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■Death Cult Armageddon/Dimmu Borgir
![]() | Death Cult Armageddon (2003/09/02) Dimmu Borgir 商品詳細を見る |
シンフォニックブラックメタルの代表格としてその地位を不動の物にしているDimmu Borgir。03年発表の6thアルバムである今作は彼等の代表作としても名高いブラックメタルの名盤であるが、シンフォニックの枠やブラックメタルの枠を越えた一大破滅絵巻として超壮大な物語を一枚のアルバムで描いた作品だ。まるで超大作映画の様なスケールの楽曲ばかりが並び、メタルバンドが一つの芸術を手に入れた作品でもある。
今作ではオーケストラを起用し、バンドのサウンド以外にもオーケストラの壮大なストリングスのサウンドが本当に前面に出ている。ブラックメタルよりもシンフォニックのカラーが強く正直言うとブラックメタルのカラーはそこまで色濃く出ていないが、高速のブラストビートと言ったブラックの要素も確かに存在している。しかしそれ以上に際立つのは非常にメロディアスな旋律と、それを際立たせるストリングスのやり過ぎを通り越した制作費500億円とか言ってしまいそうになるスケールの大きさ、そして楽曲の中で起承転結を明確にしたプログレッシブな楽曲構成で一大スペクタクルをブラックメタルにて描いているのだ。第2曲「Progenies Of The Great Apocalypse」ではヘビィな刻みと大げさなまでに目立つストリングスが一大ブラックメタルオペラの幕開けを告げる。ズクズクと刻みにリフとオカルト入ったデスボイスで煽りに煽り、それを更にストリングスが捲し立て、そしてサビではVortexが美しいクリーントーンボーカルを聴かせ高揚感を高めた後にストリングスのみになり幽玄の調べを聴かせ、そこから破滅的なブラックメタルサウンドが咲き乱れ、後ろで鳴ってるピアノが緊張感をよりスリリングにするというドラマティックさを極めた楽曲構成は本気でオペラの世界へと連れて行かれた気分にするなる。他の楽曲もまるで超大作SF映画の如しのスケールだし、過剰なまでのストリングスとヘビィでありながらもコテコテの旋律はもうやり過ぎな位に過剰なのだ。シンフォニックメタルの臭さと過剰さを臨界点突破まで貫きながらも、その取っ付きやすい過剰にキャッチーな旋律と、ダークサイドの刺々しさと禍々しさはやはりブラックメタルのそれであるけど、美しさとブルータルさが見事に手を組み、どちらも過剰さを前面に押し出した事によって生まれる絶妙なバランス。それぞれの要素を最大限に生かす楽曲構成も大きいし、各パートでのメリハリを持たせながらも、あくまでも今作の持ち味であるやり過ぎな過剰さは忘れない。とにかく全曲の完成度の高さにも目を見張るし、アルバム一枚でここまで統率されたコンセプトと美意識を貫き、それをシンフォニックブラックメタルと言う形で完成させた意義は本当に大きい。
とにかくやり過ぎな位の過剰なオーケストラの音と共に卓越した演奏技術によるブラックメタルの一大オペラを描いた今作、一枚通して聴いたら胃もたれを起こしそうなシンフォニックさと、それを良い感じに中和するブルータルなリフの対比も見事だし、何より非常に聴きやすい作品だからブラック初心者かかって来いだし、シンフォニックとかそういった類の音楽が好きな人には本当に堪らない一枚だろう。過剰な美意識が暴走するブラックメタルすら超えた激シンフォニックメタルオペラがここにある。