■Vampillia + Nadja
■The Primitive World/Vampillia + Nadja
![]() | the primitive world (2012/03/04) Vampillia、Nadja 他 商品詳細を見る |
先日の来日公演も記憶に新しいカナダのエクスペリメンタルドローンユニットであるNadjaと、その来日公演で共演した大阪の大所帯ブルータルオーケストラVampilliaのコラボ作品。来日公演の方には残念ながら足を運べなかったが、会場で先行販売された今作は来日公演に行った友人に買っておいて貰ったので一足早く聴く事が出来た形になった。そして今作も轟音のエクスペリメンタルサウンドが生み出す圧巻の世界が確かに存在する。
作品全体としてはNadjaのカラーが前面に出ており、その中にVampilliaの音楽的要素を持ち込んでNadjaのサウンドに新たな広がりを見せているのだが、第1曲が1分弱のピアノのインストであり、そこから幕を開ける辺りは確かにVampilliaとのコラボ作品だなと実感する。たった二人で圧倒的轟音ドローンを奏でるNadjaに対してVampilliaが新たな色を加え、それがより深みと破壊力を加速させているのだ。先行公開された第2曲「northen lights」からは早速Nadja特有のヘビィかつ美しい轟音ドローンサウンドが登場しているが、ピアノとアコギの美しい調べも同時に前面に出ているし、アコースティックかつ飾り気の無い音と視界と聴覚を覆い尽くすNadjaの音が共存し合って、それぞれの音の存在感を強め、幻惑的で美しい世界へと聴き手を導いていく。そして今作の核になっているのは23分にも及ぶ第3曲「Icelight」だろう。無慈悲なNadjaの轟音ギターが歪んだ感触をかなり前面に押し出しながら、音数を減らした淡々としたビートに合わせて、容赦無く降り注ぎ、その轟音は徐々にドゥーミーな感触を持ち始め、聴き手の脳髄を破壊せんと超重力の音塊を振り落とす。轟音が全てを埋め尽くす激ドゥームな反復世界を見せ、デスボイスのシャウトが幽玄のドゥームサウンドに漆黒の色をばら撒き、白と黒が混ざり合ったプリミティブな狂気を呼び起こす。終盤ではピアノの音が轟音の後ろで鳴り始め、破滅的ドローンの世界に救いの色を加え、破滅的狂気から幽玄の非現実の狂気へと変貌し、その幽玄さのまま終わりを迎える。Nadjaの轟音を最大限にまで生かした上でVampilliaがそれをより明確にするといった今作ならではの1曲になっている。第4曲はアンビエントな反復から破滅的轟音へのカタルシスを感じさせてくれるし。最終曲は再び厳かなピアノで終わる。作品全体の録音はかなり歪んだプリミティブさを感じさせる物でありながら、美しい幽玄の世界と聴き手を非現実へ道連れにする超重の轟音ドローンサウンドを最大限に生かす物になっているし、全ての感覚を歪ませる世界がそこにはある。
Nadja側のサウンドが前面に出た作品に仕上がっているから、Vampillia側がNadjaのサウンドを破壊し尽くすのを期待している人には少し不満が残ってしまうかもしれない作品かもしれないけど、Nadjaのエクスペリメンタルなドローンの音塊に新たな魅力を加えたVampilliaも地味ではあるが今作で大きな役目を果たしているし、超音圧の世界に新たな非現実の体験を加えたタイトル通りプリミティブであり、同時に幻想的な轟音トリップを体感できる1枚だ。