■Seven Nines And Tens
■Habitat 67/Seven Nines And Tens

Fluttery Records関連の作品は今まで色々とこのブログで紹介してきたがカナダのインストポストメタルトリオであるSeven Nines And Tensはその中でも最もシャープで尖った音を鳴らすバンドなんじゃないかと思う。今作はFluttery Recordsから2012年にリリースされた作品であるが、ポストメタルの重厚さから、ポストロックの静謐で流れる音を行き来しながらも、冗長にはせずにシンプルかつタイトなアンサンブルを重視し、それを機軸にしながら展開するポストメタル作品だ。
彼等は王道のポストメタル・ポストロックを踏まえたサウンドのアプローチをしているバンドではあるけれど、楽曲の尺は決して長く無いし、あくまでも贅肉を絞りに絞り、タイトな筋力で突き進むアンサンブルを軸に楽曲は展開していく。彼等にあるのはポストメタルらしい壮大さと言うよりも、ヘビィネスと静謐なポストロックの核の部分だけをただひたすら鍛え上げたかの様な展開と音であり、それは決して小難しさは感じさせない。しかし一つ一つのフレーズの攻撃性を生かしたアレンジなんかは、その音の破壊力を生かしているからこそ重々しさがあるし、その重厚なポストメタルパートからクリーンなパートへと違和感無く移行し、あくまでもタイトなアンサンブルの美しさを最大限に生かしているからこそ、流れる旋律の美しさは楽曲全体に常に存在し、それがオーガニックなクリーンさを見せ、スラッジなヘビィさを見せ、といった感じでプリズムの変化の様に輝きを変えていく。また注目したいのは彼等のサウンドはどこかマスロックな要素も多く含んでいる所だ。タイトなフレーズは複雑な変拍子と転調が多く、特にポストメタル色の色濃いパートではそのマスロック色が大きく出ている。それを生かしたアンサンブルの組み立て方をしているからこそ、リフを前面に押し出したパートは特に良い具合の緊張感が生れているし、聴いていてわくわくしてくる。静謐さから壮大な世界へと飛び込むのでも無いし、また焦らす様な展開を見せる訳でも無い。あくまでもリフやタイトなビートを所々破壊・構築をしているからこそ、崩壊と再生を終わり無く繰り返し、細胞分裂を繰り返す様なサウンドを生み出している。時にはポストロック一色、時にはストーナーなフレーズを盛り込んだりと楽曲毎に変化をしっかりとつけつつも、あくまでも変化を際限無く繰り返しつつ、最終的にはタイトなアンサンブルに行き着くある種の分かりやすさも魅力だし、その中で様々な爆発を起こしているのだ。終盤では轟音系ポストロック色の強い楽曲も登場するが、それでもその引き締まったタイトさは全くブレてはいない。
今となっては本当に多くのバンドが登場しているポストメタル・ポストロックのシーンであるが、スラッジさにも美しい旋律にもストイックであり、それを鍛え上げたアンサンブルで見せる彼等は、それらの音楽が持つアンサンブルの緊張感とカタルシスをダイレクトに表現したバンドでは無いかと思うし、Pelican辺りが好きな人には凄い魅力的に感じるバンドだと思う。タイトさを極め必要な音のみを鳴らすからこそダイレクトな破壊力が確かにあるのだ。今作は下記Bandcampで試聴&購入が可能だ。
Seven Nines And Tens Bandcamp