■Slight Slappers
■Moonlight/Slight Slappers
![]() | MOONLIGHT (2012/05/23) SLIGHT SLAPPERS (スライト・スラッパーズ) 商品詳細を見る |
最早完全にジャパニーズハードコアの重鎮とも言える存在になっているスラスラことSlight Slappersの2012年リリースの3rdフルアルバム。とにかく超破壊的かつノイジーなパワーヴァイオレンスサウンドで攻める1枚になっており、終始圧倒的なテンションを誇りながらも、ありとあらゆるハードコアを飲み込むハードコアの暴力性を極限まで高めた超エクストリームカオティックサウンドしか無い屈指の1枚に仕上がっている。間違いなく2012年のジャパニーズハードコアの重要作品だと言えるだろう。
今作を一言で言うならばとにかく速い!短い!!五月蝿い!!!と三拍子揃った素晴らしいハードコアだと言える。2分半あるタイトル曲と、9分半あるラストの1曲を除くとほとんどの楽曲が1分を切っていると言うあまりの短さ。そんなショートカットチューンが大半を占めているが、1分未満の楽曲にありとあらゆるハードコアを詰めまくっているのだ。オールドスクールからカオティックからパワーヴァイオレンスからノイズコアからトラッシュコアからクラストまでと自由自在に行き来し、常に暴発寸前のハイテンションでクライマックスを突き抜けて行く。当たり前の様に転調を繰り返し、たった一発の音の瞬発力に全てを託し、その音が鳴った瞬間に爆音世界が耳を貫いて行く。そんなサウンドなのに随所随所でしっかりとキャッチーさを感じさせる辺りがまた今作の大きな魅力になっていると思う。特に第8曲「Tell It Like It Is...Please」は馬鹿丸出しなシンガロングから始まっておきながらすぐさまヴァイオレンスなハードコアになり、一気にファストコアサウンドでブチ抜くというスラスラの混沌が凝縮されていると言えるし、USハードコアとパワーヴァイオレンスが正面衝突した37秒の名曲である第1曲「Border Line」や、ノイジーさを極めた暗黒カオティックな第4曲「We Will Take Back Tomorrow」なんかは個人的にかなり気に入っている。そんな楽曲郡の中でタイトル曲である第5曲「Moonlight」はハードコア色がかなり後退したミドルテンポの2分半であり、彼等のカオティックな激情を歌という形に変換した非常にエモーショナルなじっくり聴かせるシンプルで素朴な名曲であり、今作の中ではかなり浮いているけど、ヴァイオレンスな楽曲郡に決して埋もれない素朴な輝きを持った名曲だと思うし、今作の中の重要なキーにもなっている楽曲だ。そして最終曲「S.K.」は9分半にも及ぶ大作で、ショートカットチューンだらけの今作で一番異質な1曲である。ドゥームを独自解釈したかの様な煙たいリフの反復から、それが徐々に広がりメランコリックな音になり、狂騒の物語の果てにある一つの終わりが見えるかの様な楽曲であり、終わりなく繰り返されるアルペジオが胸を締め付ける。目まぐるしい狂乱を締めくくるには何ともニクいエンディングだと思う。
とにかく速さ、五月蝿さ、短さ、カオティックさ、キャッチーさ、全てが突き抜けた作品であり、多様化しまくっているハードコアの世界の中で、全てのハードコアジャンキー共を虜にするヴァイオレンスさをフルスロットルでブチ撒けている。とにかくハードコアを愛する全ての人に是非とも聴いて欲しい1枚だ。突き抜けているからこそハードコアである事は今作が見事に証明している。