■naxat
■chain/naxat

都内を中心に活動するsix o'minusのフロントマンであった深沢健介氏の弟である深沢氏率いる4人組ロックバンドであるnaxatの2013年リリースの3曲入り音源。正式なリリースは少し先であるが先日の深沢健介氏の追悼イベントであるbury the sun vol.4のnaxatの物販で先行販売されており、そちらで一足早く購入させて頂いたので、今回フライングして紹介の方を書かせて頂きます。個人的にnaxatのライブは何度か拝見させて頂き、音源のリリースを本当に心待ちにしていた。
このバンドは一つの懐かしさを感じるバンドであり、普遍性を持ちながらも、単なるロックで終わらないバンドだと思っている。音楽性はA Perfect Circleの影響を強く感じさせながら、単なるフォロワーでは終わらないバンドであり、誤解を招きそうだがそこに90年代V系のテイストを感じたりもする、古き良き時代の日本のロックの持っていた耽美さを持ちつつ、すんなりと聴ける普遍性を持ちながらも、モダンヘビィネスのテイストも持ち合わせ、更にはAPC、TOOL仕込みのプログレッシブ要素をブチ込み、それを卓越した演奏技術で鳴らす(特にリズム隊のリズムセクションはかなり高度なアンサンブルを鳴らしている)。今作はたった3曲のEP作品とはいえ、naxatの名刺代わりな作品としては十分すぎる完成度を誇るし、懐かしさや哀愁を感じさせつつも、現行のロックとして洗練された部分もしっかり持ち、妖しく耽美な世界をプログレッシブかつ普遍的に鳴らすバンドなのだ。
第1曲「jude」から複雑なアンサンブルを決して難解にさせずに、複雑かつ美しいアンサンブルによる高揚感を生み出しながらも変拍子を絶妙に使いこなし、感傷と歎美さに満ちたアルペジオが胸を掻き毟り、ここぞというパートではヘビィネス色を押し出し、感情の暴発をリズム隊と共に叩き出すギターワークがまず秀逸。深沢氏のボーカルも妖しくエロスに溢れるクリーントーンのボーカルを中心に歌い、時にシャウトをかまし激情も見せ、楽器隊の奏でる音と見事に溶け合っている。第2曲「躓き」はnaxatの必殺の1曲で、ヘビィなギターリフとプログレッシブなリズムとギターフレーズが螺旋を生み出し、妖しさと暴発が交互に攻め立て、後半からは高揚感と共にnaxatの魅力と言える感傷のヘビィロックが咲き乱れる非常に高い中毒性を誇っている。
特筆すべきは第3曲「ShiBa」だ。深沢氏のボーカルとコラージュされたアンビエントな音と、TOOL仕込みな妖しくプログレッシブなベースラインが楽曲の不穏さを感じさせ、深沢氏のシャウトと共に楽器隊のテンションが一気に高まる瞬間の高揚。そこからプログレッシブさを全面的に押し出し、今作で最も複雑なアンサンブルと曲展開を見せつけ、正に和製TOOLとも言うべき楽曲になっている。しかしTOOLとはまた違い日本人的美意識を強く感じさせる旋律、約8分の中で見事にドラマティックさを展開させながら、精神の奈落へと突き落とす煉獄の様なダークなアンサンブルとヘビィさが炸裂する終盤のカタルシス。それがもう本当に素晴らしくて堪らない。
今作がnaxatの初音源であるが、3曲でバンドの力量を十分に見せ付ける充実の1枚に仕上がっている。特に「躓き」と「ShiBa」は本当に名曲だと思うし、聴いて損は全く無いだろう。今作はバンドの名刺代わりの作品と言えるが、この先の可能性と進化も期待できるし、個人的には早くフルアルバムでの作品を是非とも出して欲しいと思う。