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■Cyclamen、今西勇人ロングインタビュー

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 Cyclamenの音に初めて触れた時、本当に大きな衝撃が走った。今でこそ少しずつ日本でも市民権を得ているdjentという新たなる音楽の形だが、Cyclamenの音はdjentの枠組で語られながらも、その枠に全く収まってくれない。djentのゴッドファーザー的存在であるSikThのMikee Goodmanとのコラボも話題になったし、日本人のバンドでありながらフロントマンでバンドのメインコンポーザーの今西勇人氏はかつてはイギリスに在住し、現在はタイに在住。その登場当初は在英日本人によるワールドワイドかつ、完全にDIYなスタンスでの活動も大きな話題になった事を覚えている。勿論、Cyclamenが単に今西氏がワールドワイドな活動をしているから凄いって訳ではない(それでも十分斬新で凄いけど)。SikThのDNAを継承しながら、激情系ハードコアのエッセンスを取り入れ、更には変拍子駆使でとんでもなくテクニカルで熾烈極まりない音を放ちながら、同時にとんでもなくポップで多彩で、本当豊かな色彩を放ち、海外のラウドロックの最先端を行くセンスを持ちながら、同時に日本人だからこその感情表現の豊かさとポップネスを持つCyclamenは本当に唯一無二の存在だと思う。
 この日本でのライブ活動はこれまでほぼ無かったにも関わらず、インターネットを中心に彼等の名前は広がっていった。そして今年の2月に日本人でありながらまさかの来日と言う何処かのmonoみたいな形でのライブツアーが実現する事になった。これは間違いなく日本のラウドロック・ライブハウスシーンにとって大きな事件だと僕は勝手に思っているし、僕を始めとして、今回の来日を待ち望んでいた人は多いと思う。今回の来日ツアーに合わせて、当ブログでCyclamenの首謀者である今西勇人氏へのメールインタビューが実現した。インタビューを読んで頂ければ分かるが、今西氏は本当に丁寧かつ真摯にCyclamenについて語ってくれた。昨年リリースした最新の2ndアルバム「ASHURA」(当ブログでの紹介の記事はこちら)も素晴らしい作品だったが、そのCyclamenの音の出所、そして何故こうやって世界規模でDIYな活動を続けていくのか、今回の来日ツアーについて、本当に贅沢な位に今西氏に聞きまくったが、そこで見えたのは、今西氏の多彩で自由で先を行く音楽センス、そして最先端な音楽活動方針、何よりも自らの生活の中で音楽を生み出していくという熱意だった。



■先ずはCyclamenというバンドの結成から現在に至るまでの経緯を簡単に教えて下さい。

 最初はソロの宅録プロジェクトで、イギリスのReading(日本でいう埼玉の様な場所)で音楽を作り始め、SikThのMikee Goodmanがゲストボーカルしてくれたことを切欠にインターネットコミュニティで一目置かれるようになりました。
 その後バンドを結成してイギリスツアーを成功させた後、結婚してアジアに拠点が動いたのを切欠に日本での活動も始めました。



■元々はソロユニットとして始まり、一度バンドになり解散して、またソロになり、現在はまたバンド編成と大きな変化をこれまでしてきた訳ですけど、その様な変化を遂げていく中で今西さんのCyclamenの活動に対する心境の変化とかはありましたか?

 特に無いですね。。ソロの時の方がライブを考えなくて良いので作曲の生産力が3~4倍になりますが。バンド体制になると自分はマネージャー役になって自分の時間と努力が相当そっちに持っていかれてしまうんで、正直ミュージシャンとしての活動は減ります。気持ちとしては自分自身の力で常にCyclamenでやりたい事だけやってるんで楽しいです。お金は本当に入んないですけど(笑)。



■今西さん自身、Cyclamen結成時はイギリスに在住していましたし、現在はタイに在住していますが、こうして日本ではなく世界を拠点に生活する事によって今西さんの音楽に対する価値観やCyclamenの活動に対してどの様な影響があったりしますか?

 日本に住んで活動していた自分との比較対象が無いんで難しいですが、やっぱり活動の考え方は相当ヨーロッパ寄りなんだなとは思います。積極的に自分を売り込んで、流行を完全に無視しても心配にならないのはイギリスのシーンが他に比べて新しい音の音楽への抵抗が無かったからだと思います。
 やっぱりタイと日本での活動を始めてその「慣れない音楽への壁」みたいなものは少なからず感じます。あと自分が元々メタルやっている日本人って事で変わり者だったんで逆に開き直りやすかった気はします(笑)。



■イギリスで始まったCyclamenですけど、イギリスという異国で日本人として音楽活動をするにあたって、何か思う事とかはありましたか?

 やっぱりライブに行っても大抵はアジア人は自分一人だし、感性もちょっと違うんで中々自分の居場所の良いシーンを見つかりにくかったってのはあるかもしれません。その代わりMySpace等のお陰でとても強いインターネットコミュニティが出来て、前よりずっと自分と気の合う人達っていうのが見つかりやすくなりました。
 自分はSikThの大ファンだったんで彼らのファンとは大抵話が合うっていうのは助けだったかもしれません。でもイギリスという最先端の音楽を次々世界へ配信する場で活動させていただいたお陰で、オリジナリティの追求と技術の向上には相当良い刺激になりました。頑張って自分にしか出来ない事を追求していかないと誰も長く興味を示してくれませんから。



■元々はソロで活動してましたが、どのような経緯でバンドとして活動しようと思いましたか?
 
 サポートしてくれている皆さんから「ライブが見たい!」っていう声があったからですかね。自分はひきこもりなので特に自分がやりたい!と思って始めたわけでは無いと思います(笑)。
 後はソロプロジェクトだとなかなか真剣に捉えて頂け無いということもあったかもしれないですね。ツアーをしているっていうのが何かしらのステータスである気がします。



■Cyclamenは俗に言うdjentという形で紹介される事が多いと思いますし、元SikThのMikee Goodmanとコラボした経歴もありますけど、今西さんの中ではCyclamenの音はどの様な立ち位置にあると思いますか?

 「シクラメン」って名前にしたのがそもそもこの花の色によって花言葉が変わるっていう性質が、自分の音楽の気まぐれさに合っていた感じがしたからなんで、ジャンルで区切られると、何で区切ってもそれなりに当てはまらない部分が出てきちゃいます。逆に言えば何で区切っても「それだ!」とは言えないので「なんでもいいや」って感じです!
 でも仲良くしてくれるバンド、リスナーの方々にはやはりdjent好きに人たちが多いんで、人間のグループとして考えればdjentで良いんじゃないかなとは思います。



■今西さんの中でCyclamenの現在の音に至るまでに影響を受けた音楽やカルチャーがありましたら教えて下さい。

 SikThは言うまでもなく、そしてEnvyも自分のボーカルスタイル、曲の広大さの表現の仕方に相当影響ありますね。
 カルチャーとしては自分は完全にハードコア思考なんでDIY哲学、小さな会場で観客と汗だくになりながらのライブとか大好きです。リスナーの皆さんと「人間として繋がる」ってことはとっても大事にしてます。メタルではその傾向があまり無いので大切にしていきたいですね。



■それでは作品に関する話になりますが、昨年2ndアルバムとなる「ASHURA」を発表しましたが、これまでの作品と違ってシリアスさや怒りといった部分が大きく出ているアルバムだと思います。音楽的な多様性が際立っていた1stである「SENJYU」とはまた違う作品になったと思いますが、「ASHURA」を製作するにあたって「SENJYU」を製作した時とは変化とかはありますか?

 「ASHURA」はコンセプト上、怒りに満ちた作品なんで、あれ以外の表し方が無かった感じですかね。「SENJYU」はコンセプトにした物語の主人公の気持ちの変化を書き表したものだったので多様なスタイルで表現するのが真っ当でしたし、機材が少し変わった事以外の変化は特に無いですね。
 アルバム両方とも同じ話を元に書き上げたコンセプトアルバムですし、音楽の書き方もそんなに変わってません。「表す気持ちのテーマ」が変わったのでアルバムの音が変わったってぐらいですかね。



■「SENJYU」と「ASHURA」は明確な繋がりを感じさせながらも作品としては全然違うベクトルを向いていると思いますし、それでもCyclamenとしては一貫した音を鳴らしていると思います。単なるdjentでは片付けられない音だと思いますが、今西さんが理想とするCyclamenの目指す先とは何でしょうか?

 どんなスタイルの音楽を弾いても「これはCyclamenだ、Cyclamenじゃないと出来ない」と思わせる音を作る事ですかね。他の人が真似出来る音楽なら他の人がやって、それを自分が聴いて満足してしまうんで。あくまで「この世に自分を満たす音楽が無い!」と思うからこそ、自分で音楽を作りたいと思うんだと思います。



■Cyclamenの楽曲は非常にストーリー性を感じさせる楽曲ばかりですが、曲を作るにあたってどの様な事を意識してますか?

 アルバムって複数の曲が一つのパッケージとして入れられる、っていう一曲ずつの相性がとても重要なものだと思うんですよね。だからその一貫性を持たせる為に、物語を作曲のベースにするってことをしてます。EPはその逆でその辺をあまり気にしないで作曲できる気軽さが好きですね。
 アルバム曲は基本的に「こんな感情を表すにはどういう音にすれば良いんだろう?」って毎回考えてそこから音を作っていきます。逆にEPは何となく書いていってできたものが表す感情に合わせ残りを埋めてくって感じですね。
 音楽はあくまで数ある「表現」の一つですから、表す気持ちの伝わらない曲は失敗作だっていう思いは強いかもしれません。ただその表したい気持ちをリスナーが必ずも体験した事があるとは限らないんで、そこで通じないのはしょうがないですかね。これも相当自己満足の域での話なんですが、自分にとっては良い曲が出来たかを判断する良いガイドラインになってます。



■これは僕の個人的な感覚でもありますけど、Cyclamenの音楽はテクニカルで熾烈でありながらも非常にポップな側面を持っていると思います。今西さん自身はCyclamenの音はポップな方向性も見せたいと考えていたりはしますか?

 「見せたい!」と意識してやっている訳じゃないんですけど、やっぱり13歳までは日本にいましたし、J-Popの影響はめっちゃ強いですね。ボーカルもアバンギャルドなものより頭に残りやすい物が好きですし。
 人は特に13~20歳(中学、高校時代)ぐらいに聴く音楽に一番影響を受けるそうで、自分はラウドな音楽には16ぐらいまで全く免疫が無かったのでそのせいかも知れません。B'zの大ファンで彼らの90年代の曲をタイのカラオケとかでもよく歌ってます(笑)。



■アートワークの面でもコンセプトを強く感じたりしますが、音楽は勿論ですけど、Cyclamenの全体像の中で今西さんはどのような拘りがありますか?

 アートは自分の家族が昔から芸術好きだったんで拘る所はありますね。だからほとんどのCyclamen関係のアートも自作になっちゃってますね(笑)。
 メタルバンドとして気をつけてるのはあまりに典型的なメタルなアートをしないって事ですかね。髑髏・ゾンビ・血・銃などは結構意識して避けてます。音楽でもアートでも、芸術性がそれなりにあり流行に負けない物を作りたいって気持ちはとても強いです。



■Cyclamenは非常にDIYな活動をしているバンドだと思いますけど、今西さんの音楽活動をするにあたっての考え方とか、どうしてこの様に徹底してDIYな活動をしているのかを教えて下さい。

 格好良く言えば「自分の信じる物を100%自分のやりたい形で表現したいから」。格好悪く言えば「レーベルが興味示してくれるほどトレンドに合った音楽してないしお金にならないから」です(笑)。
 簡単に言えば、自分は有名になって世界中をツアーするより、音楽で一生食べていきたいんです。そもそもひきこもりっ気が強いんで家にいるのが好きですし(笑)。
 レーベルに付くとどうしても売り上げの大半を持っていかれてしまうんで、それを考えると自分で100%全てやるのが30年、40年音楽をやっていくのにはそれが必要不可欠だと思います。あと人を仕事で信頼するのが極度に苦手で、「この人と働きたい!」と思う事がないのもそれが理由ですけど。



■この様なDIYな活動をしていますけど、今西さんの中で理想としているバンド活動の方法やビジョンがありましたら教えて下さい。

 Cloudkicker、羨ましいですね(笑)。好きな仕事で働いていて、その横でやっている音楽でも成功して、それに加えすべてを自分一人でやってるっていう。彼も特にツアーで世界を回る事とかにあまり興味が無いみたいで、あくまで無理せずに音楽を楽しむって姿勢でやっているじゃないですか。彼の音楽活動にはとても影響受けてるし参考にもしてます。



■今回ジャパンツアーとしてCyclamenは日本に来日しますが、どの様な切欠で本格的に日本進出する事になったのですか?

 日本人のバンドメンバーが加わって、2月にbilo'uからのお誘いでライブに出る事をきっかけにスケジュール組んでたら、いつの間にかツアーになったって感じです(笑)。
正直Cyclamenは本当に日本で無名だと思っていたんでこれだけ興味を示して頂いている事には本当に心から感謝してます。



■日本でのライブはこれまであまり無かったですし、僕を含めて音源でしかCyclamenに触れていなかった人は多いと思います。そういった人にライブでどうやって自らの音を伝えていきたいですか?

 自分にとってライブはリスナーの方々に顔と顔で向き合ってお礼を言う場所なんで、とにかくこんな自分勝手に活動していることをサポートしてくれている皆さんへの感謝の気持ちを伝えたいですね。
 それ以外は来てくれた観客の人達に申し訳なくないように自分達が100%を出し切ったライブを必ずするって事だけですね。



■今回bilo'uの呼びかけで来日ツアーが実現しましたが、今後日本のバンドとはどのように繋がり、またどのような動きをしたいと考えてますか?

 自分はとにかく日本のアンダーグラウンドシーンとコネクションが無いので、どなたでも気が合えば!って感じですね。Withyouathomeでの活動もありますしジャンルや考えの壁無く、色々な人たちとお会いできると嬉しいです。



■2月からのジャパンツアーに対して何か意気込みとかはありますか?

 正直色々不安ですね。「音源ではこんなに格好良かったのに」って言われないか(笑)。
 特にdjentのバンドを見て来た人達はとってもタイトに演奏してくるバンドを見慣れてるんで、それに負けないぐらいの内容をCyclamenで出すって多分今までで一番の挑戦かもしれません。でもその挑戦が自分たちをより良いミュージシャンにしていくんで、そこで逃げないで向き合うことも大切だと思います。



■Cyclamenはワールドワイドに活動してきたバンドですけど、こらから世界で、または日本でどの様に自らの音を広めていきたいですか?

 世界各地からサポートをいただいているのは本当に有難いのですが、 同時に彼らの前でライブという形でしっかりお礼ができていないのがちょっと残念ですね。ですからこれからはなるべく行った事の無い場所を回って、一人でも多くの方々に感謝の気持ちを伝えていきたいです。



■これからCyclamenの音はどの様に進化すると今西さんは思いますか?

 「Ashura」を切欠にアグレッシブな曲の楽曲はだいぶ減ると思います。少なくとも次のアルバムはもっとアンビエントとクリーンギターが多いメロディアスな物を計画しています。
 ここ数年でCyclamenのメタル色が相当強まったんで次のリリースを機会に180度方向性の違った、それでもCyclamenらしい音楽作っていきたいですね。



■最後になります。今西さんにとってCyclamenとは何でしょうか?またCyclamenというバンドはどうありたいと今西さんは思いますか?

 Cyclamenは自分の息子ですね。溺愛しているし、問題はたくさん投げかけてくるし、お金はかかるし、切りたくても切れない、自分のアイデンティティとしての一部です。これからも末永くCyclamenと共に生きていきたいです。
 バンドとしてはいつまでもやりたいことを楽しくやっていきたいですね。それに尽きます。その中で生きていけるほどのお金が稼げればそれに越した人生の幸せはないんじゃないかなと思います。



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 インタビューにもあった通り、Cyclamenは2月に今西氏の来日により日本でのツアーが決定している。今回の来日を待ち望んでいた人も多いだろうし、そのライブでCyclamenはこの日本でも更に名を上げていく事になると思う。各所で国内の猛者とぶつかり合う事によってCyclamenはどの様なライブを見せるのか、僕を含めてCyclamenのライブをまだ観た事が無い人は多いと思うし、音源で見せたストーリーを果たしてどの様な形でライブで表現していくのか、そしてその先には何があるのか。全てが未知だけど、もうすぐCyclamenの全貌がこの日本で明かされるのだ、その瞬間に彼等の存在は日本でも決定的な物になるだろうと僕は確信している。今回の来日ツアー、絶対に見逃してはいけないし、時間が合う方は、ツアーの中の一本でも是非とも足を運んで頂きたい。ツアー一発目の2月1日のライブはフリーライブとなっているし、これ以上に無いチャンスだと思う。さあ自らの目でCyclamenという猛者の全貌を目の当たりにするのだ!!



【Cyclamen Japan Tour 2014】

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2014年2月1日(土)"Ashura" release show Japan@宮地楽器神田店Zippal Hall(無料ライブ!!)

2014年2月2日(日)DIGFEST Vol.1@京都Studio 246

2014年2月11日(火)Periphery w/Cyclamen, Hammerhead Shark@渋谷Club ASIA

2014年2月15日(土)GIG GEEKS vol.2-the H-@新宿Antiknock

2014年2月16日(日)Mud Max vol.1@新宿Antiknock














【Facebook】https://www.facebook.com/thiscyclamen
【twitter】https://twitter.com/thiscyclamen
【bandcamp(全音源フリーダウンロード可能!)】http://cyclamen.bandcamp.com/music
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■Ashura/Cyclamen

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 現在はタイに在住する今西勇人氏率いるCyclamen。一度はバンドとしては解散してソロユニットになったが、再びバンドとして活動を再開、そして少しずつ日本でもその名を広げているが、そんなCyclamenの3年振りのリリースとなる2ndアルバム。EP作品「Memories, Voices」からは一年振りの音源だ。Djentのムーブメントの一角として登場した彼等だけど、今作は「怒り」をテーマにしており、これまでの作品で一番攻撃的な作品になっている。



 Cyclamenと言えばDjentのバンドでありながら、激情と多様性とポップネスが本当に大きな武器になっているが、今作ではそのポップネスと多様性の要素は影を潜め、変わりによりカオティックで攻撃的なサウンドが本当に全面に出ている。これはこれまでのCyclamenを知っている人は戸惑いを覚えてしまうかもしれない。しかし怒りに特化したサウンドの説得力と破壊力はやはり凄く、Cyclamenの変則的かつカオティックに展開されるサウンドと、より烈火の如く攻める激烈な音はまた違うインパクトを与えてくれるだろう。そしてこれまでで一番統率されたサウンドはアルバムとして大きく纏まっているし、その中でドラマティックにアルバムは進行し、攻撃性を高めつつも、彼等の激情は更に極まっている。
 楽曲のタイトルもこれまでの英語のタイトルと違い、全曲四文字熟語のタイトルになっていて、それだけでも作品として一つの統率を感じさせるけど、第1曲「破邪顕正」からそのコンセプトになっている怒りを感じさせる。これまで以上にブルータルの成分を感じさせる。今西氏のボーカルも今まで以上にシャウトをかましているし、その歌詞も悲しみと怒りを強く感じさせる物になっている。カオティック成分が本当に大きく増幅しており、変拍子でテクニカルにアンサンブルを奏でながらも、とにかく攻めに攻めまくっている。サビではこれまで通りにクリーントーンの歌を聴かせているけど、それでもアンサンブルの攻撃性は変わらないし、煉獄のサウンドが展開されている。
 序盤の4曲はそんな楽曲が続くが、第5曲「悲歌慷慨」からはダウンテンポで進行する楽曲になり、そしてより悲壮感を強烈に感じさせる。前半の怒りの楽曲から中盤の悲壮感の楽曲の流れはドラマティックさを強く感じさせる。第7曲「余韻嫋々」ではそれが本当に痛烈に放たれている。そして今作の核となるのは、アルバムの終盤を飾る3曲だと僕は思う。そのタイトルに恥じない怒涛のサウンドが炸裂する第8曲「疾風怒濤」はCyclamen至上最強のサウンドを見せ、目まぐるしく展開されるサウンド、怒涛の勢いで攻める音、そんな攻撃性の中で感じるエモーショナルさ、リフとビートの応酬といい、その展開といい本当に強烈なインパクトを残す、そんな楽曲に続く第9曲「神武不殺」は今作のハイライトを飾るに相応しい楽曲であり、序盤のカオティックサウンドから楽曲は急激に静謐な美しさが姿を現し、これまでの烈火のサウンドから一転、Cyclamenのもう一つの持ち味である、神秘的でドラマティックな激情のサウンドが開花、今西氏の叫びと共にドラマティックなサウンドが本当に繰り広げられており、その情景は熾烈なる今作の中でも大きな救いであり、神々しい光が本当に差し込んでいる。そしてアコースティックギターの美しい旋律と今西氏の歌が静かに美しい波紋を生み出す最終曲「空即是色」の優しさ、熾烈なアルバムではありながら、終盤の三曲が本当に素晴らしく、そのクライマックスは本当に鳥肌物だ。



 これまでの作品とは路線がまた違う作品ではあるけど、Cyclamenというバンドの持つ激情はブレていないし、それはより際立った印象を受ける。コンセプト作品だからこそ楽曲では無くて、作品全体で聴かせる作品だと思う。本当に終盤の3曲の完成度は高いし、本当に胸を打つ激情が見事だ。これまでのイメージを覆しながらも、その中でも確かに存在する激情、今作も見事な1枚だ。また今作はbandcampページにてname your priceで販売されているので是非チェックを。盤の方もいずれ日本でも販売される予定らしいので、そちらもチェックをして頂きたい。国外で活躍する今西勇人氏が生み出す音は、やはり枠に囚われず、自由に大胆に展開されている。そんな今西氏に同じ日本人として改めて大きなリスペクトを。



■Meliora/Eryn Non Dae.

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 フランスの5人組激カオティックポストメタルバンドであるEryn Non Dae.の3年振りのアルバムである2012年リリースの2ndアルバム。1stではあまりの完成度の高さと、極限まで緻密な楽曲と暴虐のブルータルなスラッジさにド肝を抜かれた反面、1stであれだけの物を作ってしまって2ndは大丈夫なのか!?って心配にもなったが、今作は前作よりはブルータルな要素は若干抑え目になってはしまっているが、彼等の持ち味であったポストメタル的緻密さが更に磨きがかかった傑作になった。



 7曲で約60分という長尺の楽曲ばかりが並ぶ楽曲の構成もそうだけど、今作はかなりの大作志向の作品になっており、彼等の暴虐さの裏にあった緻密な頭脳的なアプローチといった部分がより表に出ている。しかし極悪さは相変わらずで、分かりやすいアプローチが出てきた反面、よりカオティックさとデスメタル的粗暴さとスラッジな重さが正面衝突し、それをDjent的なアプローチで鳴らした作品になっている。不穏な空白すら聴かせる重みは相変わらず健在ではあるけど、それに加えてカオティックさがバーストするパートではより破壊力とカタルシスが鍛え上げられているし、少しばかりメロウさも加わり、間口を広くしつつも、計算に計算を尽くした混沌が暴発する。
 第1曲「Chrysalis」から約2分間のアンビエントなドローンサウンドがSE的に始まり、そこから一気に変拍子炸裂のツインギターが複雑に絡み合いながら地獄の果てにダイブする激カオティックサウンドが展開。ひたすら絶唱を繰り出すボーカルもあり、瞬く間に視界がドス黒い血飛沫で染まってしまう。更にUneven Structureにも負けないレベルの壮大なスケールと高い演奏技術による緻密さもあるし、Uneven Structureがカオティックさから宇宙へと飛び立って行くなら、彼等はカオティックさから煉獄をありとあらゆるダークな色彩で描いていくのだ。静謐なパートを盛り込みつつ、複雑怪奇なドラムがその先にある破滅を予感させ、そして暴発するカタルシスは本当に絶頂物。約12分にも及ぶ第2曲「The Great Downfall」に至っては完全にポストメタルの独自解釈の領域に達した複雑かつ壮大な楽曲を無慈悲な激重スラッジで叩きつけているし、まるで最も凶悪だった頃のNeurosisとMeshuggahが正面衝突したかの様なエクスペリメンタルさすら感じるサウンドを展開しているし、最後は引き摺る音が終末を体感させてくる。
 今作の中では一番分かりやすいカオティックハードコアサウンドを展開しながらもスケールは変わらない第3曲「Scarlet Rising」、よりDjent感が出ている第4曲「Ignitus」と続いて第5曲「Muto」では今作屈指のカオティックブルータル絵巻が展開され、統率された世界観の中で地獄の堂々巡りを繰り返している感覚すら覚えそうになる中盤の3曲も凄いし、完全にNeurosisレベルのエクスペリメンタルさを手に入れてしまった事に恐怖しか感じない第6曲「Black Obsidian Pyre」と、あまりの楽曲の完成度の高さに驚くしかないが。最後の最後に待ち構えている最終曲「Hidden Lotus」は正に今作屈指の出来を誇る名曲。悪魔達のパレードを想起させる冒頭の激重リフの応酬から、カオティックハードコア・デスメタル・ポストメタル・Djentとあらゆるエクストリームなサウンドを食い尽くた先にある血みどろの世界を描き、今作の凄まじさを総括し終わる。



 前作を初めて聴いた時は、新人若手バンドとはとても思えない極悪さと緻密さと完成度の高さにド肝を抜かれたが、2ndである今作は更にエクストリームさを拡大させ、より混沌をダイレクトに伝え、アンサンブルの強度と破壊力を鍛え上げ、独自のカオティックサウンドを自らの手で掴み取った作品だと思う。先人達の叡智を継承しながらも、その先人すら喰い殺そうとする暴虐の限りを尽くす5人組。こいつらは本当に凄いバンドだと思う。そして今作を聴いて本当に強く思ったのは、もうこれ以上の作品作れるの?3rd大丈夫?って前作を聴いた時と同じ事を思ったが、こいつらは次回作でまたとんでもない化け物を生み出してくれる筈だ。



■Memories, Voices/Cyclamen

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 遂に日本での初ライブも決定した在英日本人であるハヤト・イマニシ率いるCyclamenの2012年リリースのEP。今作で遂に日本盤もリリースされ逆輸入な形でこの日本にも本格的に進出を果たしている。1stフルアルバムである「Senjyu」では変拍子を駆使したヘビィなサウンドに歌心と幅広い音楽性をミックスし、完成度の高さと独自性を打ち出していたが、今作はそれをより洗練させた作品になっており、よりバンドとして成長した作品になっている。



 今作のリードトラックにもなっている第1曲「Memories」は冒頭から煌く旋律がヘビィなリフとシンセの音色と共に花開き、変拍子駆使のヘビィなリフを主体に進行しながらも、クリーントーンのイマニシ氏の歌と見事に調和を果たし、重いサウンドプロダクトとは裏腹に、優しく耳に入り込むメロウさも存在しており、持ち前の歌心を発揮させている。これは今までの彼等の武器でもあったが、今作では更にその要素が突き詰められている印象を受けるし、終盤は近年のEnvyを彷彿とさせる壮大でクリアな激情が展開されてるし、スケール感も同時に増幅されているのも見逃せない。一方で第2曲「Voices」は超テクニカルなこれぞDjentと言うべき高速カオティックサウンドから始まるが、サビではしっかりクリーンに歌い、かと言ってテクニカルなカオティックさは失速させないであくまでもカオティックさの中に歌心を持ち込んでいるし、日本語詞で激情のシャウトを見せた瞬間に、ブルータルさを放棄して神秘性が花開く瞬間は聴いてて美しさを感じるし、バンドの神秘性を良い具合に高めてもいる。第3曲「The Blood Rose」では完全にポストロックの領域にある深海へと静かに潜り込む様な感傷が静かな波紋として広がっているし、そこからビッグバンを起こしたかの様な轟音の洪水へと雪崩れ込み、第4曲「If We」は完全にマスロック系のエモになっている。前半の4曲はバンドとしての新境地を打ち出した楽曲が並び、自らの音楽性の幅を広げるだけでなくて、更に深みも増した壮大さもアピールしている。もうDjentとしての枠組みだけではCyclamenは語るのは不可能だし、Djentの代表格の一つとして登場しながら、それを軽々しく超える力量を見せ付けている。第5曲「Saviour」は見事なDjentサウンドを展開しつつも、日本人特有の歌心も前面に出し、彼等が以前から持っていた、メロウな歌物としてのDjentサウンドをより突き詰めた印象。激テクニカルな第6曲「.Never Ending Dream」もサビでは下手したらアニソンの領域にまで片足を突っ込んでしまってるポップさをカオティックさの中で発揮しているし、そして壮大な激情という今作で生み出した方程式を展開。第7曲「It's There」なんてスクリーモ系のファンとかにも普通に受け入れられそうな感じもあるし、より多くの人を取り込む器の大きさを手にして日本進出を見事に果たした作品だと思う。



 Cyclamenの魅力はヘビィでテクニカルなDjentサウンドに、Envy系の日本人らしい歌心ある激情系ハードコアと、Suis La Luneの様なマスロック的テクニカルさをクリーンなエモーショナルさで見せるクリアな激情、そして日本人であるイマニシ氏だから歌える魂を震わせる激情。そしてテクニカルさやヘビィさ以上に本当に多くのリスナーを虜に出来る独自のポップネスと神秘性が確かに存在するのだ。このバンドは単なるDjentの一角では絶対に終わらないだろうし、この日本でも多くの支持を集めると思っている。



■8/Uneven Structure

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 昨年リリースした1stアルバム「Februus」にてDjentと言うジャンルの金字塔であり、ヘビィロックの新たな可能性を証明する大傑作を生み出したフランスとスウェーデンの6人組であるUneven Structure。そんな若武者達の1stリリース以前の音源であり、09年にリリースされた8曲入EPが今作である。まだ1stの様な宇宙を感じさせるスケールには到達こそしていないが、その進化の片鱗は確かに存在している。



 今作はまだMeshuggah派生型の変拍子多用なヘビィロックであり、Djentその物な音楽性であり、殆どの楽曲が2分台と尺も短めである。しかし彼等はただのDjentのバンドでは終わらない。その短い楽曲がそれぞれ繋がっており、一つの組曲になっているし、3本のギターを生かした音の広がりの幅の大きさは流石である。2本のギターが複雑に絡みながらもゴリゴリの激重リフで叩きつけながらも、残り1本のギターがアルペジオや空間系の音で楽曲に広がりを加えるという彼等の手法は今作から既に健在だ。そして無茶苦茶な拍で、ドスの効いたアタック感で攻めるベースと、法則性すら無視しつつも、変拍子の嵐の中でリズムを複雑に構築するドラムという一体感に満ちたアンサンブル。そんな複雑怪奇さを極めつつも洗練された音を鳴らしながらも、今作はもっとブルータルな暴力性も強いといえる。後ろでクリアな音色が鳴りながらも常にリフが攻めてくる構成。ボーカルはクリーントーンを使用せずに、ブルータルなシャウトのみで闘っているという潔さ。序盤からの7曲はほぼそういった楽曲しか存在していないし、ひたすらにブルータルさのみで目まぐるしく展開していく。そして最終曲「8」のみ6分の今作では少し長い楽曲なのだが、今作のクライマックスはスラッジなリフの猛攻で始まり、カオティックなリフと不穏さを煽る不気味なクリーントーンのフレーズが反復し、増幅した不穏さのブラックホールがフェードアウトという形で不気味さを残したまま収束して終わる。そしてそのラストは後の1stの宇宙へと導く音へと確実に繋がっている気がする。



 今作ではまだ典型的なDjentの音を鳴らしてはいるけれど、1stを聴いた今となっては後の覚醒へと繋がる躍動が存在している事は明確だし、進化の夜明けとも言うべき作品。そして今作でも若手バンドとは思えない卓越した演奏技術に裏付けされた洗練された音は間違いなく健在。若き猛者の軌跡はここから始まったのだ。また今作は下記リンクのダウンロードページからバンド側が公式にフリーダウンロードで配信もしている。



8/Uneven Structureダウンロードページ



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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