■Alice In Chains
■Alice in Chains/Alice in Chains
![]() | Alice in Chains (2001/02/01) Alice In Chains 商品詳細を見る |
グランジムーブメントの最重要バンドの一つであり伝説的バンドであるAlice In Chainsの95年発表の3rdにしてレイン在籍時のラストアルバム。3本足の犬のジャケは色々と物議を醸したらしく日本盤の方は真っ白なジャケットになっていたりする。グランジ勢の中でもメタリックな音を鳴らしていた彼等だが、今作はスラッジの域にまで到達したヘビィさとそれに反するキャッチーさ、そして薬物問題で心身ともにボロボロになってたレインの歌声の陰湿さがよりヘビィさを加速させる傑作だ。
とにかくミドルテンポの楽曲が並び、レインとジェリーのツインボーカルの編成を取り、自らの持っていたヘビィさをより突き詰めた作品だ。ミドルテンポの中で引き摺るギターリフは完全にスラッジコアのそれであるが、決して難解にはなっていないし、歌心とヘビィさの中から見える旋律のキャッチーさが奇跡的に組み合わさったもいる。レインのボーカルは今にも消え入りそうな絶望感に満ちているし、ズタズタの精神状態が否応無しに感じられるし、それが作品全体のヘビィさに間違いなく繋がっている。第1曲「Grind」は序盤からドゥーミーなリフが登場し、今作のヘビィさを見せ付けるが、歌メロに重きをおいているからこそ決して派手では無いし、仄暗いサウンドではあるけれど、精神の深遠を見る様でもありながらそれは凄くストレートに伝わってくる。アンプラグドでのアクトで分かると思うが彼等の楽曲はどこまでも歌を大切にした物だし、ヘビィに仕立て上げても彼等の歌心という魅力は全く消える事は無いし、それはスラッジなサウンドの中で静かに光っている。第3曲「Sludge Factory」は個人的に今作でも屈指の名曲であると思う1曲であり、タイトル通りスラッジなリフで攻めてくる1曲であるが、サビでは持ち前の歌心をしっかり見せてくれるし彼等のヘビィなグランジサウンドと剥き出しの歌心が最高の純度のまま結び付いた1曲だと思う。第4曲「Heaven Beside You」はアコースティックな1曲でヘビィさを抑えた今作の中では異色の1曲だが、作品の中で自然と同居しているし、どんなサウンドでも彼等の根底は何も変わりはしない事の証明となっている。深遠さとメロウさを前面に出した第7曲「Shame In You」の哀愁もまた素晴らしい物であるし、今作の中では大分BPMが早めな第9曲「So Close」でも灰色の世界をフラフラしたまま疾走するドープさを感じさせてくれる。今作はレインのボーカルがボロボロであったり、全体的に乾いたサウンドが批判されたりもするけれど、それが逆に彼等のヘビィさをより明確にしているし、核になっている彼等の歌は何もブレちゃいない。終末観漂い完全にドゥームの域に到達した第11曲「Frogs」と美しい旋律に惚れ惚れするエンディング「Over Now」の終末の世界の美しさは本当に心に突き刺さるし、今作の純度の高さを最後まで守り通す。
Alice In Chainsは今作発表以降は活動停止状態になり、レインは2002年にオーバードーズでこの世の人では無くなってしまった。今作は破滅的なヘビィさと美しさに満ちているがその結末は破滅であった。その燃え尽きる瞬間の深遠なダークさは彼等にしか生み出せない物であったし、レイン亡き今でも今作の仄暗い輝きは決して消える事は無い。間違いなく彼等の最高傑作であるし、グランジムーブメントが生んだ最後の傑作だと思う。