■Aussitôt Mort
■6 songs/Aussitôt Mort

フランス激情系ハードコアの最高峰として君臨するAussitôt Mortのタイトル通り6曲入の編集盤。4曲入り12インチの音源とスプリットに提供した1曲と未発表曲1曲をコンパイルした初期作品集というべき内容。名盤「Montuenga」にて激情神として誰も追いつけない孤高の存在である事を証明した彼等だが、今作でもその孤高の激情系ハードコアは既に存在している。
彼等の激情系ハードコアはドゥーミーで重いグルーブと共に引き摺る様に進行するサウンドが特徴的であるけれど、今作は「Montuenga」に比べたらそういったドゥーミーな要素はあまり無い。しかし殆どの楽曲がミドルテンポでずっしりと攻めてくる辺りは変わらず、そしてもっとストレートなハードコア色を感じさせてくれる。クランチ気味な歪みのサウンドで緊迫感と焦燥を体現するというフランス激情のお家芸とも言えるサウンドだったりするし、厚みのある重厚なグルーブという武器を生かしつつもよりメロディアスでドラマティックな音になっている。原始的なハードコアサウンドでありながらも、メロディアスであり、時には深遠な深みを空間的に聴かせたりするし、巧みに緩急を付ける楽曲構成や哀愁に満ちたボーカルとメロディは胸に来る物が確かにある。フランス激情のマナーをしっかりと継承してはいるけど、初期作品である今作で既に自らの方法論を見出しているし、それは確実に「Montuenga」で生かされている。第2曲「Aussitôt dort, aussitôt mort」が個人的にかなり気に入っている1曲で、メロディアスなギターフレーズが交錯し、狂騒を緊迫したテンションで鳴らしつつも、細かい部分にまで気を配った音の作り方と、骨太のグルーブという肉体性と知性の融和から、起伏を生かした構成でより混沌へと急降下していく様なドラマティックさを見せ付けるし、そんなサウンドと共に吐き出される叫びには胸を熱く焦がされてしまうのだ。リリカルな旋律と共に破滅への舞踏を見せる第4曲「Le désespoir des singes」も激熱な名曲だ。時にスラッジ・ドゥームのエッセンスで味付けし、時には泣きのフレーズから深みのある音色を奏で、時に疾走しながら踊り狂う。そんな多彩で感情豊かな音を彼等からは感じる。ドラマティックでスケール感が魅力的な第5曲「Dur comme la banalité」といい、緻密な音の並べ方で奥行きのある哀愁と轟音サウンドから重苦しいハードコアへと雪崩れ込み最後は激情をドラマティックに暴発させ大団円な第6曲「Percuté」と編集盤でありながらも捨て曲一切無しの激情の物語を作り出している。
激情大国フランスらしい哀愁と緊迫のハードコアサウンドを展開しながらもAussitôt Mortにしか出せない重厚なアンサンブルとミドルテンポから生み出される重苦しさは今作でも既に存在している。そしてそれは間違い無く激情系ハードコア屈指の大名盤である「Montuenga」へと繋がっている。また今作は下記リンクのAussitôt Mortのbandcampでフリーダウンロード形式で配信されているので是非チェックして欲しい。
6 songs/Aussitôt Mort
■Montuenga/Aussitôt Mort

激情帝国フランスが誇る激情神ことAussitôt Mortの08年発表の2ndアルバム。2011年の日本の若手激情最高峰バンドheaven in her armsとのスプリットで殺り合ったのも記憶に新しい人も多いと思うが、こいつらは数多くの激情系ハードコアの中でも世界トップレベルのバンドであり、誰も追いつけない唯一無二の存在として君臨している。日本ではkillieの吉武氏主宰のoto recordsから国内盤がリリースされ、日本でもその名を轟かせているが、全てを飲み込む激情神としての猛威と、誰も追いつけない圧倒的な存在感は今作を聴けば伝わる筈だ。
Aussitôt Mortはまずスラッジコアな重低音が轟く音の破壊力が凄まじいバンドである。その殺伐とした音に激情帝国フランスの血肉を感じさせ、ドラマティックであり深遠なスケールを持つ楽曲が赤黒い破滅的世界を描く。第1曲「Mort! Mort! Mort!」では冒頭からストーナーなリフの重低音が視界を埋め尽くし、ミドルテンポの重心の強さを感じる引き摺る様なグルーブと時にメロディアスに泣くギターフレーズが殺気と激情の核融合を果たし聴き手の胸を抉り取る。時にポストロック的なアプローチも、BaronessやMastodonを彷彿とさせる様なプログレッシブな展開も見せ付けてくれるし、名刺代わりにしては本当に強烈な傷痕を聴き手に残す名曲だ。基本はドゥーミーな成分も感じさせるリフやメロディアスなギターフレーズを巧みに使い分け、スラッジコアのミドルテンポの毒素に満ちたグルーブをポストメタルの緻密さとプログレッシブな要素を盛り込み、その重低音のサウンドで全てをなぎ払う激情系ハードコアと言えるし、ボーダーレスな音でありながらAussitôt Mortにしか鳴らせない完全にオリジナルな音になっている。第4曲「Huit (Part 1)」みたいなアンビエントな小品を盛り込んでくる辺りもニクイし、第6曲「Le kid de la plage」のグロッケンを導入し、トラッドなアコギのフレーズも飛び出す懐の大きさと、緻密かつドラマティックな展開で描くこの曲でもこいつらの個性は絶対に失われていない。終盤の第7曲「On a qu'à se dire que l'on s'en fout」で見せるストレートな旋律と緩急付けた構成からノイジーにクライマックスへとダイブする様なんか本当に心臓を串刺しにされる様な感覚に陥るし、最終曲である第8曲「Le prophète de malheur」のスラッジ・ポストメタル・カオティックハードコアの異種交配のキメラの様なサウンドスタイルと壮大なスケールは圧巻の一言。
スラッジ・ドゥーム・ポストメタル・アンビエントまで飲み込み、ミドルテンポの重心の効いたグルーブとフランス激情の血肉が生み出した完全に誰も追いつけない激情系ハードコア。こいつらが激情神として君臨し、誰も追いつけないオリジナルの激情を今作で見事なまでに見せつけてくれた。激情フリークスは勿論、それ以外の音楽の愛好家にも有効な音であるし、大きな衝撃と感動をもたらしてくれるハードコア。見逃してはいけない!
また今作は下記リンクのAussitôt Mortのbandcampでフリーダウンロード形式で配信されているので是非チェックして欲しい。
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