そして聴き込む程にゆるやかに浸透していく。結局は根底としては何も変わっていないって安心感があるし、「Hurt」と違って肩の力が抜けているからこそ五十嵐の伝家の宝刀である甘く美しいメロディセンスが見事に光っている。
 今作のリードトラックである第1曲「冷たい掌」も転調こそあったりはするけど、コードワークはシンプル極まりないし、切なさ溢れるラブソングになっている。北田氏のベースラインのセンスはやっぱり天才的であったり、大樹ちゃんのドラムは荒々しく猛る訳では無いにしても、シンプルであるからこそ強くもある。何よりも五十嵐の歌が本当に優しい。今作の中では異質でロック的で刺々しいギターワークが光る第2曲「vampire's store」もそんな優しさがあるし、攻撃的なサウンドではあるけど、禍々しくは無いし、自然体のシロップのロックだ。
 「オーオーアアエー」なんてボーカルで思わず笑みが溢れてしまったインタールードである第3曲「songline」を挟んでの後半の2曲は特に素晴らしい。第4曲「Thank you」なんてタイトルがもうらしく無いんだけど、歌詞も曲も完全にシロップ。やっぱり地味だなーって思いつつも、風通しの良い疾走感だったりは再結成後のシロップの中で大きなファクターなんじゃないかなって思ったりもする。爽やかではあるけど、でもちょっとだけドロっとしていたりって言うのが、シロップの諦めの悪さそのままなんだ。そして第5曲「To be honor」はシロップの解散前と再結成後という区切りを作った上で、完全に再結成後を象徴する屈指の名曲になっているだろう。諦めを言葉で羅列していると思わせといて、でも先にゆっくりと歩いていくという意思を歌っている様にも思えたし、解散前の楽曲で言えば「イマジン」とかに近いサウンドでありながらも、ドロドロはしていないし、五十嵐の歌はやっぱ不安定でもありつつ、でも話しかけるようでもある。気が付けばこの曲が頭の中でずっとリフレインしているし、壮大でも無いしダークでも無いけど、これが再結成後のシロップの新たなるスタンダードなんだと思う。



 何となくだけど、今作は五十嵐が再結成以降のシロップを新たに作っている段階の作品であると感じたし、解散前とは色々と状況も違うからこそ、現在進行形でのシロップを新たに構築している最中だと思うのだ。だからこそその再構築が完了した時にシロップはまた凄まじい作品を生み出すと思うし、どうしても解散前のシロップが神格化されてしまっているからこそ、色々と思うことがある人は多いのかもしれないけど、でも今作の楽曲たちは間違いなくシロップ以外には作れない曲ばかりだし、静かにゆるやかに、でも確実にシロップは歩み続けている。だからこそ地味ではあるが、不変的な名曲ばかりの作品だ。



■Rhapsody in beauty/THE NOVEMBERS


Rhapsody in beautyRhapsody in beauty
(2014/10/15)
THE NOVEMBERS

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 今年、これまでを総括するシングルをリリースしたノベンバだが、その先のアクションは想像以上に早かった。前作リリースから約1年のスパンで届けられた2014年リリースの5thである今作は、前作で見せた多様性と陰鬱さと残酷さとは全く違う作品である。今作は「美しさ」をテーマにした作品となっており、同時にノベンバのこれまでの作品で最もロックのロマンを感じる作品になっていると思っている。前作での多様性とは全然違うし、しかしこれまでのノベンバとも違う、歪みも美しさも耽美さもノイジーさも手にした残酷過ぎるロマンの結晶だ。



 非常に個人的な感想ではあるし、雑な言い方にはなってしまうかもしれないけど、今作は80年代や90年代初頭のロックや、もっと言えばSSE周辺のバンドの持っていたロマンと耽美さと共通する空気感を持っていると思っていたりする。全体的に録音は少し粗さを残した歪みを感じさせる音になっているし、単に美しさを追求した作品ではなくて、歪みと美しさのっ調和であり、同時に現行のロックとは全然違う方向性の音になっているのに、懐古主義的な音にはなっていない。様々な先人へのリスペクトや影響を感じさせながら、それを取り込んで消化するのは進化の定石であるし、ノベンバは真っ当なまでにそれをやってのけている。シロップやアートのフォロワーとして登場した頃とは全然違うバンドになったし、こうしてロックサウンドを再び鳴らす事によって、図らずしもノベンバは完全に化けてしまった事を証明した。
 第1曲「救世なき巣」は浮遊感と轟音が渦巻き、輪郭が崩壊したアンビエントさを感じさせる一曲であり、今作はそこから始まる。荒々しいノイジーな音と、エフェクトをかけまくっている小林氏の歌による残酷な美しさの幕開け。単なるノイズでは無く、荒涼とした物悲しさに溢れている。しかし今作は堂々とロック作品だと前述した通り、第2曲「Sturm und Drang」からはノベンバの新境地とも言えるロックの始まりだ。エフェクターを多数使っており、かなり音を弄りまくっている筈なのに、プリミティブなリフの応酬とビートの応酬がスリリングに繰り広げられ、歌はやっぱりエフェクトをかけまくっているし、叫びを駆使しまくっていて歪んでいる。ヘビィさを感じさせるリフは前作でもかなり出てきたけど、ここまで疾走感溢れる音では無かったし、しかし突き抜ける様でありながら、落ちていく様でもある音が生み出すカタルシスな何なんだ。第3曲「Xeno」からようやくもっとロックらしいフォーマットの曲になり、小林氏の歌の輪郭も明確になる。フィードバックするギターとシンプルなビートが生み出す音塊、第4曲「Blood Music. 1985」も音の粒の粗さを感じるのに、楽曲そのもののキャッチーさを活かし、メロディも掴みとりやすく、でも轟音系ロックのフォーマットとはまた違うズレを感じるし、数多くのバンドの影響を感じながら、その何処にも行かない感じで、ノベンバという磁場を生み出している。dipだったりとか、ブランキーだったりとか、Borisだったりとか、そういった孤高のロックバンドが持つ空気感であり、小林氏は間違いなくそれらのバンドの影響は受けていると思う。でもそれを模倣する事はせずに、ノベンバという核の中にしっかりと取り込んだ事によって、新たな音として消化しているのだ。
 そんな流れから自然な形で過去の楽曲の再アレンジである第5曲「tu m' (Parallel Ver,)」へと流れるのは流石だけど、「Misstopia」に収録されているVerとは明らかに印象は違う。「Misstopia」のVerはアコギ基調の枯れ木の様な物悲しさに溢れていたけど、今作のVerはオルゴールとクリーントーンのエレキギターを基調にしたアレンジになっているし、少しずつ豊かな色彩が花開いていく印象なのだ。そしてタイトル曲である第6曲「Rhapsody in beauty」のSonic Youthばりのホワイトノイズと、80年代ロックからラルクまでを感じる高揚感と耽美さと優しさの極彩色のサウンドは脱帽だ。荒々しさと美しさが見事に共存し、爆音で聴けば聴く程に、意識が高揚するのを感じるし、覚醒する。そんな高揚感を受け継いでの第7曲「236745981」、耽美なダークネスと前作で見せたヘビィなグルーブとリフによるドロドロと渦巻く情念の一曲である第8曲「dumb」も今作の確かなキモになっている。
 そしてノイジーでロックな曲が続いてからの第9曲「Romancé」は間違いなく今作のハイライトであり、ノベンバの新たな到達点である。高松氏の動くまくるベースラインが楽曲を引率し、シンセとシンプルなギターの音色と小林氏の歌が織り成す今作屈指の歌物でるが、まるで中谷美紀が歌っていても違和感が無いであろう、美しく耽美なメロディと、甘い残酷なロマン、揺らめく音の波と、シンプルな楽曲構成によって生まれるのは、まるでThe Cureの如し甘きロマンスだ。そして最終曲「僕らはなんだったんだろう」はアンプラグドな歌物となっており、終盤までのノイジーさと美しさの同居から、終盤の2曲の「今日も生きたね」を生み出したからこそ到達できた、シンプル極まりない普遍性は今のノベンバの一番の武器なのかもしれない。



 最早ノベンバは俗に言う「ロキノン系」だとか「ギターロック」の広い様でいて狭い範疇で語ってはいけないバンドだと思う。ここ最近の作品や、まさかのBorisとの対バンだったりで、これまでのイメージを変化させ、これまでノベンバとは無縁だった層にも着実にアピールしている。今作は非常に多数の色彩によって描かれたロマンと美しさの作品であるが、それこそがロックが持つ魅力であると思うし、ノベンバは紛れも無く「本物のロックバンド」になった。ロックの持つ妖しさやドキドキが今作には間違いなくあるし、流行や、既存の音には決して歩み寄らないで、ノベンバはノベンバにしか歩けない覇道を間違いなく歩いている。その道の先はまだ誰も分からないけど、ノベンバは、どこまでも純粋にロックバンドであり続ける。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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