■Made Out of Babies
■The Ruiner/Made Out of Babies
![]() | Ruiner (2008/06/24) Made Out Of Babies 商品詳細を見る |
このバンドは単なる女性ボーカルヘビィロックとは明らかに別の次元にいる。ニューヨークのヘビィロック・スラッジ4人組であるMade Out of Babiesの08年リリースの3rdアルバムである今作は単なるへビィネスとは違うよりグランジでハードコアな色と深みと渋さの光る楽曲にカリスマ性に満ちた女性シンガーであるJulie Christmasの狂気と殺意が交錯する1枚になっている。またRed SparowesのメンバーであるBrendan"Bunny"Tobinがメンバーである点も見逃せない。
第1曲「Cooker」のイントロの不協和音の反復するギターリフから既に只事では無い空気が漂うが、そこから激重のスラッジとヘビィネスが正面衝突へと雪崩れ込む瞬間に言い知れぬ殺気が確かに音として鼓膜を突き破る。彼女達のサウンドはモダンヘビィネスを機軸にしながらも、ポストメタルの深遠さのエッセンス、スラッジのダークな重み、女性ボーカルバンドらしいゴシックさ、グランジなざらつき、それを独自のヘビィロックとして体現している。音的には特別難解な物でもないし、ヘビィネス愛好家なら堪らない物に仕上がっているが、単なる良質なヘビィネスで終わらないおどろおどろしい空気と、変則的な楽曲構成を取り入れつつも、よりドラマティックかつ殺伐と広がる血飛沫、時にジャンクさを醸し出しつつも赤黒い音をタイトかつ無慈悲に吐き出す様は残血王としても悪名高いUNSANEをふと思い出してしまったし、プロデューサーであるAndrew Schneiderの手腕による凄みだろう。無機質なビートを上手く取り入れ、スラッジやインダストリアルも昇華している辺りもこのバンドの恐ろしい所だ。しかしそれらの音に一つの統率感をもたらしているのは間違いなくボーカルであるJulie Christmasの存在感による物だと思う。ヘビィネスをやってもインダストリアルをやっても、スラッジをやっても彼女達のサウンドになるの彼女のボーカルによる物が本当に大きい、ざらつき甲高い声でシャウトをかまし、本能のままに憎悪を吐き捨てる彼女のボーカルのパワーは凄まじい物だし、それに加えて女性ならではのゴシックな空気を生み出し、それを綺麗に聴かせるのではなくて、女性の奥底にあるドロドロとした殺意をプリミティブに吐き出しているからこそ、このバンド特有のざらつきは生まれているし、その狂騒こそ彼等のレンジの広いサウンドと見事にマッチしている。
数多くの猛者とバンドを組んでいる人間が集まって構成されているバンドなだけあって、本当に濃厚なダークさを剥き出しのヘビィネスとして放出しているし、それを綺麗に取り繕わないで、醜さすら美しいと勘違いしてしまいたくなる情念の憎悪としてのヘビィロック。絶頂と狂騒に押し潰されてしまいそうだ。