■Masakari
■The Prophet Feeds/Masakari
![]() | Prophet Feeds (2010/06/08) Masakari 商品詳細を見る |
昨年はドイツの超激情ネオクラストバンドであるAlpinistともスプリットをリリースしたMasakariの2010年リリースの1stアルバム。ジャケットは日本のハードコア絵師であるSUGI氏の手による物で彼等は日本のハードコアに大きな影響を受けているらしいが、彼等が鳴らすのはネオクラストと激情が正面衝突した暗黒のハードコアだ。一辺の甘えや隙の無い血みどろで野蛮過ぎる音は軽い気持ちで触れたら怪我をしてしまうだろう。
そのサウンドスタイルはHis Hero Has Gone直系ではあるが、その先にある更にヴァイオレンスな音を彼等は鳴らす。単に激情系としての暴力性を高めるだけでなく、メタリックなギターリフは非常にトラッシュで殺伐としており、怒涛のカオティッククラストビートはタイトかつ重々しい。そんな粗暴さを追求し、楽曲の中で静謐さを感じさせるパートなんかはないが、脳菌ハードコアかと言ったらそれは全然違う。常にカオティックさをバーストさせながらも、高速のビートの嵐の中にスラッジ色のあるリフを盛り込んで来たりと細かい部分での緻密さも感じさせてくれる。何よりも常に輪郭が崩壊寸前の音圧を鳴らしているにも関わらずそのメタリックなリフからは物悲しさや叙情性といった要素を感じさせるのだ。こういったヴァイオレンス系のバンドではあるけれど、彼等の楽曲は非常にメロディアスであり、短い楽曲の中で目まぐるしくもドラマティックさを感じさせるメロディセンスは本当に光っている。まるでクライマックスに更にクライマックスを上書きする様な絶頂感のみで攻めてくる。ド直球カオティック激情で始まり、そこから顔を見せる悲壮感に満ちた旋律、そしてそれを高めていく絶唱の破壊力と言ったら本当に堪らない。クラストの殺気と破壊力、USハードコアらしいメロディセンス、現在進行形の激情とカオティックの洗練された音、そいつらを完全に暴力装置として機能させるからこそ、最初から最後まで常に闇のクライマックスが黒く塗り潰していく。ほとんどの楽曲がショートチューンに仕上がっているのも大きく、徹底して無駄の無いサウンドプロダクトと構成で、余計な前フリ等は必要ないと言わんばかりに絶唱状態が続き、あっという間に叩きのめされてしまう。
現在進行形で盛り上がりを見せるネオクラストシーンの猛者であると同時に激情系の先人の叡智だけでなく、ハードコアの叡智を飲み込み、それをヴァイオレンスさの極まった極限世界として吐き出すMasakariはここ最近の暗黒系激情の中でも郡を抜いた存在であるし、ド頭から放たれる暴虐の激情は息切れ一つ起こさず、ドス黒さを高めて暴走している。ヴァイオレンスでシリアスである事を極めようとしているからこそ、この音が生まれた必然だけがある。