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■Rebel One Excalibur/Rebel One Excalibur

redd templeと共に福島から全国へとその名を轟かせているRebel One Excalibur。そんな彼等の2013年リリースの自主制作1st音源はredd templeの今年リリースした1st音源同様に独自のサウンドを既に完成させてしまった作品だ。徹底的にディスコダンスなさけでなく、無慈悲で冷徹な金属の振動で聴き手を殺す全6曲の不穏なる音像が今作には詰まっている。
彼等もDISCHORDとかTOUCH & GO辺りのサウンドの影響を感じさせるバンドでありながら、それを超独自の解釈で消化し、その先の音を鳴らすバンドであり、redd templeとは方法論こそ違うけど、その流れから完全に新しい音を生み出しているという点は共通している。3ピースで極限に音数を減らしながら、鋭角的なアンサンブルを展開し、反復から生み出される不気味なうねりを変貌させていく化け物だ。空白の余韻すら味方にしてしまったそれは、ジャンクさとポストハードコアの正面衝突で、バンドサウンドで機械的なサウンドを展開しながら、バンドサウンドだから生まれる緊張感が充満している。
のっけから10分近くにも及ぶ長尺曲である第1曲「Zanpano」から幕を開くけど、反復するギターフレーズの血の通わなさ、ゴリゴリに歪んだベースラインと、金属の冷たい鋭利さを感じるギターフレーズの無機質な反復の不気味さ、タイトでジャンクさを感じさせるドラムのビートと共に反復から変化を生み出し、サウンドのテンション自体は非常にイルでありながら、徐々に盛り上がっていく様、そこからまた突き落としていくという展開の上手さ、最後はディストーションの渦が煉獄の炎として燃え盛る暗黒さ、この長尺曲だけで十分に彼等の魅力は伝わるだろう。静の要素と時に見せる動のバースト、常に緊張感がフルなアンサンブルから生み出す異質さ。もう色々おかしくて凄い。その後の楽曲はもうダウナーなテンポで無慈悲な音の鉄槌がひたすら下される。第2曲「まだ決めてない」も不穏な反復の連続による冷酷なオーガニズムの連続であるし、第3曲「BIG BUSINESS」は今作で最も破壊的鉄槌が下される。金属的ディストーションのジャンクなギターのストロークの反復と、マシンビートを生でやったみたいなビートのパートと、ポストハードコアの冷酷さを消化したパートの対比、絶対零度で焼却されるという矛盾みたいな音を本当に体現してしまっている。ダンサブルさと静謐さの対比が見事な第4曲「森」、哀愁を感じさせながら、それつか凍りつかせる展開を見せる第5曲「二色」、そんなダウンテンポの断罪を超えた先にある最終曲「待つ」でこれまでの空気を完全に破壊するドライヴィンかつディスコダントなポストハードコアサウンドが展開され、カオティックな暴走というまさけの結末で、聴き手を置き去りにしてしまうまさかの終わり方で締めくくられる。
完全にオリジナルな形で自らの音を生み出してしまった彼等の1st音源は異質の緊張感と冷酷さに満ちた作品だし、今の福島のシーンの凄さを感じると同時に、これからその音が全国に拡散されていく事を考えると震えが止まらない。精力的な活動で既に全国区の知名度を手にしようとしているけど、この独自のジャンクさと冷徹さが多くの人を震え上がらせるのは本当に時間の問題だろう。redd templeの1stと共に2013年の国内インディーシーンの重要作品になるのはもう確定だ。
■HEARTBEAT/TG.Atlas
![]() | HeartBeat (2013/06/15) TG.Atlas 商品詳細を見る |
旭川を拠点に活動する禍々しい異形で唯一無二のオルタナティブロックを鳴らす4人組であるTG.Atlasの2013年リリースの2ndアルバム、リリースは愛媛の国宝レーベルIMPULSE RECORDSから。これがもう狂騒と狂気をそのまま音にしてしまったかの様な作品なのだ。メンバーチェンジもあり、今作ではシンセを取り入れただでさえ異形の音を更に不穏に妖しくしてしまっている改心の一枚!!
TG.AtlasはDISCHORDやTOUCH&GO周辺の音を本当に真っ当な形で受け継いでおきながら、それを自らの手で破棄して再構築する事で完全に独自の混沌と狂騒を生み出しているバンドなのだが、今作ではそのサウンドが完全にオリジナリティしかもう存在していないって領域まで到達している。一体何をどうしたらそうなってしまったのかという感じだし、この胸のざわつく感じ、不安と興奮が一気に押し寄せる感じは本当に何なのだろうか。プログレッシブでハードコアでジャンクでオルタナティブだし、心拍数が一気に加速する感覚を覚える音しかない。ざらつきにざらつきまくった音質もそうだし、荒々しいビートもそうだし、極限まで金属質でジャンクで鋭利なギターサウンドもそうだし、今作には一切の甘ったるさは無い。本当に無慈悲に人を殺しに来る音しか無いのだ。
シンセ音の不穏なループから始まり反復するギターフレーズと変則的ビートから一気にジャンクさを加速させて、2本のギターが鉄槌の乱打を繰り出し、キリキリとしたまま始まる第2曲「dischromatic」から先ず飲み込まれる。変則的でインプロ的であり、直感でフレーズを弾き倒している様で計算され尽くしたフレーズの数々もそうだし、崩壊寸前のバランスで崩壊しないで、しかも妙にノリやすかったりするし、第3曲「RING(共鳴の連鎖)」からは音の破壊と再構築の結果によるカオティックさも感じる。それに続く第4曲「konnkatizm」はノーウェイブ感も高まり、不意に入り込むベースラインだったり、前のめりなビートが加速する心拍数の様だし、ノイジーなギターフレーズが入り込む瞬間の無慈悲な殺戮具合。中盤ではアンビエントな要素も盛り込み、静謐さで落としながらも、更に暴発する様は本当に堪らない。
音数自体は決して多いって訳では無いんだけれど、必要最低限の音でのみ構築しているって音でもないし、一音一音の情報量が圧倒的だし、濃密だし、エロいし、残酷。何よりもメロディアスさなんて要らないとばかりに徹底してディスコードの嵐なのに、フレーズフレーズが凄い印象に残り易いというか、トラウマ的に残るのは、原始的なリフやビートのフレーズが凄い魅力的なんだけど、それを分解して構築していくからこそ生まれるアヴァンギャルドさがあるからなんだと思う。第9曲「HEARTBEAT」は今作で一番キャッチーな楽曲なんだけど、そのキャッチーさで逆に持ち前のジャンクさとかノーウェイブ感とかアヴァンギャルドさ浮き彫りにしていく手法は流石だし。8分30秒にも及ぶ第10曲「地獄の黙示録」うねりながらもくぐもり、低体温さが際立ち、最後は極限まで音数を減らし、ただ心拍数を停止させていく終わり方だし、本当に最初から最後まで良い意味で安心して聴けない。目の前の狂騒と破壊的な音に興奮を覚えるしかない。
基本はポストハードコアだったりするけど、ジャンクやプログレッシブやカオティックだし、何よりもディスコダンス的である。ここまでオリジナリティがあり、しかも聴き手を徹底的に痛めつける音は熾烈過ぎると思う。本当に心臓に悪いけど、本当に興奮できるサウンドは正にオルタナティブであると思う。DISCHORD、TOUCH&GO、北海道ハードコア好き、This Heat辺りの音が好きな人は間違いなくマストな一枚だし、2013年の国内オルタナティブロックの最重要作品候補だ。衝撃的で攻撃的過ぎる危険信号の数々に是非殺されてくれ!!
■Magic Machine Music/Fluid
![]() | Magic Machine Music(マジック・マシーン・ミュージック) (2012/10/10) FLUID(フルード) 商品詳細を見る |
京都を拠点に活動し、自主企画「僕の京都を壊して」を主催し、京都から危険な電磁波を発信し続けている電脳パンクバンドであるFluidの2012年リリースの実に4年振りになる3rdアルバム。2nd以降ベーシスト脱退というピンチを迎えたが、TORICOの元ベースHATAと、OUTATBEROのリーダーで、後期TORICOのメンバーでもあったビンゴが加入し4人体制となり更に危険度を高めた彼等の真髄が詰まった作品だと言えるだろう。リリースは危険音源発信レーベルとして名高いless than TVから。
サンプラー等を盛り込み電子音が縦横無尽に飛び回る電脳パンクのサウンドは相変わらずだが、ギターが2本になった事によって音により広がりを見せる様になりながらも、ほとんどの楽曲が3分未満というショートカットさの中で目まぐるしく展開されるサウンドはより研ぎ澄まされて刺激的な進化を遂げている。ズ太くうねるベースラインと変則人力ダンスビートなドラムとサンプラーの音が調和し、破壊し合い、ジャンクなビートを叩きつけ、2本のギターは鋭角的かつ金属的なギターワークで切り刻んでいくという前作からの流れを更に直接的な破壊力と、鋭角に落下するサウンドでズタズタにしていく、破壊と構築の限りを尽くしながらも、アバンギャルドさとキャッチーさとダンサブルさを併せ持ったFluid独自のダンスミュージックとして展開されている。第2曲「New World」からFluidの進化が見えてくるし、ドッシリとした重みのあるビートと切り刻んでくる必殺のギターワークが展開され、極彩色の近未来的パンクサウンドが脳内を異次元へと誘い、高揚感に満ちたトリップ感が脳内から本来分泌されないであろう物質まで分泌しまくってしまう感覚が洪水の様に雪崩れ込む危険性に満ちている。他の楽曲も怒涛の廃ボルテージなテンションで攻め立て、その勢いを決して殺すこと無く電脳世界のトリップが目まぐるしく変わるチャンネルの様に繰り返される。その中で第7曲「Short Cut Rockers Ver.2.2」は少しダウンテンポになった楽曲ではあるけど、高速のサウンドからダウンテンポのドープさへとナチュラルに転換し、その中でも踊れるという点は全くブレてないし、作品全体の流れの中で絶妙な変化を見せている。第8曲「NEW WORLD(ichion Remix)」は第2曲のリミックスであるけど、一撃必殺の電脳パンクを完全にドープなトランスサウンドへと転生させて、よりレンジの広い音にしているし、そこから第9曲「Fiction Once More」の狂騒のジャンクサウンドへと雪崩れ込み、より破壊力の増幅したサウンドに完全に侵食される。暴走する狂騒が終わり無く続き、それでもキャッチーであり、ポップさとアバンギャルドさがぶつかり合い、生まれる混沌というFluidの音はノンストップで続き、約32分の異次元が展開されているのだ。
破壊と構築から新たなダンスミュージックを生み出して来たFluidであるが、メンバーチェンジのピンチを乗り越えて、より破壊力の増幅した近未来サウンドを展開し、新たな次元へのパスポートとなるダンスミュージックを今作で見事に生み出したと言えるだろう。鋭角かつ近未来のジャンクでポップな電脳パンクは変わらず京都から危険すぎる電磁波として全国に発信されているのだ。
■3×33/CYBERNE×DEAD×knellt

先日の小岩でのリリースパーティでもCYBERNEとDEADは凄まじいアクトを見せていたが、四国は愛媛の国宝級レーベルである Impulse Recordsからとんでも無いスプリットがリリースされた!今作は大阪を拠点に活動するCYBERNEとknelltに加えてオーストラリアのDEADによる2012年リリースの3wayスプリットである。各バンドそれぞれ3曲ずつ提供している。全くタイプが違いながらも完全に独創的な音を鳴らす3バンドによる極悪異種格闘技戦だ!!
一番手はCYBERNE。今作からツインドラム編成となっているが、とにかく彼等の音はエクストリームハードコアの極北に位置するバンドだと思う。「メタル化したジーザスリザード」とか「プログレの皮を被ったケダモノ」等と評されているらしいが、とにかくそんなチャチな物ではない。パーカッシブなツインドラムのイントロから一気に歪みまくったジャンクサウンドが咲き乱れ、変拍子駆使のキメを乱打し、圧倒的な情報量で畳み掛ける「Deflush - 月皇-」から完全に異形の世界が見えてくる。しかもこのバンドトリプルボーカルと来ているし、畳み掛けまくる3人のボーカルがエクストリームジャンクサウンドをより混沌へと導く。拡声器による歪んだ叫びが狂気を高めているし、あらゆるエクストリームサウンドをごちゃ混ぜにしたらとんでもないゲテモノが生まれてしまった上に更に凶悪な殺人マシーンだったみたいな感じだ。もしくは中本と二郎のスープをミックスしてしまったかの様な音を不特定多数にブチ撒けている感じだ。「Zomist -散死-」なんて不気味な呻き声から始まり、どんよりとしたベースラインからもう殺される予感しかしないし、スラッジ色を強めたリフが降り注いだ瞬間に死刑宣告無しの鉄槌が聴き手にもれなく降り注いでくる。そして終盤では怒涛のジャンクサウンドが超音圧で吹き荒れ、粉みじんになった聴き手の遺体をご丁寧に血や肉片すら残さず喰らう乾いた笑顔の殺人鬼としての凶悪さを誇る。一発目からこんなヤバい音がお構い無しに迫ってくる時点で今作は異常さを極めている。
続く二番手はオーストラリアのベースとドラムのみの2ピースであるDEAD。「The Carcass Is Dry」では最初はアンビエントなパートで焦らしに焦らして、そこからバキバキに歪んだベースとタイトかつフリーキーなドラムのみによる異質のポストハードコア劇場が始まる。少し引き摺る感じがするベースの音はスラッジ要素を感じさせつつも、彼等の本質はポストハードコアだ。非常にバンカラで男臭いボーカルがまず良いし、時にタッピング等を用いながらも基本はピック弾きでメロディラインをゴリゴリに弾き倒し、しかもその旋律が渋さとキャッチーさをしっかり持ちながらエモさも生み出しているのが驚きだ。シンプルな音数のベースは歪んだ音で地を這い、ドラムは手数多目に攻めながらも、ビートの軸は全くブレず安定感を誇りながらも、自由なサウンドを鳴らしている。「Of All The People I Hate Most,I Hate You MORE」ではよりスラッジに接近した激重かつ煙たさを持つ重低音が這い回り、一発一発の音がミドルテンポで繰り出されつつ、ポストハードコアのスタイルを破り、ドープなまま突き抜けるスラッジ絵巻。ポストハードコアからエモからスラッジまでを最小限の編成で自在に行き来する彼等もまた違うベクトルで危険だし凶悪。
そしてラストはknellt、「The 33 unearthly」から完全にフューネラルなドゥーム絵巻を展開しており、今にも止まりそうなビートがツインドラムの緻密さと音圧で鳴らされている。激重サウンドである推進力を半ば放棄しながらも、非常にメロディアスであり聞きやすさはしっかり残してあるし、その中でドゥームの毒素をより抽出したかの様な楽曲を高い完成度で鳴らしている。悲壮感に満ちた絶望的なクリーントーンのボーカルも印象的だし、不意にBPMを速めるパートを入れたりして、更に予測不能の音像を打ち鳴らしていたりもする。その一方で「TOG」では少しBPMも速くなり、暗黒リフが押し寄せる黒の濁流の中でSeekのボーカルであるSUGURU氏がゲストボーカルとして参加し、ドスの効いたハードコアなボーカルを聴かせている。こちらも中盤ではしっかりメロディアスなフレーズを盛り込んだりしているし、危険値はそのままでよりハードコアの接近した事により音の破壊力と歪みがよりダイレクトに伝わってくるし、終盤のツインドラムの正確無比な音の乱打は圧巻!!そして「Singing Objects into existence」では不穏かつ妙なキャッチーさを持つクリーントーンのギターフレーズから始まり先程までの空気を変えてしまうが、それを更にブチ壊す暗黒ドゥームリフがタイトなツインドラムと共に叩きつけられ、残酷な鮮血が飛び散るラストを迎える。
3バンドに共通項はあまり多くないけれど共通して言えるのは非常に独創性があって尚且つエクストリームな音を放出しまくっている点だ。単なるスプリット作品に留まらない凄みを今作から嫌でも感じる事が出来るし、極限世界に足を踏み入れてしまった物達による宴が見事にパッケージングされている。最初から最後まで休まる暇すら無く、脳細胞すら書き換えられてしまいそうな一枚。2012年のエクストリームミュージックのマストアイテム!ゲス野郎は聴いておけ!!!!!
■add 2009/I Want City

accidents in too large fieldのドラムの清水氏とaccidents~の元メンバーであるJUNKOによる2ピースユニットI Want City。デラシネ・accidents~・VELOCITYUT・ANTI AGAINST ANTI・百蚊等、現在九州を中心にとにかく面白い音楽を鳴らす異端集団九州Fuck Waveなんて呼ばれるムーブメントが地下で起きているが、このバンドもその九州 Waveの重要バンドである。今作はタイトル通り2009年にリリースされた1stアルバムだ。
このバンドはベースボーカルとドラムの2ピースという非常に変則的な編成のバンドであるが、先ず清水氏がaccidents~同様に変拍子を駆使し時にトライヴァルなビートも繰り出すジャンクな変則のビートを今作でも炸裂させている。JUNKOのベースもゴリゴリのラインをエフェクターを駆使した音作りで、ビートの変則的なうねりが生み出すグルーブは変則的でありながらもダンサブルだ。だがaccidents~の様な混沌としたジャンクさでは無く、もっとひんやりとしたクールなNo Waveの冷徹さがI Want Cityの音の最大の特徴である。ブレイクビーツを独自解釈し、ジャンクな電子音が鳴り響き、その中でJUNKOのクールで透明感溢れるボーカルが乗るスタイルは本当にクールだ。ミドルテンポを基調にしたドープなグルーブが支配するダンスミュージックと言えるだろう。第1曲「South Africa」や第3曲「Mathematics You」はそんなI Want Cityの音を堪能できる楽曲になっている。No Waveさが極まった第4曲「Swim Sleepy」や鋭角の性急さやSonic Youthにも近いオルタナティブな感触とキャッチーさが同居した第7曲「Pacific Child」も見事。終盤では歌物に接近した楽曲が並び、メランコリックさが際立ち淡々とした第8曲「She Is Beautiful」やアンプラグドに限りなく近い感触で気だるく退廃の世界を歌う第9曲「Wonder If...」なんか80年代のシーンの空気感を感じさせてくれる。
80年代のNo Waveやオルタナティブの空気を吸い込みジャンクでありながら、どこか郷愁の音も聴かせてくれる今作は狂ったクールさによるダンスミュージックだ。先人の音を吸い込み消化した変則のダンスミュージックとオルタナティブサウンドは音楽の危険さと面白さを体現した全10曲はクールで最高に面白い音になっている。