■AL_X
■AL_X/AL_X

2012年に突入してからもコンスタントに作品をリリースし続けるFluttery Recordsだが、ポストロックだけで無くアンビエントやエレクトロニカの良質な作品をリリースし続けるレーベルなだけあってまたナイスな1枚を届けてくれた。プロデューサーやアレンジャーとして活動するAlex Dunfordがコンポーザーを務めるユニットであるAL_Xの2012年発表作品である今作も、またナイスなエレクトロニカ作品になっている。
今作はビンテージリズムマシーン等を駆使し、エレクトロニカでありながら妙にアナログで懐かしさを感じさせる音作りが施されており、それに加えて非常にキャッチーであるし、聴き手が童心に帰れる様な作品になっている、それでいてクラシカルな幽玄さを同時に見せているし、ポップでありながらも不思議の国に迷い込む様なエレクトロニカ作品になった。第2曲「Here Before」はその飛び跳ねる電子音がポップな感触と共に魔法の世界へと誘う。たおやかな主旋律と共にウィスパーの女性ボーカルが幻想世界へと手招きし、御伽噺の様な電子音に気付いたら取り込まれている。ストリングスの幽玄さとキャッチーな電子音が融和し、魔法の時間を提供してくれる。続く第3曲「Bloom」では打って変わって柔らかな電子音が音色を膨らませ、クラシカルな要素をかなり強めているし、後半からその音色の音圧を強めてエモーショナルな感動をもたらす。第4曲「Lose You」では再びキャッチーな旋律が登場するが、女性ボーカルの伸びやかさとコズミックな音色が混ざり合い、小宇宙の音色が聴き手を優しく包み込む。今作はエレクトロニカの中でもかなり歌物に近い仕上がりになっているし、ボーカルをフューチャーした楽曲ではその要素は本当に強い。それでいてクラシカルなストリングスの音色を巧みに取り入れてくるから、そのキャッチーさと共に音に良い塩梅で深みも加わっているし、それが揺らめきの世界観を加速させているのだ。殆どの曲がボーカリストをフューチャーしており、その歌い手のボーカルを生かした音作りを施されているから女性らしいポップさにクラシカルさを感じさせる楽曲もあれば、第8曲「Failed」の様にアコースティックギターの旋律と共に進行し、緊張感のあるアンサンブルが印象に残る楽曲もあったりと、作品全体での単調さは全く無く、次第に色彩を変化する音色と共に電子の小波を感じる事が出来る筈だ。第11曲「Honey Trap」の幽玄なストリングスと共に青い色彩が徐々に広まり波打つ色彩の世界も個人的にはお気に入り、エレクトロニカではあるが作品全体の色彩は本当にキラキラしているし、説教臭い要素は全く無い。歌と共に広がる電子音は聴き手の耳に優しく入り込み、聴き手の心を優しく包んでくれる。
幽玄でありながらもふわりとした魔法の世界の様なエレクトロニカであり、白昼夢の様な世界が次々に繰り広げられている。また歌物エレクトロニカとしても優秀な作品になっていると言えるし、聴き手を選ばない懐の大きさを今作から感じ取れる筈だ。また今作の視聴&購入は下記リンクのbandcampから可能。
AL_X bandcamp