■ENSLAVE
■FAR EAST HARDCORE PUNK/ENSLAVE

本当に凄い作品だと思う。都内を拠点に活動する男女ツインボーカル激情クラスティハードコアバンドであるENSLAVEの2011年リリースの1stアルバム。活動暦自体は結構長いバンドだったりするが、初のフルアルバムである今作は、ENSLAVEというバンドが本当に純度1000%の激情をメッセージとして放ち、それをカオティックかつドラマティックに鳴らすバンドとして唯一無二である事の証明であり、何よりもここまで感動的なハードコアはこの世に他に存在するか分からない。
先ず彼等が放つ音は本当にハイブリット極まりない。国外ネオクラスト勢とシンクロしながらも、ジャパニーズハードコアの色をしっかりと打ち出し、オールドスクールなテイストも持ちながらも、激情系ハードコアとしての叙情性溢れるギターワーク、しかしそれを高速で放つ事によって生まれるカオティックさ、D-BEATからブラストまで容赦無く繰り出すドラム。ドラマティックな楽曲構成を持ちながら、それをあくまでの2分台3分台の楽曲の中で展開していく楽曲。本当にあらゆるハードコアパンクが下地にあり、非常にハイブリットな音を鳴らしているバンドであるのだが、彼等が唯一無二なバンドである最大の要因はそのツインボーカルにあると思う。全編日本語詞で歌い叫ばれるのは、怒り、嘆き、痛み、そしてそれを乗り越えた先にある希望。彼等の歌詞はかなりメッセージ性が強かったりもするのだが、それを鬼気迫る勢いで叫び、ポエトリーのパートではエモーショナルに俺達にその言葉を語りかける暴君であり、熱きハードコア魂をとんでもない熱量で繰り出す男性ボーカル陸JEEP王氏と、ヒステリックなハイトーンシャウトをブチかまし、こちらも負けずに全身全霊であり、ありったけのまま叫ぶ感情と言葉によってまた新たな光を生み出す女性ボーカルPG-2嬢。この男女ツインボーカルは最早常に絶唱しかしてないというシンフォギア一期の終盤レベルの圧倒的激情の絶唱を魅せ、それがこのバンドの持つオリジナリティと感動的ハードコアの核だと思う。
時にメタリックに、時にメロディアスに、時に武骨なハードコアとして、あらゆる側面を持ちながらも、それを統率して一つの音として確かな芯をこのバンドからは本当に感じるし、メタリックなタッピングのフレーズから幕を開ける第2曲「Obliging」では、ENSLAVEの持ち味であるクラスティでありながら、メロディアスに暴走する2本のギターと、怒涛のビートを繰り出すビート、絶妙に展開を変えていく事によって更に拡大するドラマティックさ、そしてツインボーカルの絶唱の掛け合いと、彼等の魅力が既にフルパワーで発揮されているし、それに続く第3曲「Under Ther Isolation」ではジャパニーズハードコアなカラーも色濃く出したリフも飛び出し、更に限界突破で突っ走りまくるドラマティックなヴァイオレンスさ、更に真摯にメッセージを放つ二人のボーカル、合間に入る悲哀を感じさせるアルペジオからの陸JEEP王氏のポエトリーからの絶唱。更に第4曲「My Will」ではのっけからPG-2嬢の絶唱とトレモロリフの洪水から始まり、更に天井知らず。序盤のこの3曲からもうとんでもないパッションとヴァイブスが生まれており、それを神々しく、しかもあくまでもハードコアとして鳴らしている。更にストレートなハードコアサウンドを圧巻の音圧で放つ第6曲「Only I Can Judge Me」、今作でも特にメロディに悲哀を感じさせ、痛みを鳴らすハードコアバンドとしてのENSLAVEの本領しか無い広島・長崎へ落とされた原爆に対する痛みと悲しみを歌った第9曲「Black Rain」、そしてドラマティック極まりない今作を締めくくるに相応しい最終曲「Each Ideal」と。本当に最初から最後まで軽く聞き流すことなんて到底不可能な、真摯なる言葉と圧巻のハードコアサウンドと、ドラマティックかつエモティブな絶唱しかない。
何度かライブも拝見させて頂いてるが、音源でも圧巻のサウンドがライブでは更にとんでもない事になっており、本当に鬼気迫るという言葉が相応しいレベルのライブを繰り出すライブバンドでもあるENSLAVE。闇を切り裂き、そこから光を放つハードコアは本当に心を揺さぶりまくり、それでいてサウンドはヴァイオレンスなのに、どこか優しくもあり、何よりもツインボーカルの絶唱により放たれる言葉。本当に心を突き動かす作品だし、ハードコアから生まれた一つの到達点だとも思う。歴史に残すべき1枚だろこれは。