■wombscape

■新世界標本/wombscape

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 東京を拠点に活動するアートコアバンドwombscapeの初の正式音源となる1stミニアルバム。リリースは自主レーベルlandscape recordsから。
 これまでメンバーチェンジもあり、現編成になるまでの道は苦難の道だったと思うし、過去の音源を一旦封印し制作された今作はwombscapeが持つコンセプチュアルさを表現した作品だと言える。
 音だけじゃなくアートワークやブックレットといった部分も含めて一つの作品であり、「新世界標本」という一つのテーマを表現している。

 デモ音源はまだカオティックハードコア要素が強かったし、今作も断片的ではあるがそうした要素はある。だけど今作をカオティックやポストハードコアといった言葉で括ってしまうのはかなり強引な気もする。
 アナログな音色を出した録音だったりとか、イントロダクションやアウトロも含めて7曲で一つの作品というプログレ的な作品構成もそうだけど、フロントマンでメインコンポーザーのRyo氏の美意識と世界観を今作からヒシヒシと感じるし、歌詞カードに綴られている言葉も含めて、聴く人に爪痕を残すだろう。

 終わりの始まりを告げるイントロダクションである第1曲「跋文」から、リフの反復によって海馬の中まで引き込まれる感覚に襲われる「捩れた解放が嘲笑う」の序盤の数分だけで、今作はカオティックハードコアの文脈から完全に外れてしまっている。
 第3曲「真白な狂気」こそ分かりやすいアプローチであるけど、狂気と耽美と鬱めいた感情で真っ黒な絵具で塗り潰されたキャンパスの様な風景が見えるし、それに続く第4曲「新世界標本」から軌道修正が不可能な不条理が更にキャンパスを塗り潰す。
 アート的世界観を表現する為にブラストビートであったり、カオティックなギターリフといった要素を用いてはいるし、そこはwombscapeというバンドに触れる取っ掛りにはなるけど、でもそこに触れたらwombscapeの世界に引きずり込まれるだろう。

 特に第6曲「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」は個人的に末期KuralaやTOOLやKayo Dotが持つシラフのままで堕ちていく様な絶望感に溢れており、曲自体は非常にメロディアスなクリーントーンの音とボーカルで構成されており、ポストメタル的アトモスフェリックさを使いこなしたドラマティックで美しい楽曲。
 しかしそんな音像が輪郭を崩壊させて、最初は綺麗な色で構成されていた絵画に様々な色を加えた結果真っ黒になってしまうかの様なクライマックスへ。最後の最後は不協和音のギターが繰り返され、曲名通りの世界が表現される。

 今回やっと正式音源がリリースされたし、これまで何度ライブを観ても掴めなかった世界が少しだけ掴めた気がするけど、その音もアートワークも言葉も含めて病的ではあるけど、でも一貫して歌われているのは愛だったりもするし、串刺しにされた新世界を見て何を思うかはそれぞれが決めれば良い。
 今作を聴いていると心臓を素手で掴まれている気持ちになるけど、そういった人間の感受性に訴える力がwombscapeにはある。僕はそんな作品にこそ価値があると思うし、24分の中で描かれていく「新世界標本」は純粋なアートだ。



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■蝕の刻・嗚咽する空の内側に/wombscape

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 先日の浄化水槽でも凄まじいアクトを見せてくれた東京にて活動する5人組であるwombscapeの2011年発表の2ndデモ作品。デモ作品と言う事もあってか収録されているのは僅か2曲だが、このバンドの何処にも属さない異形のハードコアサウンドはこのデモ音源にも確かにパッケージされており、凄まじい完成度の2曲から負の感情がバーストする激情が確かに暴発している。



 しかしながら彼等は本当にジャンルで識別するのを拒むバンドだと言える。第1曲「蝕の刻」は変拍子の捻れたビートを基調に進行し、ズッシリと重いリフからテクニカルなカオティックフレーズが飛び出し、急に不穏の旋律を奏でる静謐なパートに突入したかと思えばまたカオティックなパートに移行すると本当に予測出来ない展開を見せ付ける。ボーカルも急に狂気に満ちた叫びを見せたかと思えば、囁きのパートに入ったりと負の感情を撒き散らしまくっている。ポストハードコアやカオティックハードコアの流れを感じる事は出来るが彼等の場合のポストとカオティックはジャンルの定義では無くて、本質的な意味として存在しているし、本当に前衛的で混沌としているハードコアなのだ。それに一聴すると不協和音だらけの旋律だが、その奥底にあるドラマティックでダークな感触は聴き手に美しさすら感じさせてしまうのが恐ろしい所。そして第2曲「嗚咽する空の内側に」は9分にも及ぶ壮大な楽曲。ブリッジミュートの単音フレーズが淡々と刻まれる始まりからメロウな空間的アルペジオが入り込み美しい残響を生み出し、クリーントーンのボーカルが乗り、先程とは打って変わった感傷と静かなエモさを少しずつ増幅させていく。終わり無く続くそのフレーズからリズム隊が入り、その感傷をより明確にし、奥行きあるサウンドを展開し、楽曲の次元を一つ上にまで運んでいく。そんな美しい前半だが中盤になるとヘビィなリフが少しずつ無慈悲に鳴らされ始め、2本のギターのアルペジオが美しく絡み合い、そして一気に美と激情が交互に顔を出し始める。そして終盤になるとその深遠さがダークサイドに堕ち、スラッジな残酷さを持ちながら、残酷な残響がただ取り残され終わる1曲。決して暴発パートには突入しないが、wombscapeが持っている残酷な美しさが前面に出ており、収録されている2曲でwombscapeの魅力は十分過ぎる位に伝わる筈だ。



 混沌、絶望、美しさ、残酷さ、構成美、深遠さ、スケール、どれを取っても卓越した物を彼等は持っているし、それをハードコアとしてどこまでも真っ直ぐに鳴らしながら、既存の音では収まってはいない。個人的に末期kularaの様な狂気と残酷さとスケールに近い物を感じたりもしたが、それの模倣なんかでは無いし、独自の方法論で深遠なる世界を生み出している。まだデモ音源しか出していないバンドではあるが、これから先の活動と作品発表は是非追いかけて行くつもりだ。



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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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