■The Carnival Of Dark-Split
■focus/The Carnival Of Dark-Split

BONESCRATCH、キウイロール、GOMNUPERSのメンバーにより構成されていたオルタナティブハードコアの煉獄こと北海道のカオティックハードコアバンドであるThe Carnival Of Dark-Splitの唯一のアルバム。リリースはHG FACTから。BONESCRATCHは日本でかなり早い段階でカオティックハードコアをやっていたバンドだったが、BONESCRATCH以上にダークサイドの混沌を強めた今作は負の感情を無慈悲に叩き付けるカオティックハードコアの傑作となった。
彼等の音は圧倒的密度によって鳴らされる負の感情そのものであり、キャッチーさなんか微塵も存在しない。不協和音で構成されたリフの殺傷力がまず凄まじく、楽曲の中で大きな落差のある構成によって鉄槌を下す様な残虐さもかなり際立っている。サンディエゴのポストハードコアとヘビィネスが融合し、そこからダークさのみを抽出した結果生まれたカオティックハードコアと言えるだろう。第1曲「Disdance」の不穏なくぐもったシンセから無慈悲に振り落とされるギターリフの破壊力は圧巻。リフの破壊力や落差を巧みに使い分ける構成も見事だが、コーラス等の空間系エフェクターを使いこなし時に不穏の空間的な音も顔を出し、そこに乗る殺意と狂気に満ちたボーカル。正に殺意のハードコアだ。蠢くベースラインから混沌に満ちた不協和音へと雪崩れ込む第2曲「Melt Delusion」も終末観と混沌の中で頭は覚醒し正常でありながらも全ての神経を逆上させる。後半からのコーラスを巧みに使った破滅的旋律の中の哀愁のコード進行も見事だ。特に必殺の1曲は第3曲「Sludge 72」で間違い無いだろう。蠢く空間系エフェクターが生み出すノイズをバックに今作で最も殺傷力のあるリフと共にバーストとダウンを繰り返し混沌を加速させた末にタイトなリフで振り落とし終わる楽曲だが、2分弱の中で変化していく構成と必殺のキメ、邪悪なリフと同時にエフェクターによって音階が崩壊していくギターリフが刺さる名曲だ。脳髄で暴れ回る負の感情と狂気を描いた様な第6曲「New Normal」も見事でゆるやかに漂う音と独白めいたボーカルからリフとビートの応酬なバーストするパートへの切り替え方も絶妙。作品全体で一貫しており、混沌と共にバーストするパートとゆるやかに空間的な音が不穏の空気を生み出すパートを使い分け、変拍子の中で巧みなキメを入れるビートと激歪かつ空間的なノイズを撒き散らし暴走するギターリフがドス黒い血を撒き散らしていく様な残血具合。とにかく混沌を完全に負の方向へと向かわせた結果生まれた精神の暗黒世界へと引きずり込むハードコアが生まれてしまったのだ。
残念ながらギターボーカルのカンノ氏の死によってThe Carnival Of Dark-Splitは解散してしまったが、彼等の残した負の感情と混沌を鳴らすハードコアは唯一無二であり、その暗黒世界に飲み込まれてしまったら二度と抜け出せない中毒性も持ち合わせている。不協和音が轟くハードコアの世界をここまで高い次元で完成させてしまった今作はカオティックハードコア屈指の名盤である事に間違いない。漆黒の精神世界へと引きずり込まれてしまう事は間違い無いだろう。