■PIGMEN
■サヨナラクソ世界/PIGMEN
![]() | サヨナラクソ世界 (2008/05/21) PIGMEN 商品詳細を見る |
90年代に活動してたポストハードコアバンドFunhouseを母体にして結成されたハードコアバンドがこのPIGMENである。今作は2008年に発表された2ndアルバムであり、デラシネの風間コレヒコが加入してから初の音源である。リリースは日本が誇る爆裂音源製造工場Less Than TVから。
8曲で10分未満のショートカットチューンの嵐だが、圧倒的な濃度と情報量を持った音が嵐の様に吹き荒れていく。ハードコアでありながらも歌詞は聞き取りやすく、戦争や社会風刺をテーマにした歌詞がユーモアと毒気たっぷりに吐き出されていく。鋭角のパンク・ハードコアの殺気立った音の殺傷力は抜群である。
第1曲「FREEDOM / 君ハ何処ヘ堕チタイ?」から圧倒的に早いファストコアな音で攻め立てる!ストップ&ゴーな緩急が見事な第3曲「NEW CITY IS HEY CITY / 希望の王国」の様な曲では、バンドのセンスの高さと演奏力を見せ付けている。
特にお見事なのは第5曲「FRIENDSHIP / 戦争にゴー」である。結城氏の独自の言語感覚で脳髄を焼きつかせる言葉の数々に、コレヒコのテンションの高いハイトーンのコーラスが見事な掛け合いを見せている。圧倒的な手数と変拍子を繰り出すドラムも凄まじい、そして必殺のギターリフと、ハードコアを基盤にしながらも、アイデアとセンスが十二分に発揮されている。1分半の中で見事に変幻自在なしなやかさを持った楽曲だ。
第7曲「WISH YOU WERE HERE / 未来」は唯一物悲しさを持った1曲。Funhouseで言うなら「The Angel(A Wish)」の様な楽曲であるが、ノイジーなサウンドに、この世の終わりみたいな虚無感を感じる。ギターの音はまるで放射能の雨であり、繰り出されるドラムはミサイルの雨、ベースは爆破していく地雷の様だ。
1st「少年アルトラ」以上に速く、危機感を募らせる破壊力を持った楽曲が増えた様に思える。ユーモア満載ながらも笑えないシリアスさも併せ持ったのは、やはりコレヒコの加入が大きいだろう。スローペースな活動ながらも、このバンドが残している爪痕は大きい。百戦錬磨のハードコアの奇才達による、ラジカルかつ、即効性と毒素たっぷりの危険な音楽だ。