■Seek
■朽ちていく中で/Seek

大阪が誇るツインベース激重激情ハードコアバンドであるSeekの2007年リリースの3曲入2nd音源。先日リリースされた最新音源「崇高な手」も素晴らしい作品で絶賛させて頂いたが、こちらも負けずと素晴らしい名作に仕上がっている。「崇高な手」では熾烈でヘビィな激情を見せ付けていたが、今作は3曲で37分と言うかなりの大作志向になっており、激情でありながらポストメタルの領域に達している作品であり、そして07年リリース作品とは思えない物で、当時から現在のポストメタルの流れに通じるサウンドを鳴らしている事にも驚きだ。
Seekは一つのエクストリームミュージックをクロスオーバーさせたバンドであり、基本的にはヘビィ系の激情系ハードコアサウンドを見せるバンドであるが、スラッジ要素をかなり盛り込み、それをツインベースの本当に重いグルーブで打ち出し、アンビエントやポストメタルの要素も盛り込み、壮大過ぎるストーリー性を持った楽曲によって、熾烈なる激情の先からの美しさも感じさせてくれたりもするけど、それでも極限状態にまで達した漆黒の邪炎によって全てを焼却する音を鳴らし、圧巻の世界を生み出している。
タイトル曲である第1曲「朽ちていく中で」は、アンビエントパートから、静謐なアルペジオの調べとツインベースのスラッジな重低音の地鳴りから始まり、この時点で既に迫り来る悲劇を予感させるが、焦らしに焦らしてから美しきスラッジの煉獄へ叩き込まれる瞬間に、既に意識がとんでもない方向へと飛ばされる、更にはSuguru氏がドスの効きまくったグロウルを披露してから、ダウンテンポのビートが一気にブラストビートになり、更にはカオティックなフレーズがガンガン飛び出し、速さから遅さへと移行する瞬間の得体の知れなさ、悪夢を音で生み出している錯覚にすら陥る。更に後半ではポストメタルパートも盛り込み、クリーントーンのボーカルも飛び出し、更には陽性の光を感じさせる旋律も飛び出すけど、それを全て焼却するか如く、再び激重へと雪崩れ込み、後半は複雑過ぎる楽曲構成にブーストがかかり、終盤は美しいアルペジオから全てを解き放ち、闇と光が交錯する激情大大団円を向かえる14分にも及ぶ壮大過ぎる激情の世界だ。もうそれだけで全てを変貌させるだけの音を鳴らしているのだ。
第2曲「Tragic Ending」はエヴァーグリーンなフレーズから始まりながらも、より直接的に激情を叩きつけ、ダウンテンポのリフの応酬に圧殺必至なんだけど、今作で最もドラマティックなエモーショナルさを誇り、合間合間に入るクリーントーンのフレーズが、それを加速させる。熾烈さを高めに高めてからの終盤のクリーンなフレーズとヘビィなリフが同時に降り注ぐ様は本当に美しくある。第3曲「The Moss Which Grows In Faith」も熾烈な前半と美しい後半の対比が見事で、約13分の中で壮大過ぎる物語を描く。今作は07年リリースでありながらも、現在進行形の海外のポストメタル勢と肩を並べる美しさと壮大さと緻密さを持っていながら、それを更に漆黒の激重サウンドと、ハードコア成分を色濃く打ち出した事によって、それらの連中と肩を並べる完成度を誇りながらも、Seek独自の壮絶なる激情を生み出した作品であるし、37分にも及ぶ闇も光も飲み込む憎悪と破滅、それをあくまでエクストリームさを生かしながら、その先にある美しさを感じさせる手腕には本当に脱帽である。
熾烈さと芸術性を徹底的に追求したからこそ生まれた、極限の音は今作でも健在だし、よりハードコア色が強くなった現在でも、今作の持つ美しい芸術性は十分生かされていたりする。今作と、最新音源では人によってどっちが好みかは別れるとは思うけれども、それでもSeekは激重のと激情から彼方を生み出す圧巻のサウンドを鳴らすバンドだし、何一つブレてないから僕は彼等を信頼している。大阪が生み出した至高の一枚であるし、最新音源「崇高な手」と共にこちらもあらゆるエクストリームミュージック好きは絶対にチェックすべき作品だ。
■崇高な手/Seek

大阪の激重激情ハードコアバンドであるSeekの実に6年振りとなる2013年リリースの3曲入3rd音源。先日初めてライブを拝見させて頂き、その圧巻の熾烈なるハードコアに圧倒されたが、それは音源の方でも健在。もう単純に激情とかハードコアという枠組みでは語り尽くせないSeek独自のハードコアが見事に展開されている。
先ずこのバンド、5弦ベースと6弦ベースというツインベース編成で、他を圧倒する音の重みが凄い。ドラムもギターも徹底して重く、そしてそのヘビィさの奥底に悲痛なる旋律を感じさせるけど、2本のベースが生み出す音圧とグルーブが凄まじい。サウンドとしてはヘビィ系の激情サウンドであり、時にスラッジに展開もするし、時にBPM速めで暴走するパートもある。やっている事自体は特別に難解な事をしているバンドでは無いと思うし、ハードコアバンドとしての肉体性とか馬力はそこいらのバンドを圧倒する物があると思う。しかし単に底知れぬ力を感じさせるハードコアではない、楽曲の構成はかなり複雑であると思うし、随所随所にアンビエンスなサウンドコラージュを施していたりもするし、何よりも一つの楽曲楽曲の中で見事なまでに起承転結が存在し、徹底してヘビィで熾烈な音を生み出しながら、そのストーリー性は底知れぬ物がある。ブルータルに暴走するパートと、スラッジな美しさを魅せるパートの対比とか見事だし、何よりもSeekはボーカルのSUGURU氏の表現力が圧倒的過ぎる。ドスの効きまくった低域激情グロウルボイスの表現力が本当に凄く、徹底して負の感情を日本語詞で叫び上げる。それがただでさえ重く痛々しいサウンドと最高に嵌り、圧倒的世界を描き出す。
スラッジ色のあるリフから一気にブラストビートで暴走する第1曲「崇高な手」からハードコアの肉体へと訴える粗暴なグルーブが炸裂しまくり、それに加えてBPMを落とすパートでは旋律の美しさを最大限に生かし、のっけから壮絶な物語を描いているし、第2曲「grace the dead leaves」は訳5分の今作では一番分かり易いアプローチをしており、最もハードコア色の強い楽曲に仕上がっているが、それでも楽曲構成はやはり複雑だし、暴力的サウンドスケープから次第に感情を刺激しまくる激情スラッジサウンドに変貌する様は本当に美しくもある。第3曲「reunited with delight」は今作で最も芸術性を感じる楽曲で、最早痛みを描く為のヘビィネス・ハードコア・激情を極めようとしている様にも思える。ツインベースが複雑なフレーズを絡み合いながら生み出し、ギターリフの一つ一つの重苦しい美しさ、何よりもSUGURU氏の最高のボーカルと本当に文句無しだ!
個人的にはこのバンドの悲痛なる激情は全盛期のSWARRRMに匹敵するレベルだと思っており、痛みとしてのヘビィネスとハードコアを壮絶なるストーリー性で美しく熾烈に描いている。大阪という数多くの猛者を生み出す地から圧巻の激情を彼等は放っている。そして何よりもライブが本当に凄まじく、全てを覆い尽くす漆黒の濁流を生み出す様は圧倒的で泣ける。機会があれば是非ライブも体感すべきバンドだ。3曲入EP音源だが、2013年の重要作品に挙げたい。