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■【残酷なまでに無垢な美しき真夜中の音楽】しののめ、ロングインタビュー

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2018年も終わりに差し掛かり、SNSではフリークス達が今年の年間ベストなんかをツイートしたりしているが、僕個人として2018年の一番のベストリリースはしののめの1stフルアルバム「ロウライト」だった。
シューゲイザー/ギターロック/エモといった括りのサウンドスタイルではあるが、しののめは安易なるカテゴライズを拒むバンドだ。
バンド名を出してしまえば、syrup16g 、きのこ帝国、それでも世界が続くなら、ANCHOR(新潟)、bloodthirsty butchers、Discharming Man、mogwai、Low、U2といったバンドと共振する部分はあるが、バンド名を羅列しただけではしののめの本質には迫れない。
気付けば作為的でSNS映えを狙った表現もどきばかりが増えてしまった病みきった今であるけど、そうした本当の病巣を無垢で無作為な表現で暴く力を持つのがしののめの魅力だと個人的に思う。
深いリヴァーブのかかったボーカルと音像、冬や夜に映える美しいメロディ、果てしなく諦めを言葉にした歌、それらは安易に鬱ロックだとかメンヘラ御用達といった安い評価を蹴散らす力がある。
今回は実に10ヶ月振りのライヴとなったブラックナードフェスでのライヴ後にメンバー3人にインタビューさせて頂いたが、具体的なバンド名やジャンルとしての音楽の話はほぼ皆無だ。
メンバー3人は非常に穏やかな人達だが、決して多くない言葉は3人の確かな反抗声明である。
作為やジャンルやSNS映えといったくだらない物に辟易としている人にこそしののめに触れて欲しい。
こんな時代だからこそ、しののめの持つ暴く表現は聴く人の感受性に響くはずだから。



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・今日は約10ヶ月振りのライヴでしたが、手応えとしてはどうでした?

真下(Dr):前よりみんなの気持ちが揃い始めた感がありますね。
私はしののめに途中から加入しているので、やっとバンドらしくなって来たかな?

眞保(Gt.Vo):みんながバラバラな感じが凄かったので。



・まず今年の2月に1stアルバム「ロウライト」をリリースしてのリアクションなどはどうでしたか?

久間(Ba.Vo):活動してない割には聴いてもらえている感じはします。

眞保:Twitterとかで検索したりすると、気合いの入った感想を書いてくれている方がちょこちょこいたりするので、ハマる人にはハマるバンドなのかな?



・僕はしののめを初めて聴いた時に、不特定多数に向けているのではなくて、そこからはみ出してしまった人達に向けている音楽だと思いました。

眞保:大衆受けが嫌なわけではないのですが、自分は正直に言うと好きなバンドがあまりいなくて、それで自分が好きなバンドを作ろうっていうのがしののめですね。90年代とかだと結構好きなバンドはいるのですが。



・現行の邦楽ロック系のシーンの中ではかなり浮いてるバンドにも見えるのですが、90年代や00年代のシーンで当てはめてみるとすごくしっくりくるバンドでもあると思います。
オルタナティブな感覚が当たり前だった時代とリンクするバンドだなって。

眞保:「ロウライト」はCDとMVでアレンジが違いまして、音源の方は短いんですけど、MVの方では1分半くらいイントロを付け足したらMVを撮影・編集してくれた方に「これ聴かれねえよ。」って言われましたね。



・僕はMVを観てからCDを聴いたので、アレンジが全然違ったのはびっくりしましたが、個人的にはMVの方のアレンジが好きですね。あのイントロは聴く人を引き込むなって。

眞保:MVを観て気に入ってくださった方は「あのイントロが良い。」って言ってくれてますね。
ライヴではMVの方のアレンジで演奏してますが、まずアルバムをレコーディングした時はドラムは真下さんじゃなかったので。MVの方のアレンジでは真下さんが叩いてるのでそっちのアレンジでやっています。







・「呼吸」もCDとMVでアレンジ変わってますね。

眞保:CDの方は僕一人でのアレンジでしたが、そっちはバンドアレンジでやってみたらどうかなと思ってアレンジを変えましたね。



・今日初めてライヴを観て、やっぱり音源よりもバンド感が出ていると思いました。
ある種の生々しさや無作為さを強く感じましたね。

眞保:我々は器用なタイプではないので。



・僕がそもそもジャンルって括りが好きな人間では無いのですが、しののめはシューゲイザーやギターロックって括りで語られたりもすると思うんですよ。
でもそれは触りでしかなくて、寧ろしののめの音楽は一つのスタンダードですらあると思ってます。純粋に良いメロディと良い歌と刺さる言葉で成立してる音楽だなって。それと同時に本質的な意味でオルタナティブであると感じます。
鬱ロックだとかいうくだらないカテゴライズだったりとか、わかりやすいセンセーショナルな言葉だったりとか、そうした作為的なSNS映え狙いみたいな打算がしののめには無いのが本当に好きなんですよね。

眞保:そうした計算はないですね。少しはなきゃ
駄目じゃないかって話はしたりしますが。結局そんな計算は必要ないからやらないだけですね。



・僕はそうした打算で作られた音楽が溢れている現代に対して、しののめは「本当はそうじゃないだろ!」って暴いてる気もします。

眞保:音楽って本来は芸術的なものだと思ってるんですが、そうした芸術的な音楽が相当減っているように感じてます。



・音楽って芸術の中でも一番人に伝わりやすいものでもあると思うんですよね。
感情や思想を音と言葉でダイナミックに表現出来るのが僕の中の音楽なので。

眞保:表現の手段として音楽をやっているだけなので、必要のないものは削ぎ落とされているのかなって。



・しののめは核がしっかり見えるからこそ、響く人には本当に響く音楽をやっていると思います。

眞保:そうであり続けたいですね。



・久間さんはしののめのオリジナルメンバーですが、久間さんから見たしののめってどういうバンドなのでしょうか?

久間:「みんなおいでよー!」って感じではないけど、「ロウライト」に関しては辛い気持ちの夜とかに優しくはないけど朝まで付き合ってくれるアルバムみたいな感じなので、バンドも基本的にそんな感じですね。優しくはしないけど突き放しもしないみたいな。



・駆け込み寺みたいな。

久間:「大丈夫だよ!元気出してよ!」みたいな感じじゃないけど、朝まで一緒にいてくれるみたいな感じはしてます。



・真夜中に聴くと本当に映えるバンドですよね。

久間:そんなバンドだと思っています。別に昼間っぽいバンドではないので。陽が出てない時に聴くバンドって感じはあります。



・「しののめ」ってバンド名もそれを表してますよね。

久間:最初に曲を作った時から夜っぽい曲が多かったので。

眞保:夜っぽいバンド名にしたいなって感じで決まったよね。

久間:それで大体バンド名は略されるから四文字くらいでって感じでバンド名は決まりました。

眞保:エゴサが異常に難しいバンド名。



・真下さんの加入はアルバムレコーディング後ですよね。

久間:一年がかりでアルバムどうにか完成させたんですけど、アルバム用のアートワークの写真の撮影でまた時間がかかって、そんな時に加入しました。

眞保:色々ギリギリになってしまったんで大変でしたね。真下さんから見るしののめはどんなバンドですか?

真下:良いなって思うところは想像の余地があるところですね。
歌詞とかはちゃんと具体的な言葉で書かれてはいるんですけど、曲からイメージが浮かぶ様な曲が多くて。
元々、私と久間ちゃんが美大の先輩後輩の関係なんですけど、私は絵を描くのが好きなんですが、音楽以上のものをくれると言うか、インスピレーションが膨らんで良いなって。二人の歌声も大好きだし。
私はこういう暗いバンドをやるって思ってなかったんですけど、今はやるって決めて良かったですね。

眞保:真下さんが加入して最初のスタジオは衝撃だったらしいです。

真下:最初に眞保君に呼ばれてスタジオに行ったんですけど、何曲か曲をコピーして合わせるってなって、その時は久間ちゃんは体調が悪くてあんまり歌えなくて、眞保君はギター弾いて歌い始めるけど全然やる気がないんですよ。
そんな雰囲気だったので「この異様な雰囲気はなんだろう?」ってなって、眞保君に聞いたら「あんまりカバーやる気でないんですよね…」って。そして凄く辛い空気が流れてましたね。
私は高校生の時からドラムをやってるんですけど、バンドってもっと楽しいものだって感覚だったんですよね。だから「バンドって楽しい…よね?」ってのを投げ掛けるところから始まった感じです。そしたら二人は「楽しいって何だっけ?」みたいになって。

眞保:真下さんが加入する前はピリピリしてたので。

久間:当時はお腹が痛くなって携帯見たら眞保君から連絡が来てるとかあって、それを予知してお腹が痛くなる感じでした。

眞保:スタジオの時、全く私語無かったよね。

久間:みんな下を向いてお酒を飲むだけみたいな。それで曲合わせてピリピリした空気が流れてまたお酒に逃げるみたいな。
そんなのを数年やっていたので、真下さんに問いかけられた時に楽しいの概念の振り返りから始まりました。でも今は楽しいですね。

眞保:最近はスタジオでの私語が多すぎるかなって。でも最近は明るい…のかな?







・そもそもしののめの音楽に楽しい要素が全くないので。しののめはやはり真夜中の真っ暗な部屋の片隅で体育座りで聴くのが礼儀だと思ったりします。

久間:ロウライトが完成した当時は宇都宮に住んでて、丁度寒くなり始めた頃だったので、取り敢えず窓開けて正座して聴きましたね。そして「これだ!」ってなりました。



・しののめの持つ暗さって日常生活や人生の中で失ってしまった物に対する後悔というか…どうしても拭いきれない物悲しさや喪失感を歌ってるバンドだと思います。
しののめって僕の中で感情なり景色なり時間なりを想起させる音ってのがありまして、だからこそしののめをジャンルで括りたくないですね。

眞保:ジャンルなんて手段でしかないですから。シューゲイザーっぽい音作りとかは多いですが、それはあくまで曲の表現方法として使ってるだけで、僕はたまたまギターが弾けるからギターを弾いてるだけですし、たまたま僕の表現方法が音楽だっただけです。
パンクバンドだから奇抜な格好をして過激なことを言うってのは僕にとっては手段であって目的ではないですね。



・パンクバンドだからって全ての曲でポリティカルなメッセージを放たないとダメとかってルールは僕もないと思います。

眞保:音楽はあくまで表現の手段と考えてるので、そこが他のバンドとのノリの違いかなって思います。



・眞保さんが具体的に表現したいものとは何でしょうか?

眞保:色味だったりとか、冬の寒さだったりとか、内向的なところだと自分が思ってる事とか、そうしたものをどうやって音楽に昇華してこうかってところを考えてやってますかね。



・「楽園」という曲の歌詞に「生きる事は素晴らしくない」ってあるじゃないですか?あの曲を初めて聴いた時に「本当はそんな風に思いたくない!」って足掻いてるように思いました。

眞保:本当はかなり期待してるのかもしれないですね。人生そのものが絶望的だと感じてるので「救いはないものか?」という気持ちはすごくありますね。
何の考えもなく肯定されてるのに違和感を覚えたりとかあって、「自殺ダメゼッタイ!」とか「生きていれば良いことあるから生きましょう。」とか何の根拠もなく言ってる事が、みんなそれを何の疑いもなく受け入れてるのが本当に怖くて、だから触れちゃいけない部分を暴くというか…そういうノリはあるかもしれません。
音楽というかロックというかそうしたものがポップスとなんら変わらなくなっちゃったって感じもありますね。



・それこそ作為的なものが増えてしまったのかなって。

眞保:大量に売らないと回らなくなったんでしょうね。だからわかりやすくて作為的で消費されるものが増えてる傾向があると思います。







・ここまで眞保さんの考えを話してもらいましたが、眞保さんがしののめの中心人物じゃないですか?その眞保さんの表現に対して久間さんと真下さんはどうリンクさせてる感じでしょうか?

真下:私はイメージの拡張器でありたいなと思っていて、眞保君が曲に込めてる思想とかに触れて、そこで感じた情景とかを音に出して、眞保君が3考えてるなら6にして返したいなって。それがバンドでやってる意味だと思います。
私は空想とか妄想が好きなので、そういう情景だ!ってなったら私の中ではそういう世界になってるんですよね。それを眞保君に伝えると最初はレスポンスが良くなかったりするんですけど、合わせてるうちに気付いてくれてる事もあって、それが他人が介在する意味だと思います。



・眞保さんが描いた色をブーストさせるのが真下さんなら、そこにまた違う色を加えるのが久間
さんだと個人的に思います。一つのテーマやコンセプトに対して近いけど違う色を付け足してるというか。

久間:基本的に暗いので、根っこが暗いというか。一番暗いかも。
眞保君がデモを持ってきた時に普通にリスナー目線で聴くんですよ。それを聞いてブーストみたいにはならないんですけど…何だろうな?

真下:私はこういう意味が分かってない人がいるのも重要だと思うんですよ。自分なんでいるのかな?みたいな。そういう感覚の人も重要だなって。
私みたいにしっかりと思考を持ち過ぎてるとまたそれはそれでバンドの雰囲気とかバランスが変わりますし、ウジウジと「何で!?」って感じで久間ちゃんにはいて欲しいなって思います。無理しないで「何で私が歌っているんだろう?」みたいな人も重要ですね。

久間:分からぬままで、ずっとファンみたいな感じで所属してて、デモ聴いて「これめっちゃいいじゃないですか!!え?これ私歌うんですか?」って感じなんで。



・ますます一筋縄ではいかないバンドですよね。しののめって。こうして話していると皆さん穏やかな方ですが、根はダークサイドだなって。

久間:もしかしたら眞保君が根っこは一番明るいかも。



・次の展開は決まってますか?

眞保:アルバム出してから今日までゆっくりし過ぎたので、少し飛ばして行こうかなって。何なら今月とか来月とかには色々動こうかなって感じですね。

久間:寒い間に何かします。

眞保:冬の間だけ頑張ります。



・逆冬眠ですか(笑)。

真下:夏は夏眠します。冬は頑張るので夏の間はWANIMAみたいな明るいバンドに頑張ってもらう感じで。冬は私たちしののめが頑張ります。



・改めて夜や冬が似合うバンドですよね。次のアルバムやライヴも楽しみです。

眞保:アルバムは出しますけど、ライヴはどうしようかって感じですね。

真下:基本的に作るのが好きな人たちが集まっちゃってるんで。



・100s結成前の中村一義みたいな。

久間:レコーディングしたりとかMV撮ったりしてる方が楽しいです。

真下:でも今日のライヴで観ている人たちの顔が見れたのは本当に幸せでしたね。

久間:観てくれてる人がいるって状況が半年以上なかったので…



・しののめの音楽は今の時代だからこそ広まる筈なので、マイペースながらも頑張って作り続けて欲しいです。20年とか30年とか続けて欲しいなと。

真下:今日、割礼さんのライヴを観て、自分があの位の年齢になった時にどんな音を出してるんだろうって興味が出ましたね。

眞保:割礼すごく格好良かったな。

真下:目指せストーンズで!転がる石になります。

久間:割礼さんがMCで「公民館で練習したりもする。」と言ってたので、私たちも次のライヴはまた公民館かな?

眞保:個人的に蒲田温泉でライヴしてみたいですね。



・次のライヴはまた公民館で!ライヴハウスでライヴしないバンドって感じで。真冬の水上公園とかも良いですね!水元公園とか。

久間:寒さに震えてもらいながら。

真下:でも冬のフェスとかやりたいよね。

久間:「ロウライト」の長くなったイントロの部分を私たちは「レイキャヴィークの部分」と呼んでまして。

眞保:当時シガーロスにハマってて、アイスランド行きてえ!って思いながらフレーズ作りましたね。



・アイスランドでもライヴして欲しいですね。

眞保:シガーロスと対バンしたいと思いながら、それを目標に末長く続けていけたらなと。



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■Ry/Ry

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2013年に結成された、ex.hawkcrower、The Rabiesのメンバーが在籍する3ピースポスト・ロックバンドの2015年リリースの4曲入り1st EP。

The Rabiesというデスメタル/ニュースクール・ハードコアのメンバーが在籍するとは思えない、オーガニックでクリーンな音色が清らかに流れる作品となっている。



今作はボーカル入りの楽曲が2曲、インスト曲が2曲という構成になっている。Ryの大きな特徴はアコースティックギターを取り入れたサウンドスタイルだろう。
ポストロックそのものが現在は普遍的なサウンドスタイルとして認知され、もはや本来の意味とは少し違う認識をされてしまっているが、Ryの鳴らすポストロックはカテゴライズされたポストロックでは無く、シンプルな3ピースの編成から最大の音の高揚を生み出す引き算の美学だろう。

第1曲『Flora』から感動的な涙の音楽がスピーカーから流れ出す。
メンバー全員が卓越した演奏技術の持ち主であるが、その技術を表現力へと活かし、優しい音色の中に不思議と漂う緊張感をアンサンブルで表現。
複雑なアンサンブルを展開しているにも関わらず、技術先行型のバンドと一線を画すのは、シンプルな楽曲の完成度と、それを活かすアコースティックギターの力が大きい。
ノスタルジックなメロディと静寂の中から生まれ落ちたやわらかな生命の息吹。派手なディストーションサウンドを排除し、むき出しのままの芯が通った音の強さで勝負している。
多岐に渡るサウンドの影響をじわりと感じさせながら、筋の通った歌ものとして成立させているのはRyのセンスの素晴らしさのあらわれだ。



Ryの奏でる音は正統派であり異端だ。そぎ落としたシャープな音像の中にもバンドとしての筋力の高さが存在しており、決して砕けることのない絶対の強度を誇っている。

スロウテンポのパートではじっくりと歌を聞かせ、複雑なアンサンブルが疾走するパートでは精神の解放へと聴き手を導く。
だからこそRyはポストロック好きはもちろんだが、あえてうるさい音楽が好きな人にも触れて欲しいバンドだ。
Ryの鳴らす音は新たなる生命の呼吸そのもの。キラキラと降り注ぐ日射しのようにRyの音は聴き手の耳から体内へと優しく浸透していく。



■【精神の階層への誘い】WonderLandロングインタビュー

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 WonderLandというあまりに人を食ったバンド名を冠している3ピースバンドが存在する。
 三軒茶屋HEAVEN'S DOORを根城に積極的なライブ展開を繰り広げている彼らだが、元々はグランジバンドとして始まったバンドだ。それが短期間で音楽的変化と進化を遂げ、インストによる超長尺ポストロック的バンドへと変化した。
 昨年デジタルでリリースされた「The Consciousness Of Internal Time And Space」には既存のポストロックバンドには全く存在しない独特の歪みが存在している。トランペットやピアノの音を大胆に取り入れるだけに留まらず、多くの人を魅了する屈指のメロディセンスから、多くの人を混乱に陥れる不気味極まりない旋律まで取り入れ新たなるオルタナティブを提示する事に成功している。
 今回はオリジナルメンバーであるKoheiとShutoの二人に「WonderLandとは一体何なのか?」という事を徹底的に聞き出すインタビューを行わせて頂いた。二人の発言は人によっては挑発的だと感じるかもしれない。だけど彼らが純粋に愚直な程に音楽を信じている男たちだと伝わるテキストになっている。
 WonderLandが目指すものは固定概念からの解放であり、新世界への挑戦だ。その全容はこのインタビューだけでは伝わらないだろう。だからこそWonderLandの全容を自らの足でライブへと足を運んで確かめて欲しいと僕は願う。



・WonderLandってオリジナルメンバーはKoheiくんとShutoくんの二人だっけ?

Kohei:そうだね。

・元々はどんな経緯でWonderLandは始まったの?

Shuto:最初は俺が地元が一緒だったKoheiとオトベって奴と三人でバンドをやるって話になって、何でバンドを始めたかとかは覚えていないけど、一番最初は神楽坂でライブをやったね。
 初めてのライブはオリジナルで5曲位やったのかな?その3人でのバンドはオトベが就職して抜けたから一回限りだったね。俺は大学は軽音サークルにいたんだけど、そこの同級生のベーシストが代わりに入って始めたバンドがWonderLandって感じだね。

・その頃はどんな音楽性だったの?

Kohei:マリオとかやってた(笑)。

・マリオってスーパーマリオ!?(笑)。

Kohei:そうそう。

・マジで!?

Shuto:吉祥寺のペンタでやってたわ。

・その頃はまだ遊びでバンドやってた感じ?

Kohei:遊びだったね。最初ギャグで始めた感じで2012年の3月に一回だけライブやったけど、そこから次のライブまでかなり間が空いて、その間に曲を作ってた。二回目のライブが2012年の12月だったね。

・その当時はどんな方向性でやりたいとか考えてた?

Kohei:いや全然。その当時は演奏自体ちゃんと出来ていなかったんだよ。俺はギター始めたばかりって感じだった。ベースの奴は上手かったけど、それ以外はマジで論外だったわ。

・2013年からライブも本格的にやり始めた感じ?

Kohei:2013年の初旬にライブはそれなりにやっていたけど、二人目のベースがそこで辞めちゃって、その後に九州から上京してきたタイラって奴が三人目のベースとして加入した感じ。だから今のベースのDaikiは四代目だね。タイラがいた頃は5拍子で10分位の曲とかやってたなあ。
 ちゃんと活動する様になったのはタイラが入ってからで、その時期になると月に3本とか4本はライブをやる様にはなってた。でもタイラが辞めて、Daikiが加入してからやっと本格的にWonderLandが始まったと言えるのかな?俺の中ではまだ思い描いている音がちゃんと出来ているとは思ってないから、WonderLand自体まだ始まってはいないって所ではあるけど。

・僕が初めてWonderLandを観たのが2014年の10月で、それ以前の音は「Welcome To Woderland」でしか分からないから最初はグランジバンドだったってイメージかな?

Kohei:「Welcome To Woderland」(現在は廃盤)は出来が気に入ってなくて、お蔵入りにしちゃった感じだけどね。俺らとしては過去は既に蛇足でしか無いんだよね。2014年頃の曲も音源化して無くて、アレも出来が気に入らなくて廃棄しちゃっているし。だから過去よりもこれからって感じだね。







・じゃあ昨年リリースした「The Consciousness Of Internal Time And Space」について聞こうかな。あの音源は配信でのリリースだったけど、音源としてのコンセプトとかってある?

Kohei:アレは人によってはポストロック的なのかもしれないけど、そこは狙った感じでは無いなあ。

・あの音源はポストロックのテンプレートからは大分外れた所にある感じだったね。

Kohei:それは俺らがテンプレートから外れたい訳じゃなくて、単純に出来ないってだけなんだけどね。

・でも人からしたら○○っぽいみたいな所からは完全に逸脱していると感じると思う。メロディアスさとそうじゃない部分の落差とか激しいし。既存の音を借りない音楽だと思った。

Kohei:○○っぽいって事は劣化版って事じゃん?それじゃ意味が無いんだよ。

・元々は君たちはグランジバンドだったし。

Kohei:それは俺らのルーツではあるからね。でもそれだけで終わるのは嫌だったからさ。「The Consciousness Of Internal Time And Space」自体もあの時のWonderLandのベストを作ったに過ぎなくて、その時その時のベストを出すしか俺らは出来ない。
 そもそもこういう物を表現したいとか、こういう事を発信したいとかなんて作品には反映されないし。結局そういうのって言葉の話だから、精神性って歌詞でしか反映されない物だから、それは音楽の話では無いと思うよ。だから歌詞は俺らには必要ない。

・じゃあ音楽には何が反映されていると思う?

Kohei:精神の階層かな。

・そこはもう言葉に出来ない部分だよね。

Kohei:言葉に出来ない訳じゃ無いとは思うけど、それを言葉にするのは難しいよね。

・今のWonderLandって歌や言葉自体が無いし。

Kohei:俺らには音楽を「使って」何かを発信するって考えは無くて、音楽をやる事自体が目的だから。音楽をやるっていうよりも曲だね。

・その曲の中で何を生み出したいとかっていうのはある?

Kohei:単純にハイになりたいだけだよ。

・Shuto君はKohei君が作った曲にドラムで自分のカラーを加える事はどう考えている?

Shuto:ドラムってまあ直感的に感じやすい楽器だからねえ。でもKoheiが持ってくる曲ネタだけじゃ完成系は全然見えないし、どう表現するかとかってのは言葉で表す事は出来ないと思う。

・でも僕は音楽が一番想像力が働く物だとは思っている。

Shuto:精神性云々ってのは俺は考えていないから。自分が今まで聴いて来た音楽をどう消化してみたいなのも無いし。

・でも反面教師的な消化はあるでしょ?

Shuto:それはあるね。

・だからWonderLandって精神性とかコンセプトとかじゃなくて、自らの音を聴き手の解釈に委ねているんだなって感じたよ。

Kohei:それで良いんだ。俺らの意図は関係ない。だから解釈の余地が大きければ大きい程、それは優れた作品なんだよ。

・さっき言った外している云々ってのは解釈の余地を残すって事なのかな?

Shuto:「俺たちはこういう事をやってますよ。」みたいなのは必要ないからね。

・イマジネーションとしての音楽なのかな?

Kohei:主義主張って言葉で言う方が手っ取り早いから、だから歌詞が大事とかってなって歌を入れるんだと思う。それは音だけで自分の思考を体現できないからだと思う。そうなるともう音楽では無い。少なくとも本質的には音楽ってダイレクトな物であって、必ずしも言語を媒介にする必要は無い。

・音だけで何かを感じさせるとなると、作り手の意図は無いに等しいのかもしれない。

Kohei:それで良い。意図的にやるのは自由だけど、意図した通りに受け取って貰えるかは分からないし、結局のところ意図は後付けだからね。







・曲を作る際のインスピレーションってどこから来る?

Kohei:それは感情とか景色では無くて、それ以外の何かだね。他の誰かの音楽でも無い。だから分からない。多分、夢から来ているんじゃないかな?寝ている時の無意識の作業で、そこに俺の意識が関与する余地は無い。無意識下で行われる何らかの処理が音楽だって俺は捉えている。

・無自覚で作った物を自覚した状態で演奏するってどう思う?

Kohei:まあライブの時も特別何かを自覚している訳では無いからね。寧ろ「これってこういう曲なんだ!」って演奏してみて初めて分かる。

・意図してない物の積み重ねだからこそ君たちはジャンルを名乗ってはいないとも思うし。

Kohei:まあジャンルはオルタナで良いと思う。そもそもジャンルは音楽じゃ無いし、音楽を騙る為の道具だよ。結局は音楽の説明書でしかない。
 多分スポーツ選手とかと同じで、感覚で分かる人にとっては説明書は必要ないけど、その感覚が無い人は説明書が無いと伝わらないし、そういう意味では説明も大事だと思う。

・もっと言うとオリジナリティ溢れる事をやると、ある程度の取っ掛りとしての説明は必要だし、君たちは入口の部分はちゃんと作ってはいるよ。

Kohei:それは必要だからやるけど、その入口の先は俺らも分かってないからね。

・だからWonderLandって感覚に訴える音楽なんだなって。

Kohei:それが出来るのが音楽だと俺は思っているよ。まあ無意識の裏付けとしての提示なのかなって気はしている。それが実際にコンセプトになっているかは分からない。

・それは無意識の裏付けというコンセプトになるんじゃない?

Kohei:関連性があるだろうというだけの話で、実際意識と無意識がどんな関連を持って音楽に反映されているかは分からない。

・だから逆に聴く人を選ばなくて済むのかもしれないし、入口の広さに繋がるんじゃないのかな?逆に「こうですよ。」って提示してしまうと、分かる人にしか分からなくなると思う。

Kohei:説明無く提示出来るのがベストだね。でも、説明をしても説明になってないのかもしれない。
 例えばある曲があって、アルバムタイトルがあって曲名があるとする。そこの関連性は誰も分からないし、タイトルが分かりづらいと余計に関連性が分からない。だからタイトルを付けている時点で俺は説明はしているとは思う。それに、時間という軸の中で発生した意識と無意識の座標が同じであるのも俺は分かる。でも、その関連性は本当には分からない。

・その関連性の解釈は聴く人が決める事だよ。

Kohei:例えばNIRVANAの「NEVERMIND」は「NEVERMIND」って曲は収録されてないじゃん?でもアルバムタイトルは「NEVERMIND」だし、関連性があるかとかって結局後付けじゃないかって思う。



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・その関連性の話に繋がるかは分からないけど、なんで「WonderLand」ってバンド名にしたの?

Kohei:「WonderLand」って三つの側面があって、その一つとして言葉から音楽性が想像出来ないってメリットがある。別にバンド名は「椅子」とかでも良い。

・「WonderLand」ってシンプルな単語だよね。

Kohei:誰もが知ってる言葉ではあるからね。でも意味が一番知られてない単語かなって。残り二つの側面に関しては企業機密で(笑)。

・でも「WonderLand」って楽園みたいなイメージをみんな思い浮かべると思うけど、そことはかけ離れた気持ちの悪い音楽だよね。

Kohei:みんな「WonderLand」って言葉の本質を理解してないとは思う。ユートピアみたいなイメージをみんなするけど、それは間違えているし、言葉と音楽の関連付けをするならもっと言葉の意味を理解しないとね。でもそこは要求はしない方が良いと思ってる。

・だから音楽に対して表層的な部分だけを捉えている人が多いのかもしれないね。

Kohei:音楽って分からないじゃん?それは殆どの人間が精神の階層に行き着く手段を持ってないからなんだよ。

・だから思考を放棄してしまっているのかもしれない?

Kohei:放棄というよりも思考の手段を持ってないんだよ。だからどうしようも無くなるんだよ。

・音楽は思考の為の手段なのかもしれない?

Kohei:それはあながち間違いではないかも。

・そもそも五感ってなんなのかを僕は理解出来てないんだよ。結局は脳の伝達だし。それを言説化するのは僕には難しいかな。

Kohei:人類はそれには近づいているとは思うよ。

・それが可能になったら人間はどうなると思う?

Kohei:それを理解した人間は音楽を始めると思う。ペンギンとかリスは音楽をやらないじゃん? でも、人間は音楽を奏でる事が出来るし、人間の人間性を示すために音楽に走ると思う。別に演奏に限らず聴くって行為もそこに入るし、もっと音楽と密接な関係になろうとすると思うな。だから人間の構造が解明されたとしたら、みんな焦って音楽を始めるんだよ。
 人間の一つの側面として論理性ってのがあって、それはコンピューターには勝てないし、人間はそこに絶望してしまっている。だからどこまでが人間でどこまでが人工知能か分かっていたら音楽を始める。それが分からないと何処までが音楽で何処までが音楽じゃないかも分からないし、何処までが論理で何処までが非論理かも分からない。だから大半の人間はコンピューターと変わらないし、劣化版コンピューターになってしまっているんだよ。



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・この渋谷って街に来る度に思うんだけど(今回のインタビュー収録は渋谷で行っている)、記号がウロチョロしている様に見えるんだよね。記号化された人間が歩いているなって。僕もそんな記号の一つではあるとも思うけど。

Kohei:性能の悪いコンピューターだからね、絵文字とかスタンプとか多用する人も多いし。最早言葉をちゃんと使えているかも怪しいじゃない?

・大半の人がそこに対して足掻いてもいないよね?

Kohei:コンピューターと同じだって分かってないからだよ。自分が人間だと勘違いしてて。

・凄くざっくりとした言い方になるけど、何かを疑ったり、想像するってのが人間としての在るべき姿なのかなって思ってる。でも僕はそこを理解してはいないし、それこそさっきKohei君が言っていた「夢の事は分からない。」ってのと同じなんだよ。それに喜怒哀楽すら僕は言説化は出来ない。

Kohei:それは後付けの統計の話でしかないよね。そもそも感性って常に正しいんだよ。それが面白いかつまらないかってのはあるし、つまらない物はコンピューター的な感性だよ。何らかの発信に対して同じレスポンスしか出来ないようならそれはコンピューターと同じ。

・レスポンスなんて多種多様だし、それこそWonderLandを聴いて何を感じるかなんて人それぞれだし、そこに対して明確な答えを何も提示してないからこそ想像させる音楽だなって思う。

Kohei:Googleとかが人工知能に絵を描かせたりしているじゃん?もし人工知能が音楽を作る事が出来たら何か変わると思うよ。
 だからJ-POPとかがやっている事も同じような曲調で同じような歌詞の物を量産していてプログラムと変わらないし、それが自動で出来る様になったらそれらに価値は無くなる。そうなったら西野カナは必要なくなって、自分が聴きたい西野カナの曲を人工知能がその場で作ってくれるからね。
 そうなると真の音楽って物がはっきりするし、人工知能が作れない音楽が必要とされると思う。俺たちはそんな音楽を作り続けるだけに過ぎない。だから色々な音楽を聴いて自分の中にデータベースを作って、その上で今までに無い新しい音楽を作り出したいね。
 天才を名乗るのは簡単だけど、そんな物は自己満足に過ぎないし、先ずは色々な音楽を聴くこと事が大事で、後は無意識に任せるだけかな。それで良いと思う。



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ライブスケジュール

5/2 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
5/29 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
6/18 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR




【オフィシャルサイト】http://www.wonderland-japan.com/
【Facebook】https://www.facebook.com/friends.inn.wonderland/
【twitter】https://twitter.com/WLand_Official
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「The Consciousness Of Internal Time And Space」購入ページ(iTunes)
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photographer : Takashita Toru&セオサユミ

■All Creation Mourns/Presence of Soul

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 Yuki嬢とyoshi氏はかつて東京酒吐座に参加していたり、ベースの中山氏はワゴムにも参加していたりとメンバーが多岐に渡って活動しているPoSの実に7年振りとなる待望の3rdアルバム。ミックス・エンジニアは前作に続き中村宗一郎氏。
 フランスのLes Tenebres Recordsからリリースされており、bandcampでのデジタル販売と物販とオフィシャルサイトでの通販の方でのアナログ盤の販売という形式で入手可能となっている。またデジタルとアナログ盤の方では収録曲に若干違いがあるが、僕はアナログの方で購入したのでそちらで紹介の方は書かせて頂きます。



 前作「Blinds」からバンドの編成自体も大きく変わっており、それを機にシューゲイザー×ポストロックな音をよりヘビィにさせてポストメタル化を果たしている。前作の儚いシューゲイザーサウンドを受け継ぎながらも、スラッジ要素も加え美の旋律とドス黒い轟音とヘビィネスが渦巻く様は日本のYear Of No Lightとも呼ぶべき音だ。そこに儚げなYuki嬢のボーカルが乗るという幻想の音。
 第2曲「The man who leads the mad horse」から明らかにメロディにゴシックな耽美さとダークさが存在しており、消え入りそうな美しさが奏でられていると思ったら、終盤では刻み付けるリフの一転攻勢からの凍てつく波動の様な破格のスケールのブリザードノイズへ!!
 wombscapeのボーカリストであるRyo氏がゲストボーカルを務める第3曲「Genom」は更にスラッジ色を強め、リフと轟音が渦巻く中で聴かせるRyo氏のボーカルはヒステリックで痛々しく、より曲の持つ絶望感を加速させる。
 宗教的な空気感を感じる旋律が歪みを想起させ、重力に押し潰されそうなスラッジリフによる悪夢である第4曲「Teaching of necessary evil」は現在のPoSを象徴する楽曲になっている。この曲をライブで初めて聴いた時に僕は「PoSは日本のYear Of No Lightや!!」なんて興奮したんだったな。
 だけどダークネスと暗黒スラッジだけで終わらないのがPoSだ。前半の楽曲も複雑に絡むギターと構成美を生み出すリズム隊の骨組みがアーティスティックな空気を確かに生み出し、ヘビィさの中でメロディやストーリーを聴き手に想起させる事に成功している。
 終盤は一転して黒を乗り越えた先の救いの白を描く楽曲。ピアノの音色とストリングスとシューゲイジングギターとYuki嬢の歌声のあまりの美しさに言葉を忘れそうになる第5曲「You'll come to the apocalypse at last」はMONOにも負けないであろうレベルの壮大なスケールとクラシカルさ。終盤のパートはGY!BE辺りにも通じるクライマックスであり素晴らしい!!
 そしてよりオーケストラ的な音色が増幅した最終曲「circulation」の清流の音から天へと導かれる高揚感と疾走感のラストは「今日を精一杯駆け抜ける君に鼓動を刻む明日は来る」って気持ちになってしまう事間違いなし。



 7年振りの3rdという事もあって前作から音楽性も大きく変化しているが、PoSの描く美しさをより際立たせる為のポストメタル化は必然であったと思う。日本でここまでのクオリティのポストメタルな音を聴かせるのはPoS以外だと現在のTHE CREATOR OFややWonderLandや現在のOVUM位しかいないんじゃないだろうか?
 ドス黒い轟音とヘビィネスの凄まじさから、その先にある美しい原風景の様な救いの音色には心が洗われる事間違いなし。国産ポストロックの新たなる進化を刻み付ける名盤となった。



■De Fragments/Milanku

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 2013年秋の魂を震わせまくった来日公演から2年、今年で結成10年を迎えるMilankuの3rdアルバムが遂に届いた。リリースは勿論Tokyo Jupiter Recordsから。来日公演後にオリジナルメンバーのギタリストの脱退があり、後任にはDark CirclesのFrancoisが就任。Francoisは今作のアートワークも手がけている。マスタリングはHarris Newman (Godspeed You! Black Emperor, Eluvium, Baton Rouge)が担当。



 メンバーチェンジこそあったけど、今作でも基本的な路線は何も変わっていない。轟音系ポストロックとポストメタルを基軸に、真正面からドラマティックな轟音をぶつけてくる。正統派ではあるが、メロディセンスは更に磨かれている。
 静謐さから激へと展開していく定番な手法は今作でも健在だし、常にメランコリックが泣き叫ぶギターとダイナミックなビートと男臭さ全開の魂の咆哮。シンプルな手法を用いているからこそ不純物ゼロのクリアな激情はどうしても胸に込み上げる物しかない。
 大きく変化した点があるとしたら長尺曲が大分減り、4分台とかのコンパクトな楽曲が主体になり、楽曲展開にもサウンドにもハードコアな直情的なアプローチが増えた事だろうか。マーチングの様なドラムの応酬から前作以上に切れ味鋭く切り込む轟音フレーズが印象深い第1曲「Fuir Les Jours」からもバンドの進化は伺える。
 前作でもこれでもかと展開されていた白銀の轟音は幻想的なメロディはそのままに、肉感的な感触も増えていると思う。第3曲「On S'épuise」はこれまでのMilankuには無かったアプローチが見え隠れし、第4曲「La Dernière Porte」の疾走感もこれまでには無かった音だ。
 そんな中でもMilanku節とも言える轟音系ポストロックと激情とポストメタルのハイブリットさ、繊細さとダイナミックさが生み出す揺さぶりの激情の集合体な第5曲「L'ineptie De Nos Soucis」は今作のハイライトとも言える名曲であり、今後のMilankuの代表曲となるだろう。
 第6曲「Dans Les Absences」ではインスト的なアプローチを繰り出しながらも終盤ではnone but air (at the vanishing point) のnisika氏のゲストボーカルが生々しい血の叫びを披露。そしてラストはMilanku史上最もポストメタルでヘビィな「Ce Fut Quand Même Notre Histoire」で寒々しい世界観を生み出しつつも、それを吹き飛ばす熱情で締めくくられる。



 地道にだけど着実に歩みを進めてきたMilanku。国内外問わずに短命で終わってしまうバンドも多い中、10年に渡って活動を続けこうして3rdアルバムをリリースしたのは何とも感慨深さがある。
 多少の変化こそはあるが、それは進化という言葉の方が正しいし、1stの頃からMilankuは優しい至福の轟音と激情をブレずに描き続けている。それが僕は本当に嬉しい。今作も前作同様に至高の一枚。購入は勿論Tokyo Jupiter Recordsのストアの方で可能だ。



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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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