■SUNN O)))
■The Grimmrobe Demos/SUNN O)))
![]() | ザ・グリムローブ・デモス(紙ジャケット仕様) (2007/10/31) Sunn O))) 商品詳細を見る |
超殺人的重圧殺ドローンユニットであるSUNN O)))の00年発表のデモ音源にボーナストラックを追加し再発されたのが今作だ。多彩なゲストを迎えている現在と違い、オマーリーとグレッグの2人だけで今作は制作されている。
SUNN O)))はEarthの無慈悲さを極めたドローン絵巻であるEarth 2にインスパイアされたユニットであるのは有名だが、このSUNN O)))の最初の作品である今作は、余計な装飾など一切無い、Earth 2の世界をより凶悪に、より殺人的爆音にした作品だ。
全編に渡りベースとギターのリフの概念すら崩壊した超低域の殺人ドローンサウンドが終わり無く反復し、ドラムレスな事もあってか楽曲に推進力は皆無だ。全4曲とも徹底して終わり無く歪みのかかりまくった低域の音のみが存在し、そこに感情移入する余地は無く、ただ無に還ったかの様な地獄が終わり無く広がるだけである。展開も構成も放棄し、大音量で殺意のみが放出されている。
特にEarthの首謀者であるディランへのリスペクトを曲名に冠した第3曲「Dylan Carlson」の圧倒的スケールで繰り広げられる全ての形や概念すら存在しない完全に無慈悲な音塊と、第4曲「Grimm & Bear It」の殺人的歪みにより、ノイズとして形すら消えたドス黒い霧に包まれてしまったかの様な音には震えが止まらなくなる。
今作を軸にSUNN O)))は様々な音楽的要素を強めていって多方面に拡散するドローンユニットとなり、アンダーグラウンドのある意味カルトアイドルとも言える存在になっていくのだが、やはり今作での圧倒的音量と圧倒的音圧で繰り返される無慈悲なドローンさはSUNN O)))を語る上では絶対に外せない要素である。
今作の音は確実に人間を破壊する悪夢の音だ。耳に入り込んだ音塊は聴き手の感情も耳も全てを破壊していく。だからこそこの悪夢の重圧殺ドローンサウンドに取り憑かれ抜け出せなくなった人は確実にいるのだ。何の装飾も無き虚無と虚構を埋め尽くす黒い煙。迷い込んだら二度と抜けだせない。
■Monoliths & Dimensions/SUNN O)))
![]() | モノリスス・アンド・ディメンジョンズ (2009/05/29) サン 商品詳細を見る |
重圧殺ドローンユニットであり、世界的にカルトな人気を誇るSUNN O)))の2009年発表の7枚目のアルバム。前作「Black One」から、ただひたすらにとてつもない圧力を持った音塊を発信するSUNN O)))から、しっかりとしたコマーシャル性や、ある種の分かりやすさを持ったSUNN O)))へと変貌を遂げ始めたが、今作ではより音楽としての形に近づいた意欲作となっている。「Black One」がSUNN O)))の暴力性と邪悪さをエンターテイメントな形で表現した作品だとすれば、今作はSUNN O)))のドローンのエッセンスを随所に散りばめながら、分かりやすい芸術性と、SUNN O)))流の神秘を表現した作品だと言える。
第1曲「Aghartha」は冒頭では従来の重圧殺な拷問サウンドは健在ではある、しかしその暴力性は少しずつ薄れていき、呪文を唱えるかの如きなアッティラのボーカルとアンビエントなカラーが増していく不気味な音、そこにあるのは大音量の暴力ではなく、光と闇が交錯するかの様なサウンドだ。
第2曲「Big Church」では聖歌隊の様な女性コーラス隊を大々的にフーチャーしている事に驚きだ。曲としての構成も明確な形を持っているし、暗黒のドローンサウンドと美しいコーラス。そして鐘の音のブレイク。一気に音楽的な広がりを見せたSUNN O)))史上最も分かりやすい楽曲になっていると言っても過言ではない。
第4曲「Alice」は更なる飛躍を見せ付けている。どんよりたしたベース、分かりやすい形で鳴らされる美しい残響のギター、そしてそれを見事に演出するホーンの音、全てが今までのSUNN O)))の範疇を超えた物になっている。アンビエントな美しさを持った音は徐々に拡散し、そしてハーブとホーンの音色が美しい調和を起こして終焉を迎える。SUNN O)))史上ありえない変化だ。
従来のSUNN O)))の重圧感が好きな人は戸惑うかもしれない作品だ。だがそれは大きな進化であり、これからのSUNN O)))を占う作品になったと言える。初心を見直したからこそ、大きな躍進を遂げた、7作目にしてSUNN O)))は音塊を放出するユニットから、それを音楽として鳴らすユニットに進化した。