■Portraits Of Past
■discography/Portraits Of Past

激情系ハードコアの必聴盤は数多く存在しているが、今作は激情系の中でも特に必聴盤になっていると思う。94年に結成され、95年に解散という本当に短期間の活動だったにも関わらず、90年代US激情の代表格として語られ、Funeral Dinnerのメンバーがかつて在籍していたバンドとしても名高いPortraits Of Pastの僅かな期間で残した楽曲をほぼ網羅した嬉しい嬉しい編集盤だ。
彼等ももれなく激情系はカオティックの雛形を作ったバンドの一つであり、現行のそこら辺のバンドを愛する人は抑えておいて間違いないバンドであると言える。第1曲「Kqed Equals Volvo」の不穏なベースの音のストロークから、暴発するメロウかつ暴虐なサウンドと叫びに血管が一瞬でブチ切れてしまう筈だ。不意に楽曲のテンションを落とし、冷徹なタム回しを入れてきたり、変則的なビートでありながら暴発する部分でドンピシャでエンジンをフルスロットルにしたりと激情のツボというツボはもう完全に押さえている。それでメロディアスなパートもしっかり用意し、じっくり聴かせる懐の深さもある。激情系といったらメロウさに特化したバンドや、逆にカオティックさや暗黒さを追及するバンドが多かったりするが、彼等は暴発する部分では容赦が無く、メロウなパートではどんなに叫んでもその旋律に心を奪われるし、コーラスワークがそのメロウさをよりエモーショナルにしたりと本当に随所随所で魅せてくれる。特に1st収録の楽曲である第1曲から第7曲は本当にこれぞ激情系ハードコアと言わんばかりの素晴らしい名曲揃いであり、ドスの効いた音をしているベースが重みを与え、尖り切っていながらメロディアスなギターワークは攻撃性とメロウさを同時に与え、目まぐるしく変わっていく展開と共に暴発とメロウさを切り替え、最終的にはそれらが混ざり合う瞬間なんか本当に胸を熱くするし、楽曲の中での起承転結が明確だからこそ生まれるドラマティックさは壮大なスケールを持ちながらも、どこを切ってもハードコアであり続ける信念を感じる。ミドルテンポと暴発の切り替えにより切り返し、ドラマティックの構成、ソリッドなリフと絶唱、激情系には欠かせない要素を徹底して極めたからこその激情であり、そこにあるのは先人の圧倒的な力だ。
今でこそ本当に多伎に渡る音が生まれ、多くのフリークスを獲得している激情系というジャンルではあるが、やはりそこに至るまでは多くの先人の存在を外す事が出来ないし、彼等は間違いなくそんなバンドだ。そして元メンバーはそれぞれ様々なバンドにてその先の音を鳴らしている意味も大きい。激情系ハードコアの最重要作品!心して聴け!!