■BOSSSTON CRUIZING MANIA
■Loaded, Lowdead, Rawdead /BOSSSTON CRUIZING MANIA

東京Boredomの首謀者の一人でもあり、様々な形で東京のアンダーグラウンドシーンの工作員として暗躍するボストンの実に7年振りの2011年発表の4th。その行動理念の自由さやユニークさもそうだが、それは彼等の音楽にも現れており、ポストパンクの独自解釈と破壊と構築を際限無く繰り返した末の分類不能なサウンド、首謀者のカシマエスヒロのポエトリーリーディングともラップとも言えそうで言えない独自のボーカルスタイルで繰り出す圧倒的な情報量の言葉の数々が放出する独特の毒に気が触れそうになる作品だ。プロデュースはPANICSMILEの吉田肇を迎えている。
ファンク・ダブ・ポストパンクを独自解釈した末に破壊し構築したサウンドは非常にグルーブ感に満ちた物であるが、同時にポリリズムは大量導入した末にズタズタなビートにもなっている、しかしジャンクになると見せかけてズタズタのビートは新たなビートとして構築されており、時にパーカッシブなビートも取り入れ、難解ではあるが、肉体への有効性は失われるどころかよりダイナミックになっている。ギターワークも切れ味鋭いカッティングをメインに攻めるリズムギターともう1本の不意にディストーションギターを見せ付けたり、リズムギターと同時にカッティングの絡みを見せたり、空間的なノイジーさも見せるフリーキーさ。そんなバンドの音に乗るエスヒロ氏のボーカルはかなり独自であり、分解と構築を繰り返しまくったサウンドとの調和を目指した末にポエトリーでありながらも独特のタイム感とグルーブを持ち、時に性急になりながらもどこかクールな感触も持った毒として際限無く言葉を繰り出しているのだ。パーカッシブなビートを機軸にし、楽曲によってはダブ的なコラージュも施され、その毒の効能をより強くしている。緻密に裏拍を取り入れ、際限無く反復していくフレーズのグルーブを積み重ね時にそれを崩壊させる構成もやはり神経質であり、異質だ。ファンキーな音を見せ付ける第1曲「完璧な隠れ家」から彼等の異質さは発揮されているし、ドープさの中で破壊と構築を繰り返す第2曲「Low Down」、ポストパンクとファンクの配合と、時に緻密な重厚なグルーブを破壊する転調が印象的な第5曲「Building Is Destroyed」、ボストン流のダブサウンドを聴かせる第8曲「Who Is Next」、スカスカのビートの空白すらグルーブにし、ジャンクなビートと地下に沈んでいく感覚に襲われる第9曲「Tokyo Custro」とどの楽曲でもボストンの破壊と構築の美学は徹底して貫かれている。特に終盤の楽曲である、痙攣ビートと麻薬的な断層のサウンドの業を感じさせる第10曲「FiX!」と、今作で最も多い情報量を持ち、緊迫感と脅迫観念に襲われ、終盤の性急さに満ちた生き急ぎの音の切迫感へと帰結する第11曲「Loadead,Lowdead,Rawdead」は本当にボストンにしか作れない楽曲だ。
今作は全ての概念を知り尽くしているからこそ生まれた概念を破壊し、それを新たな概念として生み出すパラノイアの音だ。幻想的なサウンドなんか全く無く、現実世界とリンクした冷ややかな感覚と重苦しいグルーブは熱情も絶望も無いフラットな感情を行ったり来たりしてる。ミクロとマクロのどっちにも偏執し、それを具現化するセンスと演奏技術のレベルの高さには脱帽だし、それを最終的には聴き手の肉体への信号として発信するダンスミュージックにすらしてしまっているのが驚きだ。自らの音を完全に独自の領域まで持っていったボストンは異質でありながらもどこまでも徹底して面白い音楽を鳴らしているし、東京アンダーグラウンドシーンの参謀として絶対的な存在であるのだ。