■The Gault
■Even as All Before Us/The Gault
![]() | Even As All Before Us (2007/04/09) The Gault 商品詳細を見る |
ex.WeaklingのギタリストであるJohn Gossardを中心に結成されたサンフランシスコのドゥームバンドであるThe Gaultのデビューアルバム。兎に角長尺の楽曲ばかりが並び、ひたすらダウナーなテンポのまま進行し、そこにWeaklingでも見せたメランコリックさを放出しまくり、耽美でありダークな1枚。ドゥームであるが、ヘビィさよりも旋律の美しさに拘り闇の世界に酔える作品だ。
ブラックメタル上がりらしく音質も少し悪く録音されており、そのせいか全体的にヘビィという感触はあまり受けない。ドゥームといってもヘビィさを前面には押し出していないし、寧ろブラックメタルからの流れを感じさせる物だ。極端にテンポを落とし、ほとんど盛り上がる事の無い展開と構成の中でただメランコリックな旋律に引き込まれる。裏では不気味な空間系ハウリングが終わり無く鳴り響きながらも、ギターの旋律はひたすらダウナーかつメランコリックなアルペジオを中心に進行し、大きな展開はどの楽曲にも皆無であり、徹底して寒々しいテンションのまま痛みを増幅させる、楽曲の中にあるゴシックさやフューネラルさを放出し、そこからドラマティックさを生み出すという方法論はWeakling時代からあったし、その旋律の力を増幅させて最終的にはノイジーな音へと変貌を遂げたりする辺りもその壮絶なストーリーにより説得力を持たせ、極寒の世界へと連れて行く。今作は特に後半の3曲の完成度が高く、どれも10分超えの長尺になっているのだけれど、今にも心拍数が停止するかの如しなテンポで無感情のまま進んでいく物語、そして後半からその搾り出される痛々しいディストーションサウンドと共に悲痛な叫びが乗る第5曲「Outer Dark」や、女性ボーカルを取り入れ、ゴシックさとフューネラルさを織り交ぜながらも奈落へと落ちる速度で降り注ぐギターリフト共に緩やかに絶望と無へと堕ちていく第6曲「Shore Becomes the Enemy」、そして極限の痛みと共に美しいフレーズが静かに咲き乱れ、やたら躍動感のあるベースで琴線を刺激し、厳かでいてクラシカルな音と共に終末が暴走するメランコリックさから、最終的には完全なる無音が悪夢の終わりを告げる第7曲「Hour Before Dawn」は本当に壮大な組曲が連続で続いていくのを見ている気分になるし、作品全体で統率された寒々しいハウリングノイズでディストーションサウンドと、ゴシックな痛みに満ちたメランコリックな旋律が緩やかに混ざり合い一つになり、涙の止まらない耽美な物語になる。
楽曲の完成度の高さはWeaklingにも負けない物になっているが、今作は心臓の鼓動が停止する寸前のスロウな世界でただ淡々と目の前の悲劇を眺めているかの様な感傷に満ちた作品だ。くぐもったまま終末へと静かに堕ちる感覚を今作で味わう事が出来るし。鉄壁のメランコリックなメロディーセンスはやはり乱れ咲いている。凍りついた世界で繰り広げられる物語、今作もWeakling同様に聴き手の涙腺を崩壊させる美しい破滅を描いた一大巨編。