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■【激昂は怨念と共に】kallaqriロングインタビュー

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 本州最北端青森県を拠点に活動するハードコアバンドkallaqri。一地方のハードコアバンドでありながら、ツインベース編成の変態的スタイル、呪術を感じさせる不気味極まりないクリーントーンのコード進行、そして圧倒的爆発力とハードコアバンドとして圧倒的なポテンシャルを持つバンドだ。
 その実力は青森のバンドでありながら東京・大阪でも少しずつ知れ渡り、着実に名前を全国区へと広げつつある。その一瞬すら瞬き出来ずに直視するしか無くなる瞬発力とタフネス溢れるライブパフォーマンス、メンバー全員が喧嘩しているかの様な暴力性。kallaqriは単なる青森ハードコアとか激情ハードコアでは片付ける事は出来ない。
 今回、kallaqriの東京遠征ライブのタイミングでメンバー全員へのインタビューを敢行させて頂く運びとなり、バンドの歴史やルーツだけでなく、青森という土地でバンドを続ける意味、そして地方シーンのリアルについて色々と聞きまくったテキストに仕上がっている。是非とも一読願いたい。



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・先ずはkallaqriの結成の経緯を聞こうかな。

一瀬章(Ba):高校の時に俺と優作と隼也でハードコアパンクのバンドを組んでて、それが解散してからkallaqriを始めたって感じだね。

・kallaqriは最初からツインベースだったの?

吉田隼也(Vo):kallaqriは二つのバンドが合体して結成された感じで、そしたら偶々ベースが二人いたって感じ、結成当時はツインボーカル編成でもあったね。だから最初は6人編成だった。
 それでメンバーチェンジなんかもありつつ、徹と邑宇士が入って今のメンバーになったね。今のメンバーになったのは2014年の秋口とかかな。

・ツインベース自体は狙ってやってる訳じゃ無かったのね。そもそも章はベースにギターアンプ繋いでいるけど(笑)。

吉田:メンバーたくさんいるとライブが面白いかなと、pg.99みたいな(笑)。でも最初の頃とか本当に酷くてベースの音が歪み過ぎてるみたいな所から始まったからね。これから何をやるんだろうとか、ツインベースをやる意味とかを考えたりもしたし。

・それぞれの前身バンドからどんな音楽性をやりたいとかあった?

吉田:結成当時は曲ネタを持ってくるのは大体は章っていうのもあるから、章がビジョンは担っているのかな。

・音楽性的には激情ハードコアとかカオティックハードコアになるんだろうけど、既存の物とは全然違う感触の物を出しているよね。

一瀬:俺はThe Blood Brothersみたいなツインボーカルのバンドがやりたくて、そこに激情ハードコアエッセンスなんかも入ってきて…その頃は国内のSWARRRMやDEEPSLAUTER、Spike Shoesの影響なんかも受けつつ全部ごちゃ混ぜみたいな感じだった。

・今の話聞いていると明確な目的とかコンセプトって無い様にも見えるね。

羽賀優作(Gt):その時に思いついた物でやりたくなった事があって、その時に一番声がでかいメンバーの意見を取り入れてるって感じはする。「俺これ絶対やりてえ!!」って事があるなら「そんなに言うならそれやろうか!」って流れにいつもなっているね。

渡邉徹(Ba):でもやりたい事に関して意見は好き勝手にそれぞれが言うけど、それをやる為にはちゃんとメンバーの同意を得て、それでバンド内の民意が固まったらそれをやるって決定事項にしている感じかな。

吉田:うちは民主主義だから。青森民主主義人民共和国だから(笑)。
俺たちが元々やっていたバンドがジャパコアとファストコアが混ざったみたいな…例えるなら大阪のTHE FUTURESの影響を凄い受けてたね。

羽賀:当時、章が「THE FUTURESって格好良いんだ!」って聴かせてくれたんだ。

・THE FUTURESってバンド名が出てきて、kallaqriとTHE FUTURESは凄いリンクする部分があるって今気付いた!!それと青森ってローカルな地域でこうした他の地方のバンドを掘る原動力って何なのかなって。

一瀬:学生の頃にハードコアパンクが好きになって、一回り以上も歳が違う大人の人に色々聴かせて貰ったりとかかな?高校生のバンドのライブの最前列に高校生が一人もいない環境だったから。

吉田:いかつい格好した大人の人達ばっかりで。正直怖かった。

羽賀:まぁライブ見てる人達からしたら隼也が一番怖かっただろうけどね(笑)。

・地元の仲間同士で格好良いバンドを教え合ってみたいな。それは今のkallaqriにも繋がってるでしょ?

渡邉:今でもメンバーそれぞれが今聴いてるバンドの情報交換とかは凄いしているね。

羽賀:俺と章と隼也に関しては10年以上も一緒にバンドやってる訳で、俺は最初はハードコアなんて聴きもしなかったし「なんだこのうるせえの!」って思ってたけど、章がこういう音楽やりたいっていうのがあって、仲良い友達の為に「うるせえ音楽だなこれ。」って思いながらやってた。
 でも10年以上もやっていると自分の好きな物も変わっていったし、みんなの価値観が融合していったね。徹と邑宇士とも何だかんだ3年4年とか一緒にやっていて、今やっと5人での音がくっついている気がする。

・優作は元々どういう音楽が好きだったの?

羽賀:レッチリとレイジでちゃんと音楽を聴くようになったかな。一番最初に買ったCDはモーニング娘。の「LOVEマシーン」(笑)。でもその次に買ったのがレイジの1stとかだった。

渡邉:邑宇士が一番最初に買ったCDは?

佐藤邑宇士(Dr):だんご三兄弟…

全員:(爆笑)

吉田:前身バンドのEXITを始めた時も青春パンクからRancidとかの洋楽パンクに入って、そのあとLIP CREAMやGAUZEからジャパコアとかに流れて…

・章がみんなの価値観を良い感じに作ってる気がする。

一瀬:最初はそうだったかもしれないけど今は別にそんな事は無いかな。

・でも良い感じで他のメンバー影響は与えてる気がする。

吉田:一番最初の発端としては確かにそうだったよね。変な物を持ってくるのは大体章だし(笑)。



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・言ったら目標としている先輩とか伝説的バンドがいて、その影響下で違うことをやりたいみたいのもkallaqriはあんまり無い感じもする。

一瀬:だからハードコア界隈からもメタル界隈からもライブ誘って貰えてるし、それは本当に有難てえなって。悪く言えばどっちつかずな立ち位置なんだろうけど。

渡邉:でもハードコアをやっているって自覚はある。うちらの音楽的にメタル成分はゼロだからね。メタル出身のメンバーもいないし。

一瀬:誘ってくれるメタル系のバンドはなにか共通するものを感じ取ってくれてるんだと思う。変態っぽさとか(笑)。

・ハードコアをやるって明確な軸以外は余計な価値観に囚われて無いと思うよ。今の方向性になった切欠って何かな?

吉田:kallaqri初期からエモヴァイオレンス的な部分はあったよね。

一瀬:RAEINとかOrchidとかtragedyとか激情ハードコアって括られてるのを格好良いなって思いながら曲作ってた。今は一番新しい曲とかは優作が作っているから、特に俺がコンポーザーって訳でも無いかな。

羽賀:基本的には誰かのアイデアをみんなで肉付けしたり切り崩したりしながら当初とは全く予想もしてない形の色々な呪いの人形を作ってる(笑)。うちの曲はみんなの時間や金や精神力を削って魂込められた呪いの人形だから。

渡邉:喧嘩しながら曲作ってって感じかな。だから1曲出来るのに1年かかってとかはザラにあるね。

・それで去年2曲入りシングル「カイホウ」を出したし、いずれ出る1stアルバムはどんな物になると思う?

羽賀:そこは個人個人で全然違うことを考えてる気がする。まあみんなで共通している部分は「早く作りたい。」って所だね。
アルバムは本当にこれからスタートって感じ。

一瀬:東京でやってるバンドに比べると、うちらみたいな青森バンドや他の地方のバンドって色々ハードルが高いというか、金とか仕事とか距離とかの制約もあり、時期によってはバンド以外のことに時間が取られてしまっていることもある。冬になると雪が5メートル積もる街だから。



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・実際に東京にライブで遠征したりとかしてて、東京と青森の違いとかって感じたりする?

佐藤:地元でやるより他の地方に出てきた時の方がやっぱり緊張感はあるな。青森だと知り合いが多いから気持ちがフワッとしちゃう感じする。東京は本当に色々な人が色々な事をやっている感じ。

吉田:青森のバンドも東京でライブをしていないだけで、東京でライブやったら凄く評価されると思うんだ。ATHLETIXとかSource
Ageとかみたいな先輩バンドもいるし。

・かの青森最後の詩人ひろやーさんとか!それこそ人間椅子も青森出身だもんね。

一瀬:ひろやーさんとか10年以上前から仲良くて、有名人感は全く無いんだけどね(笑)。

羽賀:青森の外の人からすると凄い有名人みたいなんだけどね(笑)。身近すぎてピンと来ない。

・その身近に感じるって部分は正にローカルならではだよね。東京だとやっぱり世代だとかキャリアみたいな区分もあるのかもしれないけど、地方ってそういうのはあんまり無いのかもね。

吉田:先輩後輩とかってのは青森でもあるけど、東京に比べたら全然緩いかな。徹も元は中学の先輩だけどkallaqriやっててそういうの感じた事ないし。

羽賀:ひろやーに関しては毎週飲んだり遊んだりしてるからそんな感じは全くない(笑)。

吉田:ATHLETIXとSource Ageは先輩として本当にリスペクトしてるし、だからこそ先ず最初にブチ殺すべき目標でもある。

・近いところだと山形はハードコアが熱い土地だと思うし、そうした身近から受ける刺激ってローカルのが大きいのかもね。

一瀬:でも刺激の数で言ったら東京のがダントツで多いよ。何でもあるし、色々なバンドが沢山いるし、それが毎週どこかに行けばライブを観れるって環境は凄いし、そりゃ若くてセンスあるバンドたくさん出てくるわと思うよ。

羽賀:あっちでEnvyやってて、こっちでkillieやってて、また別の所に外タレ来ててとか(笑)。

・俺は栃木出身だから言うけど、そこまで色々溢れてるのは都内近郊だけだよ。栃木も格好良いバンドは勿論いるけど、絶対数はやっぱり東京に負けるし、その感覚って他の地方出身者と青森の君たちと近い部分だと思う。

羽賀:だから東京みたいにいつでもどこでも何かやっている場所を出てしまったら、他も全部同じだと思う。

・ローカルのバンドってホームだけじゃなくて、色々な場所にカチコミに行かないといけないよね。

一瀬:「田舎舐めんじゃねえ!!」って思いながらカチコミしに来てるよ。

羽賀:別にどこで誰と対バンしようとも「全員殺す!!」って思ってるし、青森だろうと東京だろうと他の地方だろうと「全員殺す!!」以外考えてない。どんなに仲良いバンドが青森でライブしに来てくれても、それがリリースパーティとかでも「殺す!!」以外には無い。一緒にライブするんだったら、取り敢えず殺そうと(笑)。でもそれ以上に仲良くなりたいと思ってるよ。

・共闘する仲間ではあるけど、対バンの時は「殺す」と。

吉田:どのバンドも「殺す」って気持ちはあると思うけどね。言い方おかしいけど。

・東京・名古屋・大阪みたいな大都市圏って地方のバンドも沢山来るし、sekienみたいに姫路からカチコミしてくるバンドもいるじゃん。それらのバンドに対して東京・名古屋・大阪のバンドも「お前ら分からせたるわ!!」って地方バンドに対して闘志をむき出しにしてると思う。
 例え東京バンドだけ出るイベントでも「ブチ殺せ!!」って気持ちでライブしてる筈。kallaqriのライブ観て毎回「こいつら殺しに来てるな!!」ってのは凄く感じるよ!!


羽賀:当たり前じゃん、こっちは青森から来てるんだから(笑)。時間も金も使って遠征に来てる訳だから気合入ってない訳無いじゃん!家族とか友人には少なからず迷惑承知でやらせて貰ってる事だし、それで適当な事をやるなんて有り得ないよ。

渡邉:東京でやろうが青森でやろうが大阪でやろうがkallaqriでやることは何も変わらないね。

羽賀:違いがあるとしたら遠征だと知らない人が多いからちょっと緊張するな。「お友達になりたいな。」みたいな(笑)。

・でもkallaqriの事を呼んでるバンドやイベンターさんもいる訳じゃん、そういうのって凄く大事だよ。

吉田:こうやって見つけてくれるのは本当に有難いよ、見つけてくれなかったらずっと青森だけでやるしか無かったし。なかなか行く事がない
 新潟でやれたのもANCHORのお陰だし、大阪でやれたのもSTUBBORN FATHERのお陰だし。繋がりとか無しでいきなり誘って貰ったりそういうのがたくさんあるよ。しかも、実は青森で受け入れて貰えるようになったのもここ最近なんだ。

一瀬:kallaqri始めて5年近くはみんな、何やってるか分からねえしって感じだったもん。実際ひどかったんだろうけど(笑)。でも次第にネットやSNSでkallaqriの話題をしてくれる人が出てきて、それで青森の人たちも近くにいたうちらをようやく評価してくれたんだよ。

渡邉:逆輸入みたいな感じで(笑)。でも最近はハードコアに限らず、激しい音楽が根付いてきた感覚は凄くある。流行りものの影響も少なからずあるけど。

一瀬:「何アレ!?」って言われなくなって良かった反面、また違う難しかったりする事も出てくる時もたまにあるな。でも評価されるのは本当に嬉しい。「何か分かんねえけど凄い!!」とか「何か分かんねえけどこのバンド好きだ!!」って言って貰えたら凄く有難い。別に音楽詳しい詳しくないとか関係無く「何か分かんねえけどヤベエな!!」って言ってくれる人も結構いてね。

・もし君たちが東京のバンドだとしてもそこは変わらない?

吉田:変わらないよね。この熱量のまま同じことをやるんだと思う。だって何かを急いでる訳でも無いしさ。ライフワークになってるんだと思う。

羽賀:東京いたら違ったって思うのは精々練習場所の問題とかかな。

一瀬:東京にいたから曲作り早くなるとかも無いし(笑)。

・言ったら所詮は生まれた場所の話ってだけでしょ?

羽賀:うちらは地元LOVEだから高校出ても青森離れなかった訳ですよ。邑宇士に関しては間違えて青森に迷い込んでしまったのが悲劇の始まりだけど(笑)。

・邑宇士は地元どこなの?

佐藤:秋田。

・割と近所じゃねえかよ!!

吉田:八つ墓村みてえな所な。

一瀬:邑宇士の地元本当に凄かったもんな。

渡邉:本当に山しかない。

一瀬:山ん中に邑宇士の家だけしかない。

羽賀:マジでホラーのテレビ番組で見る感じで、夜に邑宇士の地元に行ったんだけどトンネルをフゥっと抜けた先にある八つ墓村みたいな集落って感じで。

一瀬:集落どころか邑宇士の家しかない(笑)。

・でも俺の地元だって田舎だから変わらねえよ。それにネットに関しても黎明期の時代に思春期を過ごしたからさ。

一瀬:その当時はジャケ買いとかもしたし、個人のホームページのレビューとか掘りまくってさ。

・田舎ブックオフジャケ買い大会はするでしょ?

羽賀:そういう時代にはハードコアには全然興味無かったから、ジャケ買いとかやってる隼也と章を見て「すげえ事やってんなあ。」って思ってた。

吉田:鋲ジャンの奴とモヒカンの奴と普通の奴がママチャリ乗ってスタジオ通ってたからね。優作はカツアゲされてる人みたいだったな。

羽賀:今もパンクとかのファッションには興味無いからね。でも彼らは一生懸命鋲ジャン作ったりとかスパイキーにしたりとかしてて、夜中の3時まで鋲打ち手伝わされたりとかね。

・まずはクラストパンツからスタートだよね。

羽賀:だからバンドやってるとカツアゲされてる感じに見える普通の少年をパンクスが囲んで歩いてるって感じだったね。

・さて今後はどうなってく感じかな。

吉田:アルバム出して、ヨーロッパツアーとUSツアーと全国ツアーと中国ツアーしたいね。

渡邉:もう世界一周した方がいいのでは!?

羽賀:兎に角まずは日本各地に行きたい!呼んでくれる人がいたら行くし、良いバンドがいたら仲良くなりたい。

・全国に仲間作りつつ、ライブでは「殺す」と。

羽賀:パンクとか云々じゃ無くて、良いと思えるバンドって人間的にも良い人ばかりだし、だから自然と仲間が増えていくんだと思う。それが凄い楽しいかな?それを続けていきたい。
 でもライブでは殺す!!それでもステージ降りたら仲間だし、うちらは基本頭悪いバンドだから(笑)。



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【kallaqriリリース情報】

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【kallaqri twitter】https://twitter.com/kallaqri
【kallaqri Facebook】https://www.facebook.com/kallaqri-558436314297000/
【kallaqri Soundcloud】https://soundcloud.com/kallaqri



photographer : ミツハシカツキ
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■独言独笑/曇ヶ原

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 石垣翔大氏の弾き語りのソロを母体に2013年に結成された「日本語によるプログレッシブハードフォーク」を掲げる曇ヶ原の1stフルアルバム。盤の帯コメントはかの痛郎の井手氏が寄稿。またマスタリングは中村宗一郎氏が手がけている。
 全6曲でありながら50分にも及ぶ長尺曲のオンパレードであり、1stにして大作志向の作品に仕上がっているが、今作はプログレとかフォークという概念の中にありながらも、その中で葛藤し藻掻く小宇宙的世界を描いている。



 石垣氏がベースボーカルという事もあり、井手氏がコメントを寄せている事もあるから聴く前は痛郎の影響下にある音楽性を持つバンドだと思っていたが、それは半分正解で半分間違いだった。クリーンな感触を残しながらもハードロック的なギターの音、楽器隊の音がバチバチぶつかり合うアンサンブルなんかは痛郎にも存在していた要素ではあるが、今作はプログレの概念とは少し外れた所にあると思う。ハードな演奏でガツガツ攻めながらも長尺の中でフォークソングの湿っぽさと歌を生かしたパートも多く取り入れられている。だけど単純にプログレとフォークソングを融合しましたって物にはなっていないのだ。
 誤解を招いてしまうかもしれないが、曇ヶ原にはHR/HM的な音楽とはまた違ったepicさが確かに存在しているのだ。時にはプログレの枠から外れてポストパンクやジャンクロックにも通じるサウンドアプローチもしており、シャープな音の鋭利さを押し出すフレーズもかなり導入しているのだけど、フォークパートでのメロディと歌の叙情性がそれらの鋭利なサウンドを更に上回る形で耳に入ってくる。
 クリーントーンのギターとピアノのみで石垣氏が哀愁を歌うフォークパートはこのバンドの核の部分だと僕は感じており、サウンドアプローチ自体はミクロ極まりない筈なのだけど、そのミクロさを強引かつ誇大妄想的にコスモへと繋がてしまっている感覚。脳内で渦巻く個人的感情とポエトリーさと清く正しく拗らせ捲った世界観を涙の音楽へと進化させる手腕。それこそがこのバンドの凄い所だ。
 ド頭から今作最長の約12分の中でミクロとマクロの表裏一体の世界を個人的叙情世界で繋げてしまった第1曲「うさぎの涙」、フォーク要素は少し後退させているが逆にハードロックの持つepicさが前面に出た第5曲「砂上の朝焼け」、ピアノが本当に良い仕事をしており、テクニカルな展開を織り交ぜながらもスロウテンポで感動的エンディングへと走り抜ける最終曲「雪虫」は今作の中でも特に名曲に仕上がっている。



 ZKとかSSEのバンドの持つオリジナリティと色褪せない古き良きフォークソングの湿度を強引に現代に蘇らせた気持ち良さ。馬鹿みたいにレベルの高い演奏技術が生み出すスリリングさ。純粋無垢かつ個人的苛立ちをロマンに変えてしまうあくまでも個人的脳内世界を大風呂敷広げて展開する潔さ。それら全部引っ括めて真っ直ぐ過ぎる程にロックしている快作。この作品が情報化社会の過渡期その物である2016年にドロップされたという事実が僕はとても嬉しいのだ。



■【精神の階層への誘い】WonderLandロングインタビュー

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 WonderLandというあまりに人を食ったバンド名を冠している3ピースバンドが存在する。
 三軒茶屋HEAVEN'S DOORを根城に積極的なライブ展開を繰り広げている彼らだが、元々はグランジバンドとして始まったバンドだ。それが短期間で音楽的変化と進化を遂げ、インストによる超長尺ポストロック的バンドへと変化した。
 昨年デジタルでリリースされた「The Consciousness Of Internal Time And Space」には既存のポストロックバンドには全く存在しない独特の歪みが存在している。トランペットやピアノの音を大胆に取り入れるだけに留まらず、多くの人を魅了する屈指のメロディセンスから、多くの人を混乱に陥れる不気味極まりない旋律まで取り入れ新たなるオルタナティブを提示する事に成功している。
 今回はオリジナルメンバーであるKoheiとShutoの二人に「WonderLandとは一体何なのか?」という事を徹底的に聞き出すインタビューを行わせて頂いた。二人の発言は人によっては挑発的だと感じるかもしれない。だけど彼らが純粋に愚直な程に音楽を信じている男たちだと伝わるテキストになっている。
 WonderLandが目指すものは固定概念からの解放であり、新世界への挑戦だ。その全容はこのインタビューだけでは伝わらないだろう。だからこそWonderLandの全容を自らの足でライブへと足を運んで確かめて欲しいと僕は願う。



・WonderLandってオリジナルメンバーはKoheiくんとShutoくんの二人だっけ?

Kohei:そうだね。

・元々はどんな経緯でWonderLandは始まったの?

Shuto:最初は俺が地元が一緒だったKoheiとオトベって奴と三人でバンドをやるって話になって、何でバンドを始めたかとかは覚えていないけど、一番最初は神楽坂でライブをやったね。
 初めてのライブはオリジナルで5曲位やったのかな?その3人でのバンドはオトベが就職して抜けたから一回限りだったね。俺は大学は軽音サークルにいたんだけど、そこの同級生のベーシストが代わりに入って始めたバンドがWonderLandって感じだね。

・その頃はどんな音楽性だったの?

Kohei:マリオとかやってた(笑)。

・マリオってスーパーマリオ!?(笑)。

Kohei:そうそう。

・マジで!?

Shuto:吉祥寺のペンタでやってたわ。

・その頃はまだ遊びでバンドやってた感じ?

Kohei:遊びだったね。最初ギャグで始めた感じで2012年の3月に一回だけライブやったけど、そこから次のライブまでかなり間が空いて、その間に曲を作ってた。二回目のライブが2012年の12月だったね。

・その当時はどんな方向性でやりたいとか考えてた?

Kohei:いや全然。その当時は演奏自体ちゃんと出来ていなかったんだよ。俺はギター始めたばかりって感じだった。ベースの奴は上手かったけど、それ以外はマジで論外だったわ。

・2013年からライブも本格的にやり始めた感じ?

Kohei:2013年の初旬にライブはそれなりにやっていたけど、二人目のベースがそこで辞めちゃって、その後に九州から上京してきたタイラって奴が三人目のベースとして加入した感じ。だから今のベースのDaikiは四代目だね。タイラがいた頃は5拍子で10分位の曲とかやってたなあ。
 ちゃんと活動する様になったのはタイラが入ってからで、その時期になると月に3本とか4本はライブをやる様にはなってた。でもタイラが辞めて、Daikiが加入してからやっと本格的にWonderLandが始まったと言えるのかな?俺の中ではまだ思い描いている音がちゃんと出来ているとは思ってないから、WonderLand自体まだ始まってはいないって所ではあるけど。

・僕が初めてWonderLandを観たのが2014年の10月で、それ以前の音は「Welcome To Woderland」でしか分からないから最初はグランジバンドだったってイメージかな?

Kohei:「Welcome To Woderland」(現在は廃盤)は出来が気に入ってなくて、お蔵入りにしちゃった感じだけどね。俺らとしては過去は既に蛇足でしか無いんだよね。2014年頃の曲も音源化して無くて、アレも出来が気に入らなくて廃棄しちゃっているし。だから過去よりもこれからって感じだね。







・じゃあ昨年リリースした「The Consciousness Of Internal Time And Space」について聞こうかな。あの音源は配信でのリリースだったけど、音源としてのコンセプトとかってある?

Kohei:アレは人によってはポストロック的なのかもしれないけど、そこは狙った感じでは無いなあ。

・あの音源はポストロックのテンプレートからは大分外れた所にある感じだったね。

Kohei:それは俺らがテンプレートから外れたい訳じゃなくて、単純に出来ないってだけなんだけどね。

・でも人からしたら○○っぽいみたいな所からは完全に逸脱していると感じると思う。メロディアスさとそうじゃない部分の落差とか激しいし。既存の音を借りない音楽だと思った。

Kohei:○○っぽいって事は劣化版って事じゃん?それじゃ意味が無いんだよ。

・元々は君たちはグランジバンドだったし。

Kohei:それは俺らのルーツではあるからね。でもそれだけで終わるのは嫌だったからさ。「The Consciousness Of Internal Time And Space」自体もあの時のWonderLandのベストを作ったに過ぎなくて、その時その時のベストを出すしか俺らは出来ない。
 そもそもこういう物を表現したいとか、こういう事を発信したいとかなんて作品には反映されないし。結局そういうのって言葉の話だから、精神性って歌詞でしか反映されない物だから、それは音楽の話では無いと思うよ。だから歌詞は俺らには必要ない。

・じゃあ音楽には何が反映されていると思う?

Kohei:精神の階層かな。

・そこはもう言葉に出来ない部分だよね。

Kohei:言葉に出来ない訳じゃ無いとは思うけど、それを言葉にするのは難しいよね。

・今のWonderLandって歌や言葉自体が無いし。

Kohei:俺らには音楽を「使って」何かを発信するって考えは無くて、音楽をやる事自体が目的だから。音楽をやるっていうよりも曲だね。

・その曲の中で何を生み出したいとかっていうのはある?

Kohei:単純にハイになりたいだけだよ。

・Shuto君はKohei君が作った曲にドラムで自分のカラーを加える事はどう考えている?

Shuto:ドラムってまあ直感的に感じやすい楽器だからねえ。でもKoheiが持ってくる曲ネタだけじゃ完成系は全然見えないし、どう表現するかとかってのは言葉で表す事は出来ないと思う。

・でも僕は音楽が一番想像力が働く物だとは思っている。

Shuto:精神性云々ってのは俺は考えていないから。自分が今まで聴いて来た音楽をどう消化してみたいなのも無いし。

・でも反面教師的な消化はあるでしょ?

Shuto:それはあるね。

・だからWonderLandって精神性とかコンセプトとかじゃなくて、自らの音を聴き手の解釈に委ねているんだなって感じたよ。

Kohei:それで良いんだ。俺らの意図は関係ない。だから解釈の余地が大きければ大きい程、それは優れた作品なんだよ。

・さっき言った外している云々ってのは解釈の余地を残すって事なのかな?

Shuto:「俺たちはこういう事をやってますよ。」みたいなのは必要ないからね。

・イマジネーションとしての音楽なのかな?

Kohei:主義主張って言葉で言う方が手っ取り早いから、だから歌詞が大事とかってなって歌を入れるんだと思う。それは音だけで自分の思考を体現できないからだと思う。そうなるともう音楽では無い。少なくとも本質的には音楽ってダイレクトな物であって、必ずしも言語を媒介にする必要は無い。

・音だけで何かを感じさせるとなると、作り手の意図は無いに等しいのかもしれない。

Kohei:それで良い。意図的にやるのは自由だけど、意図した通りに受け取って貰えるかは分からないし、結局のところ意図は後付けだからね。







・曲を作る際のインスピレーションってどこから来る?

Kohei:それは感情とか景色では無くて、それ以外の何かだね。他の誰かの音楽でも無い。だから分からない。多分、夢から来ているんじゃないかな?寝ている時の無意識の作業で、そこに俺の意識が関与する余地は無い。無意識下で行われる何らかの処理が音楽だって俺は捉えている。

・無自覚で作った物を自覚した状態で演奏するってどう思う?

Kohei:まあライブの時も特別何かを自覚している訳では無いからね。寧ろ「これってこういう曲なんだ!」って演奏してみて初めて分かる。

・意図してない物の積み重ねだからこそ君たちはジャンルを名乗ってはいないとも思うし。

Kohei:まあジャンルはオルタナで良いと思う。そもそもジャンルは音楽じゃ無いし、音楽を騙る為の道具だよ。結局は音楽の説明書でしかない。
 多分スポーツ選手とかと同じで、感覚で分かる人にとっては説明書は必要ないけど、その感覚が無い人は説明書が無いと伝わらないし、そういう意味では説明も大事だと思う。

・もっと言うとオリジナリティ溢れる事をやると、ある程度の取っ掛りとしての説明は必要だし、君たちは入口の部分はちゃんと作ってはいるよ。

Kohei:それは必要だからやるけど、その入口の先は俺らも分かってないからね。

・だからWonderLandって感覚に訴える音楽なんだなって。

Kohei:それが出来るのが音楽だと俺は思っているよ。まあ無意識の裏付けとしての提示なのかなって気はしている。それが実際にコンセプトになっているかは分からない。

・それは無意識の裏付けというコンセプトになるんじゃない?

Kohei:関連性があるだろうというだけの話で、実際意識と無意識がどんな関連を持って音楽に反映されているかは分からない。

・だから逆に聴く人を選ばなくて済むのかもしれないし、入口の広さに繋がるんじゃないのかな?逆に「こうですよ。」って提示してしまうと、分かる人にしか分からなくなると思う。

Kohei:説明無く提示出来るのがベストだね。でも、説明をしても説明になってないのかもしれない。
 例えばある曲があって、アルバムタイトルがあって曲名があるとする。そこの関連性は誰も分からないし、タイトルが分かりづらいと余計に関連性が分からない。だからタイトルを付けている時点で俺は説明はしているとは思う。それに、時間という軸の中で発生した意識と無意識の座標が同じであるのも俺は分かる。でも、その関連性は本当には分からない。

・その関連性の解釈は聴く人が決める事だよ。

Kohei:例えばNIRVANAの「NEVERMIND」は「NEVERMIND」って曲は収録されてないじゃん?でもアルバムタイトルは「NEVERMIND」だし、関連性があるかとかって結局後付けじゃないかって思う。



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・その関連性の話に繋がるかは分からないけど、なんで「WonderLand」ってバンド名にしたの?

Kohei:「WonderLand」って三つの側面があって、その一つとして言葉から音楽性が想像出来ないってメリットがある。別にバンド名は「椅子」とかでも良い。

・「WonderLand」ってシンプルな単語だよね。

Kohei:誰もが知ってる言葉ではあるからね。でも意味が一番知られてない単語かなって。残り二つの側面に関しては企業機密で(笑)。

・でも「WonderLand」って楽園みたいなイメージをみんな思い浮かべると思うけど、そことはかけ離れた気持ちの悪い音楽だよね。

Kohei:みんな「WonderLand」って言葉の本質を理解してないとは思う。ユートピアみたいなイメージをみんなするけど、それは間違えているし、言葉と音楽の関連付けをするならもっと言葉の意味を理解しないとね。でもそこは要求はしない方が良いと思ってる。

・だから音楽に対して表層的な部分だけを捉えている人が多いのかもしれないね。

Kohei:音楽って分からないじゃん?それは殆どの人間が精神の階層に行き着く手段を持ってないからなんだよ。

・だから思考を放棄してしまっているのかもしれない?

Kohei:放棄というよりも思考の手段を持ってないんだよ。だからどうしようも無くなるんだよ。

・音楽は思考の為の手段なのかもしれない?

Kohei:それはあながち間違いではないかも。

・そもそも五感ってなんなのかを僕は理解出来てないんだよ。結局は脳の伝達だし。それを言説化するのは僕には難しいかな。

Kohei:人類はそれには近づいているとは思うよ。

・それが可能になったら人間はどうなると思う?

Kohei:それを理解した人間は音楽を始めると思う。ペンギンとかリスは音楽をやらないじゃん? でも、人間は音楽を奏でる事が出来るし、人間の人間性を示すために音楽に走ると思う。別に演奏に限らず聴くって行為もそこに入るし、もっと音楽と密接な関係になろうとすると思うな。だから人間の構造が解明されたとしたら、みんな焦って音楽を始めるんだよ。
 人間の一つの側面として論理性ってのがあって、それはコンピューターには勝てないし、人間はそこに絶望してしまっている。だからどこまでが人間でどこまでが人工知能か分かっていたら音楽を始める。それが分からないと何処までが音楽で何処までが音楽じゃないかも分からないし、何処までが論理で何処までが非論理かも分からない。だから大半の人間はコンピューターと変わらないし、劣化版コンピューターになってしまっているんだよ。



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・この渋谷って街に来る度に思うんだけど(今回のインタビュー収録は渋谷で行っている)、記号がウロチョロしている様に見えるんだよね。記号化された人間が歩いているなって。僕もそんな記号の一つではあるとも思うけど。

Kohei:性能の悪いコンピューターだからね、絵文字とかスタンプとか多用する人も多いし。最早言葉をちゃんと使えているかも怪しいじゃない?

・大半の人がそこに対して足掻いてもいないよね?

Kohei:コンピューターと同じだって分かってないからだよ。自分が人間だと勘違いしてて。

・凄くざっくりとした言い方になるけど、何かを疑ったり、想像するってのが人間としての在るべき姿なのかなって思ってる。でも僕はそこを理解してはいないし、それこそさっきKohei君が言っていた「夢の事は分からない。」ってのと同じなんだよ。それに喜怒哀楽すら僕は言説化は出来ない。

Kohei:それは後付けの統計の話でしかないよね。そもそも感性って常に正しいんだよ。それが面白いかつまらないかってのはあるし、つまらない物はコンピューター的な感性だよ。何らかの発信に対して同じレスポンスしか出来ないようならそれはコンピューターと同じ。

・レスポンスなんて多種多様だし、それこそWonderLandを聴いて何を感じるかなんて人それぞれだし、そこに対して明確な答えを何も提示してないからこそ想像させる音楽だなって思う。

Kohei:Googleとかが人工知能に絵を描かせたりしているじゃん?もし人工知能が音楽を作る事が出来たら何か変わると思うよ。
 だからJ-POPとかがやっている事も同じような曲調で同じような歌詞の物を量産していてプログラムと変わらないし、それが自動で出来る様になったらそれらに価値は無くなる。そうなったら西野カナは必要なくなって、自分が聴きたい西野カナの曲を人工知能がその場で作ってくれるからね。
 そうなると真の音楽って物がはっきりするし、人工知能が作れない音楽が必要とされると思う。俺たちはそんな音楽を作り続けるだけに過ぎない。だから色々な音楽を聴いて自分の中にデータベースを作って、その上で今までに無い新しい音楽を作り出したいね。
 天才を名乗るのは簡単だけど、そんな物は自己満足に過ぎないし、先ずは色々な音楽を聴くこと事が大事で、後は無意識に任せるだけかな。それで良いと思う。



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ライブスケジュール

5/2 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
5/29 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
6/18 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR




【オフィシャルサイト】http://www.wonderland-japan.com/
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【Soundcloud】https://soundcloud.com/wonderland_japan



「The Consciousness Of Internal Time And Space」購入ページ(iTunes)
https://itunes.apple.com/jp/album/id1041667215?app=itunes



photographer : Takashita Toru&セオサユミ

■easing into emoting/hue

easing into emoting



 栃木県の某高校にて結成された4人組hueの待望の1stアルバム。個人的に僕と同郷出身のバンドという事もあって前々から名前は知っており、ライブも何度も拝見していたバンドだけに、こうして1stアルバムがリリースとなったのは何とも感慨深い。
 世代的に若手バンドであり、エモ・激情ハードコア界隈では期待の新人として評価されて来たが、今作を聴いて時代は確かに循環している事、Cap’n Jazz系統という言葉じゃ片付かない新世代ならではのオリジナリティがそこにある。



 hueが共振する音は非常に多岐に渡る。90年代USエモは勿論、現在進行形のエモリヴァイバルや激情ハードコアやマスロックといった音楽性を持つが、それらをシャープで切れ味鋭い演奏で鳴らし、それだけに留まらずにキャッチーなメロディが目まぐるしく展開していくキラキラのポップネスも兼ね備えている。
 今作で大きな特徴として挙げられるのは熱いシンガロングパートだろう。爽やかなメロディとナード感が堪らないボーカルとテクニカルなツインギターの絡みが印象深い第2曲「メイクチェンジ」からほぼ全曲に渡って導入されているシンガロングには拳を熱く握り締めたくなる。
 イントロのアコギの調べから一筋の風が吹き抜ける様な疾走感溢れる衝動溢れる楽曲と洗練された演奏の煌きが胸に染み込む第3曲「switch me once」、athelasとのスプリットに収録された楽曲の再録であり、イントロのギターリフから一気に持っていくhue独自の激情を打ち出したキラーチューンである第5曲「ハロウ」、マスロック感全開でありったけの感情を詰め込んだhueの新たなキラーチューンとなるだろう第7曲「OFFLINE」、そしてトランペットの音色とアルペジオの旋律の調和が生み出す青臭さが涙腺に来る最終曲「warm regards,」までhue節とも言える独自性が爽やかにだけど熱く迸る。
 ライブを何度も拝見しているけど、彼らは高い演奏力を持つバンドであり、今作の楽曲のアレンジも洗練されているが、その透明感溢れる音から滲み出る甘酸っぱさはhueの一番の武器だろう。あらゆる音楽を無邪気に消化してきたバンドだからこそ生み出せたピュアで繊細で力強い衝動は理屈抜きで心に突き刺さる。



 90年代のリアルタイムエモから現在のエモリヴァイバル、それらと繋がっていくあらゆる音楽。hueが鳴らすのは世代もジャンルも超えた計算されていない音楽である事は、甘いメロディが常になっているのにありったけの叫びをただ吐き出す石田氏のボーカルを聴けば伝わってくる。
 音と声と感情が優しく共存する新生代の答えが今作だ。本当は誰もが無邪気な頃に戻れる無垢さを音楽に求めているのかもしれない。hueにはそれがある。



■Iron Scorn/Legion Of Andromeda

Iron Scorn



 東京で活動するミニマル・プリミティブ・デスメタルユニットLegion Of Andromedaの2015年リリースの1stアルバム。レコーディングはかのスティーブ・アルビニが手がけている。
 彼らは昨年末のZOTHIQUEとの2マンで知ったが、極限のトーチャーサウンドにド肝を抜かれてしまった。



 イタリア人ボーカリストと日本人ギタリストの2人組インダストリアルユニットである彼らだが、ミニマル・プリミティブ・デスメタルと称される所以は今作を聴けば分かるだろう。
 音の構成自体はどの曲も殆ど終わりのないループにより構成されている。ノイジーかつ無感情なギターとリズムマシーンのビートが繰り返す反復、ボーカルが楽曲に変化を付けている感じで、曲の中で展開という物は実質存在しないに等しい。最小限の音階と展開によって構築されている楽曲は確かにミニマルではある。
 だが音の構築方法がミニマルなだけであり、構築する音その物は極端な地獄。メロディという概念は完全に皆無であり、デスメタル成分がプンプン匂うブルータルなリフの拷問的スラッジリフに悶絶。しかもリズムマシーンのビートもほぼ変化が無く繰り返されるだけだから感情移入する余地なんて全く与えてくれない。
 こう書くと聴いているとひたすら自分との戦いな音だと思ってしまうかもしれない。だけど拷問的な音でありながら、ミニマルに繰り返される音がもたらす陶酔的効果により、聴いている内に苦悶の音が快楽へと繋がってしまうのがこのユニットが持つ不思議な魅力だ。
 単純にリフ自体のセンスが良いってのもあるけど、GodfleshやSWANSといったインダストリアルのゴッド達の流れを汲んだ音でありながら、Big Black辺りの機械的反復の美学、そこにKhanate的拷問スラッジなテイストを加えた事による黒がドロドロに溶け合った物を機械的に放出・切断された異形さ。非常にオリジナリティに溢れる物となっている。



 ライブでは終わり無く繰り返されるストロボのみの照明によって視覚にもダメージを与える毒素のみのステージングを提示。音だけじゃなくアートワークやステージングに至るまで徹底的に猛毒だけを生み出している。
 トーチャー系の音だから聴く人こそ選んでしまうとは思うけど、デスメタルやインダストリアルが持つ最も危険な部分を凝縮したサウンドは変態極悪音楽愛好家にとっては眉唾物だろう。その手の音が好きな人は要チェック!!



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AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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