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■SEI WITH MASTER OF RAM、印藤勢ロングインタビュー

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 SEI WITH MASTER OF RAMは何処までも業の深いバンドだと思う。ex.マシリトの印藤勢氏によって2010年に結成され、2013年に1stアルバム「a sheep」(当ブログでのレビューはこちら)をリリースしたが、これは新たなるロックのスタンダードだ。マシリト時代から歌謡曲とヨーロピアンメタルとの融合から始まる新たなロックのスタンダードを追求していたけど、SEI WITH~はその最奥にあるもっとドロドロとしたエッセンスのみで生み出されたバンドであり、一見すると飛び道具的アプローチを繰り出しているバンドだと思わせておいて、どこまでも純粋なロックバンドであり続け、いやロックバンドだからこそ生み出せる残酷なロマンがそこにはあった。それはアンダーグラウンドだとかオーバーグラウンドを超えた本当にリアルであり、全方位を対象とした宣戦布告だ。
 今回はリリースのタイミングでは無いけど、ドンピシャなタイミングで印藤氏本人からインタビューオファーを頂き実現したインタビューである。バンドマンとしてだけでは無く、新宿アンチノックのブッキングマネージャーというもう一つの顔を持ち、最近は「ここがヘンだよライブハウス」や「チャンプロード」シリーズといった企画も行っているし、バンドマンとしてもライブハウススタッフとしても一人の人間としても、終わり無き業の中で印藤勢という男の音楽に対する必然とそのポリシーについてどこまでも深く語り合った。これは吉祥寺ルノアールで一時間に渡って繰り広げられた一つのドキュメントである。



・今回はリリースや自主企画のタイミングではありませんけど、色々とお伺いしたいと思います。印藤さんは元々はマシリトで活動されていた訳ですけど、マシリトは具体的にはどんなバンドでしたか?

 何でしょうね?僕の中で生業みたいになっちゃっているんで。マシリトとSEI WITH~で区切ってはいないんですけど、例えば山口百恵とか安全地帯とかJ-POPとかいう言葉が生まれる全然前の所謂歌謡曲、自分の親の世代が聴いていた日本の音楽と、Helloween等のジャーマンメタル。BLIND GUARDIANもそうですし、Fair Warningとかもそうですけど、それらの音楽の融合。プラス融合した事にオリジナリティを求めるんじゃなくて、融合して美味しい所だけを抽出したり、年数が経ってろ過していくピュアなサウンドを求めてました。それは現在進行形で求めてます。
 それと大事なのは理論的な話になっちゃいますけど、マイナーコードであるっていう事。マシリトとして20代前半に活動を始めた、所謂インディーズブームが消えかけの頃って周りはLimp BizkitとかKoRnとか、所謂モダンヘビィネス…今とは違う7弦ギターの使い方のバンドが殆どで、暗いバンドと言えばそういった形のバンドが殆どでした。

・本当にDeftonesやKoRnといったヘビィネス全盛期で、僕の世代はギリギリですけど思春期に聴いていた音でした。でもマシリトはそういった当時の音とは違うと思いますし、当時の日本のヘビィネスバンドはもっと洋楽的と言うか、日本人らしさよりも、海外バンド直系のサウンドが多かったと思います。その中でマシリトは異質というか、歌謡曲やギターロックといった、もっとスタンダードな部分を求めていたと思います。

 その当時は僕の知る限りマイナーコードでアンダーグラウンドで活動していたのは、HAWAIIAN6、COCK ROACH、WRECKingCReW、MUSHA×KUSHA、ギリギリでHOLSTEIN位かなって思うんです。

・あの当時からすると先ほど印藤さんが挙げたバンドはどれも異質なバンドばかりですね。マイナーコードって浅井健一氏の「俺にはマイナーコードが暗い音じゃなくて鋭い音に聞こえる。」って名言もありますけど、ロックだったら使うのは当然な音なんですよね。やっぱロックって鋭さって武器だと思います。暗い音とか悲しい音ってのもありますけど、それ以前にリフが刺さるっていう。その当時って鋭さじゃ無くて重さを求めていた人が多かったんじゃ無いでしょうか。

 それもありますし、ドライブ感のあるインディーズロックって言うと僕らの世代は実は青春パンクなんですよ。何で僕らは何故か「裏青春系」って名前を付けたか付かられたかは忘れちゃったんですけど、まあ…裏って言う所は、もう少し暗いというか。

・でも今となってはそういったダークなバンドも当時に比べるとメインストリームに出てきていると思います。それでマシリトは2009年に活動休止して、SEI WITH~に至る訳じゃないですか。マシリトとは根本は変わらないでしょうけど、特にどのような部分を前面に出したいとかってありましたか?

 一番最初にも言ったけど、自分のもう…歌謡ロックやフォークとジャーマンメタルだったりとかヨーロピアンな物との融合からエキストラバージンな物を絞り出すという…自分の中では研究家だと思っているんで。その研究に人生を捧げているだけなんで、あんまりやっている事は変わらないかなって思ってますけど、例えばマシリトの場合は中学高校とか、学年は違うけど同じ街で同じ学校で同じ校舎で過ごした人間とそういった距離感で始めた物なので、ちょっと語弊がある言い方かもしれませんけど友達と始めた感覚が強かったんですよね。
 SEI WITH~に関しては、ギタリストのNOKENが元々はDIE YOU BASTARD!とINTESTINE BAALISMをやっていたんですけど、彼との出会いが凄く衝撃的で、尚且つ彼がマシリトを大好きになってくれて毎日の様に遊んでいて、未だに親友・友達って意味では変わらないんですけど、同じ学び舎の中で出会ったというよりも今度は音楽として認め合った戦友って感じだったので、いつかこいつと一緒にバンドをやりたいなってのはNOKENでしたし、ドラムのKAMEさんなんかは横浜の名物人間というか…KAMEさんはそんな感じで知ってはいたんですけど、いざアンチノックで彼が前にやっていたGUN FRIEND SHIPっていう女性ベースボーカルのオルタナ・シューゲイザーなバンドを観て、正直に言うとドラムはこの人以外にいないなって…惚れちゃったんで…プレイスタイルに。それでプレイスタイルに惚れると人柄に惚れますよね?なんでKAMEさんの場合は俺の師匠みたいな感じで付き合っていたんで、まあ…自然と、恰好良く言えば音楽愛で繋がって結成したのがSEI WITH~ですね。

・SEI WITH~は今でこそ珍しくは無いですけど、カイモクジショウやURBAN PREDATORみたいなベースレスという編成じゃ無いですか?でも音楽性はベースレスである必要性は無いですし、寧ろベースがいたらもっと良いバンドになるって思っていたりもします。何故SEI WITH~はベースレスでやろうと思ったのですか?

 たった一言で言うんですけど、ピンと来る人がいないってだけで、例えばベースじゃなくても、まあ…フルートでもヴァイオリンでもオルガンでも何でも良いです、ピンと来れば一緒にやりたいんですけど。まあどこかでトリオに拘っている…トリオのサウンドって最高に格好良い…見た目も含めて。その呪縛はあるかもしれないなって思ってます。

・3ピースでやりたいっていうのはマシリト含めて強かった感じですか?

 3ピースなのに音がブ厚いとか、3ピースなのにクオリティが高いとか…昔から聞く言葉なんですけで、僕は逆にそれが凄く皮肉に聞こえていた時期があって、今となっては有難い事なんですけど。「3ピースって何だろう?研究家」にもいつの間にかなっていたので、そういう意味ではそれも業ですよね。生業だと思ってます。

・SEI WITH~はマシリトに比べると印藤さんのルーツである歌謡曲やメタルといった音楽の一番濃い部分をそれこそ研究の末に抽出しているみたいな音になっていると思います。「a sheep」だと1曲目の「INDIAN FROM THE SKY」ってモロにそんな曲で。サウンドはメタルだけど、分かりやすいメタルとは違うし、KAMEさんのドラムが手数じゃ無くて一発一発の音で凄く情報量とか出していると思います。重みだったりとか強さだったりとか、単純に音が気持ち良いなって。
 僕はベースの音が好きだからやっぱりベース入ったらもっと良いのにとは思いますけど、ただ必然として印藤さんの声、2本のギターとドラム、それで一つの形として完成していると思うんですよ。それは「a sheep」を聴いて思いましたし、必然性を圧倒的情報量でかつ自然な形で出しているなって。
 「INDIAN FROM THE SKY」に関しては先ず曲として情報量が多いと思うんですよ。曲展開も複雑ですし、頭こそフォークソング調で始まりつつも、いきなりHR/HMなサウンドプロダクトになってますし、何だろう…ミクロとマクロを上手く繋げているなって。それこそ印藤さんの研究家気質が出ているからだとは思いますけど、色々な視点での世界観を必然性のある形として一番分かりやすい形でアウトプットしているなって。SEI WITH~に関してはどの曲もそうですけど、「INDIAN FROM THE SKY」は特にそれが強いと思います。


 何か…どれだけマニアックな音楽を聴いて、それこそコレクターレベルの人とタメで話せるレベルの知識とか知恵とか流石に15年位アンダーグラウンドにいると、自分もそういう情報量を持つ様になるんですけど、自分の絶対的なルールは中学生の時…中学二年生の時に転校生のフカザワ君に貸してもらったHelloweenのCDを聴いた時の感覚、その時に雷に打たれた訳じゃないですか?それがTHE BLUE HEARTSの人もいますし。

・僕はそれがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTでしたね。

 その時の自分の為に作っていると言ったら少しおこがましいかもしれないけど。後は夢を与えたいとか、良い詩を書いてイマジネーションをあるいはインスピレーションを膨らませたいとかっていうのはあくまで言った以上はやっていこうっていう言葉の裏付けであって…実は最大のルールは自分が中学二年の時にフカザワ君に借りたHelloweenのCDの衝撃に勝てるかどうか…そこのみです!!「あれはなんだったのだろうか?」という事に対して人生を費やしているだけです。

・SEI WITH~は色々な音楽を聴いてて耳が肥えているリスナーにも届く音であるとは思ってはいますけど、もっと中学生高校生の若い世代の子達がたまたまライブを観て「何だこれは!?」ってなる音だと思います。知識だとかバックボーンだとか関係無しに。初期衝動的と言うか、ある種のロマンだったりとかエモーショナルさというか…そんなの言葉に出来ないんだと思うんですよ。言葉にしちゃうと終わってしまうんだと思うんですけど、理屈じゃない衝撃と言うか、それは人によって全然違って、王道のロックにそれを感じる人もいれば、ハードコアだったりメタルだったりプログレだったり…色々な人の音楽を好きになる切欠となった初期衝動に改めて訴えようとしてるなと。奥の奥の純粋な部分に方法論じゃ無くて精神的な部分で訴えようとしていると思います。

 そうですね。まあ…言葉にしちゃいけない領域にチャレンジ出来るのが唯一音楽だと思っているので、なんならアートよりもずっと音楽だと思っているので、ただそれを突き詰めていくだけ。

・でも何でまたそんな業の深い事をやろうと思ったんですか?僕が勝手にそう感じているだけなんですけど、こう…体も精神も蝕む様な永遠に終わりが無い事を何故やろうと思ったのでしょうか?

 まあ今…正直な感覚で答えるとAKSK君に言ってもらって少しホッとしたんですけど、永遠に終わりが無いっていう事は…みんな結構足を踏み入れない事なんですけど、僕の中では入ってしまえば永遠に終わりがないんだからホッとするんですよね。
 でもここも危なっかしい所は2パターンあって、やっぱり言葉にしちゃうと自分はニッチだからとか、アンダーグラウンドだからとか…カテゴライズですよね。理解されなくても良いんだとかって翻訳されるのは絶対に嫌なんで。そんなに高尚な事をしているつもりは無いですけど、僕の中では今AKSK君に言われてホッとしたって事は…居心地が良いんでしょうね。人からしたら郷の深い事をしているとか、あの人にはあの人の美学があってとか言われるのかもしれないですけど、僕には居心地が良いだけで…ただそんな居心地が良い自分が好きじゃ無いという。だからそれを蹴飛ばしてくれるメンバーを選んだって意味で大正解だったんじゃ無いかと。

・でも音楽に限らず何かを表現するって永遠に答えが無いって事にそれぞれのやり方でみんな向き合っていると思うんです。向き合うものがロックなのかハードコアなのか色々ありますし、進化するって部分も一つのスタイルを貫きながら強くなる進化もあれば、斬新な事をやるっていう進化もあって、答えが無い事に対して答えを探しているというか。

 …いやAKSK君のお陰で今見つかりましたけどね、吉祥寺のルノアールで答え見つけちゃいましたけど。答えが無いっていう答えから始まっているんで…実は安全なんですよ。格好良いなとか、音楽やったりロックンローラーだったり或いはアンダーグラウンドでも何でも良いんですけど、ハードコアでも良いんですけど、答えが無いって事に向き合っているって横顔は確かに人から見たら格好良いんですよね、横顔は。でもやっぱり答えが無いって…知ってるんで、その時点で答えが無いっていう答えが出ているんですよ。でも「本当かなあ?」って何処かで疑ってるんですよ。それが許せないだけなんじゃないですか?何かエゴイストですよね。

・でも折り合いが付いてしまったらやる必要性が無いですもんね。折り合いが付かないって答えが分かっているからこそ出来るっていう確信だったりとか、ある種の保険みたいな物はもしかしたらあるのかもしれませんね。

 これは殆どのミュージシャンに通ずる事だと思うんですけど、自分のインスピレーションが先ずは正解なのか不正解なのかを本当は早い段階で知りたいんですよ。でもそれが…いつの間にか迷宮入りしちゃって、その回廊を歩いている内に「悪くないな。」って思えてきますし、その回廊の中で出会っちゃう仲間とかいて、「あ、お前も迷子なんだ。」っていう奴がライブハウスには一杯いる訳じゃないですか、それこそ新宿なんかは。
 だからそういう奴等と円になっちゃって酒盛りを始めるのか、そういう奴等と「俺はあっちの階段上がってみるよ。」とか「俺はもうちょっと地下潜ってみるよ。」とか「俺はこっちに抜け道見つけたんだけど。」とか。それで「また後で会えたら合流しようぜ。」って、まあそれぞれがそれぞれで、出会った瞬間に励ましたりケツ叩き合ってやる方が自分のスタイルに合ってただけって感じです。それで大分僕は、或いは僕等は変なルートを選んでしまったんだなって思います。

・結局は色々な考え方ってそうだと思うんですけど、意外と行き着く先は全部一緒で、もしかしたら死ぬまで結論は…いや死んでも出ないかな?だからこそ変なルートを選ぶっていうのは業だと思いますし、でも逆にそれが居心地が良かったりとか、自分に一番合っている物だっていう考えはもしかしたら印藤さんの中であるのかなって思ったりもします。近道だけど自分にとっては居心地の悪い道だから選ばないって考え方も出来るし、この道は凄い遠回りだけどこの道は歩いていて楽しいから歩こうって考え方もあって…それは結局自分の中でしか分からない物なのかもしれませんね。

 よっぽどサラリーマンとかパートタイマーで働いている主婦の方とかは、答えを出さなきゃいけないって事を毎日毎日やっていて、答えを出してノルマをクリアして、自分の為どころか子供や家族の為に答えを出す。或いはこれ学生でもそうなんですけど、僕は学校で教わる様な勉強が大変苦手だったので、90点以上取りなさいって世の中で…自分は単純にそれに向いて無かったんで、答えを出せる人の方が凄いなって思ってますし、毎日一生懸命答えを出している人の横顔の方が俺にとっては何倍も崇高で凄いなって思うんですよ。だから本当の本当の事を言ってしまえば答えなんて出したく無いんじゃないんでしょうね。何か自分も含めて周りにはそんな人間が多い様な気がします。

・人間として器用じゃ無いですよね。

 いやいやいや!!わざと迷っているんじゃないかな?

・でも僕自身はまだまだガキですけど、「社会の中で生きる。」って事と「自分が好きな世界で生きる。」って事は意外と両立出来るんじゃ無いかと個人的に思ったりもするんですよね。

 今言ってくれた「ガキですけど。」って部分がもう少しスクスク育っていくと、さっき言ったサラリーマンや学生や主婦やパートタイマーの人達がいてくれるから、俺がこういう事をやっていてもギリギリかもしれないけど日本という国の中では現状許されるんだなってだけですね。

・少し話を変えますけど、印藤さんはミュージシャンでもありますけど、普段はアンチノックのブッキングマネージャーとして働いている訳じゃないですか。

 肩書きです(笑)。肩書き上は(笑)。

・今日はバンドの事だけじゃなくて、ライブハウスの中の人としての印藤さんについても聞きたかったんですけど、アンチで働き始めてもう15年近くになるんでしたっけ?

 22歳の時入社してて今僕が36歳なんで、まあ15年目ですね。

・もう大分ベテランですね。

 どうなんですかね?何か…一昨日入社したみたいな気分で毎日過ごしてますけど。

・ミュージシャンとしてだけじゃなくてライブハウスの中の人としてもアンチノックという場所で色々なバンドやシーンを見てきたと思います。それでちょっとさっきの発言で気になっていたんですけど、印藤さんがアンダーグラウンドって言葉を使っている事に若干違和感を感じたりして、印藤さんからは「アンダーグラウンドでいたい!」みたいのを僕は感じないんですよね、印藤さんやSEI WITH~というバンドに対して。アンダーグラウンドっていうより現場型の音というか、現場の音に余計な制約や縛りは必要無いんですけど、もっと単純の土着的な「日常としての音楽」って部分を知っていると思うので、印藤さんの中のそういった考えを聞きたいなと。

 ありがとうございます。聞いて下さい(笑)。

・実際にアンチノックで働いていてアンチノックに出ているバンドさんやお客さんって何処かで日々や世の中に違和感を感じている人が多いと勝手に思っているんですよ。ちょっと誤解を招きそうな言い方になってしまいましたけど(笑)。そんな中でライブハウスの中の人として音楽と向き合う事を選んだのは何ででしょうか?

 入社の切欠は…僕ずっと剣道をやっていたので、こじつけかもしれないけど、こう見えて意外と体育会系が嫌いじゃ無いんですよ。まあ…数あるライブハウスの中でキングオブ体育会系って当時からアンチノックだったんじゃないかなって。元々はアンチノックで働きたかった訳じゃないんですけど、まあお声が掛かって…縁ですよね。ご縁だなって。
 本当に昔、「インディーズライブハウスマップ」っていう謎の本があったんですけど、その本には日本全国のライブハウスの情報が沢山載っていたんですよね。ライブハウスの特徴とオススメバンドみたいな事が。まあ明らかにアンチノックだけ紹介の文章が可笑しくて、「世界最大の音量で最もリアルなハコです。」って。だから…ブルっちゃいますよね(笑)。もう漫画に出てくる様な世界なんで。まあ今だから思うんですけど、そこで挫けなかったら恰好良く言えば人生の糧になりますし、或いはそこから抜け出せる日が来たら僕は僕を認められる気がしたんで。同時にやる以上は骨を埋める覚悟で…3250回位辞めたいなって思った時もありましたけど…まあ何とか、皆さんのお陰で続けてます。

・最近は先日開催された「ここがヘンだよライブハウス」や「チャンプロード」もそうですけど、バンドマンとしての活動に留まらまいで、もっとライブハウスを面白くしようとか、音楽が好きな人を増やそうとか、そういった部分の活動を印藤さんはやっていますね。そういった部分でミュージシャンの印藤勢じゃなくて、アンチノックの印藤勢として動こうと思った切欠はなんですか?

 ある人から見たら…当時だったら「マシリトの印藤勢」。またある人から見たら「アンチノックのスタッフである印藤勢」。って感じで無数のチャンネルがある事は自分の中で意識はしていたんですけど、自分の中で線を引いてマルチに対応出来るスキルが無いって思い込んでいたんですよ。でもある時を境に…今でこそ皆笑ってくれているんですけど、自分で言うのはおこがましいのですが、「趣味・職業・特技:印藤勢」でいこうかなってジョークで言っていたら、マジでそんな感じになっちゃって…本人は基本焦燥感で一杯ですけどね(苦笑)。でも応えられる限り応えたいなっていうのは…実は僕のスタイルですよ。

・またちょっとSEI WITH~の方の話に戻しますけど、SEI WITH~もそうだと思ってまして、研究家として自分の音楽を突き詰める印藤勢と、ライブでお客さんを楽しませたい満足させたいってサービス精神のある印藤勢って両方あると思うんですよ。だからこそ印藤さんが「アンダーグラウンド」って単語を使っている事に僕は凄く違和感を覚えます。

 凄く鋭いと思います。サービスとエゴが融合するのか両立出来るのかっていうのが今の僕の課題なので。それは音楽家である自分も、アンチノックの人間である自分も、何も課題は変わらないんですよ。それはチャンネル云々じゃなくて。印藤勢の今の宿命だと思ってます。
 そういった目で見る「アンダーグラウンド」っていう言葉は非常に人を惹きつけやすいんですよね。語弊があるんですけど。アンダーグラウンドって言葉を免罪符にしたくないから敢えて僕は「真のアンダーグラウンド」だとか「これがリアルだ。」って言葉を出来る限り多くの人と共有したいんですよね。自分は「マイノリティでニッチだぜ!」って高揚感に酩酊した状態には絶対になりたくないので。僕、僕等みたいな人間がアンダーグラウンドって言葉を使った時に勇気が出てくれる人がいるのなら「いつでもおいでよ。」って意味で使わせて頂いている言葉です。

・前に「伝説のレジェンド」で印象深かった印藤さんのMCがあるんですけど、「アンチノックはアル中もメンヘラもなんだろうが差別しないで受け入れる。」といった旨の事を言ってて、それぞれ境遇だったり社会的立場だったり生活だったり価値観だったりプライドだったりがあると思いますけど、もしかしたらアンチノックという新宿の一つの地下室は逃げじゃなくて居場所としてのアンダーグラウンドなんだなって思います。それぞれがそれぞれのスタンスで楽しんでいてって、それは色々なスタンスや思想が共存出来るって事なんだと思いますし、アンチノックも含めて僕の好きなライブハウスって純粋な意味でのコミュニティなんだと思います。

 最近は半分冗談で「アンチノッカー」なんて言葉を使ってますけど、まあスタッフ一同を代弁させて貰うなら、俺たちが受け入れなかったらこの日本で誰がこの人たちを受け入れてくれるのかっていうのがあるので、アンチノックがあって良かったなって思ってもらえる様に努力してます。まあ間口が広い方が本当は良いのかもしれませんけど、先ずは深さだなって。その受け入れられるキャパっていうか広さですけど、深さの方が大事かなって。
 所謂メンヘラと自分を比べた時に「甘いぞ!」と、「そんなのはファッションメンヘラだ!」と、「俺の方がスーパーピーターパンだぞ!!」と。僕は超ド級のウルトラピーターパンなんで。まあ、アンチノックのスタッフはスペシャリストが揃ってますよ。頭のおかしい(笑)。まあドリンクの女の子とかはパッと見可愛いギャルばかりですけどギャルっていうより大分イルですよ。

・(爆笑)。でもそんな感じも含めて可愛いと思ったり(笑)

 世間で言う正義感とか使命感とかとはまた違う宿命みたいな物を…あんまり適した言葉じゃ無いかもしれないけど「運命共同体」と書いて「スタッフ」なんで。「馴れ合いじゃねーぞ!」っていつもお互いに釘刺し合いながらイルなギャル達と日々働いてますよ。

・そういった部分はSEI WITH~にも繋がっているなって。お互いがぶつかり合う事によって生まれる化学反応、それこそバンドマジックなのかもしれませんけど、三つの個性をぶつけ合って生まれるカタルシスみたいな物を印藤さんは追求していると思いますし、それを絶対的な軸にしているなって。だからこそ僕は業を感じます。

 まあAKSK君に言われて気づくことも多いんですけど、さっき「趣味・職業・特技:印藤勢」とか言いましたけど、大分色々な人を巻き込んでしまっているなって(笑)

・でも人間って一人では行けていけないと思いますし、自立して生きていても誰かと支えって生きていると思います。印藤さんの中でも仲間だったりさっきの言葉で言う運命共同体って物があるからこそ印藤勢でいれるんだと思いますし、他の方にとっても印藤さんがいるからこそっていうのはあるのかもしれません。一つの特殊な世界の話かもしれませんけど。

 そうです。特殊な世界でいさせてくれている、その中で印藤勢でいさせて貰っているんで、だったら全力で応えないといけないので、まあ何でも屋っちゃ何でも屋ですよ。

・また「a sheep」の話に戻りますけど「絵空詩」って本当に凄い曲だと思うんですよ。ライブじゃいつもラストにやっているんで絶対的なキラーチューンだって思われているんでしょうけど。SEI WITH~の一番の普遍性でありますし、純粋にバラードでありますし、今の時代にそんなバラードを歌うバンドっていないと思っているんですよ。みんなそこを避けてしまっているというか、もしかしたらクサいというかベタというかそういうのもあるのかもしれませんけど、みんなバラードである事を避けますよね、そこに全力で向き合っている名曲だなって。

 石川さゆりとか…日本人のルーツってやっぱ演歌もあるんで。あの演歌の曲線美って言うんですかね?あれって最早ドローンに近いものがあると思うんですよ。

・ドープですよね演歌って。

 >ドープですねえ。SEI WITH~が挑戦するなら「絵空詩」になりましたって感じと、実はちょっとだけ格好良く言うとドラマがあって、SEI WITH~をやり始めて半年位で、敢えて避けていた訳では無いんですけど、最初から今のSEI WITH~のスタイルじゃ無かったですし、これからもどんどん変わっていくんでしょうけど、KAMEさんとNOKENに「そろそろ印藤節の一番濃い所をやっちゃおうよ。印藤君はマシリトの呪縛とかもあるから、無意識的に避けてるでしょ?」って言われて、何か嬉しかったんですよ。
 じゃあもう完全にTHE 印藤勢節を一度やってみたら…元々「絵空詩」って8ビートだったんですよ。それが笑っちゃう位にマシリトで、KAMEさんなんかは自分で「印藤節解禁しなよ。」って言っていた割には、スタジオに曲持って行って一周合わせてセッションしたみたら、スティックを置いて「これはマシリトだな。」って笑いながら項垂れたんですよ。そこでは失笑で終わったんですけど、そこで半年寝かして、石川さゆりとか聴いてた時期もあったんで、こういう表現方法で「絵空詩」もう一回構築してみようよってやったら大成功でした。KAMEさんが一番得意なリズム、そしてクサいとか美メロであるとか、泣きじゃくっているNOKENのギター、そして所謂「印藤勢スタイル」が一番衝突した交差点が「絵空詩」って感じですね。

・あの曲は何よりも歌が映えているなって。他の曲にも言えるんですけど、サウンドプロダクトはメインストリームな部分もありつつ、、そうじゃない部分もあって、そこの衝突地点なんですけど、「a sheep」にも入っているどの曲にも言えるのは絶対的な物として印藤さんの歌が存在しているという事です。楽器としてのボーカルでは無く、それ以上の本質的に何かを訴える感情としてのボーカルっていうのが凄くあるんですよね。だからこそ誤解を招く言い方になりかもしれませんけど、印藤さんのボーカルは絶対に好き嫌いが分かれます。

 分かれますねえ(苦笑)

・きっと人によっては「こいつブン殴りてえ!!」ってなるのかもしれません(笑)

 もしそう言われたら人生で聞いた中でもトップクラスで嬉しい褒め言葉ですね。これはマシリト時代からそうなんですけど、ファーストインプレッションが「この人嫌いだ。」とか「この音楽嫌いだ。」っていうショックから入った人程…ハマるんですよ。これはデータが取れているんですけど。やっぱり男も女もメンヘラ中のメンヘラ、中二病中のリアル中二病が揃い踏みでハマって欲しいと思っているので、ファッションメンヘラとかファッション中二病には僕はあんまり用は無いので。そういう意味では凄く悪意のある音楽なので。「絵空詩」に話を戻すと、まあ強いて言えば一番怨念が込もってます。自分が書いてきた曲や歌詞の中で一番怨念が込もっているんで…まあ歌っていて辛いですよね。

・聴いてる僕も何か色々辛くなります。俗に言うダークだとか鬱だとかカテゴライズされている物以上に聴いていて辛いんですよ…これはもうドローンだなって、精神的な。だから凄くそれぞれが移入する感情こそ違えど、感情移入してしまう曲だからこそ、否応無しに自分の中の色々と向き合わなきゃいけなくなって…辛いんですよ。僕はその感覚を久々に思い出しました。

 太宰治の「人間失格」を読んだ時に「こんな人には近づきたくもない!!」って思ったんですよね。或いはジョンフルシアンテのソロアルバム…大分ローファイでブリブリなのかパキパキなのか知らないですけど、ドラッギーなサウンドで…僕はジョンの事は崇拝してますけど、近づきたくもないですね。そんな感覚に陥る表現者ではありたいなとは思ってます。だからこうやってインタビューされるのは嬉しいです。「本当は」ですけどね(笑)。

・さて色々と纏めます。現在は新曲もライブでプレイされていますし、そろそろ2ndアルバムも見えてきていたりとかもあると思いますけど、次の作品はどんな作品になると思いますか?

 自分がどんな作品を作りたいかっていうのは、このインタビューの中でも出てきたみたいに言葉に出来ないというよりもしちゃいけない部分だと思うので…上手く言えないんですけど…まあ世間的には僕や僕等の研究成果を知りたがっている筈なので、それの斜め上は余裕で行くんじゃないかと、現時点では思ってます。
 スピリチュアルな話にはなりますけど、最近井の頭公園の付近に引っ越した事も、メンバーとの物理的な距離も近くなったりも、まあ自分の住んでるロケーションも含めて全部音楽の為に生きているので、まあそこに投資した時間やお金、或いは浪費していく物、全てが。「a sheep」は33年の研究成果の発表なので、そこから二年三年…1000日地球で暮らしてみて僕が感じて見えた物を描写するだけなんで。楽しみにしていて下さいとしか言えませんけど。



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ライブスケジュール

2015.5.6(WED)dues新宿
GOLDEN PEAK Ⅲ
※2会場サーキットイベント
http://www.diffusy.com/goldenpeak3

2015.6.5(FRI)新宿ANTIKNOCK
伝説のレジェンド20回記念
OPEN 未定 START 未定
ADV 未定 DOOR 未定

2015.6.28(SUN)吉祥寺WARP
ねぎらいのサイレン vol.3
w/Shinobu Motoori Group/カイモクジショウ/レイト/militarysniperpinfall
OPEN 未定 START 未定
ADV 未定 DOOR 未定

2015.7.5(SUN)大阪心斎橋HOKAGE
BAAXK
w/BIRUSHANAH/DEFILED/EKVO
OPEN 未定 START 未定
ADV 未定 DOOR 未定




印藤勢出演トークイベント

5月5日(祝・火)
ここがヘンだよライブハウス番外編
「ここがヘンだよ音楽人」@ dues 新宿
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:1,000円(ドリンク代込み)
内容・・・未定!
参加者・・・
印藤勢(新宿アンチノック / SEI WITH MASTER OF RAM)
山崎(MudWheel Records)
じゃいあん(THORN)
ikoma(胎動)
久米(ANTI-CLOCKWISE)
ミキヤ(ヘルミッショネルズ)
アオキヤスノリ(バンドweb屋)
後藤勇作(いわきSONIC / To overflow evidence)
松尾駿介(DISKUNION / dues 新宿 / KEEP AND WALK)
他、参加者決定次第随時追加
http://dues-shinjuku.diskunion.net/schedule/2015050501










【オフィシャルサイト】http://seiwithmasterofram.com/
【印藤勢ブログ】http://seiwithmasterofram.blogspot.jp/
【印藤勢twitter】https://twitter.com/seiwith




photographer : azumix



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 かつてマシリトというバンドを率いていた印藤勢氏がマシリト活動休止後に結成したベースレスツインギター3ピースがこのSEI WITH~であり、今作は2013年リリースの1stアルバム。僕自身はマシリトはちゃんと聴いた事が無くて、マシリトでは歌謡フォークとヨーロピアンメタルの融合と言える音を鳴らしていたらしい。このSEI WITH~もそんな音楽性ではあるのだけど、もっと純粋な意味でのオルタナティブロックを僕は感じたし、フォークとヘビィロックの融合という言葉じゃ片付けられない作品だし、もっとロマンと沼みたいな深みと普遍性が今作にはある。



 そもそもオルタナティブとはなんぞやと言う問いに対して最早明確に回答をする事が出来る人って実は殆どいないと思うし、「概念」としての言葉であるから僕自身は具体的にこうだって言えない。寧ろ現在のシーンでは手垢に塗れて使い古されてしまった言葉であるし、オルタナって意味や真理を真面目に考える事は無意味だと思う。結局明確で全ての人を納得させる答えなんて無いし。でもSEi WITH~を聴くとこの音は間違いなくオルタナティブロックの一つの理想形であり、確かな回答だと思う。単に歌謡曲とフォークとメタルを融合させた音だからでは無い。食い合わせが一見悪そうな音が実は滅茶苦茶食い合わせが良く聴こえているし、今作を聴いて思うのは最早普遍性に満ちまくった音だし、もっと根本的なロックの流れにあると思う。異質だと思わせて実はこれ以上に無いスタンダード、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの中間地点にありながら、その両方にリーチする音。楽曲の完成度の高さと中毒性を生かした曲ばかりであるが、そこに縛りは何も無い。これこそが普遍性と異様さの結晶なんだと思う。
 第1曲「INDIAN FROM THE SKY」は正にSEI WITH~を体現するキラーチューンだ。四畳半フォークなアコギのフレーズと印藤氏の居場所の無い歌の哀愁。しかしアコギの音がヘビィなディストーションとなり、壮大で四畳半で大風呂敷おっ広げたみたいなやたらに壮大なリフからが本当の幕開けだ。ゴリゴリに高速の刻みのリフが渦巻き、ドラムも手数をガンガン放つタイプでは無いけど、ビートの骨格がこれ以上に無い位に強靭。こんなヘビィな音でありながら非常にメロいし、印藤氏はやたらにサイケデリックさを感じさせながらも、往年のHR/HM感のあるボーカルもキメるし、ソロはガッツり弾き倒すし、サイケデリックな音の妖しさもある。歌詞のフレーズにもある「正体不明の預言者」なんてフレーズが凄くしっくりくるし、ラストはゴリゴリにリフでキメる。この曲に関しては言葉にするのが本気で野暮だと思う位にキラーチューンであるし、捻れに捻じれた末に逆に真っ当になってしまったみたいな痛快さすらある。
 しかし今作の楽曲は非常に多様だと思う。第2曲「PONY」はハードロックらしいフレーズもガッツり盛り込みつつも、歌物としての色合いも強いし、もう何か普通にロックで良いじゃんって言い切ってしまいたい曲。一方で第3曲「TRACES REMAIN」はやたら壮大なメタル感溢れるスケールとフレーズを駆使しているのに、曲の持つクサさやメロさはフォークソングのそれだし、ラストの早弾きからのハイトーンシャウトのそれは見事なまでに古き良きメタル。バッキングとリードのツインギターの極意に満ち、攻撃性全開で攻める第4曲「浮墨ノ戦記」、ストーナー感を出しまくり、SEI WITh~流のサイケデリックロックでもある第5曲「CRYSTAL DOME PARADISE」もそうだけど、どの楽曲も多彩なアプローチをしながらも共通して言えるのはどの楽曲でも印藤氏の完全に好き嫌い別れるであろうボーカルなのに、ロックとメタルの両方の真髄を継承したボーカルを生かしているし、歌があって曲が生きる、曲があって歌が生きるという相互作用だ。
 そして特筆すべきは第6曲「絵空詩」だろう。今作で一番ストレートな楽曲でありながら、もっとも普遍性に溢れ、そこにあるのは余計な脳書きを無効にする歌とメロディの純粋な良さと凄みであり、満ち溢れる悲哀は涙腺を殴りつけてくるし、ラストの泣きまくったツインリードのソロなんかその涙無しでは聴けない歌同様に聴く人の心に「泣くが良い、声を上げて泣くが良い。」と伊藤政則ばりに訴えてくるだろう。第7曲「エンドロールを待たずに」のアンプラグドさと最終曲「慕情と墓標」のアコギと歌のみの消え入りそうなエンディングで今作は終わるけど。全8曲捨て曲無し、斬新であり、王道であり、異質であり、日本語ロックの一つの理想形だ。



 本質的な意味でのミクスチャーであると思う人もいれば、懐古的だと思われる音を出していると思わせておいて、それを蹴散らす音だと思う人もいるだろう。今作は人によって本当に多くの解釈が出来るし、その解釈に間違いは無い。それこそがもしかしたら本質的なオルタナティブなんだろうし、全てを受け入れる強さもある。しかしその根源にあるのは印藤勢という人間が持つロックに対する愛と憎悪なのかもしれないと僕は勝手に解釈していたりする。しかしこれだけは間違いないと思うのはSEI WITH MASTER OF RAMは自らロックの業を背負い、そして人々の音楽への愛と憎悪を背負ってもいる。だからこそどんな音を鳴らしても自らの音としての説得力があるし、だからこそ王道と邪道の両方をぶった切れるんだろう。日本語ロックの到達点であるし、理想形だ。



■NOISE/BORIS


NOISE (ALBUM+SINGLE)NOISE (ALBUM+SINGLE)
(2014/06/18)
BORIS

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 遂に出た。「NOISE」である。ヘビィロックを基点に全ての音を縦断する変幻自在であり孤高であり最果てのバンドであるBorisの2014年リリースの最新作。ヘビィロックサイドの大文字名義では実に6年振りのリリースである。昨年は小文字名義のborisでのリリースや昨年から今年頭にかけての精力的な日本でのライブ、勿論世界レベルで評価されるバンドとしてのワールドワイドな活動と本当に止らないバンドだけど、遂に決定打と言える作品をリリースしてしまった。リリースは国内盤CDはエイベックス、アナログ盤はDaymareからで、エイベックス盤にはボーナスディスク付。



 Borisはこれまでの多数の作品をリリースし、その形骸を嘲笑う自由過ぎる変化と進化の軌跡を進んできたけど、今作NOISEはBORIS名義の作品でありながら、ヘビィロックサイドに留まらずboris名義での要素を持つ楽曲も普通に存在するどころか、これまでのBorisを総括する作品であり、しかしただ総括するんじゃなくて、散らばりまくった点を一つにせずにそのまま「NOISE」という箱にブチ撒け、そしてそれを最新の形で進化させたのだ。2011年にリリースされた3枚のアルバムは本当に大きな驚きに満ちていたし、特にJ-POPからエクストリームミュージックを奏でた「New Album」のインパクトは相当だったけど、「New Album」同様に成田忍氏がプロデュースした今作は「New Album」が一つの実験であるなら、今作はこれまでリリースした膨大なる作品が持つそれぞれの実験の結果の再検証であり、同時に発表であり、実験を踏まえた上での実践であり、そしてそれらを散らばったままヘビィロックとして鳴らし、結果として非常にBorisらしい総決算的な作品に仕上げたと思う。本当にこのバンドの触れ幅の大きさやアイデアの多彩さは驚くしかない。
 今作はこれまでのBorisをほぼ網羅した作品であり、収録されている8曲が見せる音は完全にバラバラだ。しかしどこを切っても存在するのはBorisにしか生み出せなかった音だし、それぞれの楽曲がこれまでの作品の焼き直しや再利用では無く、これまでの作品を完全に通過させる事によって全く別の次元へと到達させた作品だ。言ってしまえば「flood」も「PINK」も「New Album」も「feedbacker」も「Heavy Rocks」も今作にはあるし、同時にその過去の作品は存在すらしていないのかもしれない。全曲が必然的にそれらの作品の新たなる息吹であり、長い実験とリリースとライブを重ねて生み出した終着点であり、そして次の出発点なのだから。そう考えると今作は「NOISE」というタイトル以外を受け付けない作品だと思うし、あらゆる音の混迷と、ヘビィロックが放つ幾多の音の色が混ざり合った得体の知れない「何か」。そうかそれがBorisが生み出すノイズなのか。
 先ずそのタイトルに驚かされる第1曲「黒猫メロディ」は「New Album」で見せたポップネスが生み出すエクストリームミュージックの最果てであり、冒頭のV系ライクなギターフレーズなんかモロ過ぎて最高だけど、「New Album」と明らかに違うのは、サウンドプロダクトを小奇麗に纏めていない事だ。「New Album」に収録されているポップネスの極限を生み出した「フレア」と違うのは、曲自体は「フレア」同様にBoris流のポップスやらギターロックへの回答であるのだけど、音質はハイファイな音じゃなくて、確かな歪みを感じさせるし、ヘビィなリフが音の粒子を拡大させ、轟音として轟いているし、中盤のギターソロは最高にストーナーでサイケデリックだ。ポップさとヘビィさとサイケデリックの融合であると同時に、それらの音楽が持つ高揚感の極限のみを追求した音は最高に気持ち良いんだけど、歪んだサウンドが聴き手の耳に残り続け、中毒成分として残り続ける。一方で第2曲「Vanilla」は02年にリリースされた方の「Heavy Rocks」に収録されている楽曲を彷彿とさせるギターリフから始まりながらも、ポップで煌きに満ちた音像であるし、曲自体はこれまでのストーナー色の強く爆音でブギーするBORISとしてのヘビィロックの王道の楽曲であるけど、同時にこれまでに無くポップな高揚感がサイケデリックで宇宙的なサウンドで鳴らされているから、全然印象が違う。ポップネスからヘビィロックへ、ヘビィロックからポップネスへ。冒頭の2曲は起点が全然違うけど、その起点同士はすんなりと線として繋がるし、もっと言ってしまえば凄くシンプルに最高に格好良いヘビィロックでしか無いのだ。
 ヘビィロックサイドの音から一転して第3曲「あの人たち」はアンビエントとサイケデリックな音像による揺らぎの音像。くぐもった音像でありながら、一つ一つの音の音圧は最初から凄まじく、これまでにリリースした「flood」や「feedbacker」の系譜の楽曲だけど、冗長さを完全に削ぎ落とし、同時にアンビエントな轟音でありながら、非常に歌物な曲に仕上がっていて、ここ最近の作品でもあったborisとBORISの融合と言える楽曲でありながら、ドゥーミーな轟音とアンビエントの融合であると同時に、それを普遍的な歌物の感触すら感じさせるのはBorisの大きな成果だと思う。wataがメインボーカルの第4曲「雨」は更に極端に音数を減らしながらも、更に揺らぎ歪んだ轟音の壁すら目に浮かび、それをあくまでも6分と言う枠組の中で、アンビエント方向に振り切らずに、焦らし無しの轟音と歌が生み出す、美しいメロディが飛び交うパワーアンビエントの一つの到達系だと思う。第5曲「太陽のバカ」はまた一転してロッキングオンライクなポップな曲だけど、ギターの音作りがもっとヘビィだったり、もっと奥行きのある感触がやたら耳に残る。SUPERCAR辺りがやっててもおかしく無い位に普遍性に満ちた曲なのに、それすらもborisというフィルターを通過させると独自の捻れが生れるのは本当に面白い。
 そして決定打とも言えるのはこれまでライブでも演奏していた第6曲「Angel」だろう。20分近くにも及ぶこの曲は、ここ最近のBoris名義での大作志向の壮大な音像が生み出すサイケデリアの究極系であり、同時に痛々しく胸を抉る最強のエレジーだ。物悲しく、荒涼としていて、痛々しいwataのアルペジオの反復が終わり無く続き、ビートも極端に音数を減らし、本当に隙間だらけの音な筈なのに、その隙間を感じさせない。そこに歪みまくったギターが薄っすら入り、そこから轟音のヘビィアンビエントになり、青紫の轟音の中で、ただ哀しみを歌うTakeshiのボーカルが本当に胸を打つ。ストーナーやドゥームといった要素を強く感じる音作りなのに、深淵の深遠へと聴き手を導く、内側にも外側にも放射される悲しきヘビィネス。特に曲の後半は本当に神々しくて泣けてしまうよ。
 そんな空気をまたしてもブチ壊すのが第7曲の「Quicksilver」で、これは完全にBorisの最強のアンセムであり、同時に「Pink」に収録されている「俺を捨てたところ」の更に先を行く最強の進化系だ。ドラムのカウントから、せわしなく刻まれるギターリフと性急なDビート、本当に久々にシャウトをガンガン使いながらも、ここ最近のアニソン・V系ライクなBorisを感じさせるメロディ、Borisがずっと持っていたヘビィロックとアニソン的メロディセンスの融合という点を、再構築して生れたのがこの「Quicksilver」だし、彼等がここまでストレートにアンセムを作り上げた意味は本当に大きい。「Quicksilver」は間違いなくここ5年程のBorisを最高の形で総括した名曲だ。とおもったらラスト数分は極悪すぎるドゥームリフによる暗黒ドローンをアウトロにしているし、その落差が自然になってしまうのもBorisなんだと改めて実感した。最終曲「シエスタ」の約3分のアンビエントの静謐な美しさで終わるのも、やっぱりBorisらいいと思う。
 そしてエイベックス盤のボーナスディスクは、今回「NOISE」という枠組みから外されてはいるけど、また別の視点のBorisを味わえる内容で、Borisが提供したタイアップ曲中心に収録されている。Borisらしいパワーアンビエントさと、繊細で静謐な美しさが光り、地獄の様な歪んだ音像と対比を織り成すインスト曲「Bit」、「New Album」の「フレア」の路線を更にポップに突き詰めて、完全にBoris流のヘビィロックJ-POPと化した青き疾走「君の行方」、ストーナーロックと90年代V系が衝突してしまっているのに、そこをポップさで落としつけた、こちらもポップなBorisの進化系「有視界Revue」、昨年リリースされた「目をそらした瞬間」の再発CD-BOXの新録音源として収録されていた「ディスチャージ」の新verと、この4曲もそれぞれの楽曲が「NOISE」という作品を補足しつつも、強烈なインパクトを持つキラーチューンばかりだ。



 これまでその全貌を決して明確にはしないで、常に聴き手を嘲笑ってばかりいたBorisがここまで素直にこれまでの自らを見直す作品を作るとは思っていなかったし、これまでの膨大な作品を完全に一枚のアルバムに落とし込んだ。でもそれによってBorisの姿がやっと掴めるかと言ったら、それは完全に大間違いで、今作の音は進化系でありながら、脱ぎ捨てた蛹な気もするし、常に人を置き去りにしかしないBorisならではの置き土産なのかもしれない。今後、このバンドがどうなるかは結局想像なんて出来ないし、そんなの本人達ももしかしたら知らない事かもしれないけど、総括する、一つの点にするのではなく、散らばらせたまま、それをそのまま新たな枠に取り込み、それぞれの楽曲が反発しながら新たな調和を生み出す。その不自然さと自然さこそがもしかしたらBorisが提唱した「NOISE」なのかもしれないし、そんな歪みすら超えて、ただ単純に最高のヘビィロックアルバムだと思う。俺はこれを待っていたんだ!!



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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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