■THE BRODERICK
■Free To Rot, Free Of Sin/THE BRODERICK

先日の来日公演にて本格的に日本進出を果たしたオーストラリアのハードコアバンドであるTHE BRODERICK。CONVERGEのオーストラリアツアーのサポートを務めた実績もある彼等の2012年リリースの1stアルバム。アナログとカセットのフォーマットでのリリースでアナログの方にはダウンロードコードも付いている。
今作は多くの人々が2012年最も新鮮でヘビィな作品と評した作品であるらしく、そんな評価を裏切らない内容となっている。彼等の音楽性はとにかくヘビィで熾烈なハードコアとなっており、2本のギターが繰り出す激重リフと、加速するパートを絶妙に盛り込みつつも、基本はダウンテンポで推進力低めで重心のあるビート、徹底してダークさとヘビィさを追及しているバンドだと思うし、とにかくサウンドの重みが凄い。しかも単純にヘビィなだけのハードコアに終わらず、とにかく強靭な力を感じさせる音を一つの芸術性すら感じさせる美意識で鳴らしているから凄い。基本的にはダークで重いリフとダウンテンポのグルーブで進行しながらも随所に盛り込んだプログレッシブな要素を生かし、単なるパワー馬鹿では無く、スラッジの美意識すら彼等には感じる。しかも楽曲の尺も一番長尺の楽曲で5分弱で冗長さが全く無いのがまた良い。乱暴な言い方をするとコンパクトになったNeurosisとも言うべき音で、ソリッドに削ぎ落とす部分は徹底して削ぎ落とし、でも音の厚みやヘビィさは逆に最大限に生かされていると言える。不協和音と化した音階を一つの神々しさで鳴らし、コンパクトだからこそ持ち前の芸術的ヘビィネスがよりダイレクトに迫ってくる圧巻の音に満ちている。
第1曲「Black Lung」から徹底的にダークさとヘビィさをスラッジな感覚で打ち出し、基本的な楽曲の路線こそ変わらないにしても、絶妙な色付けの変化や、展開の構築方法の変化で、一本調子には決してなってないし、必要最低限のコンパクトな構成の中で見事な情報量と熾烈さをアピール。第2曲「Distance」なんかは前半のスラッジなパートと後半の暴走するハードコアパートで見事な対比を生み出しているし、第3曲「1950 DA」は1分半程の楽曲でありながら、今作でも屈指の奥行きのある美しさを披露し、最後は今作で屈指の暴走するカオティックサウンドへと雪崩れ込んでいくから凄い。合間にSE的な子品的楽曲も盛り込み、クールダウンさせる要素があるのはまたニクいし、特に終盤の第8曲「Savages」と最終曲「Diving Bell」は今作でも特に芸術的美意識が生かされた楽曲だと思うし、ヘビィさを極めようとしながら、同時に美しさも追求し、それをコンパクトな楽曲の中で見事に炸裂させているからこのバンドは凄い。
1stでありながらも、その完成度は非常に高く、ConvergeやRussian Circlesのライブのサポートを務める実力を嫌でも痛感させられる1枚となっている。壮大さとダークさとヘビィさを徹底して追及しながらも決して冗長にしないで、あくまでハードコアの方法論の中でそれを生み出しているから凄いし、まだまだ日本では知名度は全く無いとは思うけど、これからこの日本でも彼等の猛威は広がっていく筈だ。最新型の熾烈なるハードコアがそこにある。