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■War Inside You/STORM OF VOID

War Inside You
War Inside You
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STORM OF VOID J.ROBBINS
Hostess Entertainment (2017-09-20)
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bluebeard/NAHT/TURTLE ISLANDのGeorge BodmanとenvyのDairoku Sekiによるスラッジバンドの2017年リリースの待望の1stアルバム。
前作EPでは3人編成だったが、今作では結成当初の2人編成に戻り、ベースもGeorge氏が弾いている。
またゲストボーカルにNapalm DeathのMark'Barney' GreenwayとJawboxのJ. Robbinsが参加した事も大きな話題となっている。
SOVは登場から独創的なスラッジサウンドと圧倒的なライブパフォーマンスで多くの話題を集めていたが、今作は良い意味でこれまでのSOVを裏切る会心の一枚に仕上がった。



今作で提示したSOVのインストによるスラッジサウンドはRUSSIAN CIRCLESやPELICANといったポストメタルの雄とリンクする部分は大いにあるが、それらのバンドとはまた違うアプローチを展開している。
先行公開された第1曲「Into the circle」は複雑なアンサンブルを最小限の2人編成で乗りこなし、8弦ギターで弾き倒される複雑なリフの嵐とストイックなビートが高揚感を与えてくれるが、音は間違いなくヘヴィであるのに不思議な丸みを感じるサウンドプロダクトに仕上がっている。
こうしたサウンドスタイルのバンドはヘヴィさを前面に押し出し、熾烈さや凶悪さからエクストリームへと導いていく物が多いが、SOVはそれらのヘヴィさをしっかりと守りつつ、タイトでありながらも優しい音に仕上げている。ストイックなヒリヒリとした緊張感の中からにじみ出る温もりは他のバンドには中々ないものだろう。
前作EPに収録されていた楽曲を再録した第3曲「Silent Eyes」、第8曲「Ice Lung」の2曲もストイック緊張感はそのままに現在のSOVの温もりが加わり、より新鮮な響きが伝わる。

Mark'Barney' Greenwayがゲストボーカルを取る第2曲「Bow and Scrape」では熾烈なサウンドとBarneyのボーカルが見事にシンクロし、一方でJ. Robbinsがボーカルを取る第8曲「War Inside You」では硬質なサウンドの中の男気と哀愁と、二人のゲストボーカルはSOVのサウンドを自分のものとして料理し、それぞれが化学反応を起こしている。



SOV側の気合いと覚悟と自然と伝わる渾身の一枚に仕上がった今作であるが、スラッジ/ポストメタルと呼ばれるサウンドもまだまだ先に行ける事を証明。これまでに多くの実績とキャリアを積んだ男二人が新たなるエクストリームミュージックのスタンダードを提示した。

今作全体に漂うのは極限でありながらも自然体な音だ。余計な装飾を施していないからこそ、音の旨味を存分に堪能出来る。
スラッジ/ポストメタル系のファンは勿論、それ以外の音楽好きにも是非とも触れて欲しい世界が今作には存在する。



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■Neutralize/Su19b

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神奈川発世紀末行きブラッケンドパワーヴァイオレンスことSu19bの約3年振りのリリースとなる2ndアルバム。
今作はデスメタル/グラインドコアの国内名門レーベルことOBLITERATION RECORDSからのリリース。
Su19bは2017年に結成20周年を迎え、今作はそのタイミングでリリースされた記念碑的な作品でもあるが、前作1stから更に極限化された世紀末を描く一枚に仕上がっている。



Su19bが提示するブラッケンドはジャンルとしてのブラッケンドとは全く違う位置にあると僕は思う。
ブラックメタルに接近する事によるブラッケンドではなく、エクストリームミュージックの悪意の原液をごちゃ混ぜにして世紀末というフィルターでろ過した結果としてのブラッケンドだ。
ツインギターは激重なだけでなく、ひたすら黒いノイズをぶちまけ、グラインドとドゥームを行き来する極端な速遅の落差の暴力性。それらが必然的に存在する。

パワーヴァイオレンスという観点から見ても現行の時流になっているパワーヴァイオレンスとは全く違う場所に存在しており、デスドゥームなどの影響も強い。
更に今作ではDビートとブラストビートの使い分けも巧みで、激走パートの破壊力はこれまで以上だ。ドゥームパートの荒廃的な世界観がパワーアップしている点も見逃せない。

ロウな音質の中でシャープに突き刺すビートがフックを生み、弦楽器隊がドロドロに混ざり合って漆黒の塊となり、そこにリヴァーブが強くかかったボーカルが悪夢の先を描く。
単に極限で暴力的なサウンドで終わらず、Su19bが1stで提示した世紀末の無は死滅型芸術と呼んで良いだろう。
今作ではBATHORYのカヴァーも収録されているが、そちらも原曲を完全に破壊した一面の黒景色となっているので必聴。



漫画家・望月峯太郎の名作に「ドラゴンヘッド」という作品がある。
90年代に連載され、世紀末の混沌と不穏の時代に、未曾有の大災害により破滅した世界を描いた作品であるが、徹底的に書き込まれた崩壊の情景、殆どのページが黒で埋め尽くされ、リアルタイムで読んでいた少年時代に恐怖と絶望を覚えた。

Su19b側が「ドラゴンヘッド」を意識しているかどうかは知らないが、彼等の音はまるで「ドラゴンヘッド」の終わりなき黒の世界とリンクすると個人的に思う。
世紀末を終えて20年近くが経過しようとしている現在だが、Su19bの描く破滅の世界は時に美しさすら感じさせる危険極まりない物だ。



■delaidback/syrup16g

delaidback
delaidback
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syrup16g
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT (2017-11-08)
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syrup16gはこれまで「delayed」、「delaydead」と未音源化楽曲の編集盤をオリジナルアルバムとしてリリースしているが、今作は実に13年振りの遅刻シリーズとなる記念すべき10枚目のオリジナルアルバムだ。

収録されている楽曲は「delaydead」リリースから解散までにライブで披露されていた大量の未発表曲の一部、シロップ解散後に五十嵐隆の新バンドとしてスタートしたが作品をリリースする事なく超短期間で解散した犬が吠えるの楽曲、2013年の実施シロップ再結成ライブとなった生還ライブの時に披露された新曲、そしてシロップ結成当初の20年前の未発表曲まで網羅した全13曲。
言うなれば音源化していない楽曲を寄せ集めただけの作品ではあるが、そこはシロップ。スピッツのB面集の様に名曲を寄せ集めただけで名盤が成立してしまうマジックがあるのだ。



収録されている楽曲の生まれた時代には実に20年近い振れ幅があるが、それでも不思議と統一感がある様に聞こえるのは五十嵐隆という男のソングライティングのセンスがシロップ結成当初から現在に至るまで全くブレていないからだろう。

本来、犬が吠えるの代表曲になる予定であった第1曲「光のような」、第7曲「赤いカラス」のシンプルなアレンジだからこそ輝く楽曲の純粋なメロディの良さ。派手な事をしていないが力強いアンサンブル。過去を現在へと変え、色褪せない輝きを放つ。
生還ライブの楽曲も2017年のシロップの楽曲として卸され、第2曲「透明な日」の染み渡るメロと歌、第5曲「ヒーローショー」の軽快さ。どの楽曲も3ピースの美学が生み出した美メロとポップネスにあふれている。
20年近く前の楽曲である第6曲「夢みたい」の歌謡曲的なメロの中に潜む粘り、第10曲「開けられずじまいの心の窓から」も生還ライブで披露された楽曲とも見事にリンクし時を超える名曲である事を証明。

特に当時からファンの間では名曲と呼ばれ解散時に音源化されなかった事を悔やむ声が多かった第3曲「star slave」は今作の中でも一番の名曲。少ないコード進行によって淡々と刻まれる吐きそうな程に美しいメロディと悲壮感はシロップの一番の持ち味であり、煌めきすら悲しく感じさせる情景を描く歌詞とメロディは必聴。
第8曲「upside down」も軽快なカッティングギターから滲み出る80年代UKロックへのセンチメンタリズムも注目すべきだろう。
そんな名曲巡りの今作のラストを飾る「光なき窓」の儚い余韻も含めシロップが持つ魅力を存分に楽しめる全13曲だ。



シロップは他のバンドに比べて未発表の楽曲が非常に多く、今回こうして一度時系列の彼方に消えてしまった楽曲を2017年に蘇らせてくれた事はファンとしても非常に嬉しい。
同時にシロップ入門編としても最適な一枚となっており、五十嵐隆という男の天才的ソングライティングセンスとシロップの3人が織りなす熟練のアンサンブルも堪能出来る。特に今作はキタダマキのベースが今まで以上に変態的かつメロディアスなベースを弾き倒しているのも忘れてはいけない。

僕個人としてはsyrup16gというバンドに関しては過去以上に今後世に生まれるであろう今の音源を楽しみにしている側ではあるが、今作を聴いて、そう遠くない内にまたリリースされるであろう新作への期待が高まったのも事実だ。
00年代以降の日本国内のギターロックに於いてsyrup16gというバンドがここまで多くの支持を今尚集め続けるのか。それは今作を聴けばわかるはずだ。



■darc/syrup16g

darc
darc
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syrup16g
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT (2016-11-16)
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2016年秋の「HAIKAI」ツアーに合わせて突如としてリリースされたsyrup16gの9thアルバム。
全8曲36分とアルバムとミニアルバムの中間の何とも言えないサイズのアルバムで、ジャケもFOO FIGHTERSへのオマージュであるがそこら辺で売ってそうな水鉄砲と本気なのかふざけてるのかよくわからない感じではあるが、それとは裏腹に再結成後のシロップの新たな音を提示した名作に仕上がった。



公式でのインフォメーションでは1stアルバムである「COPY」制作当時と同じ気持ちで作られた作品とアナウンスされていたが、結論から言えば過去のシロップへの懐古的な作品ではなく、自らの原点を見つめ直した上で現在進行形のシロップへとアップロードした長年追いかけて来たファンならずとも必聴の名盤となった。
リードトラックとしてMVが公開されている「Deathparade」こそロック色の強いアプローチをしているが、残りの楽曲では派手なアプローチは全くしておらず、その点はシロップが新たなファンを獲得する気があるのかと言う批判も生んでいるが、そもそもシロップというバンド自体が外へのアプローチに必要以上に固執せず、自らの愛した音楽へのセンチメンタルな感情と五十嵐隆という男の個人的感情の吐露であるのだから、自らに素直になった結果生まれたアプローチだと僕は思う。

再結成後の「Hurt」、「Kranke」という2作品では様々なアプローチを試み、再結成後のシロップを構築している作品だと僕は感じたが、今作が持つ不穏さはシロップが持つ糖度の粘りを新しい感触で蘇らせた物だろう。
少しロウでくぐもったサウンドプロダクトもあるが、第1曲「Cassis soda&Honeymoon」の最低限の展開の中で不協和音の中の甘さで陶酔させ沈んでいく音にいきなり飲み込まれていく。
第4曲「Father's Day」の繰り返されるフレーズが徐々に轟音へと変貌しながら、決して高揚感へと導かないドープなサウンドも不思議と胸に突き刺さる。

その一方で五十嵐隆の十八番である最低限のシンプルなコード進行で吐きそうな程に甘いメロディを携えたシロップのアプローチも磨きがかかっている。第3曲「I'll be there」と第7曲「Murder you know」の2曲が今作の肝となる2曲であり、これまでのキャリアの中で築き上げたシロップ名曲殿堂の中でもトップレベルの普遍的名曲だ。
そしてラストを飾る「Rookie Yankee」のアコギと共に振り絞るように歌い上げるやけっぱちながらも前向きな言葉と音の生々しさは胸に突き刺さる物だ。




syrup16gという多くの熱狂的ファンを抱えるだけでなく、奇跡的な生還劇を果たしたバンドは他の再結成バンド以上に過去は美化され、再結成後も活動させしてくれたら嬉しいみたいな感情が生まれやすいのかもしれない。
だけど僕はシロップが再結成のアナウンスと同時に新作アルバムを引っさげてくれた事を含めて、シロップの今を支持したい。
それは過去への懐古でも焼き直しでもなく、もがきながらも自らの武器を磨き上げ、解散前という過去を焼きはらおうとしてくれているからなのかもしれない。
決して派手なアルバムではないが、シロップが持つ屈指のメロディセンスと五十嵐隆の言葉のセンスが鈍く光る今作を僕は支持したい。

80年代UKロックや日本のオルタナティブロックという自らのルーツを見つめ直したアプローチが並ぶという点は確かに「COPY」と同じ気持ちで作られた作品なのかもしれないが、15年という時を経てsyrup16gというバンドが新たな進化を遂げた事を証明している。
時流に流されず、どっしりと力強く構えた全8曲。五十嵐隆が歌うリアルは未来へと確かに向けられている。



■Change But True/ELMO





現在、単なるサブジャンルにとどまらず、多方面において注目を集めるパワーヴァイオレンスというジャンルだが、都内を中心に活動するELMOは個人的に日本でも屈指の凶悪な音を鳴らすバンドだと感じている。

今作は2013年にリリースされた4曲入りEP作品。ELMOというバンドの異常さのみが詰まっている。



しかし実際にELMOというバンドを語るのはかなり難しい。一言で言うなら似ているバンドが国内外問わず皆無なのだ。
サウンド自体は非常にブルータルなパワーヴァイオレンスであり、A389周辺のバンドやニューヨーク・ハードコアのエッセンスも確かに存在もしている。
しかしパワーヴァイオレンスという枠組みで語るにはELMOはあまりにも異質過ぎる。
スラッジ/ブラッケンド・ハードコア/グラインドコアといった断片的な要素では確かに語れる。しかしELMOの全貌を伝えるにはあまりにも情報不足だ。

個人的にはサウンドスタイルこそ違えど、初めてStruggle For Prideを聴いた時の様な恐怖を覚えた。
シャープに尖りノイズ塗れな砂嵐の様なギターにも、ロウなビートにも、何より甲高く殺意だけをむき出しにするボーカルにも一片の慈悲が存在しない。
その殺意も本能のままの殺意ではなく、まるでマシーンの様な感情を全く感じさせない物だから恐ろしい。

収録曲全曲が容赦なくブルータルさが襲いかかってくる物に仕上がっているが、第3曲『New Age Uprise』は特に血も涙もない。
極限までビートダウンしたスラッジなビートとノイズが終わりなく降り注ぎ、ボーカルは断末魔の様に残響するのみ。
インダストリアルの様な機械的な感触ではなく、生身の人間が生み出す無感情かつ猟奇的な音には絶望すら生ぬるいだろう。



一抹の希望すら粉々に粉砕する音は凶悪とか黒いといった言葉すら陳腐で安くなるほどにELMOは極限を極めている。
あらゆるエクストリームミュージックを喰い殺した末に生まれたパワーヴァイオレンスは速い/遅い/重い/爆音/凶悪といった要素を超えた世紀末だ。
何よりも音の一つ一つが本当に濃い。暴力を何日もかけて煮込んだ末に濃さを極めて固形物化したスープのよう。

悪夢そのものを音として体現しているが、この音はエクストリームハードコアの最先端だろう。
先の先を行きすぎて、未来なく滅んだ世界を見てきてしまった様な背徳感はELMOにしか生み出せない本物のオリジナリティだ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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