■Mühr
■Shepherd Blood/Mühr
オランダはアムステルダムのドゥームメタルバンドであるMühr(読み方はムッハーで良いのか?)の2010年に自主制作にて発表された1stEPが今作だ。その音は非常にサイケデリックであり煙たさと酩酊感に満ちたドゥームメタルを展開してる。今作も僅か2曲しか収録されていない作品ではあるが、共に10分越えの大作でドゥーム愛好家であったら涎を垂らす事間違いなしな尺なのがまたニクい。重厚なサイケデリックドゥームが展開された作品だ。
基本的にはドゥームであるが超絶ヘビィ&スロウなリフが空間を埋め尽くし、推進力を放棄したリズム隊の引き摺る様な速度のビートがそれをより明確に、それでいてサイケデリックでトランシーな空間的な音も加えられていて、個人的にはどこかイタリアのUFOmammutにも通じる部分がある様にも感じられるのだけれども、こいつらはもっとダウナーに入って沈んでいくバッドトリップ入りそうになる感触なのだ。それでいてスラッジコアな粗暴さも感じさせてくれるのがこいつらの良さでもあったりする。そして楽曲の中でストーナーさを全開ししながらも音が歪みまくって壊れきったギターソロも聴かせてくれている。それがまたマリファナの煙をキメて天へと昇って行く様な高揚感では無く、悪い物をキメ過ぎてしまって見えてはいけない物が見えてしまってパラノってしまいそうな感覚に陥る。EWを捻り潰す勢いがあるヘビィさとローファイさとは対照的にボーカルはどこか儚げな歌を聞かせるけろで、それもどこか独白めいた歌い方だし、マリファナキメて歌ってる感じがもう簡単に想像出来てしまう。言ってしまえばこいつらの活動拠点であるオランダのアムステルダムは世界でも屈指のマリファナ天国として有名だし、そりゃハッパやり過ぎてバッドトリップしてしまってる音楽性に行き着くのも何か納得出来てしまうのだ。
しかしながら今作に収録されている2曲はそれぞれが違うベクトルでこいつらの良さを良い感じに表している。重苦しいリフと推進力放棄のBPMとサイケデリックさは共通しているけど。第1曲「Shepherd」はスラッジな感触すら持っているヘビィなリフで徹底的に聴き手を粉砕しにかかってきている粗暴さが際立っているし、対する第2曲「Blood」はもっと空間的な音の残響と、沈む所まで沈んで行くダウナーさが際立った楽曲になっている。そのどちらもMührそのものと言える音になっているし、ダウナーさとヘビィさとサイケデリックさを突き詰めたドゥームメタルを1stでここまで見せ付けてくれてるとなるとこの先が恐ろしくなって期待してしまう。
ドゥームメタルの世界はEWを始めとしてマリファナ&サイケデリックなヘビィ極まりないバンドが多いが、マリファナ天国アムステルダムのこいつらはそれを突き抜けて本当にダウナー極まりないドゥームメタルを展開してくれている。今作は僅か2曲入りだがかなりの物を見せてくれた。これからの音が楽しみで仕方ない。
また今作はバンドのBandCampの方でname your price方式で配信されている。視聴だけも出来るので興味がある方は下記リンクから是非その音に触れて欲しい。
Mühr BandCamp