■Torche
■Harmonicraft/Torche
![]() | Harmonicraft (2012/04/24) Torche 商品詳細を見る |
再び4人編成となったアメリカのストーナー・ヘビィロックバンドTorcheの4年振りの3rdアルバム。ストーナーポップと評され、ヘビィでありキャッチーな無骨でありながらも、人懐っこさもあるサウンドと、ありえない本数のライブをこなしているからこそ生み出せる屈強さが魅力のTorcheであるが、今作でもそれは健在。更に自らのサウンドに磨きがかかった快作となっている。
第1曲「Letting Go」から無骨で重いヘビィなリフとビートが押し寄せてくるが、そのヘビィなリフから感じられる旋律は本当に明確だし、しかもポップ。片方のギターでヘビィなリフを弾き倒しつつも、もう片方のギターがキャッチーなフレーズやギターソロを絶妙に入れる事によるヘビィネスとポップネスが手を取り合うサウンドはもう相変わらずお見事としか言えないし、リズム隊の屈強なアンサンブルの安定感は更に鍛え上げられながらも、決して必要以上の重さは無いし、重みがありながらもパンキッシュさも持っているし、ストーナーらしい轟音サウンドも随所に盛り込みつつも、それを決して冗長にはせずにあくまで必要な時に繰り出し、楽曲に絶妙な変化をつける手腕も流石だ。あくまでリフ主体で楽曲を引っ張り、歌はクリーントーンで本当に素直なまでに歌い、ヘビィなアンサンブルと調和を果たしている。楽曲も相変わらず少し短めで聴き易くしているのも自らの魅力を分かっているからこそだと思うし、ブルース・ストーナーの土臭さもしっかりと盛り込み、ハードロックといった要素とも融和し、非常にクロスオーバーしているサウンドを、もう一つのTorche節として統率し、それを重厚なグルーブとアンサンブルで鳴らし、そしてどこまでも素直にポップさを極めようとする一貫したスタイルを貫いているからこそ、Torcheの音楽は本当に素直にノレるし、馬鹿じゃねえのって言いたくなる位に格好良いのだ。かといって楽曲のスタイルは一辺倒かっていったら違うし、それぞれの楽曲で異なるアクセントをしっかり付けているのも今作が飽きずに聴ける秘訣になっている。第7曲「Sky Trials」なんかはマスロック的なフレーズを絶妙に盛り込み、第11曲「Solitary Traveler」ではダウンテンポで重厚な轟音を聴かせてくれたりもする。他の楽曲もギターソロや細かい部分でのフレーズでそれぞれのカラーを付け足し、一貫したスタイルの中で変幻自在のポップネスとヘビィネスを行き来し、それこそジャケット同様にあらゆる色が混ざっていながらも、それが喧嘩せずにタッグを組み、極上のストーナーポップとして鮮やかに花開くのだ。そんな楽曲が続く中で最終曲「Looking On」は完全に異質な1曲で、コンパクトな楽曲が並ぶ今作で唯一の少し長めの楽曲で、サイケデリックかつヘビィなストーナー・スラッジの猛威を見せる。そんな楽曲も最後は極上のポップネスでしっかり締めくくるから大した物だ。
アーロン・ターナー大先生が「笑顔でヘッドバンキングできる」という賛辞を送った通り、どこまでも肉体に訴えるヘビィで重厚なアンサンブルと、素直な歌とメロディが際立ち、カラッとした爽快感に満ちた作品。2ndで日本でもその名を広め、ストーナーポップの名を欲しいままにしたTorcheだが、今作でもそれは全くブレてないし、どこまでも力強く拳を突き上げたくなる最高に気持ち良いヘビィロック作品になっている。余計な事なんか考えないで笑って頭を振れば良いのだ。