■Palms
■Palms/Palms
![]() | Palms (2013/06/20) Palms 商品詳細を見る |
本当に数え切れない位に渡って活動するDeftonesのチノと元ISISのJeff Caxide、Aaron Harris、Bryant Clifford Meyerによって始まったPalmsというプロジェクトだが、ほぼISISのメンバーが集結した上にボーカルはDeftonesのチノという編成の驚いた人も本当に多いと思う。そんなPalmsの2013年リリースの1st音源なのだが、ISISのサウンドをチノが歌い上げるサウンドを想像した人も多いが、それは半分は正解だけど、半分は間違いだ。今作はISIS解散以降の音を、チノの手を借りて生み出した作品であり、ISISでは辿り着けなかったポストメタルの境地へと確かに達した作品だと僕は思う。
そのリズムセクション、その美麗なる旋律、その構築美、それは紛れも無くISISのそれではあるけど、でも決定的に違う。今作はよりクリアのポストロックの方向に振り切ったISISとも言えるサウンドが展開されており、より美麗な旋律を前面に押し出した印象を受ける。末期ISISでもこの様な片鱗は確かにあったけど、そちらはもっとハードコアだったし、粗暴なダイナミックさと美麗な旋律が織り成す構築美が末期ISISの魅力ではあったけれども、今作ではそのハードコアさを置き去りにしてしまっている。チノもシャウトはあまり使用せずに、クリーントーンでそのエロスに溢れた美声を存分に発揮しているし、バンドの方もあからさまなディストーションサウンドは使用せずに基本的にはクリーントーンのサウンドで進行していくスタイルだ。単なるチノが歌うISISでは無く、本当にISISでは成し遂げられなかったサウンドをチノと元ISISの3人の手によって生み出し、ISIS以降という一つの分岐点に自らケリを付けたんだと思う。第1曲「Future Warrior」を聴くだけで、末期ISISのそれを感じさせる旋律に感動を覚えてしまうが、あからさまにバーストするのでは無くて、ゆるやかな波の様に熱量を高めていくサウンドとチノの歌声は本当に美しいし、誤解を恐れずに言えば本当にメロディアスであるし、ある種のキャッチーさすらあると思う。
第2曲「Patagonia」はよりクリーンな音がプリズムの結晶の様な煌きを静かに放ちながらも、ISISのリズム隊による緻密なリズムセクションが単なるポストなサウンドでは片付けさせてないし(何よりもJeff Caxide先生のベースラインが素晴らしくセクシーッ!エロいッ!)揺らぎの中で高まる熱量と色を加えていく色彩の美しさにはもう脱帽だ。個人的には「White Pony」の頃のDeftonesともリンクする第3曲「Mission Sunset」ではチノの卓越したボーカルが本当に咲き乱れ、バンドサウンドとこの上ないレベルでシンクロしているし、より艶やかさを加速させた第4曲「Shortwave Radio」、浮遊する音の数々陶酔してしまうアンビエンスな最終曲「Antarctic Handshake」と、全6曲でありながら全曲が屈指の出来を誇っているし、本当に豊潤で濃密なサウンドに満ちていながら、アルバムを通した聴いた直後に、ある種の安らぎを感じさせ、濃密でありながら、本当に全ての音と声が優しく耳に入り込んでくる。
単なるDeftonesと元ISISのサイドプロジェクトでは片付けられない作品だと思うし、個人的にはISIS以降を決定的にする作品だと思う。DeftonesとISISという時代を切り開いた先人が、自らの手によってまた新たなページを開いた作品だし、ポストメタルとかポストロック云々を抜きに2013年のヘビィロックを代表する作品だと思う。あまりにも豊か過ぎるメロディと歌に聴いてて本当に心が豊かになるのは間違い無いだろう。是非とも今作限りの単発プロジェクトではなくて、是非ともプロジェクトを継続させて次回作も作って欲しい限りだ。