■Loathus
■Loathus/Loathus

数多くの素晴らしいバンドを輩出している激情帝国ベルギーの3人組激情系ハードコアバンドであるLoathusの最初で最後となった唯一の音源。元々は30枚限定の音源だったらしいが、09年に日本のTokyo Jupiterから正式にリリースされた5曲入作品である。バンド自体は残念ながら現在存在しているかどうかすら不明だが、ブラックメタルっぽいジャケやメンバーがコープスペイントをしてたりとか、社会に対する不信感等とかを訴えてたりするらしかったりと、バンド自身のコンセプトは中々に謎だったりもする。
そんなブラックメタル感溢れるアートワークやバンドコンセプトとは裏腹に、その音楽性は間違い無く激情系ハードコアのそれであり、FUNERAL DINER系の正に正統派な激情系ハードコアのそれである。ポストロック的な静謐なパートを交えつつも、アグレッシブかつ獰猛にその怒りを激情として打ち鳴らした音は非常にドラマティックであり、第1曲「Decline Of The Miraculous」はそんなサウンドが見事に展開されている。緊迫感溢れる静謐なパートと、その熱量を徐々に高めて、3ピースとは思えない音圧で怒りの嘆きのハードコアとしてドラマティックな旋律と共にハードコアサウンドは展開されている。第2曲「The Eye Is Pointing At My Chest」ではそのテンションと怒りがより明確な破壊力を持った轟音として押し寄せ、シューゲイジングするギターの音塊が押し寄せる名曲となっている。手法自体は本当に正統派のそれだとは思うけど、その壮大なスケールを肉感的なアンサンブルで鳴らすサウンドはその手の音が好きな人からしたら堪らないと思う。
第3曲「This Is A Product Of Your Own Hypocrisy」では約3分間で目まぐるしく展開される攻撃性が咲き乱れ、君靴の頃のEnvyが好きな人とかには是非とも聴いて欲しいし、時に重苦しさすら感じるギターリフやビートがクライマックスへと雪崩れ込む様は圧倒的。最終曲である「I Am Vertigo」は今作で最も直情的なハードコアが展開されており、怒りとしてのハードコアの終焉に相応しい1曲となっている。
全5曲ではあるが、十分に楽しめる内容だし、正統派激情として胸を熱くしてくれるシリアスな怒りに満ちている。それだけに今作しか音源を残していないのが残念で仕方ない。そしてベルギーという国のハードコアのレベルの高さを改めて痛感させられた1枚だ。今作は下記リンクのTokyo Jupiterのサイトから購入可能になっている。
Tokyo Jupiter Records