■La Quiete
■Tenpeun 01-05/La Quiete

イタリアの激情神ことLa Quiete(ラクイエテ)の初期の音源をコンパイルした編集盤。19曲にも及ぶ楽曲が収録されており、入手困難音源ばかりのLa Quieteの音に触れる上では本当にありがたい編集盤だ。そして何よりも今作に詰め込まれているのはイタリアは勿論、世界の激情系ハードコアのシーンにてLa Quieteがどれだけ重要な存在であるかを否応無し痛感させられるカオティックかつ青臭くクリアな激情だ。
若干クランチ気味のクリーンなギターが織り成すのは変拍子だらけのカオティックなフレーズの数々であり、リズム隊も破綻寸前のギリギリのラインで統率され、複雑に絡み合う楽曲を構成しているが、そのカオティックさと同時にエモーショナルかつ青臭い宝石の様に煌く旋律のクリアさが組み合わさった事によってLa Quieteの青く光る純度の高い激情系ハードコアが生み出されている。もう1枚の編集盤である「2006-2009」に比べたらハードコア色の強い楽曲が並んではいるが、彼等の核になっているのはその純度の高さを見せ付ける旋律であり、それをストレートでありながらも、カオティックな感触で鳴らしているからこそ、唯一無二のサウンドが生み出されているのだ。時に不協和音を織り込むコード進行だが、それでも風通しの良さは絶対に損なわれていないし、カオティックとエモーショナルという二つの要素を同時に手にしたからこそLa Quieteは無敵である。全ての楽曲が3分にも満たない短尺さを誇っているが、その僅かな尺の中でジェットコースターの様に目まぐるしく転調を繰り返し、ハードコアパートとクリーンパートが高速で切り替わっていきながら、瞬間のドキュメントを繰り広げているし、その一瞬の中にある、輝きと混沌がストロボの様に発光し、その眩さの向こう側にある音は感動的だ。音自体はペラペラな音作りではあるけれど、彼等は重厚な音圧にも頼らなくても、その旋律と統率された混沌の中で決して消える事の無い光を生み出しているのだ。それらの楽曲の中でも「Mandorle Amare Al Traguardo Della MileMiglia」、「Untitled」の2曲は本当に朽ち果てる事の無い輝きを見せてくれるハードコアと激情が確かに存在し、僕たちの網膜にその輝きを刻み付ける。
誰も汚す事の出来ないまっさらな風景の中で青い輝きを見せるハードコアとして彼等はやはり最強であるし誰も追従不可能の唯一無二の音を鳴らしている。激情系ハードコアフリークスは必聴なのは言うまでもないし、エモファンやロックファンにも訴えるだけのポテンシャルを彼等は確実に持っている。今作と「2006-2009」の2枚の編集盤でLa Quieteのサウンドを十分に堪能出来るし、彼等は日本でももっと多くの人を虜にするだけの力を持っている。イタリア激情神の座は彼等の為の椅子であり、その旋律は本当に胸を打ち抜く涙の音だ。
■2006-2009/La Quiete

CONTRASTO、RAEIN、NEIL ON IMPRESSIONのメンバーも在籍するイタリアの激情神ことLa Quiete(ラクイエテ)の09年発表の7曲入りの編集盤。06年発表の「pure pain sugar」と08年発表の「sons of vesta」の2枚のEPをコンパイルした作品であり、2枚ともアナログのみのリリースな上に現在入手困難となっているので、La Quieteの貴重な音源をこうしたCDのフォーマットで聴けるのは嬉しい限りだ。そしてたった7曲にLa Quieteのサウンドが濃縮されているし、La Quieteの魅力を存分に堪能出来る1枚となっている。
先ず彼等のサウンドは激情系でありながらも非常に風通しの良いクリアなサウンドが特徴的である。クリーンなギターの絡みと、ハードコアというよりもエモに近い感触の楽曲が並ぶ、それを複雑極まりない展開と構成で演奏するのが彼等のサウンドの大きな特徴だ。それでも決して難解にはなっておらずメロディアスな要素に重点を置いて、歪んだ激情よりも透明感に満ちたクリアな郷愁のサウンドを聴かせてくれる。第1曲「Sulla Differenza Fra Un Sorrisi E Una Risata」はハードコアな疾走感が強いけれど、クリアな泣きの旋律と共に変拍子と転調を駆使したマスロック色の強いフレーズの応酬で一気に胸の鼓動が加速してしまう。一方でkillieもカバーしている第2曲「Giugno」は透明度の増したアルペジオの旋律が胸を焦がすエモーショナルさとメロディックさが前面に出た1曲。その高揚感が軽やかに飛翔するサウンドは郷愁と感動を呼び起こす。第4曲「Cosa Sei Disposto A Perdere」は激情とエモが絶妙のバランスで融合したポストハードコア色の強い1曲で、楽曲の緩急のつけ方の軽やかさにも持っていかれるし、ポストロック色とメロウさが際立つ第5曲「Musica Per Un Giardino Segreto #4」、ダークさも持った旋律と悲壮感に満ちた今作で最もドロっとした感触の強い第6曲「Le Conseguenze Di Un Abbraccio」と、それぞれの楽曲の完成度は本当に高いし、統率されていながらも多彩さを持っている。歪んだディストーションのサウンドは殆ど見受けられず、クリーントーンの中に少しばかり歪んだ音色で攻め立て焦燥と郷愁の音色と、それをハードコア・エモ・マスロック・ポストロックのカラーを巧みに取り入れた結果の追従不能のハードコアだ。
音楽的には全く違うけれど、フランスの激情神Aussitôt Mort同様に、独自の進化の方法論にて誰も追いつけない激情を生み出しているLa Quieteも激情のシーンに君臨する帝王の一人であるのだ、多くのバンドに影響を与え、多くの人々の支持を集めているのも納得だ。純度の高い旋律と、それをカオティックにしながらもよりストレートな音に仕上げ放っているLa Quieteは偉大なる激情バンドである事は絶対に揺らがない。