■Fragile
■Straight Edge/Fragile
奈良が誇る轟音兵器が帰ってきた。
00年代末に結成され、エッジの効いた轟音とツインボーカルのポップネスでその名を広めた奈良県のツインジャスマスターオルタナティブロックバンドFragile。
2018年にメンバーが脱退し、minameeeとyuriのギターボーカルの二人だけになるというピンチを迎えながら、2019年に新ドラマーとしてマサヒロが加入。
サポートベーシストにex.脳内麻薬ズのウエダを迎えてレコーディングされた今作はバンド初となるシングル作品であり、Fragileの逆襲の幕開けに相応しいキラーチューン2曲が収録されている。
Fragileはギターポップ・ポストハードコア・シューゲイザーなどの多岐に渡る音楽性を持ちながら、ハードな轟音サウンドとメロディアスで歌心溢れるポップネスを共存させる希有な存在だ。
結成当初から現在までリリースされた楽曲こそ決して多くないが、それらの要素は全くブレていない。
そして今作はFragile史上最もハードさとポップさが高純度でパッケージされた作品となっている。
タイトル曲「Straight Edge」はバンドの再スタートへと新たな決意と覚悟しかない完全なる勝負曲だ。
2本のジャズマスターが織りなす不協和音と轟音、一発で脳味噌の最奥まで突き刺すハイがエグい程に効いたサウンドと前のめりなビート。
けれどもサビではツインボーカルが高らかに歌い上げるポップさ。
決して奇抜な事は何もしていない。けれども無垢過ぎるポップさと時に暴れ狂う轟音の対比が生み出すFragile節は極まっている。
B面の「忙殺のfade」は轟音シューゲイザーソングとなっているが、歌物バンドとしてのFragileを見せつける楽曲となっている。
エモーショナルなシューゲイザーサウンドから始まり、立体的なサウンドアンサンブルの奥深さ、あくまでもシンプルなビートとグルーヴのコシの強さ。
繊細さと力強さが共存し、メインボーカルのminameeeとコーラスのyuriの歌声の青い美しさがキラキラと輝く。
思えばFragileはこれまでも幾多のピンチを迎えてそれを乗り越えてきた。
活動停止状態だった期間もあったが、それでも彼らはその轟音を鳴らすのを止めることはなかった。
新生Fragileが放つジャンルやカテゴライズなんて不要なポップさもエッジも極限まで研ぎ澄ました必殺の2曲。
Fragileは今こそ多くの人に見つかるべきバンドだと僕は思う。
ここまで轟音に全感情を託した不器用で純粋なバンドを僕は知らない。
■Clappedout air/Fragile

奈良と大阪を拠点に活動する男女ツインボーカルツインジャズマスターな4ピースであるFragileの2012年リリースの1stミニアルバム。満を持しての処女作でありFragileというバンドの魅力がパッケージングされた作品だ。demo音源ではDrive Like Jehu直系のポストハードコアサウンドを展開していたけれど、今作ではUSエモ・ギターポップのエッセンスも強くなり、尖ったオルタナティブさと浮遊するポップ感をFragileというフィルターを通し、自らの音に昇華した作品に仕上がっている。
demo音源では男Gt&Voであるminameeeのセンスが前面に出ていた印象だけれども、今作では女Gt&Voの大塚絵美のカラーも本当に色濃く出ている。第1曲「マリオネット」は風通しの良いエモーショナルなコード進行と轟音サウンドが浮遊するポップさが前面に出ている1曲だけれど、絵美嬢のウィスパーボイスとフィードバックするギターの調和が見事だし、胸を締め付ける郷愁の音色と疾走感がドライブする鋭利さもある。フロントの2人を支えるリズム隊のコシの強さがバンドのグルーブに確かな芯を持たせている。ポップな風通しの良さと同時にオルタナティブロックの強度も確かに存在している。対する第2曲「Bazzet」はサンディエゴのポストハードコアサウンドが炸裂し鋭角リフの応酬が体の体温を一気に上昇させるminameeeがボーカルを取るFragileの鋭利さが前面に出た1曲だ。振り落とされる硬質なサウンドで聴き手を確実に突き刺していく。そこでもリズム隊の強度も大塚絵美のキャラクターも楽曲のカラーを更に変化させているし、単純な正統派ポストハードコアサウンドってだけでは無く、それを消化した上でのFragileだからこそ出来るポストハードコアになっているし、そのサウンドに頼もしさを感じる。終盤からのフィードバックギターのノイズとminameeeの血管ブチ切れボーカル、それに反する微熱の絵美嬢のコーラスが楽曲のカラーを巧みに変化させるセンスは確かな物だ。第3曲「みずたまり」はFragileの哀愁の要素を前面に出し、緩やかなテンポで淡々とセンチメンタルさを増幅させる歌物な1曲。この前半の3曲がそれぞれ全く違うアプローチの楽曲になっているし、Fragileの多方面に渡るベクトルの魅力を統率し、雑多にするのでは無く、どの表情を見せてもFragileとして堂々とした音になっている。オルタナティブとポップネスが正面衝突した第4曲「Alter」も、絵美嬢の弾き語りから発展した歌物ナンバーである第5曲「fade out」でもそのツインフロントの二人のカラーとそれを支えるリズム隊の屈強さが織り成す雑多ではあるが、統率された衝動とポップネスには確かなFragile印が刻印されている。
奈良という地から登場したFragileは同郷のLOSTAGEとも北海道のハードコアともUSエモやサンディエゴのポストハードコアとリンクしながらも、それらの雑多な音を喰らいまくった末にツインフロントのそれぞれの個性がポップさもオルタナティブさも交錯しまくるサウンドはBP.やmoonwalkとサウンドこそ違いはあるがそれらのバンドに連なる物をFragileは持っている筈だ。Fragileの魅力が十分に伝わる処女作となったが彼等はまだまだこんな物じゃないと思っているし、これからの進化に心から期待したいバンドだ。
今作はFragileのライブ会場と下記リンクのdisk unionのページで購入可能になっている。また取り扱い店舗も随時増えると思うが、先ずは下記リンクのdisk unionのページで視聴可能になっているのでチェックして欲しい。
disk union 視聴&購入ページ