■S-Explode
■Trip Out By Euphoria/S-Explode

熊谷出身のカオティックポストハードコアバンドS-Explode。圧倒的なテンションで狂気のハードコアを鳴らす彼等の07年発表の5曲入の作品。ニューウェイブを独自解釈した様なジャンクなビートと不協和音駆使のハードコアかつカオティックなギターフレーズ、そしてイマイ氏のハイトーンボーカルが生み出すのは人間の内面に潜む狂気であり、不穏さと異彩さがぶつかり合う事故現場のハードコアだ。
まるでDNAの様な硬質かつジャンクなギターフレーズが今作をプレイした瞬間に耳を突き刺してくる。ダンサブルかつジャンクなビートはタイトでありながら奇怪なギターフレーズと本当に相性抜群で不穏のハードコアになっている。彼等のカオティックさはテクニカル系のそれとは全然違う物であり、ポストハードコアの流れを汲んだ物になっている、そこにポストパンクやニューウェイブのテイストを盛り込んだからこそのカオティックさであり、theSunに近い感触の音でありながらも、より不穏さを高いテンションで放出しているバンドだと言える。イマイ氏のリバーブのかかったハイトーンのボーカルはいきなり絶叫したこと思えば囁きだしたりとパラノった狂気を全身全霊で放出している。そしてそれを支えるグルーブは本当にゴツくて屋台骨として鉄壁のアンサンブルを奏でている。その骨太のグルーブはカオティックなサウンドをグイグイ引っ張っているし、不協和音駆使でジャンクな音つくりのギターワークは脳髄を確実に焼き尽くしにかかっている。今作は僅か5曲の作品であるが徹頭徹尾途切れる事は無い混沌で埋め尽くされており、ポストハードコアの暴発バーストをよりギアを強めて暴走させた末に行き先不明になって辺り構わず巻き込みまくった末に爆発を起こすハードコアの事故現場とも言うべき物。狂気の精神を外に放出し、ラリった精神異常者が目に映る人間を涎を垂らしながら刺し殺していく通り魔の狂気をブレーキを踏むどころかアクセル全開にしてしまったのだ。不穏のエモーショナルは最終的に本質的なカオティックさへと変貌し殺戮と狂気の化け物となる。
彼等は熊谷という一地方都市から全国へ飛び出し、自らの地元のシーンを盛り上げながらも、その狂気を拡散し更に事故現場と化すライブで多くの人々を殺しまくっている。ボーカルのイマイ氏は現在も熊谷に住んでおり、熊谷のシーンの重要人物となっている。灼熱の街から生まれた冷徹さを極めた混沌、それは最高の笑顔を浮かべながら血の臭いを撒き散らして全国の狂人共を虜にしている。