■東京酒吐座
■crystallize/東京酒吐座
![]() | crystallize (2011/11/23) 東京酒吐座 商品詳細を見る |
元PlasticTreeのササブチヒロシの誕生日イベントで殻とacid androidの渡辺清美、Presence of soulのYukiとYoshi、101Aのthe Kにより一夜限りで結成され、その後も活動を継続し現在に至る東京酒吐座(トーキョーシューゲイザー)の2011年発表の1st。そのバンド名通りシューゲーザーのバンドであり、ジャケットの猫を囲む大量のエフェクターが象徴する様に3本のギターの轟音が圧倒的音圧で迫ってくる快作だ。
そのサウンドはどこをどう切ってもシューゲイザーであり、甘い旋律と幻想的な揺らめきと轟音のフィードバックという本当に王道のシューゲイザーのスタイルを取っている。今作ではアナログレコーディングで録音されており、それもまた自らのサウンドのスケールを加速させる結果になっている。シューゲイザーは勿論、ギターポップやオルタナティブのカラーも内包した第1曲「299 Addiction」の3本のギターが織り成す轟音がオーバードライブする青い疾走感はいきなり強烈なパンチだったが、続く第2曲「Just Alright」は男女ツインボーカルの揺らめきのギターポップシューゲイザー、Ride辺りのサウンドを上手い具合に消化し、純度の高いポップネスを展開しているのも見逃せない。古き良きシューゲイザーサウンドを現代に蘇らせて、それにギターポップの甘さを加え、甘い轟音で脳髄をとろけさせるサウンドスケープの非現実的な揺らめきの世界が今作にある。アナログレコーディングを最大限に生かし、高揚感とメランコリーが交錯する幻惑の世界を壮大なスケールで描く第3曲「Bright」は心に轟音で潤いを与える名曲だ。ポストロックの手法を取り入れた第5曲「Waltz Matilda」は王道でありながらも轟音系ポストロックとして確かな効能を持った楽曲であるし、彼等の核であるシューゲイザーを様々な形で生かしつつ、最終的には再びシューゲイザーに帰結している、決して懐古的にシューゲイザーをやってるのでは無く、シューゲイザーを2010年代の音にスケールアップした上でのシューゲイザーなのだ。それらを集結させ、静謐さから壮大なドラマを優しく描き、ラストは壮絶な轟音が渦巻く第7曲「Back To My Place」と聴き所は本当に多いが、肉感的でもあり幻想的でもあるサウンドスケープをスケール感だけでなく、甘く優しい旋律で鳴らし、その夢世界に入り込める作品だ。
現在は轟音系ポストロックやエレクトロニカ要素が強いシューゲイザー等を鳴らすバンドが多いが現代にここまで原始的なシューゲイザーを蘇らせ、それを2010年代の現在進行形の音で描く彼等が多くの人々の間で話題(何故か僕の友人達の間で発売当初凄い話題になっていた)になり、高い評価を受ける事実には納得だし、有無言わさぬトリプルギターの甘い轟音の世界には確かな夢とロマンが宿っている。