■nemo
■Recorders/nemo
![]() | Recorders (2004/03/17) nemo 商品詳細を見る |
元COWPERS、元PLUGのメンバーが結成したオルタナティブロックバンドnemoの04年発表の1stアルバム。冷徹でクールな感触を持ちながらも静かに燃え盛る熱情を感じさせる切れ味と熱量を武器に必殺のリフを繰り出すバンドだ。硬質なビートと金属の感触を嫌でも感じるであろう冷たさを持つギターリフの音に、オルタナティブロック・ハードコアの熱を確かに持ち、エモーショナルでいてジャンクな音を鳴らしている。90年代初頭のアメリカのエモ・ハードコアの影響を感じさせながらも、そこから更に自らの音に発展させ更に冷徹でノイジーな音が全てをなぎ払うのだ!
言うなればこのバンドの音はNo Wave時代のバンドが持っていた冷徹さとジャンクさに90年代エモ・ハードコアにツボを押さえまくりなギターリフやディスコードの旋律を融合させ、それを00年代の音として完全な形で消化した物だ。第2曲「ホワイト・ロリータ」の金属的な必殺のイントロのリフからそのボルテージは高まるばかりだ、しかし分かりやすいエモや激情に走らないのもnemoの持ち味、あくまでも無感情で冷徹なテンションを保ちながらも、その旋律や構成は紛れもなく感情的なのだ。相反する二つの要素を両立させ、冷たい熱情が非情なまでに満ちているのだ。第5曲「タワー・レコーダー」もプログレッシブな感触を持ちながら、徐々に上がっていく熱量は一気に胸を掻き毟り、そこから微熱のエモさがじわりと刺してくる。
個人的にはSlintの様な金属的感触と実験精神をnemoからは感じたりもする。しかしSlint以上にエモーショナルなカラーを押し出したこの音は、冷たい熱を感じる。日本人だからこその繊細さと作りこまれた音は本当に先人の音に影響を受けながらも、更にその先へと踏み込んだ自らの音になっていると言える。それでいてハードコアのダイナミックな感触もしっかり出しているから肉体にも訴える力を持っているし、何よりハイボルテージなギターリフの応酬!2本のギターがそれぞれ必殺のリフで聴き手を惨殺しまくりながらも美しく絡み合う様はもう堪らなくなる!
日本のオルタナティブロックシーンを支えた男達が更にその先へと飛び立ったバンド。それが間違いなくnemoなんだと思う。数多くの先人の音を完全に自らの音に消化するセンスも素晴らしいし、それを肉体へと直接訴えるバンドとしての馬力の強さもまたグレイトの一言に尽きる。どこまでも無慈悲な鉄槌を下すnemoの音はオルタナティブロックの攻撃性を最高の形で放出している。そんなハイボルテージで宇宙行きの名盤。
■nemoの見た4つの悪夢/nemo
![]() | nemoの見た4つの悪夢 (2004/12/15) nemo 商品詳細を見る |
元COWPERSのシモ氏と元Plugのナカノ氏といった北海道オルタナティブシーンを作り上げてきた男たちによるハイボルテージオルタナティブバンドであるnemoの2004年発表の4曲入りのEPであるが、とてつもないスリリングな緊張感とソリッドさとアバンギャルドさが凝縮された必聴盤である。僅か4曲の中にこれでもかと様々なジャンルを文字通り呑み込んでしまった、殺伐とした轟音が鳴り響いている。
第1曲「NAKANO HATES YOU」はノイズギターとアンビエントなギターフレーズが緻密に組み合わさり、殆ど重低音の塊となったベースが空間を埋め尽くし、正確さを極めた絶対零度のドラムがフリーキーにビートを作るプログレッシブでありオルタナティブな1曲、ハードコアを通過したサウンドでありながら、そこに胡座をかかないで、鋭角でありながら上がらないクールなテンションのまま聴き手をじわじわと刺し殺していく。そして第2曲「ケイチツのnemo」でポストロック的なアプローチを取り入れながらも、ポストハードコアバンドとしてのnemoの必殺のリフが鎌首を振り回している。そして少しずつ狂気と殺気が上昇していく様が素晴らしい。
そしてくぐもったインタールード曲である第3曲「ドローマー」を通過しての第4曲「僕なりの恐怖政治」が最強の1曲といっても過言では無い位に圧倒的な完成度と殺気と必殺のリフが渦巻く超ハイボルテージカオティックチューンになっているのだ!イントロだけで完全に殺されてしまう轟音に全てを持っていかれそうになる!クールでありながらも、確かなテンションを持ったシモ氏のボーカル、緻密に練りこまれ絡み合う2本のギターは計算された中で圧倒的な殺傷力を持っていて、文字通りキラーリフがこれでもかと渦巻き、爆音であり、リズム楽器としてというよりは、脳髄に爆弾を落とされるかの如きベースとそれに反して緻密でありながら、必殺のキメを外さない安定感と散弾銃の様なドラムが組み合わさった瞬間に、ここまでの楽曲が出来上がってしまうと思うと本当に恐ろしくなってしまう。というか「僕なりの恐怖政治」を聴くだけでもこのCDは絶対に買う価値がある。
タイトル通り、悪夢の様な緊張感とパラノり具合を持ったEPであるが、nemoの本当の意味でのポストハードコアという物がこれでもかと発揮された大傑作である。単に様々な要素を足し算するのではなくて、基盤であるハードコアとしてのバンドサウンドにしっかり組み込んだ事によって、殺傷力がより上がったとも言えるだろう。本当の意味で危険な音というのは正にこの作品みたいな音なのではないだろうか。
■シンカイシャク55355/nemo
![]() | シンカイシャク55355 (2008/08/27) nemo 商品詳細を見る |
先日惜しくも解散してしまった、元COWPERSシモ率いる、オルタナティブバンドnemoの2008年発表の2ndアルバム。リリースは日本屈指のオルタナティブレーベルless than TVから!元PLUGのナカノが脱退してから初の単独音源であり、ギターが一本減ってしまった事を物ともしない必殺のサウンドが見事に凝縮された作品に仕上がった。様々な要素を血肉にして、どこをどう切ってもnemoとしての音になっている。
ほぼ全曲が必殺のキラーチューンと言っても過言では無い、ほぼ全編に渡って、一撃必殺のキラーリフで埋め尽くされていて、サウンドの重圧感はより強くなった。過去の作品以上にアプローチも分かりやすくなっており、バンドとしての即効性を大切にしながらも、そこに多様な要素を持たせる事によって、サウンドはより変幻自在になったといえる。エフィクターかけまくりの音階が崩壊寸前の重厚なベース、タイトかつ正確無比に鳴らされる鉄壁のドラム。3ピースでありながら、無敵のフォーメーションだ。
第1曲「情報公開(DDK)」から不穏なシンセのイントロから凶悪なベースが鳴り、そこからカオティックハードコアのバンドにも通じるテクニカルなギターリフで攻める攻める!ソリッドなシングルコイルのリフが堪らなく気持ち良い第3曲「C/C/C」、秒殺のリフで一気に攻める今作のハイライトである第7曲「scumdirection」と、聴き所はかなり多い。そしてセンチメンタルなフレーズが光る第10曲「モリカワハラスメント」のポストハードコアサウンドも見逃せない。
シカゴ・サンディエゴ周辺のポストハードコアのサウンドをしっかりと継承しながらも、それに留まらない幅広く、それでいてダイレクトなアプローチをこの作品では見せ付けた。何度もライブを見る機会があったのだが、音源の細部まで作りこまれたサウンドとは違う、爆音で破綻しまくってたライブもまたグレイトだった。2009年にフロントマンのシモが脱退し、新たなギタリストを迎えてライブ活動はしていたが、2010年9月にその10年近くの歴史に幕を閉じる。
本当の意味でオルタナティブであり続けたnemo、彼等の残した傑作は是非聴いて欲しい。脳天が宇宙に飛ばされる事は僕が保障する。