■Agrimonia
■Rites of Separation/Agrimonia
![]() | Rites of Separation (2013/05/02) Agrimonia 商品詳細を見る |
MARTYRDOD、BOMBS OF HADES、MIASMAL、AT THE GATES、SKITSYSTEMのメンバーも在籍するスウェーデンのAgrimoniaの3rdアルバム。リリースはSPUTHERN LORDから。元々はネオクラストのバンドであったが、2ndから大きく路線を変え、ポストメタル・ゴシックドゥーム色を強く出してきたが、今作は前作の流れを引き継ぎながらより深化させた物だと言える。買ったのが今年に入ってからなので年間ベストに入ってなかったが、ちゃんと去年買えていたら年間ベストに入れてた傑作だ。
今作も大作志向の作品で5曲中4曲が10分越えの長尺曲中心の作品だが。それは1stの頃から変わってないし、1stの頃もネオクラストとはいえ大作志向だったし、それを作品を重ねる毎に進化させてきた彼等の真骨頂が今作にはある。単なるゴシックドゥームとは違って、ポストメタル要素は勿論あるし、ネオクラスト派生型バンドだからこそ単なるゴシック志向とは全然違う。確かにメロディは前作以上にメランコリックさが高まっているし、今作はより洗練された完成度を誇るし、長尺ながらもより聴き易くなった印象も大きい。ドラマティックに展開される楽曲のストーリー性だとかもそうだけど、ゴシック系のバンドにあるある種の臭みを絶妙に抑えているからこそ、メランコリックなメロディの良さを押し付けるんじゃなくて、しっかりと聴かせる物になっているし、そういった類の音が苦手な人でも今作は是非とも触れて欲しいと思う。そしてネオクラスト派生型バンドであるからこその、激情系ハードコアのあの展開の仕方を今作でもしっかり取り入れている。彼等はLight BearerやMorneに並んでネオクラスト派生ポストメタルバンドの重要バンドだと僕は思うのだ。
第1曲「Talion」の冒頭のギターフレーズなんてモロにゴシックメタルなそれなんだけど、でもメロディの塩梅が本当に絶妙で、嫌らしさを感じないし、ハードコアな直情的な激情とゴシックメタルの耽美さが正面衝突する展開はドラマティックでもあるし、単純に格好良い。成分としてはメタルの成分が大きいとは思うけど、それを絶妙に入ったハードコア成分で見事な調和を果たしている。疾走するパートの格好良さも、メタルらしいある種のベタさも、ポストメタル的な構築美も、静謐なパートで胸を掻き毟るメランコリックさも、言ってしまえばまだネオクラストだった1stの頃から確かにあったし、その核は実は変わっていないのかもしれないとも思う。15分にも及ぶ壮大な第2曲「Hunted」はメタリックな熾烈なるリフの応酬からポストメタル感を一気に広げていく壮大極まりないスケールに脱帽するしかないし、特に曲の終盤はその要素がかなり出てくるけど、そこではゴシックな成分が逆に良いエッセンスとして働いてるからズルいとも思ってしまう。そして最後はまたメタリッククラストな獰猛なるサウンドの応酬だから昇天間違いなし。今作で唯一の10分未満の第4曲「The Battle Fought」はいきなりポストブラックな冷え切ったリフの応酬で始まり、1stの頃を思い出させる曲でもあるけど、同時に今作で見せる洗練と言う物をまた感じさせる1曲にもなっている。終始吹き荒れるブリザードな音がまた堪らない!そして再び15分以上の壮大なる最終曲「Awaiting」は今作で最もドラマティックな楽曲であり、美しさもドラマティックさも熾烈さも今作で屈指のレベルを誇っているし、ドラマティックな全5曲のクライマックスを見事に締めくくっている。
ネオクラストからスウェーデンらしい耽美な美意識を前面に押し出し深化を遂げたAgrimoniaの洗練を見事に感じる作品であるし、1stと2ndとまた違う物をこの3rdでも見せてくれた。一つの形に固執せずにクロスオーバーに自らの音を進化させるAgrimoniaの精神はやっぱりネオクラストバンドの進化の精神のそれであるし、その形式に拘らずに自らを鍛え上げているからこそ生まれた美しく熾烈な物語が今作なんだと思う。