■was
■夢見る頃を過ぎても/was

オルタナティブロック・ハードコアの聖地である北海道は函館にて結成された男女混合4人組であるwasの記念すべき初の単独音源。09年リリースの5曲入。彼等にあるのは北海道の先人達の叡智を受け継ぐ。オルタナティブ・ハードコアの血肉に、より歌物へと接近したポップさと郷愁。そしてそれらが未整理のまま組み合わさったジャンクさであり、聴いてると懐かしさに満ちているのに、独自性に満ちた音になっている。
彼等の音は時にポストハードコア、時に変拍子駆使のマスロック要素を取り込みつつも、それを全く整理しないエモーショナルさへと繋げる所が非常に魅力的だと思う。弦楽器隊が全員ボーカルを取り、汗臭く力強い男性ボーカルと、クールで浮遊感と気だるさが漂う女性ボーカルという何ともいえないアンバランスさを持ち、オルタナティブでありながらも歌謡性を強く打ち出し、それを汗臭さと郷愁のエッセンスで放出する彼等の音は本当に唯一無二な物に仕上がっていると思う。第1曲「解は無い」からマスロックとポストハードコアが融合した楽曲とは裏腹に、郷愁の歌謡性が炸裂しまくっているし、第2曲「造花が枯れる」も北海道ポストハードコアの血肉を強く感じさせつつも、サビでは男女ツインボーカルのシャウトと気だるい歌の対比が絶妙でありナイス。歌物である事は町がいない筈なんだけれども、それにしては洗練が全くされていないし泥臭いし、オルタナティブ・ポストハードコアで語るには全く以って歪であるし、殺気やそういった要素よりも、情けなさや惨めさといった感情をよりエモーショナルに炸裂させているから本当に読めないバンドだとも思う。第4曲「笑みを浮かべて」はより歌へと近づいた楽曲でありながらも、ざらついた感触はそのままに、3人のボーカルが重なり合いながらその熱量を高め、あの夏の汗の臭いとか、そういった物を音で想起させる素晴らしい1曲に仕上がっている。ラストの第5曲「夢見る頃を過ぎても」のジャンクさが加速し、それが性急さとして編み出され、そしてラストは轟音と共にボーカル陣がまくし立て、狂騒のまま終わっていく。
洗練やスタイリッシュといった物とは全く無縁であるが故に、雑多な要素に満ちた楽曲をそのまま吐き出し、それを純粋なエモーショナルさとして昇華させる彼等の底力を感じる作品であり、その郷愁は胸を確実に打ち抜いてくるであろう。蒼い衝動に満ちた快作!