■Morne
■Shadows/Morne
![]() | Shadows (2013/07/29) Morne 商品詳細を見る |
2ndである前作「Asylum」が本当に素晴らしかった、ネオクラスト派生型激重ポストメタルであるMorneの2年振りとなる2013年リリースの3rdアルバム。前作で素晴らしい完成度を誇るNeurosis直系のポストメタルサウンドを聴かせた彼らだが、今作ではて更にスラッジ要素を高め、より芸術性と密教性を強めながらも、更に歪んだ漆黒の音を放出している。前作の完成度から今作へのハードルは高くなってはいたが、それを越えてくれた傑作を彼等は生み出した。
前作との大きな違いは、よりスラッジの要素を高めた事と、より密教的なアプローチを仕掛けてくる様になった所だと思う。AmebixとNeurosisの流れを組み込み、独自のサウンドへと変貌させている力量は流石の一言だけど、前作以上にドス黒さが際立つサウンドでありながら、その密教性の奥底にある叙情性が生み出す芸術性も凄い。前作で見せ付けた音を更に極限まで磨き上げた作品だと言えるし、より極端すぎる音塊を放つバンドにもなっている。何よりもよりドゥーミーさを加速させたからこそ、よりエグさが極まったのだ。第1曲「Coming Of Winter」では推進力を完全に放棄したビートと、輪郭を掴ませない漆黒の濁流と化したリフ、楽曲の展開こそ少ないのに、ほぼ反復を繰り返すリフの応酬が脳髄を漆黒の螺旋へと飲み込んでいく。ドゥームの持つサイケデリックな酩酊を手に要れ、更には持ち前の激重のサウンドを進化させた改心の1曲だと言える。第2曲「A Distance」ではクリーントーンの密教的旋律とトライヴァルなビートがかなり印象的だし、同じフレーズの反復を繰り返しながらも、徐々に歪みを見せていく展開は流石だし、そんなトライヴァルな前半とは打って変わって、後半からはクラスト色を色濃く打ち出し、重々しく暴走するビートのプログレッシブさは近年のAmebixのそれを確かに継承しながらも、よりダークで漆黒なヘビィネスに特化させ、同時に妖しさも手にしている。
前作に比べると確かにポストメタルらしいポストメタル色は後退し、よりドゥームやスラッジといった要素に接近した印象だけど、前作でもあったドゥーミーさをより追い求めたからこそ、ポストメタルの範疇に収まらないクラスト側からのドゥーム・スラッジへの回答として確かな説得力を今作は持っている。第3曲「New Dawn」は今作の中でも一番ポストメタル色が強い楽曲ではあるけど、相変わらずドゥーミーな密教度は高いし、そこから反復の美学を見せつつも、複雑に展開し、感情を落として行く様は圧巻だし、無慈悲な筈なのに不思議とドラマティックだ。第4曲「Shadows」では圧巻のスラッジサウンドを展開する今作では一番分かりやすい楽曲ではあるけど、終盤で歪んだサウンドの奥底にあるドラマティックな旋律が花開く様は本当に鳥肌が立つし、最終曲「Throes」は、前半はほぼアンビエントだし、淡々とドラムの音とアンビエントノイズが織り成す妖しい視界ゼロの黒煙が充満する中で、ほぼ音の輪郭を放棄したスラッジサウンドが展開されていく様は本当に全てを置き去りにしている。
更にドゥーム・スラッジの要素を色濃く打ち出した作品だが、持ち前の神秘性と圧倒的肉体性を更に屈強にし、激重のサウンドをより漆黒へと導き、更なる異次元を生み出すバンドになったと思う。単なるクラストからポストメタルへの変貌ではなく、更に地下深くへと落としにかかる宗教的サウンドを彼等は手にして、更に独自の音を手にしてのだ。前作も本当に素晴らしかったが、今作も屈指の作品となっているし、クラスト側から彼等は確かなる世界を見事に描いてくれた。
■Asylum/Morne
![]() | Asylum (2011/06/20) Morne 商品詳細を見る |
FILTH OF MANKIND、DISRUPT~GRIEFのメンバーらが在籍する激重メタルクラスト・スラッジ・ポストメタルバンドの2nd。2011年発表の作品。今作で初めて彼等の音に僕は触れたが間違い無く2011年の激重シーンの最重要作品の一つであるのは間違い無い。NEUROSIS直径の激重の漆黒のスラッジサウンドと、激情に芸術性を加えたキーボードを導入した緻密さでそのヘビェネスに更に説得力を加えているし、それらは後期ISISにも連なる部分であったりするが、紛れも無く今作はISIS以降のポストメタル・スラッジのシーンを進化させる作品だ。
初っ端から放たれる17分にも及ぶ大作である第1曲「Asylum」で既にこいつらの格の違いを見せつけられる。激重のスラッジリフとメロウなキーボードの旋律、その両方がこいつらの音の核になっているし、へビィネスを突き詰めながらも、芸術的美しさを両立させ、その両方が融合した末の神聖なるスラッジとしての猛威が見事に存在。しかも長編だからこそ見せ付ける事が出来る構成美も体現させ、地鳴りの様なリフは終わり無く鳴り響いてるが、その音色を少しずつ変化させ、へビィネスと叙情性が少しずつ細胞レベルで結合していく展開も素晴らしいが、その行き着いた先が激情を開放させた音圧が繰り出すドス黒い濁流なのだから本当にタチが悪い位に生々しい生命の躍動と破滅のハンマーがぶつかり合う激情と激重を突き詰めたからこそのカタルシスに飲み込まれるのは必至だ。また彼等の音は激重の音であるが同時にゴシックな耽美さも感じさせてくれる物であり、第3曲「Nothing To Remain」の前半のアルペジオが空間的な残響と共に耽美さを加速させる神秘的な音色にもやられてしまった。しかし後半で壮絶なスラッジへと変貌し幽玄のピアノの旋律が時折入りながらも、重厚なアンサンブルが未曾有の混沌へと連なる。空間的な残響を大切にし、それを巧みに操るのも彼等の魅力であり、それに加えて肉体的屈強さをも持ち合わせている。今作の楽曲はどれも無慈悲なまでに漆黒のハードコアを感じさせてくれるし、その邪悪な力だけでも他の追随を許していないが、それに時にはゴシックに、時には幽玄の音色も加わり、へビィネスの向こう側にある抗えない音塊の強大かつ巨大なスケールはストイックに自らの音を進化させたからこそだ。SWANSのJarboeが参加してる最終曲である第7曲「Volition」はストリングスを大胆に導入し、退廃的な空気を気が狂いそうな感傷が前面に押し出され、その空気が心を蝕んだ先に待ち構える今作で最も無慈悲なへビィネスの奈落が聴き手を食らい尽くし、ラストには轟音系ポストロックらしい空間的轟音とスラッジリフとストリングスが結合し、その先に無へと堕ちていく。そのスケールと圧倒的な美しさこそが今作のハイライトだ。
こいつらも間違い無くハードコアの先にある激情とヘビィネスを妥協を許さぬストイックさで奏でるバンドであるし、基本的にスラッジさを前面に押し出しながらも、そのハードコア魂を徹底して鍛え上げた結果の肉体美と構成美を楽曲から放出し、神聖ならスラッジサウンドに帰結している。NEUROSISやISISからの流れから独自のサウンドへと進んで行くこいつらは、果てしない彼方へと暴走して行くバンドである。また一つポストメタル・スラッジに一つ重要作品が加わった。