■Split Cranium
■Split Cranium/Split Cranium
![]() | Split Cranium (2012/03/20) Split Cranium 商品詳細を見る |
Aaron Turner先生がまさかのオールドスクールハードコアバンド結成!そう声を大にして叫びたい気持ちで一杯だ。ISISでの功績は言うまでも無く、本当に幾多のバンドに参加しハードコア・ポストメタル・アンビエントと多彩極まりない音楽活動でその新たな可能性を切り開いてきたAaron Turner。ISIS解散後はTwilight、Mamiffer等で活動をしていたが、先日のOld Man Gloom再始動もそうだが、フィンランドのCircle、Pharaoh OverlordのメンバーであるJussi Lehtisaloとタッグを組み結成されたのがこのSplit Craniumであり、今作は彼等の2012年発表の記念すべき1stである。
Aaron Turnerの核にあるのは間違いなくハードコアであるし、彼はそこを基点にハードコアの新たな可能性を模索し常に斬新な音を生み出した鬼才であるが、彼がここまでストレートなハードコアバンドをやるとは正直言って考えられなかったりもした。今作の殆どの楽曲が1分台、2分台のショートカットチューンであるし、本当に何のギミックも無いストレートなハードコアサウンドなのだから。スカンジナビアハードコアとUSハードコアのカラーがそれぞれ存在していたりもするけど、ギターリフはパワフルで縦横無尽に全てを薙ぎ倒しながらも非常にキャッチーだし、ビートは本当にシンプルな2ビートで疾走すると言った物、本当にオールドスクールなスタイルを取ったハードコアサウンドであるが、同時に単なるオールドスクールハードコアでは片付けられない毒素が充満した作品でもある。それはAaron Turnerのボーカルによる物が大きいと思う。非常にキャッチーな楽曲に反して狂気と残虐さが暴走する凶暴さを極めたボーカルはISISでも御馴染みだったが、今作ではそれをより開放し今までに無い位に暴力性と狂気を高めている。ポストメタル界のカリスマとして君臨する男の核はやはりハードコアにある事を納得するしかないし、その凶暴さには平伏すしかない。また今作の楽曲の多くはサビでシンガロングパートを積極的に盛り込んでいて、Aaronのボーカルの極悪具合に反してその力強くキャッチーなコーラスワークはやたらとハマっていたりもする。第2曲や第3曲はそのストレートなキャッチーさを前面に押し出したシンガロング必至の非常に男らしい楽曲だが、だからこそAaronの凶暴さも際立っている。しかし終盤にとんでもないどんでん返しが待っている。第8曲「Retrace The Circle」は今作の中でも異質な約8分に及ぶ長尺の楽曲であり、序盤はストレートなハードコアサウンドを展開しているのだけれども、それはどんどん凶暴なノイズへと変貌し、加速する狂気的なボーカルに比例してその深遠さを高めていく。荒れ狂うハーシュノイズの海を越えた先にあるのはポストメタル的深淵さと壮大なスケールの世界。やはりこの男は一筋縄ではいかないのだ。
ハードコアの先を常に目指していたAaron Turnerだが、今作でオールドスクールハードコアに回帰したというのは一つの事件と言っても良いだろう。古き良きハードコアスタイルを取りながらもただの回帰には終わらない辺りは流石の一言だし、今作を聴いていると胸の奥にあるハードコア魂が燃え上がるのは間違いなしだ。また今作は下記リンクのbandcampページで全曲試聴可能になっている。
Split Cranium bandcamp