■JAGO
■the seabed 謎の海底宇宙/JAGO

現在、地下世界にて少しずつ盛り上がりを見せる日本のカオティックハードコアだが、このJAGO(ヤゴ)もそんな盛り上がりの中にいるバンドだと思う。今作は2011年リリースの音源であり、FLYING HUMANOIDからのリリース。超常現象とかそういった類のオカルト的世界観をテーマにしたコンセプトアルバムとなっている。5曲15分で描く異形の世界は正にオカルティックカオティックハードコアと呼びたくなる出来だ。
作品全体で一つの楽曲とも言うべき作品であり、個人的には5部構成のオカルト絵巻の様にも見える。水の「コポコポ」っていう効果音のSEから静謐でクリーンなアルペジオが一気に異世界へと引き込み、歪んだベースから一気にカオティックハードコアへと雪崩れ込む第1曲「古の海底遺構」から一気に作品に引き込まれる。彼等のカオティックハードコアはBotch辺りの先人の影響を感じさせながらも、日本で言えばKularaや同じくシーンで活動するwombscape辺りにも通じる物もある。第2曲からは本当に怒涛のカオティックハードコアが押し寄せ、変拍子と突発的なブラストビートとワープゾーン的な展開、不協和音が吹き荒れるズタズタのサウンドに身を切り刻まれる。ポストロックやスラッジ的な要素も随所に盛り込み、怒涛のサウンドと、不穏なパートが絶妙にお互いを引き立て合って、そして作品が進んで行くとスケールを密室化させ、第4曲「失われた記憶と宇宙」では陰惨なスラッジさを見せ、最終曲「異世界」では不穏のポストロックサウンドから終末へと緩やかにダイブするカオティックハードコアで締めくくられる。全5曲が繋がっているかの様な構成だし、ある意味全1曲15分の海底へと沈んで行くカオティックハードコア絵巻だと思う。
各楽器隊が卓越した演奏技術で、それぞれ破滅的なサウンドを奏で、暴走しながらもギリギリのラインでのバランスを保っていたりもするが、JAGOは何よりもボーカルが良い。OZIGIRI氏がガテラルからハイトーンのシャウトまで多彩に使い分け、そのパートそのパートに見事にハマっているボーカルを聴かせてくれる。楽曲自体がブラストかたドゥーミーなダウンテンポ、不協和音の歪みから静謐で美しい旋律まで変則的に繰り出しているし、メタリックさからポストロックまでを見事に飲み込み変則的ながらも統一された世界観を生み出しているからこそ、OZIGIRI氏の自由自在に狂気を吐き出すボーカルが更に際立ち生かされ、より行き場の無い混沌へと堕落していく感覚になってしまう。重苦しく沈んで行く様は本当に地下や海底の異質の密室感を想起させ、その混沌で聴き手を飲み込んでしまう。
日本のアンダーグラウンドのシーンのカオティック・激情のシーンはConvergeやBotch等の先人の叡智を正しい形で継承しながらも、それを新たな形で更新する猛者が蠢いているが、JAGOもそんな猛者であるし、一つのコンセプト作品でありながら、そのオカルトというコンセプトを見事に体現した作品になっている。カオティック好きや激情好きは聴いて本当に楽しめる1枚だと思う。