■Cultus Sanguine
■Cultus Sanguine/Cultus Sanguine

イタリアのゴシックメタルバンドであるCultus Sanguineの95年発表の1stEP。ゴシックメタルではあるが、ブラックメタルの要素をかなり色濃く持ったバンドであり、劣悪な音質の中で淡々と展開していく楽曲の世界はデプレッシブブラックメタルが持っている陰鬱さと、ゴシックメタルの耽美さが見事に混ざり合った物となっている。スローテンポで進行する楽曲は引き摺る様な重さを持っていて、精神を蝕んでいくかの様な感覚を覚える醜さの中で美しさを放つゴシックメタルだ。
安いリズムマシンで録音したとしか思えないチープなドラム。霧の様に原型を掴めない陰鬱さが際立ったギターリフ、絶望を淡々とガナリ声で歌うボーカル、独り宅録ブラックメタルを彷彿とさせる音の感触が非常に印象に残るのだが、そこに留まらないのはキーボードの存在がかなり大きいと思う。美しく耽美な旋律を終わり無く奏で続けるキーボードが下手したら単調になりかねない楽曲をやたらドラマティックな物へと持っていってくれているからだ。フューネラルなその世界観をブラックメタル的な手法で鳴らし、結果としてゴシックな要素も際立たせているのだ。特に最終曲である第4曲「Into the fields of screaming souls」はその世界観を最も色濃く表した楽曲だと思う。フランジャーをかけたイントロの旋律の奇妙な次元の歪みから始まり、明確な旋律を掴めるギターの音がまた寓話的世界を加速させていく。ただ地獄を堂々巡りしていくかの様な構成もそれを加速させ、窒息してしまいそうな閉塞感の中で微かな甘さを感じさせ、奈落の底の様な音にただ溺れていくしか無くなるのだ。
僅か4曲入りの音源ではあるが徹底して劣悪な音質でダークで美しいゴシックメタルを展開している。正直、ゴシックよりもブラックメタル要素のが強いとは思うのだけれど、この押しつぶされそうな感覚の中に、破滅の美学を持ち込んでくる辺りは確かにゴシックであると思う。淡々と無慈悲に繰り広げられる緩やかな破滅の歌に、言い知れる神秘性を感じてしまうのは間違いないだろう。