■ライブレポ

■SATURDAY NIGHTMARE(2017年10月7日)@国分寺Morgana

この日は西東京の爆音震源地のひとつである国分寺モルガーナのハコ企画に遊びに行った。
3年前に名盤スプリットをリリースしたTRIKORONAとSTUBBORN FATHERという東西の異端のハードコアの大妖怪が二週間前の高崎に続いて西東京でも激突だが、そこに西東京の若手バンドであるslakとumanomeがどう食いついてくるか。
地域・世代・ジャンルを超えた4バンドが生み出すマジックを目撃させてもらった一日だ。



・TRIKORONA

一番手からいきなりTRIKORONAからスタートしたが、この日もTRIKORONAは絶好調。
エモヴァイオレンスの先を行きすぎて、もはや異次元へと到達してしまっているTRIKORONA節はこの日も健在。
ノイズの中から生まれるキャッチーさ、ジャンクロック/パワーヴァイオレンスの流れをくみながらも、それすらも魔改造したケミカルな音像は何度ライブを観ても衝撃の塊だ。
バンドの持ち味をさらにアップデートした新曲含め、まだまだ進化が止まらないTRIKORONAはハードコアの異端児であり、ハナからモルガーナを異空間に変えた。TRIKORONAに似たバンドは本当に存在しない。



・slak

二番手は初見のslak。西東京を中心に活動している若手バンドらしいが。今回slakを知ることが出来たのは大きな収穫となった。
一発目の出音を聴いただけで「これ好きだ!」って感覚に陥らせてくれるバンドはそうそういない。slakはそんなバンドだった。
QUICKSAND辺りのポスト・ハードコアのバンドの流れをくみRIVAL SCHOOLあたりの熱量も感じる、ヒリヒリした緊張感は若手らしかぬ渋さにあふれている。
派手なアプローチこそしていないが、クールネスとエモーションの狭間にある哀愁にみちた硬質のサウンドに一発で惚れた。
まだまだ知名度はないバンドかもしれないけど、今後要注目のバンドだろう。


・umanome

三番手はこちらも初見のumanome。slak同様に西東京を中心に活動する若手バンドらしく、調べたらslakとは何度も対バンしているらしい。
slakとはまた違って直情的な激情ハードコアを展開しているバンドだが、ストレートな激情サウンドの中に独自のメロディセンスを展開している。
slakとまた違ったのは熱情を前面に押し出しながらも、ハードコアの文脈とはまた違う冷気を感じさせるサウンドだろう。
slakとは近日スプリット音源をリリースする事をMCで話しており、こちらも今後の活動に期待大だ。まだ粗さが残るライブではあったが、持ち前のセンスを今後どう昇華するか楽しみである。



・STUBBORN FATHER

トリは大阪から来国したSTUBBORN FATHER。モルガーナとスタボンの相性は最高なのは過去に体感しているが、二週間前の高崎の時以上に研ぎ澄まされた激情を見せてくれた。
ハードコアの文脈で語るには異質すぎる変則的なフレーズとビートの数々をくり出すが、その中にある泥臭いジャパニーズ・ハードコアの血筋こそスタボンの大きな魅力だろう。
セットリストこそ高崎の時の変わらなかったが、限界突破する爆発力と瞬発力というスタボンの魅力が大きく出たアクトだった。フロアもこの日一番の盛り上がりを見せてイベントを締めくくってくれた。ライブは2017年ラストだったらしいが、来年も大阪の異端児はハードコアの次を見せてくれるだろう。



大好きなTRIKORONAとSTUBBORN FATHERだけでなく、slakとumanomeという新たなるホープの存在に触れることができたよき一日であった。
umanomeとslakはまだ活動を開始して日は浅いらしいが、今後要注目の2バンドだ。ポスト・ハードコア/激情ハードコア好きは要チェック。
高崎でixtabとENSAのライブを観た時も思ったけど、若い世代が歴史をこれからもつないでいくのだ。そこにジャンルや活動拠点は全く関係ない。
若きエースがまた新たな歴史を作り出していくだろう。その瞬間を見逃してはいけない。
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■様々な死覚(2016年10月1日)@国分寺Morgana

 今年20年近いキャリアを誇りながら遂に1stフルアルバム「深層」をリリースした新潟の激情ハードコアバンドANCHOR。そのANCHORのレコ発東京編はTRIKORONAとweeprayの共同企画「様々な死覚」にて行われる事になった。
 ANCHOR自体が東京でのライブは実に7年振り、weeprayも2016年最初で最後のライブと事件性が非常に高い夜となり、全8バンドの強烈なバンドがそれぞれの個性をぶつけ合う前代未聞の一夜。TRIKORONAとweeprayという異端の存在2バンドの共同企画に相応しい絶倒の夜となった。



・TRIKORONA

 主催の片割れのTRIKORONAからライブはスタート。休むこと無く多くのライブをこなし続けるこのバンドは、パワーヴァイオレンスの文脈からも激情ハードコアの文脈からも外れに外れた末に様々な困惑を言葉と音で吐き出し続けるバンドだが、この日も絶好調のライブを展開。
 ノイズ塗れのギターとテルミンの音でノイズの相乗でゴテゴテのケミカルな音で塗り潰し、自由翻弄なベースと爆走グラインドなドラムによる速さの不条理、化物な声量で吐き捨てる言葉の数々、瞬発力で押し切るだけで無く、シャトルランを終わりなく全力疾走する持久力もあり、曲を重ねる事にそのパワフルさが増していくのは単純に凄い。
 今後リリースされるだろう新曲群はそんな不条理な音にTRIKORONA節とも言える独自のキャッチーなフレーズが際立ち、妖怪の手が気が付けば観る者を握り潰す理不尽で幸福な暴力を生み出す。このバンドは暴力に更なる狂気と不可解さで人々を追い詰める事が出来るという最大の強みがある。だからこそ異端児であり続ける事が出来るのだろう
 20分間の悪夢と暴力、この日もTRIKORONAは見事に振り切れていた!!



・sto cosi cosi

 ハッピーエモヴァイオレンスことストコジはダーク極まりないこの一夜の中でも異彩を放つ存在感。音自体は正統派なえもヴァイオレンスを鳴らすバンドではあるが、単にありがちなエモヴァイオレンスにならないのはボーカルのシロウ氏の存在感あってこそだろう。
 一瞬一瞬に全力を託すパフォーマンスだけで無く、合間合間のMCで妙にパリピ感を出してくるというギャップ。音源でも十分格好良いバンドではあるが、ストコジの魅力はライブの場で不思議と生まれる多幸感その物にあるだろう。
 パーティになんか絶対に相応しく無いだろう音を鳴らしているけど、その不自然さが自然とパーティを彩るサウンドとしてアウトプットされいるのはストコジの不思議な魅力の一つだろう。
 終盤はギターの人がギターをブン投げてストラップが壊れて座り込んで全力でギターをかき鳴らしたのも含めて、全力のテンションが楽しさへと繋がる。そんな魅力を堪能させて貰った。



・NoLA

 当たり前の様に毎回毎回常に最高を更新するライブしか繰り広げないNoLAはこの日も絶好調の極みを展開。いつもと違ったのはKeyakiが下手でmakinoが上手とギター隊二人のステージでの立ち位置が違った位ではあったが、一点の曇りも無くフロアを皆殺しにする事しか考えてないであろう狂気の若武者はいつも通りの爆音で殺るだけに過ぎない。
 ここ最近は新曲もセットに多く組み込まれており、バンド自体がベーシストYutoを迎えてから円熟の季節を迎えているのだろうけど、それもあってか今のNoLAは音の狂気や破壊力、各メンバーのポテンシャルの更なる成長と比例するかの様に不思議と幸福感すら観ていると覚えるライブをしている。
 音自体にはハッピーの欠片すら無いけど、圧倒的な物をリアルで目の当たりにした時は恐怖すら超えたアッパーさすら生まれる事をNoLAは毎回提示し続ける。それはいつも楽しそうに全力でライブをしているメンバーの空気からも伝わって来る物であり、まだまだ20代前半のバンドではあるが、既にベテランバンドが迎えるであろう幸福なる成熟を感じさせるまでになった。
 その一方でバンドの成長はより邪悪な音へとアウトプットされているのもNoLAならではだ。この日は20分程度とライブ自体は短かったが、そんな事はお構いなしにいつも通り最高のテンションのNoLAを爆散させだけに過ぎない。



・Kowloon Ghost Syndicate

 歴戦の猛者が続ける新たなる挑戦としてのハードコアことKowloon Ghost Syndicate。この日は多方面からシーンに貢献してきた猛者のバンドも数多く参戦したイベントであったが、Kowloonが一番王道な形でハードコアという物に挑んでいた印象を受けたのは事実だ。
 笠沼氏が何度もフロアを煽る様なMCをしていたのも印象深かったが、激情ハードコアやメタリックハードコアといった文脈が色濃く出たサウンドはメンバーそれぞれのキャリアがあってこその説得力があったが、そこに固執せずに、常にファイトバックな精神のまま闘い続けるという意志こそKowloonが提示するハードコアパンクのリアルだと僕は勝手ながら受け取らせて頂いた。
 メンバーそれぞれがボーカルを取るというスタイルで矢継ぎ早に叫ばれるエナジー、焦らしなんか全く無い沸点をとうの昔に超えてしまったハイボルテージな演奏。余計な仕掛けなんか用意していないけど、だからこそ真っ直ぐに射抜くハードコアを彼らは鳴らせるのだろう。
 ダークさもある音ではあるが、ライブが終わった後の異常な爽快感。モヤモヤしてるんだったら爆発させちまえっていうアグレッシブさ。ナイスミドル達の挑戦はまだまだ続く!!



・Fredelica

 後半戦は西荻窪激情ハードコアFredelicaからスタート。葛藤や苦悩といったテーマをありったけのままで叫びストレートに打ち鳴らす彼らだが、不協和音や変則的な展開では無く、真っ直ぐなメロディアスさと感情爆発のライブで正々堂々と勝負をしていた印象がかなり強い。
 以前ライブを観たのが2年も前でかなり久々にライブを観た感じにはなってしまったが、昨年にリリースしたEP「街灯」を経て、バンドの底力が確かにビルドアップしており、頼もしさも感じられるまでに成長しただろう。
 モヤモヤとした葛藤を鳴らすからこそのスリリングさ。余計な事を何もしない。足さないし引かないから純粋なままFredelicaは自らの衝動をひたむきなまでにぶつけてくる。
 何かを求めて縋る様な必死さも含めてFredelicaは僕らの心情と確かにリンクするバンドなんだ。



・No Value

 今回唯一ライブを観るのが初めてだったNo Value。予備知識全く無しで観たのも大きいのかもしれないけど、速い!!うるさい!!短い!!といった大正義を掲げるファストグラインドサウンドに脱帽。
 一曲一曲が短い上に矢継ぎ早で繰り出される高揚感!!MCですら「特に話すことって無いや。」と言い捨てて終わりという潔さ、そこらも含めて圧縮された情報量をエクストリームな速さと五月蝿さで殺りに来るのだからテンションが上がらない訳がない!!実際にこの日の出演バンドの中でもフロアが一番盛り上がっていたのもこのNo Valueだったのも納得だ。
 全激音が擦り切れてもお構いなしで暴走を続けたライブは15分もしないで終了。正直もっとライブをやって欲しかった気持ちもあったが、それを抜きにしても絶頂感の余韻は堪らない物があったのである。



・weepray

 主催のもう一片割れのweepray。今年はライブ活動が殆ど無く、この日のライブが今年最初で最後のライブとなり、下手ギターの小室氏が都合で不参加となり4人編成のライブとなったが、全3曲に渡って繰り広げられたweeprayという惨劇に何一つブレは存在していなかった。
 頭から「彼岸花」で攻める攻撃的なモードでライブは始まったが、ドス黒いギターフレーズと通り魔の様に刺すドラムが軸となりながら、ベースの阿武氏とボーカルの笠原氏の二人が描く耽美で黒い世界に酔いしれさせる。
 ステージから放たれる全ての音に込められた殺気が凄まじく、それだけで無くメンバーそれぞれの一挙一動にも目が奪われる。特に彼岸花のラストの阿武氏が口をパクパクさせながら何度も指をフロアに向けているアクションは異常な空気感をより加速させていた。
 ラストにプレイされたTILL YOUR DEATHコンピ収録曲である「カルマ」は去年からプレイされていた今後のweeprayを代表するであろう屈指の一曲だが。これまでに無い混沌を音としてパッケージングしただけで無く、weeprayにこれまで無かった怒りの要素が明確に現れたヘイトフルな一曲。ブルータルさも、困惑も憎しみも全てが何もかもを塗り潰していく様は最早恐怖を通り越して笑いすら浮かんでしまう物。笠原氏がマイクスタンドを投げ捨ててフロアから立ち去った瞬間に、呆然としたまま取り残されてしまった絶望感すらあり、weeprayはどんなに活動がスローペースだろうとライブのブランクがあろうと唯一無二のバンドであるという事をただ思い知るのだ。



・ANCHOR

 そしてANCHORの実に7年振りの東京ライブ。2年前の孔鴉で初めてライブを見て衝撃を受けたバンドだが、それ以来に観たANCHORのライブは2年前と比べても更にパワーアップした物であった。
 やっている事自体は音源と全く変わらない筈なのだけど、音源で聴かせる繊細な空気感はそのままに、バンドとしてのダイナミックさをより前面に押し出すサウンドに圧倒される。
 繊細なツインギターとは対照的にシンプルな事をやっていると思わせておいて、かなり高レベルなグルーブを構築するリズム隊の核の部分がライブではより剥き出しで伝わる。ミドルテンポで緩やかに展開しながらも、そのBPM以上に体感速度を自然と生み出す事って並大抵のバンドじゃとてもじゃないけど出来ない芸当であり、それをごく自然に生み出せるのはANCHORの底力だろう。
 来月リリース予定のTILL YIOUR DEATHコンピに収録予定の新曲「物語」はそんなANCHORの更なる進化を打ち出す会心の一曲としてフロアは記憶してであろう。何より本編ラストの「深層」とアンコールでプレイした「抵抗」の2曲がこの日のANCHORを象徴していた。
 アプローチは音源と変わらないのに、音源よりもずっと喜怒哀楽といった感情がダイレクトに伝わってくるのは、心が震え心臓が爆発しそうになるカタルシスに包まれた。繊細で美しい音の奥底に隠された真っ直ぐで不器用な熱さがこのバンドの一番の魅力である事に今更ながら気付かされてしまった。
 次回の東京でのライブはいつになるかは分からないが、ANCHORのライブは新潟まで遠征してでも一度は体感する価値は間違いなくある。このバンドは新潟の一ローカルハードコアバンドで終わらせてはいけないのだ。間違いなく新潟が生み出した日本が世界に誇るべき国宝級のバンドなのだから!!



 全8バンドによる様々な死覚が目の前で繰り広げられた一夜はANCHORの圧巻のライブにより幕を閉じ、終演後はANCHORの物販が飛ぶように売れていたのもまた印象的であった。
 決して都心から近いとは言えない(僕としてはそんなに遠くも無いって気もするけど)国分寺という地をオリジナリティしか無い8バンドの殺り合いによって生まれた確かな磁場。この日のモルガーナにはバンドだけで無く、来ていたお客も含めて幸福なグルーブが確かに生まれていた。今はその幸福感を少しでも多くの人に分けてあげたい気持ちで一杯だ。
 ANCHOR改めてアルバムリリースおめでとうございます。そして最高のライブを見せてくれたこの日の出演バンドに大きな感謝と尊敬の念をここに記す。

■BALLOONS 20th Anniversary & Last Tour(2016年9月4日)@代官山UNIT

 20年に渡りシーンを切り開き、多数のバンドから多大なるリスペクトを集め、「兄貴」として君臨し続けたBALLOONSが活動20周年の節目の2016年その活動を終えた。
 今年に入り最後のツアーを行ってきたが、この日の代官山UNITでBALLOONSはその活動を終えた。最後の最後のライブはheaven in her arms、LITE、MIRROR、killieと共にシーンで切磋琢磨し戦ってきた盟友4バンドを迎えてのライブ。イベントはソールドアウトを記録し、UNITのキャパを明らかに超える人数を動員し、冗談抜きで伝説の夜となった。
 僕自身も早めにUNITに向かったが、代官山には兄貴の最後の勇姿を目に焼き付けるべく集まったフリークスが長蛇の列を作っており、僕もなんとかHIHAが始まるギリギリの所でUNITへの潜入に成功。
 一つの歴史の終わりを迎えたこの日、世界中のエモを全て集めたかの様な瞬間が何度もあった。僕はこの一夜に参加できた事を誇りに思いながら、色々と整理が付いた今こそ2016年9月4日の記憶をここに記す。



・heaven in her arms

 HIHA名物のアンプの山を隠す形でロゴが記された二つの巨大バックドロップが飾られた異様なステージの光景。トップのHIHAからこの日はハイライトを迎えたと言える。
 普段はMCを殆どしないHIHAだが、この日ばかりはkent氏が何度も兄貴へのリスペクトを言葉にし、そして兄貴達からは進化し続ける事を学んだ事、それを体現するライブを行うという旨を口にし、その言葉通り最新のHIHAを見せるライブを展開した。
 もうリリースこそ3年前だが「終焉の眩しさ」からライブは始まり、新曲2曲を含めた最新のHIHAをダイレクトに体現するライブで攻める。バンドの持つ世界観をより色濃く反映させながら、これまで闇といったワードで語られる事の多かったHIHAを更新し、光を感じさせる音像をハードコアだけでなくブラッケンドやメタルを新たな解釈で盛り込んだ新曲はこの日初めて聴く人も多かった筈だが、フロアからはより四次元的なサウンドを展開するまでになったHIHAに酔いしれる人が多かった筈。
 全4曲のセットだったが、ラストはHIHAの看板曲の一つである「赤い夢」で締め括り。かつてはライブのラストにプレイされる事の多かったドラマティックな名曲は兄貴達の最後の一日だからこそより大きな感動と煌きの瞬間をもたらし、頭から涙腺が緩みそうになるエモが炸裂した。
 HIHAは12/23に同じく代官山UNITで自主企画を敢行するという大勝負に出る。BALLOONSの常に挑戦し続けるという意志を受け継いだHIHAはこれからも新たな景色を僕たちに見せてくれるだろう。



・LITE

 二番手のLITEもMCで何度もBALLOONSへのリスペクトを口にし、兄貴達がいてこそ自分たちがある事を口にしていた。
 BALLOONSのインスト曲「9:40pm」をカバーするというサプライズを用意しながらも、ライブ自体はあくまでもいつも通りのLITEで攻める。代表曲「Ef」から始まり、言葉こそ無いが、バチバチと火花を散らすスリリングなインストが迫るライブ。BALLOONSの影響を受けながらも、それを模倣せずに自らのサウンドを確立したLITEもまた兄貴達の挑戦し続ける意志を受け継いだバンドであるのだなって妙に感慨深い気持ちに。
 あくまでもいつも通りのライブではあったが、どこかいつも以上に演奏に熱が篭っている様にも感じ、その一瞬の音のぶつかり合いの瞬間すら彼らは楽しんでいた様にも思えた。
 BALLOONSという国内ポストロックの先駆けが生み出したLITEというバンドも今やシーンを代表するバンドへと進化を遂げた。言葉を用いない彼らの音はより素直なエモを一瞬の音に全力で投じていた。一瞬で駆け巡るライブではあったが、その一瞬が生み出す高揚感と熱さにフロアからは何度も熱い歓声が起こり、みんな全力でLITEの兄貴達へのアンサーを全身で受け止めていたのだ。



・MIRROR

 転換中に物販を見てフロアに戻ったらあまりの人の多さにフロアの大分後ろの方でライブを観る事になったが、MIRRORはLITEとはまた違うエモをMIRRORの流儀のまま描いたライブを展開。
 LITE同様に言葉を用いないインスト音楽であるが、LITEが一瞬のぶつかり合いに命を懸けたライブをしていたのに対し、MIRRORはその音の全てでBALLOONSへのリスペクトを歌い上げる様なライブをしていた。
 元々歌なんか無くても楽器の音全てが歌声を上げるポジティブでハイボルテージなエネルギーを持つライブをするMIRRORだが、この日はそんなMIRRORの持ち味が感情の決壊とも言える情報量で押し寄せる演奏を見せてくれていた。決して常軌を逸した爆発を描くバンドでは無いし、MIRRORの音は日常や人間の平熱といった自然体な熱をそのまま自然体で繰り出し、不思議と観る人を笑顔に変える物であるけど、言葉にならない熱をただ全力で描き出していたMIRRORの正直な音は多くの人の胸を打ち抜く物であったし、この伝説的なライブを前の方で観る事が出来なかったのは今でも大分悔やんでいる。
 まるでBALLOONSという物語に対し花束を添える様な美しく感動的なライブ、MCでの何の飾りっけも無い「ありがとうございました」の言葉。それが全てを語っていた。



・killie

 それぞれのバンドが自らのキャリアの中で最高を記録するであろう神アクトを展開する中、BALLOONSと共に歩んできたkillieも例外無くキャリア屈指のライブを見せてくれた事はこの記憶を記した記事を読んで下さっている皆さんは簡単に想像出来るだろう。
 頭からアンセム「先入観を考える」、そして「キリストは復活する」とこの日のkillieはただでさえライブを事件にしてしまうkillieというバンドの本領だけを発揮した物となった。
 「先入観を考える」が始まった瞬間から異様なテンションでモッシュがそこら中で発生するフロア、バンドのテンションも序盤からギアの限界を超えた物となり、バンドとフロアの熱量の化学反応が常軌を逸した音と共に目まぐるしく展開されていく情景。決して狭くないUNITというハコの中は致死量の熱さで包み込まれ、ボーカルの伊藤氏は最初にMCで「BALLOONSの墓を埋めに来ました。」なんてらしい事を言っていたけど、告別式にしては幾ら何でも盛り上がり過ぎだし、僕自身もモッシュに巻き込まれて揉みくちゃになりながら、言葉にする事の出来ない興奮に襲われていたよ。
 最後は「エコロジーを壊せ!」で幕を閉じたが、曲の途中で伊藤氏が照明の蛍光灯を一つずつ消していき、真っ暗になったステージ、フロアからは異様な緊張感、そして蛍光灯では無くUNITの照明が一気に点火した瞬間にはkillieの楽器隊がBALLOONSと入れ替わっているというサプライズ!!そして伊藤氏と吉武氏のツインピンボーカルで演奏されるクライマックス!!この瞬間は正にロックバンドkillieだからこそ生み出せた物であり、その場にいた人間全員の想いが爆発したからこそ生まれた光景だろう。
 主役のBALLOONS以上にクライマックスで盛大に墓を準備したkillie。常にあらゆる有象無象と闘い続けたバンドが兄貴達に手向けた瞬間のドキュメント。この光景は一生忘れないだろう。



・BALLOONS

 4つのバンドが4つの忘れられないエモを生み出した中、主役のBALLOONSの最後のライブはどんなドラマが生まれるのかと僕は色々と思いを馳せながら考えつつBALLONSの最後の瞬間を待っていたが、結論から言うと安易な感傷なんかに全く浸らせてくれない、BALLOONSはあくまでBALLOONSのまま全てを終えただけに過ぎなかった。
 「Intensity」からライブは始まり、新旧問わず20年の間で生み出された来た名曲達が淡々と出番を終えていく。MCもそれぞれのメンバーがしたりもしていたが、あくまでも感傷では無く、等身大の自分たちのままでその言葉を綴っていたのも印象的であった。
 圧倒的演奏力と全く隙の無い構築美によるBALLOONS節としか言えない数多くの楽曲。その一つ一つは安易にエモい気持ちにはさせてくれず、静かにそれぞれの楽曲と向き合わせるストイック極まりない演奏。BALLOONSは他のどのバンドよりもストイックの自分たちの居場所を作り続けて来た。そんな事がただ表れたライブであり、何処かで孤独を抱えている様な気持ちになってしまった。
 だけどあくまでも孤高の存在であり続けたBALLOONSのラストライブを特別な物へと変えたのは、きっとそれまでに出演した4バンドもそうだし、この日来ていた650人を超える客もそうだし、それぞれの立場や形でBALLOONSというバンドに憧れを抱いてきた人々が生み出す熱量だったのだと今では理解できる。
 完璧主義を最後まで貫き通した一時間以上にも及ぶ熱演、アンコールの時のフロアから配られた風船が数多く掲げられる光景にすら「風紀を乱すな」なんて言えてしまうどこかツンデレめいたスタンスすらBALLOONSなりの愛なのだろう。
 僕自身はBALLOONSというバンドを決して昔から知っていた訳では無いし、バンドのこれまでの歴史なんかは僕よりもずっと記憶している人の方が多いと思う。だけどBALLOONSが作り上げて来た物は音楽だけでなく、一つのリアルなシーンとして確かに受け継がれた来た。それは世代や立場とかを超えて「みんなで作り上げた物」として今でも残り続けている。
 ライブレポ的な部分から大分脱線はしてしまったが、この日のライブはBALLOONSが妥協なき姿勢をブレずに貫いたからこそ生み出せた集大成だったという事だったのだろう。ベタな言葉ではあるが有終の美という言葉が一番相応しいライブとなった。
 最後の最後まで決してデレてくれた訳では無いけど、そのオリジナリティとストイックさをただ淡々と描き続けたラストライブだからこそ、また特別な磁場があの場所にはあった。



 こうしてBALLOONS最後の夜から色々思っていた事を自分なりに整理してやっとこの駄文を記すまでに至れたのだけど、この日は今でも不思議と終わりの日という気持ちにはなっていない。
 それはBALLOONSというバンドは終わってしまっても、兄貴達が残し続けた名曲と行動は今でも僕たちの身近な世界で確かに呼吸を続けているからだろう。
 一つの区切りではあったのかもしれないが、決して終わりの日では無かった。BALLOONSが残した多くの財産はこれからも様々な形で受け継がれて続いていく。その事実だけあればいい。それでいいし、それがいい。



 「BALLOONS、20年間お疲れ様でした。」ただこの一言しか僕が言うことは無い。全てはこれからも続いていくのだから。
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■EXTREME MAD TERROR -Jack The Stripper(AUS) Japan Tour 2016 w/NoLA-(2016年9月3日)@新松戸FIREBIRD

 昨年、NoLAの招聘により来日を果たしたオーストラリアのカオティックハードコアバンドJack The Stripperが、今年もNoLAの招聘によって再び来日を果たした。全4公演。仙台・千葉・横浜・東京と決して本数は多くは無いツアーではあったが、各所で国内の実力派の猛者がJack The Stripperを迎え撃つという激熱なツアーだ。
 そのツアーの2本目となる千葉公演は新松戸FIREBIRDの名物企画「EXTREME MAD TERROR」にて国内の多数の個性溢れる猛者がJack The Stripperの首を狙うというバトルロワイヤルな一夜。土曜の夕方前から激音に溺れる濃厚な一日となった。



・小手

 トップバッターからいきなり小手である。かなり久々にライブを観る事になったが、トップから新松戸を自らの自問自答の世界へと飲み込んでいく圧倒的なアクトを見せてくれた。
 約25分の持ち時間でプレイされたのはたったの2曲。小手というバンドが歌い上げる繊細で決して明るく無い、仄暗いリアルを歌え上げるたった2曲であったが、このバンドはたった2曲で自らの全てを曝け出せるバンドだ。
 ほぼポエトリーで生々しい現実との対峙、退くに退けなくなってしまった事への後悔、それでも必死に足掻いていく強さ。特に「お前も俺もまだ何も始まっちゃいない。」と何度も何度も自らに言い聞かせる2曲目にプレイされた新曲が小手屈指の名曲と言える物だ。
 和の音階を大切にしたポストロック的なアプローチがじわじわ熱量を上げ、最後の最後はダイナミックな各楽器のぶつかり合いによって生み出されるクライマックス。この声と音が届く全ての人にむき出しのまま訴えかける力。緊張感溢れるライブだったが、その終焉は開放感の中で自分自身を許される気持ちとなる物となった。この途方もないエネルギーが生み出す生々しい表現は日本語の分からないJack The Stripperの面々にもきっと伝わった筈!!



・Azami

 この日唯一初見のAzamiは色々な所でその評判は聞いていたので観るのが楽しみだったバンドの一つ。サウンドスタイルは柏シティハードコアの血統を色濃く受け継いだ叙情系ハードコアであるが、メロディアスなフレーズが疾走するさなかの瞬発力と筋力のタフネスは中々の物。やっている事自体は特別目新しさがある訳では無いが、真っ直ぐにフロアを射抜く熱量は確かに心に響くものがある。
 メロディと叫びから情景を想起させるアンサンブルの立体感も良いが、小手先の誤魔化しなんて何一つ無い純粋無垢なパッションを25分で全て出し尽くす短距離走型のライブパフォーマンス、ここぞという所での爆発力は積み重ねてきたライブによる確かな実力から生み出されている物。小手と一転してアプローチも音楽性も違うバンドだったが、その実力は確かな物!!



・wombscape

 新体制も大分板に付いてきたwombscape。序盤は久々に「新世界標本」の楽曲群をプレイし、旧体制でリリースされた音を現体制の音としてアップデートが進行している事をアピール。これらの楽曲は何度もライブで体感していたが、サウンドによりソリッドな攻めの部分が表出されている様にも感じる。
 中盤のwombscapeの看板曲「新世界標本」の時はギタリストのHirokiが見事にやらかしてくれた。何度も何度も返しのスピーカーに蹴りを入れ、勢い余って機材トラブルが起きたらアンプを思っきり叩き出すというブチキレっぷり。wombscape加入当初はそのポテンシャルの高さは十分感じさせていたが、どうしても固さが目立っていた彼のプレイだけど、その固さは完全に取れ、これまで在籍していたwombscapeの歴代ギタリストの誰よりも狂気と暴力性に特化したプレイを体現するという進化を見せてくれた。
 後半の新曲群もライブを重ねた事により、元々の魅力であるカオティックハードコア発、それらをズタズタにする事によって生み出すアーティスティックな物語を尖り切った音で血の色の油絵具を一面にブチ撒ける様な表現の暴力を生み出していた。
 今後も色々と動きや展開は多いと思うが、wombscape程、良い意味で先が予測出来ないバンドはいない。この偏執狂な表現衝動の行く先は当の本人たちすら分からないだろう。でもその新しくあり、異質な表現こそ何よりもwombscapeなんだと思う。



・REDSHEER

新感覚の激音を常に創造し続けるREDSHEERは現時点の最高とも言えるパフォーマンスを見せつけるライブをブチかましてくれた。
 常にその場にいる全員殺ってやるという気迫しか無いライブアクトはREDSHEERの大きな魅力であるが、看板曲「Silence Will Burn」から、久々にライブでプレイした「Blindness」、果ては新曲群含め現状のREDSHEERのベストと断言できる熱量と演奏の精度を新松戸で炸裂。
 複雑極まりないリズムチェンジを繰り返し、ギターの歪みからコード、低音域の一番エグい部分だけを弾き倒すベース、これだけ複雑なプレイをしているにも関わらず異常な重さと混迷を叩き出すドラムとメンバー3人の持つポテンシャルの一番濃い部分が異物感ゼロで自然なアンサンブルとして持続したまま、だけど負の感情を暴発させるダークハードコアなサウンドの殺気は加速していくばかり。蠢く黒を切り裂く激音の嵐の情報量は25分では全然足らない!!
 バンドが新たなモードに入って久しいが、この日はその先にあるうるさい音楽が好きな人間すら卒倒してしまう驚異の領域に彼らが手を伸ばしているのを体感させられるライブとなった。REDSHEERはまだまだこんな物じゃ終わらない!!



・ele-phant

 イベントも後半戦となりギターレスサイケデリック歌謡ドゥームと個人的に勝手に呼ばせて頂いているele-phantのライブへ。一曲目から「Black Room」でele-phantが誇るスーパーボーカリストことcomi氏が描き出すエロスと退廃の世界に引きずり込まれる。
 今後リリースされるであろう新曲もプレイされていたが、それらの楽曲はele-phantには最早ドゥームとかサイケデリックといった冠すら不要だという事を声を大にして言いたくなる物となっていた。メンバー3人のキャリアと文脈がより残刻なロマンとなって襲いかかかり、重い音よりも、エグい音よりも、その世界観をダイレクトに表現する歌とメロディこそが一番のヴァイオレンスである事をele-phantというバンドは証明しているのだろう。
 ベース一本だけでメロディもグルーブも美しさも重さも指揮者の様に変化させ、タイトなドラムが肉付けし、たった二人で完成したアンサンブルに乗るcomi氏の最高のボーカル。たったそれだけで生まれたのがele-phantの非現実的陶酔世界だ。異形なバンドばかり集まったこの日の新松戸の中で最も異端児でありながら、最もロックのエロスと言葉にしてはいけないロマンを間違いなく表現していた。



・The Donor

 金沢の誇りと断言したいヘビィロック番長The Donorはこの日もただ最高のライブをしていた!!サウンドチェックの時点で凄まじい爆音で耳がぶっ壊れそうになったが、ライブはこの日一番の音量で全てを破壊するヘビィロックを爆散させただけだった。
 The Donorの大名曲「Shine」からキックオフしたライブだが、数多くプレイされた今後リリース予定の新曲に加え、ニュースクールもドゥームもハードロックも、いや世界中のあらゆるヘヴィな音楽を喰らい尽くした上で「全員が最強にうるさい音を出していれば音量バランスなんてドンピシャになるんじゃ!!」と言わんばかりの爆音天国しか無かった。
 MC以外はノンストップでメドレーの如く繰り出される楽曲達。あらゆる文脈が見え隠れするサウンドでありながら、いざ吐き出される音を体感しても「ヘヴィロック」以外の言葉が果たして必要なのかと言いたくなる。
 それとThe Donorというバンドを海外バンドと比較するのは野暮でしか無いとも大声で言いたい。海外バンドに負けないタフネスだとか日本人独自の表現といった議論が全くの無意味である事をThe Donorのライブを観たら実感する筈だ。The Donorは世界で最もうるさくキャッチーでブチ切れた爆音をただ鳴らしているだけなんだから。ただ一言「最高」の言葉しか無いライブだった!!



・Jack The Stripper

 ライブもいよいよ終盤戦となりオーストラリアからの刺客Jack The Stripperのライブが始まった。
 昨年も来日公演を拝見させて頂いたが、正統派カオティックハードコアであり、ビートダウン大好き脳筋野郎な男気に惚れたが、一年の月日が経過し、Jack The Stripperはどうなっていたかと言うと清々しい位に何も変わっていなかった!!
 だが変わっていなかったのはあくまでもサウンドスタイルの話で、ライブバンドとしての無尽蔵な体力と筋肉は昨年より更にビルドアップを果たしてた。ビートダウンはよりエグい所を掻っ攫い、筋肉全開な刻みとビートは一撃必殺。メンバー全員の暴れ狂うライブパフォーマンスも昨年より更に制御不能な物であり、ただ痛快だ。
 MCでは気さくな兄貴感が出まくりなギャップにもやられたが、ライブ中はただただ凶悪な重低音だけを吐き出すモンスターっぷり。目の前で繰り広げられるカオスの連続は一転して男の花道を爆走するデコトラ野郎すらあって、男気とは国境を超え、国や民族関係なしに熱くなる物だと思った。
 時流に全く流されず、ただ爆音のヘヴィネスだけを放つJack The Stripperは昨年の来日公演以上に強靭なライブを展開していた!!



・NoLA

 そして長丁場となった今回のイベントを締めくくるのはJack The Stripperを招聘したNoLA!!5人になってから無敵の化物となったライブの凄さは当ブログでも何度も書いているが、今のNoLAは非の付け所なんて一個も無いライブを常に展開し、毎回最新のライブが過去最高のライブといった急成長を遂げている。
 長年不在だったベーシストという最後のピースにYutoが加わり、新曲はビートとリフと叫びの恐怖と爽快感の連続から一発で脳のこびり着くフレーズの数々とより一層メジャー感すら手にしている。
 トリッキーな事なんて何もしていないが、NoLA節としか言えないリフとビートとグルーブの一体感。「死と再生」を象徴する架空の生物にウロボロスという物が存在するが、今のNoLAは正にそのウロボロスと言っても良いだろう。
 一撃必殺の音で聴き手の肉体を粉砕して即死させるが、その死体に更にもう一発激音をお見舞いする事により、聴き手に新たなる価値観と刺激を与えて再生へと導く。固定概念を殺し、新たなる創造により再生を生み出すという循環がライブ中に何度も巻き起こり、五感と細胞が死と再生を繰り返す。それはNoLA自身にも言える事であり、何度も脱皮を繰り返し、より巨大生物へと進化を続けていく。
 そんな事を思いながらライブを観ていたが、その二日後の東高円寺二万電圧にて、それすら思い違いであった事を僕は痛感する事になる…



 かなりの長丁場ではあったが都内からはるばる新松戸まで足を運んだ価値は十分過ぎる程にあった。「EXTREME MAD TERROR」という新松戸から新たなるエクストリームミュージックを爆散するこのイベントは毎回毎回現場に足を運んでこそ見せるリアルが存在するイベントであり、これは少しでも多くの激音フリークに体感して欲しいカタルシスが存在している。今後も都内から新松戸へと足を運ぶでしょう。
 そしてその二日後のJack The Stripper来日ツアー最終日である東高円寺二万電圧にて、更なる事件が起こるが、その時の模様はまた後ほど記させて頂く。
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■それでも世界が続くならワンマンツアー2016「再生」(2016年8月28日)@下北沢club Que

 今年に入りROCKBELL recordsにレーベルを移籍し、バンドの新章を宣言するタワレコ限定シングル「狐と葡萄」をリリースした、痛みも苦しみもリアルとして鳴らすオルタナティブロックバンド「それでも世界が続くなら」。
 そのリリースを記念したワンマンツアーは「再生」と銘打たれ、それは昨年メジャーからリタイアしながらも再び前線に帰って来た事、極限のリアルを生々しく再生する事、新たなる存在として生まれ変わること、色々な意味を想起させる。
 昨年からそれせかを知り、自分の中の価値観や感性を全て木っ端微塵にされる程の衝撃を受けた身として、彼らのライブは一度目撃しなければならないと思い、今回は足を運ばせて頂いた。
 オープンの17時には会場であるQueに到着していたが、開演の時間まで会場は異様な緊張感に包まれており、敬遠直前には決して狭くないQueがほぼ満員の状態であったが、その緊張感はより高まっていく。これまで数多くのライブに足を運んできたつもりではいたが、この日程ライブを観るという行為に恐怖を感じた日は無い。音源でさえ心をズタズタに切り裂くそれせかの音楽に生で触れたら生きて帰って来れないんじゃないか?大袈裟かもしれないけど、そんな事すら考えてしまった。
 そして開演予定の18時オンタイム、僕のこれまでの価値観を全て破壊するライブが始まった。



 SEに合わせて静かに登場するメンバー4人、フロアは拍手で迎え入れるが、開演前以上に緊迫した空気が包み込む。篠塚氏と菅澤氏の二人の静謐なギターが空気を変えていく中で始まった「傾斜」。極限まで音数は少なく、明確な輪郭を持たないリヴァーブギターの濃霧、照明も足元の白熱電球のみという削ぎ落とされたも良い所な物で視覚的情報もシャットアウトされている。
 そんな中でこの世の希死念慮の全てを憑依させたかの様な篠塚氏のボーカル、美しく漂う音の粒子が徐々に自らの首に紐を括りつけていく様な残虐なノイズギターと変貌。アプローチ自体音源と全く変わらないのに、音源の更に上を行く密室的空気の中の死の匂い。冗談に聞こえるかもしれないけど、頭のこの一曲だけで体の震えが止まらなくなってしまい、涙を堪えきれなくなってしまって、何度も何度も声を上げて叫びたくなるのを必死で堪えていた…

 続く「冷凍保存」と「リサイクル」こそ少しはアッパーな曲ではあるが、重低音とノイズギターの精神的煉獄は続く。リズム隊のアプローチは何らトリッキーな事をしてないのだけど、何も足さない、何も引かないからこそ安定感のあるプレイに徹底しており、そんな地盤に菅澤氏の多彩な音階を多彩な音色で彩っている筈なのに、それらの全てが寒色系の色や黒めいた音として聞こえてくるギターワーク、そしてギターとボーカル、いや自分自身から放つ事が出来る物全てに全感情を怨念の様に込める篠塚氏。
 バンドとしてのアンサンブルはこれ以上無く完成されているのに、気を抜いたその瞬間に爆散してしまう恐怖。手を上げる事も頭を振る事も出来ずに、目の前で繰り広げられているリアルを目を背けたくなるのに、背ける事が出来ない。
 バンドの中でも非常にポップな側面が出ている「響かない部屋」、「参加賞」、「水色の反撃」といった楽曲もプレイされたが、そんな楽曲ですら序盤からの圧迫感は全く変わらずに演奏してしまえるのがこのバンドの凄い所だ。

 この日は今後リリースされるだろう新曲も含めて新旧の楽曲を満遍なくプレイしていたけど、どの楽曲も全くブレずに誰もが目を覆いたくなる痛みだったり隠してしまいたい現実を鳴らしていた。アッパーな楽曲もミドルテンポのスロウな楽曲も全て「それでも世界が続くなら」というバンドのリアルとして何の飾り気も無く鳴らされていただけに過ぎない。
 本当にたったそれだけの筈なんだけど、何でノイズギターが泣き叫ぶ度に、篠塚氏が叫ぶ度に、涙が溢れてしまうのだろう。本編ではMCらしいMCなんて終盤の篠塚氏の「あと3曲っ!」と最後の「ありがとっ!」位だけで、チューニング以外はほぼノンストップで生き急ぐ様にライブは進んでいった。

 篠塚氏は曲の歌詞も何度も変えていたり、最早マイクの前にいないのに何度も声にならない叫びを上げたり、指揮者の如くジャズマスターを振り下ろした瞬間にバンドサウンドを轟音の坩堝に変貌させたりと、安定感あるプレイで支える他のメンバー3人に比べて明らかに切迫感と破滅願望と救いを求めるかの様な感情をただ歌と演奏で表現する。その事実こそがカテゴライズさせない、誰にも何も言わせないリアルを表現しているんだろう。

 個人的なハイライトはノイズギターの洪水から始まった「スローダウン」だろう。「わかるかい 死ぬよりも辛いことなんて本当は この世界にはいくらでも あるってことを」という全てを暴いてしまっている歌詞のラインが凄まじいそれせかの初期からの看板曲であるが、この一曲をいざライブで体感した瞬間に、何度も何度も泣いたり震えたりしながら観ていた今回のライブで一番感情という感情が決壊を起こしてしまっていた。
 暗いだとか重いだとかって言葉で片付けてしまえば簡単なのかもしれないけど、そんな事で片付ける事が出来ない様な事ばかりが溢れているという事実、たったそれだけの事を「それだけの事」として片付けさせてくれない。この瞬間だけは立っている事すら出来なくなってしまいそうだった。

 ほぼノンストップで窒息感と緊迫感溢れるライブを繰り広げていたが、ラストは最新シングルから「狐と葡萄」で本編は終了。ラストにこの楽曲で締めくくってくれたのは個人的に一気に救われた気がする。照明も白熱電球だけのままであり、決して何らかの演出があった訳でも無いけど、この一曲がプレイされた瞬間に自分の中にある様々な感情や困惑や言葉に出来ない事全てに一つの答えを貰えた気がした。

 アンコールは一転して非常に和やかな空気で2曲プレイされたが、最後の最後の一曲の前に篠塚氏が少し口下手な感じでこの日来ていたお客さんに何度も感謝を述べ(「うちらそんなバンドじゃ無いけど、ライブ観て楽しかったと思って貰えたら。」とか「みんな立っているの辛いだろうけど、俺も頑張って立っているから。」なんて非常に篠塚氏らしい言葉だった)、菅澤氏から年末に再びワンマンツアーを行う事が告知されたり、琢磨氏が菅澤氏のギターに合わせて謎の怪談話をしたりと本編でのあの異様な空気を放っていたバンドとは思えない位のほっこりMCタイムでしたが(個人的に割礼のライブでの松橋氏の物販紹介MCコーナー並に落差を感じた)、最後の最後は「弱者の行進」でこの日のワンマンを再生完了させた。



 約二時間に渡ってライブは行われたが、ライブ終演後は僕自身異常に体力と精神力を持って行かれて、フラフラになってしまい、その状態は帰宅するまで続いたが、当の篠塚氏もライブ終盤はフラフラになりながらそれでも二本の足を地に付けて渾身の表現をこの日来ていた人に向けて放っていた。
 もしかしたらこの日目撃した物はライブって言葉じゃ片付ける事の出来ない、正真正銘の闘いだったのかもしれない。ライブが終わって数日経った今このレポを記しているが、今でもこの日のライブで体感した事は上手く纏まってはくれていない。
 でもそんな簡単にそこら辺にある言葉で片付けさせてくれない音楽を「それでも世界が続くなら」というバンドは鳴らしているんだとも思う。そこら辺にあるカテゴライズされた反抗を歌っている音楽なんかよりもずっと本質的な意味でパンクでありハードコアであると僕は思う。
 この日のライブを観て一番感じたのは、僕が世界で一番敬愛するbloodthirsty butchersの吉村秀樹という男が鳴らしていた「血を吐き続けても叫ぶ表現」という物をこのバンドは鳴らしていたという事実。それが僕がこのバンドに出会い惹かれた必然なんじゃないかとすら今は思う。
 長々と纏まらない事を綴ったが、僕は「それでも世界が続くなら」というバンドに一人でも多くの人に触れて欲しい気持ちで一杯だ。決して肌触りの良い表現をしてるとは言えないし、人によっては不快感すら覚えるバンドだとすら思う。だけど、本物の表現とはいつの時代だってそんな物であった。だからこそ僕はこれからもこのバンドを追いかけ続ける。
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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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