■タグ「スクリーモ」
■D'accord/Fjørt

何度このジャケットは!?(驚愕)と突っ込まずにはいれないけど、そこはまあ置いておこう。今ジャーマン激情がまた新たな波を起こしている。ジャーマン激情の最重要バンドであるTrainwreckの新作も素晴らしかったが、若手バンドも負けていない。Fjørtもそんなジャーマン激情のホープであり、2014年にリリースされた2ndである今作さは彼等に期待を抱くしかなくなる作品に仕上がっている。
彼等は激情系ハードコアバンドでありながら見事な洗練を見せるバンドだと思う。3ピースの編成でありながらメロディアスに多種多様に変貌していく楽曲は既存の激情とはまた違う新たな風を感じる。凄い大雑把な言い方にはなってしまうのかもしれないけど、Thursdaの様な硬派でありつつもメロディアスなスクリーモ・ポストハードコアの流れにあるサウンドだと僕は思う。作品の冒頭を飾る第1曲「D'accord」から見事に突き抜ける風。ツインボーカルで聴かせるスクリーモの応酬と、高い演奏技術による鉄壁のアンサンブル。空間的アプローチも随所随所に取り入れ、ポストロック的なフレーズを盛り込みつつ、スクリーモっぽいリフもガンガン使っていく。静謐さに振り切るのではなく、アグレッシブさを武器にしてドラマティックに楽曲を展開させ、あざといメロディと共に泣きに泣きまくりな激情を聴かせる。アンダーグラウンド感は無いから、そこに嫌悪感を覚える人はいるかもしれないけど、ある種のオーバーグランドさを持ちつつも、硬派なサウンドは僕個人としては凄い好きだし、これはあくまでも硬派なハードコアサウンドをより間口を広げた洗練であり、何よりも楽曲の完成度の高さとメロディセンスと演奏技術は単純に手放しで賞賛出来る。
一転して激情系ハードコア要素が強く獰猛に爆走する第2曲「Schnaiserkitt」も凄く格好良いんだけど、単にアグレッシブなハードコアをプレイするのではなくて、アグレッシブさの中で緻密に組み込まれたフレーズが光り、煌きのクリーントーンの音色をアクセントにしながらも、歪んだギターリフと爆走するビートで攻める!攻める!ちょっとダサ格好良さもあって、それがまたあざとくありながらも良さを感じるリフの応酬からクリーンなトレモロと歪んだベースの静謐なパートで落としてくる当たりもベタベタなんだけど、そんなベタさもこのバンドの良さだと思う。第3曲「Valhalla」はそんな彼らの良さが特に詰まっている名曲で、メジャー感溢れるサウンドでありながら、激情系の持つ感動的なメロディと爆裂サウンドの融和が堪らない。第5曲「Hallo Zukunft」ではスクリームだけじゃなくて、クリーンの哀愁漂う歌まで聴かせてくれるし、まじりっけの無いクリアな旋律に心が豊かになるのは必至だ。
ポストロック的アプローチや激情・スクリーモの美味しい所取りで多様に音を変化させながら、常に美しい旋律が鳴り響く今作だけど、終盤はまた素晴らしい楽曲が並び、ポストロック方面に振り切ったクリーンな音の前半から、ドラマティックに泣きまくる後半の拳を握り締めたくなる熱さにやられる第9曲「Atoll」、そしてEnvyの様なスケールとアグレッシブさとメロディを聴かせる止めの最終曲「Passepartout」は今作のラストを飾るに相応しい素晴らしい名曲。
単なる激情では無く、単なるスクリーモでは無く、単なるポストロック方面の要素を持つ音楽では無い。クリーンさを生かしながらも、美しいメロディとアグレッシブなサウンドとドラマティックさを見事に生かし、激情系ハードコアを一つのオーバーグランド感のあるサウンドに仕上げた今作は、ステイアンダーグランドさは皆無だし、そうした原理主義者からは批判を浴びるかもしれないけど、確かな楽曲の完成度の高さと素晴らしさ、何よりも激情系ハードコアをネクストまで持ち上げようとする気迫と力量は賞賛しかないし、素晴らしい作品だ。