■Seven Sisters Of Sleep
■Opium Morals/Seven Sisters Of Sleep
カルフォルニアが生んだ超極悪スラッジバンドSeven Sister Of Sleep(以下SSOS)の2013年にリリースされた2ndである今作は最早スラッジとか激情とかブルータルとかパワーヴァイオレンスとか呼ばれる音楽の中でも完全にトップの作品であると思うし、似ているバンドなんて完全に皆無になってしまい、同時に孤高の存在となった証明だ。1stの頃のスラッジハードコアの頃から十分凄いバンドだったけど、2012年リリースのEPで確変モードに入り、そして今作で完全過ぎるまでの傑作を叩き付けて来た。最早このバンドよりもヴァイオレンスで暗黒なバンドはいないと思うし、もし今のSSOSに影響を受けたサウンドを他のバンドがやったりなんかしたら本当に滑稽な物真似になるだろう。それだけのバンドになってしまった。リリースは俺たちのA389!!!!!
いや実際にSSOSも最初から現在の様なオリジナリティを持っていたバンドだった訳じゃ無い。1stは名盤ではあるけどEyeHateGodの影響はモロに受けたサウンドだったし、それを独自のスラッジハードコアに仕立て上げた快作だったと思う。その頃から確かにヘビィなバンドではあったけど、今作の様なスケール感はまだ無かった。そして2012年リリースのEPでより深淵へと攻める暗黒のスケールを手にし始めた。そして今作でスラッジもパワーヴァイオレンスもブルータルも激情も飲み込み、究極の暗黒激音を完成させてしまったのだ。その決め手はヘビィロックの暗黒成分を完全に熟知してしまったバンドとしてのグルーブだと思う。サザンロック要素はまだ燃えカス程度にはあるし、曲によってはまだその成分を強く感じたりもする。でも既存のスラッジコアを脱却し、激情・パワーヴァイオレンスに接近しただけでこんな音になるだろうか?第1曲「Ghost Plains」を初聴して思ったのは、枠組みとしてはパワーヴァイオレンス方面に寄り添ったと思わせているけど、実はその真逆でパワーヴァイオレンスすらブチ殺してしまっているんだと思う。勿論スラッジなリフは余裕でパワーアップしているし、そしてブルータルだ。だからSSOSはヘビィロックの究極地点を見つけてしまったのだ。
第2曲「Moths」も初聴した時は驚いた。凄い野暮な比較になってしまうのを承知で言うけど、NEUROSISやAmenraといったバンドが生み出すスケール感溢れるヘビィロックの悲哀をSSOSは自らのサウンドをヴァイオレンスなスタイルへとより接近させながら、その中でリフからドス黒さと同時に血塗られた悲しみも放出させる事に成功してしまっている。勿論バンドアンサンブルに至っては完璧だし、一々音が鎌首を振り落としてくる厄介過ぎるサウンドに脱糞。第3曲「The Flock」ではより研ぎ澄まされたスラッジサウンドに悶絶圧殺必至だ。勿論スラッジ一辺倒じゃない!!第4曲「Grindstone」の爆走サザンロックとパワーヴァイオレンスの衝突による更に得体の知れない重音の連続には頭振りまくるしか無いし、遅さだけじゃ無く速さの点に於いても音が段違いで鍛え上げられているし、というかグルーブを極めまくっているせいで最早サイケデリックの領域に到達してしまっている。
アルバムの後半の流れは更に凄い事になってしまっている。EyeHateGodとは全く違う方法論でEHGの領域に到達してしまった第6曲「Orphans」のヴァイオレンスでありながらアシッドでサグいサウンドの連続もそうだし、野獣の咆哮と暴走重戦車のビートと殺人兵器とかしたギターリフが無数の死体の山を作り上げる暗黒爆走スラッジ兵器こと第7曲「Reaper Christ」、再び悲痛に叫ぶサウンドに涙が止まらなくなるSSOS流の暗黒激重バラッドこと第8曲「White Braid」、最後に第9曲「Recitation Fire」と第10曲「Part 2.」まで徹底して最新で最悪で最凶の暗黒音楽を描いている。しかも本編が終わったらボーナストラックで約32分のライブ音源まで収録されているし、それが本編に負けず劣らず凶悪な激音しか出してないし、これ聴いているとマジで誰かSSOSをとっとと日本に呼んでくれ!!ってなる。
ありとあらゆるスラッジ・ドゥーム・ストーナー・パワーヴァイオレンス。ファストコアetcといった音楽の危険性分だけを融合しまくって、そこにオリジナリティを見出すのでは無くて、そこにある最も黒くて危険な成分によってオリジナリティを手にしたのが今作だし、SSOSはどこまでもピュアに暗黒激重サウンドを追求した結果生まれたオリジナリティと説得力と破壊力なんだからもう文句の付ける場所なんて何処にもない。作品毎に進化を重ねているバンドだけど、この2ndは完全に歴史に残すべき作品だし、ドス黒い音しか無いのに、その黒の数々の多彩さによって生まれるスケールとある種の美しさ、そしてそんな感動すら消し炭にする暴力。これはSSOSだけにしか生み出せない音だ。
■Seven Sisters Of Sleep/Seven Sisters Of Sleep
![]() | Seven Sisters of Sleep (2011/06/2は1) Seven Sisters of Sleep 商品詳細を見る |
アメリカはカルフォルニアのスラッジメタルバンドであるSeven Sisters Of Sleepの2011年リリースの1stアルバム。リリースはSouthern Lordから。友人に薦められて、予備知識なしに音源を購入したが、これが滅茶苦茶格好良いスラッジだったのだ。それでいて激情系ハードコアの色も強く出ており、スラッジでありながらもプリミティブで粗暴なハードコアとしても最高に極悪な1枚になっている。
こういったスラッジ系のバンドは基本的に楽曲が長尺になっているバンドが多いのだけれども、今作は8曲20分という非常にコンパクトな作品であり、楽曲は1分台、2分台ばかり。音自体は紛れもないスラッジであるのだけれども、元々スラッジコアがハードコアの連中から始まった音楽である事を思い出させる、極悪な激情系ハードコアでもあるのだ。EyeHateGod辺りの影響を感じさせながらも、引き摺るスラッジさと、そのスラッジな重さはそのままにハードコアらしくBPM速めで突っ走るパートもあったりと楽曲の緩急はかなり強い。ギターのハウリングから始まる第1曲「Monasteries」ではこれぞスラッジと言わんばかりに引き摺る音の重苦しいグルーブとチューニングの重いギターリフ、のた打ち回る絶叫ボーカルと、スラッジ色全開で重圧殺してくる。しかし第2曲「Passed Out Standing」では悪の軍隊の行進の様なリフの応酬で攻めに攻めまくり、スラッジコアと激情系ハードコアの融合とも言うべきサウンドを見せてくれる。第3曲「Tide is Rising」では疾走するパートも盛り込み、正に暴走する重戦車とも言うべき獰猛さで殺しにかかってきているが、ブレイクダウンしてからは一気にBPMを落としてスラッジコアな引き摺るサウンドも盛り込み落差の激しさを見せても来る。コンパクトな楽曲もあって中だるみする事も無く、ハードコアとスラッジの良さと危険性を濃縮したかの様な楽曲、サザンロックの影響を感じさせるリフのセンス。とにかく凄まじい音圧と、ロウなサウンドの下劣さと、容赦は全く無いし、まさに泥水の中に沈む様なスラッジハードコアは、この手に愛好家には本当に堪らないサウンドだと思うし、この攻撃性は全身で浴びてしまうと全身複雑骨折保証物。
古き良きスラッジコアの流れを汲みながらも、よりハードコアとしての粗暴さを高めたこいつらは、正にスラッジの危険性を容赦無く噴出しながら、それをハードコアのダイレクトさで全力でブチ殺しにかかっている。EyeHateGod好きは勿論、激情系ハードコア好きにも是非薦めたい1枚。1stにしてかなりの破壊力を持っている!!