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■How Little Can Be The Orchestra/A Journey Down The Well

Fluttery RecordsというポストロックやアンビエントをリリースするレーベルのオーナーであるTaner Torun氏による男女二人組のモダンクラシカルユニットであるA Journey Down The Wellの2011年発表のEPが今作だ。モダンクラシカルというエレクトロニカの先の静謐で柔らかな音でありながらも、その厳格さが売りの新しい音楽であるが、今作もそんなモダンクラシカルの良質な作品であり、柔らかな音が聴き手を包み込む全4曲だ。
作品全体としてストリングスの音がかなり大きな比重を占めており、アンビエントな電子音を随所に盛り込みながらもメインはあくまでもクラシカルなストリングスの旋律であり、そのオーガニックさと柔らかで包み込む感触を持った音は聴き手の五感を静かに刺激し、音で安らぎを与えてくれる。だが決して優しい旋律が身を包むだけの作品では無く、温もりの中に微かに潜む鋭さも今作の大きな魅力だ。反復するストリングスの壮厳さが生み出す空気はdオーガニックでありながらも、どこか強い芯を感じさせてくれるし、ふわふわと漂う音の粒子が微かに輝き、美しい原風景を見せてくれる。第1曲「How」や第2曲「Little」はそんな彼等のモダンクラシカルを存分に味わう事の出来る楽曲である。しかしその中でアンビエント・ドローン色の強い第3曲「Can Be」なんかを入れる事によって作品に上手い変化をつけているし、そういった楽曲の中でも厳かなクラシカルさをしっかりと出せるセンスは流石だ。第4曲「The Orchestra」は完全にアンビエントに振り切れた楽曲であり、静謐で不穏の旋律が繰り返されながら深い森に迷い込んだかの様な情景を生み出している、サンプリングされた動物の鳴き声なんかの音がまた楽曲の空気を上手く作り出しつつ、途中から入ってくるバイオリンの音色が多くの感情を語る様な印象を与えてくれる。静かに流れる水の様でもあり、霧雨が降っている様な情景を感じさせてくれる音の粒子は本当に五感を刺激する情景としての音である。僅か4曲の中で静謐で厳かな物語を描くそんな作品に仕上がっている。
モダンクラシカルという名の音楽に僕はあまり触れた事が無いのだが、ストリングスが語る音色は多くの情景を描く豊かさを持ち、それを機軸にしながらもアンビエントなアレンジを加える事によって柔らかで優しいだけで無い、厳かさと不穏さもしっかりと描く幻想的な作品であると言えるだろう。4曲入りのEPではあるが、今作のクラシカルかつ流暢な音の波には酔いしれてしまう。
今作は下記のBandCanmのページにてCDでもデータのダウンロードでも購入可能である、またこちらも下記リンクの日本のAmazonの方でもMP3形式でダウンロード販売しているので気になった方は是非その幻想的な音に触れてみて欲しい。
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