■LITE
■For all the innocence/LITE
![]() | For all the innocence(初回盤) (2011/07/06) LITE 商品詳細を見る |
日本のマスロックの代表格として今や人気バンドになっているLITEの2011年発表の3rdアルバム。ここ最近のLITEはシンセライザーを導入し、より自分達の音を広げて来たが、それが今作で見事に一つの形に帰結し、マスロックの枠を超える表情豊かであり、豊かな色彩を描くLITEの音は更なる進化を遂げ、とんでもないレベルにまで自分達の音を成長させた傑作と言って良いだろう。攻撃性とオーガニックさと幻想的な色彩が同居したLITEだからこそ鳴らせる音が今作には存在している。
まず第2曲「Red Horse in Blue」からLITEの進化を伺う事が出来る。オーガニックな感触のシンセライザーの音がループし、その緩やかな音の中でそれぞれの楽器が緊張感に満ちた音を繰り広げる、徐々に高まっていく熱量はスリリングでもあるし感情豊かだ。第3曲「Rabbit」ではキャッチーさも存分に取り入れ、広がっていく音の数だけ、その聴き手に突き刺さる攻撃的な部分も鋭利になっていくのだから恐ろしい。それでいてドラマティックな展開は激情系のそれに通じる部分があったりするし、バンドとしての音楽的な縛りは益々無くなっているし、それをLITEの音に帰結させているのだ。「The Sun Sank」のフレーズほ再び使用した第4曲「Perican Watched As The Sun Sank」何かは余計に今までのLITEを完全に置き去りにし、今のLITEへと完璧な形で更新する尖り具合と、豊かな旋律と、叙情性と、複雑であり鉄壁のアンサンブルが存在している。
そしてよりダンサブルな音を鳴らし大胆にコーラスを導入している第6曲「Pirates and Parakeets」はLITEが新たな地平を切り開いた事を証明している。鉄壁のリズム隊のアンサンブルが完全に踊れるビートを鳴らした事によってLITE流のディスコナンバーになっている。これライブでやられたら堪らないだろうななんてニヤニヤしてしまった。鉄壁のアンサンブルの上でどこまでもオーガニックで感情に溢れた音はボーカルの存在なんか無くても、そのアンサンブルが全てを雄弁に鳴らしている。柔らかな優しさと、確かな強さを手に入れ、そこに枠組なんか必要としない多方面に飛び交う豊かな音楽的要素とカラフルな音の波をLITEは今作で完全に自分達の物にしているのだ。そして第10曲「7day Cicada」では王道のマスロックの音に帰結しながらも、エモーショナルさと攻撃性に特化したアンサンブルが脳の快楽中枢を一気に刺激させられてしまう様な高揚感を感じさせる。あくまでもLITEとしての基盤を壊すこと無く、理想の形での進化を遂げたと感じさせてくれた。
LITEは国内のインスト・マスロックの中でも圧倒的な存在感を放っていたバンドであるし、その音楽は多くの人に評価されていたが、まさかここまで劇的な進化を遂げるとは思っていなかった。自らに満足する事無く、アンサンブルをストイックに鍛え上げ、音楽性を確かな形で広げた事により、一回りも二回りも大きくなっている。やはり国内マスロックの第一人者はその音を自らの手によって更新させる。今作での進化も凄まじかったが、LITEならその先の次元にも到達出来るんじゃないかと期待すら抱かせてくれる。益々このバンドからは目を離せなくなりそうだ。今作は間違いなく2011年の日本国内のインストゥルメンタルミュージックの最重要作品と断言出来る。より多くの人にこの音が届いて欲しいと願うばかりだ。