■Minus The Bear
■Planet Of Ice/Minus The Bear
![]() | Planet of Ice (2007/08/20) Minus The Bear 商品詳細を見る |
ギターが伝説的ハードコアバンドであるBotchのメンバーである事でも有名なシアトルの5人組Minus The Bearの07年リリースの3rd。メンバーそれぞれかつてはハードコアバンドに在籍しながらも、その叡智は全く違う方向に生かされ、歌物オルタナティブロックとポストロックを融合させ、エレクトロニカ等の味付けも加えながらもダンサブルかつ爽やかな音色を卓越した演奏技術で展開する作品だ。
彼等の音はあくまでも自らの歌を最大限に生かしたオルタナティブロックなのだけれど、単なる歌物バンドとして片付けるのは不可能だ。旋律だけでもクリアでありながらも少しずつ熱量を見せる絶妙なエモさが光り煌くピュアネスだけでも彼等は素晴らしいバンドなのだけれども、それだけでは無く爽やかでクリアな楽曲にエレクトロニカの光の煌きを加え更に色彩を豊かにし、変拍子を刻みながらもタイトかつ独自の躍動感を持ったビートは肉体にも確かに訴えてくるし、ポストロックの緻密な構成力とハードコアを通過した猛者達の静かなタフネス、それらの要素を組み込み非常にハイブリットかつ複雑な楽曲になっているのだけれど、そこに難解さは全く無い。それらを取り入れてまた自らの歌物オルタナティブロックとして完結させ、素直に耳に入り込むオーガニックかつ柔らかな歌と旋律は本当に高揚感に満ちている。それをバカテクとしか言えない圧倒的演奏技術とアンサンブルで奏でるのだから恐ろしい。第3曲「Knights」なんか特に完成度の高い楽曲なのだが、純粋な歌物ロックとしての魅力も相当な上に、楽曲のテンションが高まると同時に変拍子駆使の変態ユニゾンを見せ、絶妙に歪んだ音色が脳に快楽と驚きを与える1曲だ。緩やかな時間軸の中で漂う第2曲「Ice Monster」、完全にマスロックの域に到達した雪崩れ込むギターフレーズの嵐が覚醒する第5曲「Dr. L'Ling」も今作の聴き所だ。また2本のギターとキーボードの音の配分も絶妙で、時に宇宙へと繋がるゆらめきを描くキーボと、ハードコア通過型の超絶フレーズを多彩な音色で無限の色彩で奏でるギター、そしてタイトにバンドを支えるリズム隊の鉄壁のアンサンブルは同時に思わず体を揺らしたくなる匙加減を熟知したダンサブルなビートを刻むから恐ろしい。アンビエントからマスロックまで自らの武器を完全解放した第10曲「Lotus」で彼等の魅力を存分に解放している。
音楽性はハードコアバンドをやってた連中がやってるとは思えない物だが、こいつらは本質的な意味でポストハードコアなバンドだと感じた。確かにハードコアの息吹は感じるし、多次元のアンサンブルでピュアネスを極めた有機的な色彩で描く音の螺旋に身を任せた瞬間にその無限回廊へと静かに連れて行かれる。それらを全てひっくるめても最終的に彼等はエモいバンドであり、単純に歌物としても素晴らしいバンドであるのだ。どこまでもハイブリットな1枚だ。