■太陽肛門
■恍惚!/太陽肛門
![]() | 恍惚! GYO-002 (2011/02/10) 太陽肛門 商品詳細を見る |
太陽肛門なんて言う完全な色物臭しかしないバンド名ではあるけれど、そのバンド名に騙されてはいけない。太陽校門は超正統派ドゥームメタルバンドだ。そんな彼等の99年にリリースされた今作はサイケデリックでありながらも正統派名ハードロックから派生した素晴らしい和製ドゥームを鳴らす快作に仕上がっている。ドゥーム・ストーナーの酩酊感を大切にしながらもあくまでも正統派のハードロックである一枚だ。
第1曲から女性の喘ぎ声みたい声から始まり、和のテイストを大切にしながらもサバス系のリフが埋め尽くす正統派のストーナーロックサウンドが炸裂、絶妙に楽曲で緩急をつけて、重いグルーブを保ちながら少しずつサイケデリックな煙たさで埋め尽くす正統派なサウンド、しかしリフは意外とキャッチーだし凄い聞きやすい物だし、ドゥーム・ストーナー愛好家以外にもアピール出来るのは大きい。第2曲「逃げるな」は日本の伝説的ハードロックバンドである外道のカバー。原曲のハードロックな魅力を大切にしながらも、よりドゥームに接近したサウンドは素直に格好良いと思ってしまうし、そう考えると太陽肛門はどこまでもハードロック派生のドゥームバンドであると思うし、Catedralや人間椅子を引き合いに出されて語られたりするのはそういった部分があるからだと個人的には思う。第3曲「孕んでドーン」はもっとおどろおどろしい和のテイストを重視した1曲になっているし、ミドルテンポで刻まれるリフの重みと少しプログレッシブに展開する楽曲構成が妖しさを高め、第4曲「怨敵退散」はこれぞ和製Catedralと言うべき重苦しい激烈なドゥームを展開、今にも止まりそうなビートと際限無く繰り返されるリフの反復が精神の重みを強め、ぐるぐると螺旋を描きながら奈落に堕ちていく様を見事に体現。しかしこれらの楽曲はあくまで前フリでしかなく、今作の本質は第6曲「宇宙で死ぬ」に詰まっているといっても過言ではない。16分にも及ぶ壮大なドゥーム絵巻であり、くぐもったサイケデリックな序盤はコールタールの中に沈められる感覚になり、そこからそれを打ち破るドゥームリフの応酬、時にクラウトロックの流れを感じさせるサイケデリックなインプロパートを盛り込み、それらのパートとドゥームパートの対比で聴かせ、後半からはよりプログレッジブさを加速させつつもハードロックテイストを強くし、そこから民族音楽の様なビート渦巻くパートへと移行し、最後は超サイケデリックなギターソロが全てを崩壊させるという一大サイケデリックドゥームの世界。これは今作のタイトル通り正に恍惚の世界!!
和製Catedralであり正統派サバス系ロックを鳴らしつつも、より今作はサイケデリックさに重きを置いたらしく、その正統派のサウンドの中で確かにその要素は息づいている。だがやはり最終曲の「宇宙で死ぬ」こそが完全にハイライトになっており、クラウトロックもインプロもサイケもドゥームもプログレッシブさも全てかっさらってしまっているのだ。他の楽曲も魅力的だが、その曲を聴く為だけでも今作を手にする価値は十分過ぎる位にある。